「独身でも保険に加入した方がよいのだろうか?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、独身の人も備えるべきリスクがあり、どの年代でも「医療保険」や「就業不能保険」への加入は重要度が高いと言えます。
しかし、人によって貯蓄額や許容できるリスクが違うので、様々な種類の中から自分に合った保険を選ぶのはとても難しいかと思います。
この記事では様々な種類の保険から、独身の人が自分に合った保険を選べるようにわかりやすく解説します。
独身の方は生命保険がいらない?備えておきたいリスク
独身の人が優先的に備えたいリスクは、以下の2つです。
独身の方は、自分自身に万が一のことがあった場合でもお金を残す必要性が低く、「生命保険は不要ではないか」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、離婚していて子どもがいる場合や万が一のことがあった時に、親族にお金を残さないといけない環境の場合など、一概に独身だから生命保険が不要とは言えません。
また、独身の方であっても以下のようなリスクがあり、備えておかないと思わぬ出費につながることがあります。
病気やケガのリスク ~医療保障の重要性は高い~
独身の人が備えておきたいのは、病気やケガを負った場合の治療費や収入の低下です。
日本に居住している人は、「公的医療保険」に加入しており、治療を受けた医療機関に健康保険証を提示すると医療費の自己負担が1~3割で済みます。(6歳以上70歳未満の人は3割)
また、「高額療養費制度」によって、医療機関や薬局で支払った医療費が年齢や所得によって決められた上限額を超えると、超過分が払い戻されます。
上記に加えて、病気やケガで4日以上働けなくなった場合は、傷病手当金を受給できるので、収入の損失に対処することができます。
傷病手当金で受給できる金額は、働けなくなった日から過去12ヶ月の標準報酬月額を平均した金額の3分の2までで、受給期間は最長で1年半です。
しかし、一人部屋や二人部屋のような個室に入室したときの差額ベッド代や、食事代、パジャマといった身の周りの用品代は、公的医療保険制度の対象外です。
また、傷病手当金を受給しても、働いていた頃の収入の3分の2に減少します。そのため、入院をすると、以下のように医療費自己負担分と逸失収入が発生します。
- 「逸失収入」とは?
- 本来であれば得られたはずなのに、病気やケガなどで得られなかった収入のこと
入院時の自己負担費用と逸失収入の総額
- 5万円未満:7.6%
- 5~10万円未満:23.3%
- 10~20万円未満:32.0%
- 20~30万円未満:13.7%
- 30~50万円未満:10.8%
- 50~100万円未満:7.5%
- 100万円以上:5.1%
※参照:2022(令和4)年度 生活保障に関する調査 | 生命保険文化センター
上記のデータによると、10~20万円が多くなっていますが、入院日数が伸びれば伸びるほど負担金額は増えていきます。
医療費の自己負担分や、働けなくなった時の収入減少に備えられるほど預貯金がない場合は、医療保険や就業不能保険への加入を検討しましょう。
実際に独身で保険に加入されている方は、以下のような場面で、「保険に入っておいてよかった」と感じているようです。
死亡するリスク ~死亡保障は最低限でも大丈夫~
独身の人が死亡保障に加入する場合、葬儀費用や死後の整理費用などに備えられるような数百万円ほどの金額に設定するのがおすすめです。
小さなお子さんがいる世帯主のような、数千万円の死亡保障は必要ないでしょう。
葬儀費用は式典だけでなく、飲食接待費や住職へ支払うお布施、戒名料など、合計で100〜200万円程度が相場です。
また、お墓の購入費用や、遺品の整理費用、住宅を引き払うための費用も必要になる場合があります。
以上の点から、独身の人は300万円前後を目安に死亡保障を準備しましょう。
ただし、離婚をして独身だが小さなお子さんがいるなどの場合は、自分自身が亡くなった後に子供が生活できるよう、数千万円ほどの手厚い死亡保険に加入することをおすすめします。
独身者が最低限入っておくべき保険の選び方
独身の人も既婚者と同じく、年代によって保険の選び方が異なります。
なぜなら、以下のように貯蓄の額や入院するリスクが年代によって異なるためです。
※参照:家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)| 3. 金融資産保有額(金融資産保有世帯) | 知るぽると
※参照:令和2年(2020)患者調査の概況
中央値は、貯蓄額を数値が小さいものから順にならべたときに、中央に位置する数値です。
平均値は、それぞれの年代全員の貯蓄額を足し合わせ、総数で割って算出します。そのため、極端に貯蓄額が高い人がいると、実態とかけ離れる可能性があります。
一方で、中央値は全体の中央に位置する数値を表しているため、より現実的な貯蓄額を判断する際によく利用されます。
上記の結果を踏まえつつ、それぞれの年代における保険の必要性を考えてみましょう。
40代以降
40代以降でこれまで計画的に貯金していた人の中には、1,000万円から2,000万円前後の貯蓄がある人もいるでしょう。
実際に、40代以降の平均貯蓄額は、20代や30代と比較して増加傾向にあります。
一方で、40代から50代における金融商品保有額の中央値は520万円です。
40代以降は、20代・30代の頃よりも病気やケガによる入院リスクが高まるため、貯蓄が不十分な人は「医療保険」や「就業不能保険」などで備える必要があります。
持病を持っていたり、過去に大きな病気を患ったことがあるような人でも加入しやすい保険商品もあります。
「健康状態に不安」がある人でも申し込みやすい保険は?
-
引受基準緩和型(限定告知型)保険
≫通常の保険よりも告知項目が少ない保険 -
無選択型保険
≫加入時に告知する必要のない保険
また、以下の「年齢別がん罹患率データ」を参照すると、男性は50代、女性は40代からがんに罹患する確率が高くなっています。
そのため、がん保険や医療保険の特約などで、がんに対する保障を手厚くするのもひとつの方法です。
女性特有の病気に備える女性保険もありますので、ぜひ参考にしてみてください。
参照:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)2019年
20代~30代
20代や30代でも、いつ病気やケガで入院したり手術を受けたりするかは分かりません。
もし、病気やケガが原因で入院した場合や働けなくなった場合は、公的医療保険制度によって医療費の自己負担や収入の減少を抑えられます。
しかし、治療期間が長期化すると経済的な負担も増えていき、貯蓄だけではカバーしきれない可能性もあります。
20代~30代は貯蓄額が40代以降と比べて少なく、特に20代の種類別金融商品保有額の中央値は135万円となっており、病気やケガに備えるには心許ない金額です。
そこで、貯蓄が不十分な人は病気やケガでの入院・手術に備えられる「医療保険」や、働けない場合に備えられる「就業不能保険」への加入を検討しましょう。
特に、医療保険は保険料の支払い方法を終身払いにすることで、割安な保険料負担で老後も継続が可能です。
独身の人におすすめの保険
独身の人が加入を検討しておきたい保険のうち、特に優先順位が高いのは以下の5種類です。
医療保険
医療保険は、病気やケガでの入院・手術・通院にかかる費用をカバーする保険です。
病気やケガになった際のリスクに備えられるため、就業不能保険や所得補償保険と並んで、独身の人にとって必要性の高い保険といえます。
医療保険の主契約は、基本的に以下の2種類です。
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入院給付金
≫入院した場合に保険金を受け取れる保障
-
手術給付金
≫所定の手術を受けた場合に給付金を受け取れる保障
入院給付金は、現在の医療実態に合わせて「1泊2日以上の入院」や「日帰り入院」など、短期間の入院でも保障されるものが主流です。
入院給付金の給付金額は、「入院給付金日額 × 入院日数」で決まるのが一般的ですが、近年では入院した時に10万円などのまとまった保険金を受け取れるタイプも増えています。
一方で、手術給付金は「入院給付金日額 × 手術の種類に応じた給付倍率」で給付金の額が決まることが多いです。入院中の手術だけでなく、外来で受けた手術が保障されるものも増えてきました。
また、医療保険に特約を付加すると、三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)になった場合や、所定の先進医療を受けた場合に、保険金を受け取りつつ高額な医療費にも備えられます。
就業不能保険
就業不能保険は、病気やケガで働けなくなった場合に毎月一定額の保険金が働けるようになるまで、もしくは保険期間が満了を迎えるまで支払われる保険です。
民間の医療保険は、基本的に病気やケガでの入院を保障する保険ですので、医師による在宅療養は特約を付帯しないと保障されません。
しかし、就業不能保険は在宅療養時にも保険金を受け取れるため、家賃や食料費、光熱費などの支払いに充てられます。
注意点としては、就業不能保険は所定の就業不能状態になり、免責期間を経過した後でなければ保険金の支払いがされないことです。
免責期間は60日や180日などに設定されていることが多く、免責期間が短いほど支払う保険料が割高になります。
また、うつ病のような精神疾患については、給付期間に制限が設けられている場合が多いです。そのため、就業不能保険を加入検討する際は、保険金が給付される条件をよく確認しましょう。


所得補償保険
所得補償保険は、病気やケガなどで働けなくなったときに毎月一定額の保険金が受け取れるため、大枠では就業不能保険と似たような損害保険です。
しかし、所得補償保険は以下の点で就業不能保険と異なります。
所得補償保険 | 就業不能保険 | |
---|---|---|
保険会社 | 損害保険会社 | 生命保険会社 |
免責期間 | 7日間 | 60日、180日 |
保険金の支払期間 | 1年程度 | 55歳や65歳のような所定の年齢まで |
保険金額 | 平均月間所得の範囲内 | 月額5〜50万円の範囲で選択 |
所得補償保険は就業不能保険と比較して、より短期的な就業不能状態に備えられる保険といえます。
がん保険
参照:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)2019年
がん保険は、がんと診断された場合や所定のがん治療を受けた場合などに備えられる保険です。
グラフから分かるように、男性は50代前半から、女性は40代前半からがんの罹患率が上昇します。
また、入院を伴わないがん専門治療も保障対象ですので、通院によるがん治療が長引いたときの治療費や収入の減少にも備えられます。
なお、がん診断給付金はがんと初めて診断された場合だけでなく、入院や通院によるがん治療が長期化した場合も複数回にわたって保険金が支払われるものもあります。
しかし、がん保険には契約から90日ほどの免責期間が設けられており、免責期間中に診断されたがんは保障の対象外となるので注意しましょう。
終身保険
終身保険とは、一生涯の死亡保障が得られる保険で、葬儀費用や死後の整理資金などを確保できます。
終身保険は一定期間経過後に解約すると解約返戻金を受け取れるため、万が一のリスクに備えつつ老後資金を確保するための手段としても活用が可能です。
現在販売されている終身保険には、「低解約返戻金型終身保険」や「外貨建て終身保険」などがあります。
詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
独身で保険に加入している方の口コミ
独身の保険に関してよくある質問 Q&A
独身の保険に関してよくある質問
Q. 独身の人の生命保険の受取人は誰にすべき?
A. 独身の方は両親や兄妹などを指定される方が多いです。
保険の受取人は、原則として配偶者または2親等以内の血族を指定できます。
自分に万が一の事があった場合を想定して、保険の受取人を選びましょう。
Q. 会社員で独身の人に保険は必要ですか?
A. 会社員や、独身にかぎらずどの年代でも「医療保険」や「就業不能保険」への検討は重要度が高いと言えます。
Q. 貯金がいくらあれば保険に入らなくてもいいですか?
A. リスクに対し必要な金額を貯金できていれば、その分の保険は不要です。
例えば、死亡整理金に必要な金額が200万円程度とすると、貯金で200万円準備できていれば死亡保険で準備する必要がありません。
全てのリスクに対して貯金で備えるのは大変ですので、保険と組み合わせて備えることで合理的な保障になります。
こちらの「独身の人におすすめの保険」の章もご覧ください。
Q. 20代の保険の相場はいくらですか?
A. 「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、29歳以下の年間払込保険料の平均は21.5万円です。
毎月1万8,000円ほどを支払っている計算となります。
20代のうちは、それほど多くの金額を保険料に回すことが難しい方もいらっしゃるかもしれません。
そういった方でも、最低限入っておきたい保険の選び方をまとめていますので、気になる方はこちらからご確認ください。
まとめ
独身の人が保険に加入する際のポイントについて解説しました。最後にポイントをおさらいしましょう。
- 独身の人におすすめの保険は、医療保険、就業不能保険、所得補償保険、がん保険、終身保険の5種類
- 独身の人は、病気やケガで入院した場合の治療費や収入の減少に対する備えを優先して保険検討をする
- 独身者の死亡保障額は、養っている人がいない限り葬儀費用や死後の整理費用に備えられる金額で良い
- 20代から30代は病気やケガで入院するリスクが40代以降と比較して少ない一方で、全体的に貯蓄が少なくリスクに備えられない可能性がある
- 40代から50代も、貯蓄が少ない人は医療保険や就業不能保険への加入を検討する。また、40代以降はがんの罹患率が上昇するため、がん保険への加入も合わせて検討すると良い
実際に必要な保障は、個人の生活背景や貯蓄額によって人それぞれです。
ご自身にとって必要な保障や商品が分からない場合は、お金と保険のプロであるファイナンシャルプランナーへの相談を検討しましょう。
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- 前田 祐治
- 関西学院大学教授
そのようなリスクに対応するのに、一番頼りになるのは生命保険です。医療保険、就業不能保険、終身保険などの生命保険で、これらのリスクに対応することをおすすめします。

