子供のうちであっても、保険商品によって0歳から医療保険への加入は可能です。
しかし、各自治体では子供が利用できる医療費助成制度があったり、そもそも入院率や入院期間が短いなど、必ずしも子供を保険に加入させる必要はありません。
一方で、子供が医療保険に加入することで以下のようなメリットもあります。
子供の保険加入にメリットがあるケース
この記事では、国や自治体の公表する様々な統計データを交えながら「子供向けの医療保険の必要性」について解説していきます。
子供に医療保険は必要?加入するべきかは人による
子供の医療保険の必要性は、ご両親の考え方によって大きく異なります。
必要性が高いケース | 必要性が低いケース |
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そもそも医療保険に加入する目的は、公的保険制度で賄えない自己負担分の医療費を補うために加入するケースが多数です。
子供一人では入院生活を送ることができないので、家族の支えが不可欠です。
一日中付き添う必要がある場合、親は仕事を休むなどの対応が必要となるため、医療保険などでカバーする必要があります。
ただし、日本全国のほとんどの自治体で子供向けの医療費助成制度が実施されているので、医療費の負担がほとんどかからないケースも珍しくありません。
ですので、子供は大人と比較して入院や手術といったリスクや、手厚い医療保障の必要性が低いこともわかっているので、そもそも医療保険に加入していない方も多いです。
一方で、「将来的に必要な子供の教育資金や生活費を貯蓄するため」や、「保険料負担のない医療保険をプレゼントするため」など、医療費負担を軽減する以外の目的で加入している方もいます。
そのため、家族環境やお子様の健康状況、ご両親の考え方によって医療保険の必要性が変わってくるのです。
加入目的 | 保険種類 |
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病気やケガに備える |
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子供の教育資金や生活費を貯蓄する | 学資保険 |
医療保険の必要性については以下の記事で解説しています。合わせて参考にしてみてください。


子供に医療保険が必要ないといわれる3つの理由
「子供に医療保険は必要ない」といわれる理由には、主に以下の3つが挙げられます。
子供に医療保険が必要ないといわれる3つの理由
1. 自治体の医療費助成が充実している
日本国内のほぼすべての都道府県や市区町村では、子供の医療費に対して様々な助成が行われています。
たとえば、東京都杉並区では以下のような手当・医療費等助成を行っています。
項目 | 手当・医療費等助成 |
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妊娠・出産期 |
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子育て期 |
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ひとり親家庭等 |
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障害をお持ちのお子さんを養育している家庭等 |
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その他 |
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※2025年3月時点の情報を掲載しています
参照:手当・医療費等助成|杉並区
ただし、都道府県では「就学前まで」、市区町村では「15歳の年度末まで」などのように年齢制限を設けている自治体が多く、中には所得制限があるケースもあります。
これらの助成制度はお住いの地域の公式ホームページから確認ができるので、自分が住んでいる地域でどのような医療保障制度が利用できるか、自己負担額はどの程度になるのかを事前に調べておきましょう。


2. 子供の入院率は低く平均入院期間は短い
子供に医療保険が必要ないと言われる理由として、そもそも子供の入院率や外来率が低く、平均の入院期間が短いため、大きな入院費がかかる可能性が低いことが挙げられます。
子供の入院率・外来受療率
厚生労働省が公表する統計データによると、0歳児の入院は高めなものの、1歳以上になると数が激減していることがわかります。
年齢階級別の入院患者数 | 年齢階級別の外来患者数 |
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入院患者数と外来患者数を比較すると、外来患者数のほうが多いことがわかります。
一般的に、入院よりも外来のほうが治療費は少なく、上述のとおり様々な助成が行われているので、多額の医療費がかかることは稀だといえるでしょう。


平均入院日数
続いて、平均入院日数についても見ていきましょう。
上記と同じく、厚生労働省が公表する統計データ「患者調査の概況(令和5年度)」によると年齢別の平均入院日数は以下の通りであることがわかっています。
参照:令和5(2023)年 患者調査の概況 統計表6 退院患者の平均在院日数|厚生労働省
9歳までの子供は他の年齢に比べて入院日数が少なくなっており、10〜19歳までの子供に関しても約10日程度とそこまで長い入院日数とはなっていません。
入院時には差額ベッド代や食費、家族の交通費などが発生するものの、医療保険に加入して入院保障を用意してまで備えておく必要性は低いといえるでしょう。
3. 教育機関を通して共済制度に加入する場合が多い
幼稚園に入園すると、園児総合補償制度などに加入できます。
園児総合補償制度とは、園児が病気やケガをした場合に保険金が支払われる制度のことです。
保育園以外にも様々な教育機関を通して共済制度に加入するケースが多々あります。
これらを利用することで医療費を賄うことができるので、民間の医療保険に加入する必要性はそこまで高くないといえるでしょう。
子供の医療保険の加入率は46.7%
生命保険文化センターの調査によると、子供の医療保険の加入率は45.9%となっています。
種類 | 加入率 |
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全生保 | 45.9% |
民保 | 20.4% |
かんぽ生命 | 4.0% |
簡保 | 0.7% |
JA | 2.2% |
県民共済・生協等 | 18.7% |
※全生保は民保(かんぽ生命を除く)、かんぽ生命、簡保、JA、県民共済・生協等を含む参照:2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査|生命保険文化センター
不要といわれることもある子供の保険ですが、上記の表からわかる通り半数近くが保険に加入しています。
子供が医療保険に加入する必要があるかどうかは状況によって異なるため、これらのデータも踏まえながら、一度保険に加入すべきか検討してみてください。
子供の医療保険加入にメリットがあるケース
ここまで子供に医療保険が必要ないといわれる理由についてご紹介してきましたが、必ずしも子供に保険が必要ないとも言い切れません。
たとえば、以下の2つのケースには子どもの医療保険が役立ちます。
子供の医療保険加入にメリットがある2つのケース
それぞれのケースについて、わかりやすく解説していきます。
1. 公的保険制度が適用されない費用がかかる場合
子供を医療保険に加入させる目的のひとつとして、公的医療保険が適用されない費用があることが挙げられます。
公的医療保険は、診療にかかる子供の実質医療費の負担が軽減されるのみで、付き添いにかかる交通費などの諸費用は保障の対象外で全額自己負担となります。
たとえば、子供の病気などで入院する場合、付き添いの親が寝泊まりできる個室に入院するようなケースでは簡易ベッド台や食費が発生しますが、これらは全額自己負担で賄わなければなりません。
さらに、子供の入院に付き添うことで働ける時間が少なくなって収入が減少する可能性も十分に考えられます。
それ以外にも、開発中の試験的な治療(先進治療など)や試験的な薬(治験)を使用する場合にも、公的保険制度による負担軽減は適用されません。
がんなどの医療費が高額になりやすい病気にかかってしまった場合には、自己負担額がかなり大きくなります。
そんなときに、子供が保険に加入していることで経済的な負担の緩和に役立つ場合があります。
2. 持病などで保険に加入しづらくなる場合
医療保険などの保険商品を契約する場合、過去の病歴や持病の有無などを確認されることが一般的です。
また、社会人になってから受けた健康診断で異常が見つかり、保険に加入できなくなってしまう可能性もゼロではありません。
成長するにつれて持病が発覚することもあるので、子供が小さいうちに保険に加入しておくことで将来的に保険契約ができなくなるような事態を防ぐことができます。
持病や既往症の方が加入しやすい生命保険も販売されていますが、それでも選べる保険商品の種類が少なくなります。
子供のうちから最適な保障内容の医療保険に加入しておくことで将来的に役立つケースもあるでしょう。
子供に保険をプレゼントできる?
医療保険を子供にプレゼントできると聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
医療保険のことを指し、保障期間を終身にして短期間で保険料を払い済みにすることで、子供に対して保険料負担のない保障だけをプレゼントすることができます。
まず、契約者を親に、保険の対象となる被保険者を子供とし、保険期間を終身にします。
そして、保険料の払込期間を10年や20年などの短期にして払込済にすれば、子供に対して保険料の負担がない保険を一生涯かけてあげることができます。
毎月の保険料は年齢に応じて高くなっていくのが一般的なので、子供が幼いうちに加入しておくことでトータルの保険料を安く抑えられるというメリットもあります。


子供の保険種類
子供の保険種類は以下の通りです。
子供の保険種類 | おすすめな人 |
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医療保険 | 幅広い病気やケガに備えたい人 |
学資保険の医療特約 | 子供の教育資金も積み立てたい人 |
傷害保険・共済保険 | 最低限の保障で保険料を抑えたい人 |
個人賠償責任保険 | 他人にケガをさせたり、他人のモノを壊したりした際の賠償責任に備えたい人 |
それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解したうえで、ご自身の加入目的にあった保険をお選びください。
医療保険
子供の病気やケガのリスクに備える方法として、早いうちから医療保険に加入するのがおすすめです。
契約時の年齢を参照して毎月の保険料が決められるので、子供の年齢が若いうちから加入しておくことで安い保険料で一生涯の保障を兼ね備えられます。
子供が加入する医療保険の選び方
医療保険への加入を検討する方は、以下の4つのポイントに着目して加入する保険を選ぶといいでしょう。
選び方のポイント | |
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保障期間 |
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保障金額 |
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保険料 |
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加入タイミング |
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学資保険の医療特約
子供の教育資金を貯蓄することを目的にした「学資保険」に医療特約を付加することもできます。
毎月払い込む保険料を子供の教育資金として積み立てることができ、親に万が一のことがあった場合にはそれ以降の保険料の払い込みが免除されながらも、契約時に定めた保険金やお祝い金は継続して受け取れ、教育費に充てることが出来ます。
学資保険に医療特約を付加することで、入院給付金と手術給付金といった基本的な保障が受けられるようになります。
ただし、学資保険は保険期間が定められているタイプの保険なので、保険期間の満了に伴い医療特約による保障も終了してしまう点にはご注意ください。
傷害保険・共済保険
損害保険会社が販売する傷害保険や共済保険に加入するのも有効的な方法です。
傷害保険は、子供がケガで通院・入院をする場合を補償する保険で、特約として個人賠償責任特約を付けることもできます。
共済保険は一般的な保険商品よりも保険料が割安なケースが多いので、保障に加えて費用面でもメリットがあることが特徴です。
個人賠償責任保険
個人賠償責任保険は、子供が日常生活で起こしてしまう思わぬ事故に備えるための保険です。
例えば、子供が自転車で他人にケガをさせたり、遊んでいて他人の物を壊してしまった場合など、法律上の賠償責任が発生したときに補償を受けられます。
特に子供の行動は予測しにくく、損害賠償額が高額になるケースもあるため、備えておくと安心です。
一般的に火災保険や自動車保険の特約として加入できます。


子供の医療保険に関してよくある質問 Q&A
子供の医療保険に関してよくある質問
Q. 子供に医療保険はいらないですか?
A. ほとんどの自治体では子供向けに医療費助成制度があり、医療保険に入らなくてもだいたいの医療費はカバーできます。
ただ、子供が大人になった後の医療費負担を軽減する目的で、子供のうちから医療保険に入る意味はあります。
子供の保険加入にメリットがあるケースを参考にしてみてください。
Q. 子供は何歳から医療保険に加入できますか?
A. 保険商品にもよりますが、被保険者として0歳から医療保険に加入する事ができます。
6歳や18歳にならないと入れない商品もありますが、医療保険の加入に年齢の制約はほとんどありません。
Q. 子供が加入できる保険の種類には何がありますか?
A. 子供が加入できる保険の種類には、以下のようなものがあります。
子供が加入できる保険の種類
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終身医療保険
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傷害保険
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共済保険
-
学資保険の医療特約
- 親の生命保険の特約
それぞれの特徴を理解したうえで、適した保険を選びましょう。
こちらの章も合わせてご覧ください。
Q. 子供の医療保険の負担割合はどれくらいですか?
A. 子供の医療保険は8割(小学校入学度以降は7割)を協会けんぽが補助してくれるため、負担割合は2割(小学校入学度以降は3割)となっています。
※参照:子どもの医療費は“タダ”ではありません|全国健康保険協会
また市区町村が補助を行っている場合、自己負担を抑えることが可能です。
加入すべきか迷われている方は、こちらの章もご覧ください。
Q. 子供の保険は何のためにつけるのですか?
A. 子供に対し保険を備える目的は、教育費の準備やケガや病気のリスクに備えるためです。
子供が幼稚園から大学まで全て国公立に通ったとしても、教育費は約832万円必要になります。
また、子供がケガや病気になった際、差額ベッド代や入院時の食事代などは健康保険が適用されないため、医療保険に加入することでそれらの費用に備えることができます。
Q. 子供の医療保険の平均額はいくらですか?
A. 生命保険文化センターの調査によると、医療保険のみのデータはありませんが、子供を被保険者もしくは加入者とする生命保険の年間払込保険料は平均12.4万円です。
参照:2024(令和6)年度生命保険に関する全国実態調査|生命保険文化センター
月額にすると、約1万円を支払っている計算です。
全体の平均は年間17.3万円なので、保険料の負担は比較的少ないと言えます。
まとめ
子供にとって医療保険が必要かどうかは、親の考え方によって変わってきます。
子供の健康状況を踏まえて、万が一の病気やケガのリスクに備えたい場合には医療保険に加入しておくことで安心できるでしょう。
また、年齢の若いうちから保障期間が終身の医療保険に加入しておくことで、保険料を安く抑えながらも一生涯の保障が受けられます。
さらに保険料を払い済みにしてしまえば、子供が保険料を負担することなく利用できる終身保障の医療保険をプレゼントできます。
毎月の家計状況を鑑みながら、保障と保険料のバランスが取れる医療保険を選ぶようにしましょう。