貯蓄型保険は、死亡や所定の高度障害状態に備えながら、将来に向けて貯蓄もできる保険です。
掛け捨て型保険と比較して貯蓄型保険の保険料は割高ですが、満期を迎えたときや解約したときにまとまったお金を受け取れる点が特徴的です。
生命保険文化センターが公表している「令和元年度:生活保障に関する調査」によると、掛け捨て型志向の人は27.1%であるのに対し、貯蓄型志向の人は63.8%で、一般的には貯蓄型保険への加入意向の人が6割以上を占めています。
「貯蓄型保険は不要である」という声もありますが、掛け捨て型保険にはない魅力もあるため、ご自身にとっての必要性を考えることが大切です。
この記事ではこんな疑問にお答えします!
そもそも、保険の種類について大まかに知りたい方は、こちらの記事にて一覧で紹介しています。
貯蓄型保険の概要
貯蓄型保険とは「保険」と「貯蓄」の両方の性質を持つ保険商品のことです。
例えば、貯蓄型保険の一種である終身保険は、亡くなった際や所定の高度障害状態になった際に保険金が支払われます。また、解約をするとまとまった解約返戻金を受け取れます。
保険料の払込期間終了後は、解約返戻金の金額が払い込んだ保険料を上回ることがあるため、万が一に備えながら資産形成もできるのが終身保険の特徴です。
貯蓄型保険と掛け捨て型保険の違い
貯蓄型保険と掛け捨て型保険の主な違いは、以下の通りです。
掛け捨て型保険 | 貯蓄型保険 | |
---|---|---|
保険料 | 割安 | 割高 |
満期保険金 | なし | あり |
解約返戻金 | なし※1 | あり |
メリット |
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デメリット |
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主な保険の種類 |
定期保険、収入保障保険、医療保険、がん保険 など | 終身保険、養老保険、学資保険、個人年金保険 など |
主な加入目的 |
毎月の保険料を安く抑えつつ、万が一の場合の備えとして | 万が一に備えながら、将来に向けての貯蓄や資産形成の手段として |
掛け捨て型保険は「一定期間のみ手厚い保障を準備したい人」に向いています。毎月の保険料が割安である反面、保険期間が満了しても満期保険金を受け取れません。また、途中で解約をしたときの解約返戻金は、ないかあってもごくわずかです。
貯蓄型保険は、万が一に備えながら将来に向けての積立ができます。「解約返戻金が払い込んだ保険料の総額を上回るタイミングで解約して、老後の生活費や介護費用に充てる」といった活用の仕方も可能です。
一方で、掛け捨て型と比べて毎月の保険料は割高です。また、保険期間が長期であるものも多く、細かな保障の見直しはしにくいといえます。
掛け捨て型保険と貯蓄型保険には、一長一短があるため保険に加入する目的も考えたうえで選ぶことが大切です。
貯蓄型保険が向いている人・向いていない人
貯蓄型保険に向いている人、向いていない人の特徴は以下のとおりです。
貯蓄型保険が向いている人
- 支払った保険料が掛け捨てになるのが嫌な人
- 将来に向けた貯蓄を残しておきたい人
- 預貯金を崩しがちで貯蓄を作るのが苦手な人
貯蓄型保険が向いていない人
- 毎月の保険料を抑えつつ大きな保障を用意したい人
- 貯蓄する目的がなく万が一の事態に備えたい人
- ライフプランに合わせて保険の見直しをしたい人
毎月の貯蓄がしっかりできていて、急な出費や将来の生活資金にも問題がない人は、あえて貯蓄型保険に加入するメリットは少ないのかもしれません。また、一度契約すると長期で保険料を払い込んでいきますので、都度の見直しにも不向きと言えます。
一方で、お金をついつい使ってしまう方や毎月コツコツと貯蓄するのが苦手な方、将来に向けた資産形成をしながら万が一にも備えたい方などにとっては、貯蓄型保険はおすすめです。
貯蓄型保険の主な種類
貯蓄型保険にはさまざまな種類があります。ここでは、代表的な4種類の貯蓄型保険を紹介します。
貯蓄型保険の代表的な例
終身保険
終身保険は、被保険者(保険の対象になる人)が死亡または高度障害状態になった際に保険金を受け取れる保険です。終身保険に満期はなく、解約をしない限りは保障が一生涯続きます。
掛け捨て型保険と比較すると保険料は割高ですが、更新はなく金額は一生涯変わりません。解約時は解約返戻金を受け取ることができ、受取額が払込保険料総額を上回ることもあるため、貯蓄性の高い保険といえます。
終身保険は、生命保険の全体で見ても、医療保険と並んで加入する人が多い保険です。生命保険文化センターの調査によると、直近で加入契約を結んだ保険の種類について尋ねたところ、全体の27.8%が終身保険と回答しました。
※生命保険文化センター 令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」
保険料を少しでも安く抑えたい場合は「低解約返戻金型終身保険」という選択肢もあります。低解約返戻金型終身保険は、保険料払込期間中の解約返戻金が低く抑えられている代わりに、保険料が割安です。
保険料の払込期間が終了したあとに解約すると、払い込んだ保険料の総額を上回る解約返戻金を受け取れることがあるため、通常の終身保険と同様に資産形成にも活用できます。
ただし、保険料の払込期間中に解約すると大きく元本割れすることがあります。低解約返戻金型終身保険に加入するときは、途中で解約することなく最後まで払いきれる金額の保険料であるか確認することが大切です。
養老保険
養老保険とは、被保険者が死亡した場合は死亡保険金を、何事もなく満期を迎えられた場合は満期保険金を受け取ることができる貯蓄型保険です。生存・死亡どちらの場合でも保険金を受け取れる、生死混合保険の一種です。
老後資金の準備として、満期まで終身保険と同じように死亡保障を受けつつお金を積み立てることができ、解約時には解約返戻金も受け取れます。
バブル期以前の養老保険はが高いこともあり多くの方に選ばれる商品でした。しかし、2022年7月現在は満期保険金が払込保険料の総額を下回るものもあるため、商品内容をよく確認したうえで加入することが大切です。
保険料の払い込みや保険金の受取をドルやユーロなどの外貨で行う「外貨建ての養老保険」であれば、高い返戻率が期待できるものもあります。ただし円と外貨の交換レート(為替)によっては損失が発生するリスクもあるため、商品の特徴をよく理解した上で加入を検討しましょう。
学資保険
学資保険は、将来の子供の教育資金に備えられる貯蓄型保険です。18歳・20歳など契約時に定めた年齢に子供が達すると、保険金受け取れます。また、入学・進学の時期に合わせてお祝い金が支払われる学資保険もあります。
学資保険の特徴は、契約者である人が万一のときの保障がある点です。
学資保険に保険料払込免除特約を付帯することで、契約者である親が死亡または高度障害状態となった場合、以降の保険料の払い込みが免除されます。払い込みが免除されたあとも、子供が所定の年齢に達すると、保険金や祝金などを受け取れる仕組みです。
一方で、学資保険の返戻率は年々下がっているため、他の準備方法とも比較して検討しましょう。
個人年金保険
個人年金保険は、保険料を支払うことで、国民年金・厚生年金を始めとする公的年金とは別に老後の年金を準備できる貯蓄型保険です。
生命保険文化センターの調査によると、個人年金保険の世帯加入率は24.8%です。よって世帯の約2割が個人年金保険に加入して老後資金を準備しています。
※出典:生命保険文化センター 令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」
国から支給される年金だけでは老後生活が不安である人は、個人年金保険に加入して老後資金を準備してみてはいかがでしょうか。
貯蓄型保険のメリット・デメリット
生命保険としての保障を受けつつ、将来に向けたお金の積み立てもできる貯蓄型保険ですが、メリットもあればデメリットもあります。貯蓄型保険が自身に合っているか、下記から確認しましょう。
貯蓄型保険のメリット
メリット1. 保険料が掛け捨てにならない
加入するタイミングや契約期間にもよりますが、何らかの理由で保険を解約する場合に、貯蓄型保険であればまとまった金額の解約返戻金を受け取れるのが一般的です。
また、養老保険や学資保険などは満期を迎えたときに満期保険支払われます。
保険金や給付金を請求することなく解約をしたり、健康なまま満期を迎えたりしたときに、保険料が基本的に掛け捨てにならない点が貯蓄型保険の良い点です。
メリット2. 資金の準備に活用できる
貯蓄型保険は、支払った保険料以上の満期保険金や解約返戻金を受け取れることがあります。受け取った満期保険金や解約返戻金は、教育資金や老後資金などさまざまな用途に活用が可能です。
生命保険文化センターの調査によると、退職後の生活資金形成のための経済的準備手段について尋ねたところ、51.3%の方が「生命保険(個人年金保険を含む)」と回答しました。
※出典:生命保険文化センター「ライフマネジメントに関する高齢者の意識調査」 ※アンケートは複数回答
貯蓄型保険の保険料は、毎月の口座振り込みやクレジットカード払いなどで支払っていきます。積み立てられたお金を引き出すには解約の手続きが必要であり、場合によっては元本割れして損をすることもあります。
「毎月一定金額を貯蓄するのが苦手」「預貯金口座にあるお金をついつい使ってしまう」という人にとって、貯蓄型保険は相性がよいといえます。
メリット3. 契約者貸付制度や自動振替貸付を利用できる
契約者貸付制度は、解約返戻金の一定の範囲の金額を保険会社から借り入れられる制度です。
カードローンなどと比較しても簡単な手続きで借入ができるだけでなく、金利も割安です。ただし、借り入れをしたあとは利息を含め返済が必要であり、商品によっては利用できない場合もある点に注意が必要です。
また、貯蓄型保険は保険料が引き落としされないときに自動振替貸付が適用されることがあります。これは、解約返戻金の範囲内で保険会社が保険料を立て替えることで保険を継続できる仕組みです。
ただし、契約者貸付と合わせた元利金が解約返戻金を上回ると保険料の立て替えができなくなり、契約が失効して保障が受けられなくなります。失効した契約を元に戻すためには、所定の期日までに復活の手続きをする必要があります。


デメリット1. 解約のタイミングによっては元本割れになる場合がある
貯蓄型保険は、契約してからある程度の期間が経過しないと、解約返戻金がそれまでに支払ってきた保険料を上回りません。
貯蓄型保険に加入して、すぐに解約してしまうと解約返戻金はあってもごくわずかであるか、まったくない場合もあり、元本割れを起こすことになる点に注意しましょう。

- 鬼塚 眞子
- 保険ジャーナリスト/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
デメリット2. 保険料は掛け捨て型と比較して割高
貯蓄型保険の保険料には、保障のための費用の他、契約者にお金を払い戻すための積立金も含まれているため、掛け捨て型保険と比較すると保険料は割高になります。
掛け捨て型保険の保険料が割安なのは、これらの積立金(解約返戻金や満期保険金)がないためです。
デメリット3. 固定金利タイプの商品はインフレリスクがある
モノの値段が上がり続けることをインフレーション(インフレ)といいます。加入したときに保険金の受取額が決まる貯蓄型保険に加入すると、モノの価値が上昇することで保険金の実質的な価値が目減りするインフレリスクを負うことになります。
例えば、加入時に決めた保険金額が100万円であるとしましょう。100万円の保険金には、100円の飲み物を1万個買える価値があります。しかし、将来的にインフレが起きて飲み物の価値が200円に上がると、100万円の保険金では5,000個しか買えなくなってしまいます。
物の価値が上がると、相対的にお金の価値はが下がります。そのため、将来的に受け取れる金額が決まっている貯蓄型保険は、インフレが起きた場合に資産価値が目減りしてしまう可能性があります。
インフレリスクの軽減する方法には、変額保険への加入があります。変額保険は、払い込んだ保険料の一部を株式や債券などで運用する保険です。株式や債券などの運用の実績に応じて、保険金や解約返戻金が増減します。
インフレによって物価が上昇しても、運用先の株式や債券の価格が上昇していれば、保険金や解約返戻金の価値が目減りせずに済みます。そのため、変額保険はインフレリスクに強いといわれています。

- 鬼塚 眞子
- 保険ジャーナリスト/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
一方、外貨建保険は、日本円で資産をお預かりして、保険会社が主に米ドル、豪ドル、NZドルといった外国貨幣に変換して資産を運用し、支払い時も保険会社が外貨から日本円に変換して保険金や解約返戻金を受け取ります(希望者には外貨で受け取れるケースもある)。つまり、日本円から外貨、外貨から日本円に変換する際に「為替手数料」が発生することに注意が必要です。いずれにせよ、ファイナンシャルプランナーに相談して、的確な情報とアドバイスを貰いたいですね。


貯蓄型保険に関してよくある質問 Q&A
貯蓄型保険に関してよくある質問
Q. 貯蓄型保険のおすすめランキングは?
ランキングはあくまでも目安ですので、下記のリンクでそれぞれの貯蓄型保険についての特徴と選び方をご参考ください。
貯蓄型保険の代表的な例
Q. 貯蓄型保険に入るなら普通に貯金するのと変わらないのでは?
単なる貯蓄の場合だと、亡くなってしまったり、高度障害になってしまうと貯蓄を継続するのが難しい場合があります。
貯蓄型保険は、単なる貯蓄だけでなく、万が一の場合に貯蓄することができなくなった際に保障してくれるメリットがあります。
さらに、毎月決まった金額(保険料)を支払うので、自分でお金を管理するのが苦手な方の中には貯蓄型保険が向いている場合もあります。
貯蓄型保険は加入の時点で必要な保険金と将来の解約払戻金がわかる商品もあるので、将来に向けた資産形成もやりやすくなります。
まとめ
代表的な貯蓄型保険は以下の4種類で、それぞれ特徴が異なります。自身の目的に合わせた保険を選択できるようにしておくことが大切です。
貯蓄型保険の代表的な例
リスクに備えつつ、将来に向けた貯蓄もできるのが貯蓄型保険のメリットの1つです。その反面、掛け捨て型と比較すると保険料は割高であるなどのデメリットもあります。

- 鬼塚 眞子
- 保険ジャーナリスト/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
貯蓄型保険のメリット
貯蓄型保険に向いている人・向いていない人の特徴と合わせて確認し、自身にとって貯蓄型保険が合っているかどうか判断するようにしましょう。
ご自身にとって貯蓄型保険に合っているかどうか判断できない場合は、ファイナンシャルプランナーへの無料相談を検討してみてはいかがでしょうか。あなたのライフステージや家族構成に合った最適な保険、資産運用のプランを提案してくれます。