生命保険には、大きく分けて「掛け捨て型保険」と「貯蓄型保険」の2種類があり、それぞれ保険料や満期・解約返戻金の有無が異なります。
それぞれ一長一短の特徴があり、一概にどちらが良いとは言い切れず、自分自身が「どういった事態に備えるために生命保険を検討しているのか」を明確にし、目的に合った保険を選ぶことが大切です。
生命保険文化センターの令和元年度「生活保障に関する調査」によると、6割以上の人が貯蓄型保険に加入したいと回答しており、一般的には貯蓄型志向の人が多いことが分かります。
掛け捨て型保険と貯蓄型保険を比較しながら、それぞれの保険に向いている人の特徴を分かりやすくお伝えします。
掛け捨て型保険と貯蓄型保険の違い
生命保険における掛け捨て型と貯蓄型の違いをひと目で分かるようにまとめました。
掛け捨て型保険 | 貯蓄型保険 | |
---|---|---|
保険料 | 貯蓄型と比べて保険料が割安 | 掛け捨て型と比べて保険料が割高 |
満期保険金 | ✕ | ◯ |
解約返戻金 | ✕ (金額は少ないが戻ってくる場合もある) |
◯ |
メリット |
|
|
デメリット |
|
|
主な保険の種類 |
定期保険、収入保障保険、医療保険、がん保険 など | 終身保険、養老保険、学資保険、個人年金保険 など |
加入する主な目的 |
毎月の保険料を安く抑えつつ、万が一の場合の備えとして | 将来に向けての貯蓄や資産形成の手段として |
掛け捨て型は「期間限定で手厚い保障を受けたい人」に向いているタイプの生命保険で、毎月の保険料が圧倒的に安いことが特徴です。
しかし、期日まで生存した場合に返ってくる「満期保険金」や途中解約をしたときの「解約返戻金」がないので、おかしな言い方ですが病気やケガがないと損をすることになってしまいます。
一方の貯蓄型は「将来に向けての貯蓄として積立ができる」ので、資産形成の手段として運用したい人に向いています。
ただし、掛け捨て型と比べて毎月の保険料が高めに設定されており、そもそも選べる保険の種類が少ないという注意点もあります。
どちらも優れている部分があれば物足りないと感じる部分もあるので、生命保険の内容をしっかりと確認してから申し込んでください。
次の項目から掛け捨て型保険と貯蓄型保険の違いについて補足説明をしていきます。
「ざっくりと違いがわかればOK!」という人は、次の「掛け捨て型保険と貯蓄型保険の選び方」だけを参考にしてください。
掛け捨て型保険と貯蓄型保険の主な種類
掛け捨て型保険と貯蓄型保険の保険種類を、以下の表にまとめました。
保険の種類 | イメージ図 | 保障内容 | |
---|---|---|---|
掛け捨て型保険 | 定期保険 | ![]() |
契約時に保障される期間を定めて、契約終了時に返戻金がないもの |
収入保障保険 | ![]() |
万が一の際の死亡保険金を、分割で受け取れる保険 | |
医療保険 | - | 病気やケガの際に、医療費の一部が負担される保険 | |
がん保険 | - | 癌と診断された場合や、癌により治療を受けた場合に給付金が支払われる保険 | |
貯蓄型保険 | 終身保険 | ![]() |
生命保険のうち契約期間の終了がないもの |
養老保険 | ![]() |
一定の保障期間を定めて、満期時に死亡保険金と同額の満期保険金を受け取れる保険 | |
学資保険 | ![]() |
子どもの学資金(教育資金)を準備できる保険 | |
個人年金保険 | ![]() |
払い込み期間に保険料を納め、契約時に定めた年齢に達した時点から一定期間もしくは一生涯、年金が受け取れる保険 |
一概に「掛け捨て型保険」や「貯蓄型保険」といっても様々な保険の種類があるので、自分の思っていた保障とは違ったということにならないように慎重に検討しましょう。
例えば、「定期保険」と「収入保障保険」でも死亡または高度障害時に保険金がもらえる掛け捨て型の生命保険には変わりありませんが、「定期保険」は一括で保険金を受け取れるのに対して、「収入保障保険」は分割で保険金を受け取るといったような違いがあります。
また、貯蓄型の「終身保険」と「養老保険」を例に取っても、「終身保険」は死亡または高度障害時のみに保険金を受け取れるのに対して、「養老保険」は死亡または高度障害時に加えて、満期時にも保険金が受け取れるといった違いがあります。
掛け捨て型や貯蓄型という枠に囚われずに、今の自分のニーズに合った保険商品を選ぶことをおすすめします。
保険料
生命保険は、「保険料」として毎月の支払いが発生します。
保険料は生命保険の種類によって異なりますが、一般的には貯蓄型保険よりも掛け捨て型保険の方が保険料は安いことが多いです。
保険料の観点で見る掛け捨て型と貯蓄型の違い
- 掛け捨て型:貯蓄型と比べて保険料が割安
- 貯蓄型:掛け捨て型よりも圧倒的に保険料が高い
保障内容に関しては、掛け捨て型と貯蓄型の違いによる差はほとんどありません。
ただし、掛け捨て型は「保険料が安い代わりに病気やケガがなければ戻ってこないお金」、貯蓄型は「保険料が高い代わりに将来を見据えて貯めておけるお金」といった見方もできます。
そのため「保険料が高いから良い・安いから悪い」と金額で決めるのではなく、自分の目的に合わせて生命保険を選ぶことをおすすめします。
満期保険金
- 「満期保険金」とは?
- 被保険者が保険期間が終了するまで生存し、満期を迎えた際に受け取れる保険金
満期保険金の観点で見る掛け捨て型と貯蓄型の違い
- 掛け捨て型:満期保険金が受け取れない
- 貯蓄型:満期保険金が受け取れる
掛け捨て型の場合は満期保険金がないので、病気やケガがない場合は今まで支払っていた保険料は一切返ってこないことになります。
一方の貯蓄型の生命保険(養老保険や学資保険など)では、無事に満期を迎えることができれば満期保険金が支払われます。
ただし、上記で説明した通り、掛け捨て型保険よりも貯蓄型保険の方が保険料は割高になるので、現在の家計状況や将来の目的に合わせてご検討ください。
解約返戻金
- 「解約返戻金」とは?
- 保険契約者が自ら契約を解約、もしくは保険会社から契約を解除された場合に、保険契約者に対して払い戻されるお金のこと
解約返戻金の観点で見る掛け捨て型と貯蓄型の違い
- 掛け捨て型:基本的に解約返戻金は受け取れない(受け取れる場合でもごく少額であるケースが多い)
- 貯蓄型:基本的に解約返戻金を受け取れる
掛け捨て型では解約返戻金がないため、途中で解約したとしても今まで支払っていた保険料は一切返ってきません。
一部の生命保険では掛け捨て型でも解約返戻金があるケースもありますが、その場合でも返戻金がごく少額であることがほとんどです。
貯蓄型の場合はこれまで支払ってきた保険料に応じて解約返戻金が増えていくので、基本的に支払ってきた保険料が無駄になることはありません。
なお、解約返戻金は一時所得として扱われるので、所得税の対象となってしまう点は覚えておきましょう。
掛け捨て型保険と貯蓄型保険の選び方
掛け捨て型保険と貯蓄型保険のそれぞれの違いや特徴を知ったところで、「自分はどちらのタイプの生命保険に申し込むべきか」を考えていきましょう。
たとえば、筆者が考える生命保険を選ぶ際のポイントは以下のとおりです。
掛け捨て型と貯蓄型を選ぶ際のポイント
- 死亡リスクなど、貯蓄で賄うのが難しい経済的リスクに備えたい → 掛け捨て型保険
- 将来のライフイベント(介護費用や子供の入学・受験費用など)の資金準備に備えたい → 貯蓄型保険
当然ながら、生命保険に求める内容は人によって大きく異なります。
自分に最適な生命保険を選ぶためには、自身の家庭環境や目的に応じて「自分に合った保険はどちらだろう?」と考えることが何よりも大切です。
掛け捨て型と貯蓄型を組み合わせた保険もある
生命保険の中には、掛け捨て型と貯蓄型を組み合わせた以下のような保険も存在します。
保険の種類 | イメージ図 | 保障内容 |
---|---|---|
定期付終身保険 | ![]() |
終身保険で一生涯の保障を受けつつ、定期部分に該当する項目の金銭リスクがカバーできる |
アカウント型保険 | ![]() |
アカウント(口座)に積立をしつつ定期保険のような手厚い保障が受けられる |
定期付終身保険とは、主契約となる終身保険の上に定期保険を上乗せしたような保険です。
子供の進学の時など、厚い保障が欲しい時期は定期保険で手厚くでき、子供が就職をして保障があまり必要なくなったら定期保険を解約して終身保険だけ継続する、といったように保障を見直すことができます。
アカウント型保険とは、アカウントと呼ばれる積立部分を主契約にして、主契約部分を一定の範囲内で減らしたり増やしたりできる保険です。
最大の特徴として、積立金を自由に出し入れできることが挙げられます。
家計が厳しい時は保険料を少なめにする、お金に余裕がある時は多めに保険料を払うなど利便性の高い保険商品です。
また、将来的に終身保険に移行できるといった点も特徴の一つとして挙げられます。
両者とも内容をしっかりと把握していれば非常に心強い生命保険なので、自分のライフプランや目的に合っているという人は検討してみるのも選択肢のひとつです。
保険だけでなく、他の金融商品との組み合わせも検討する
将来に向けての貯蓄を考えている人は、保険だけではなく他の金融商品との組み合わせを検討することも大切です。
なぜなら、貯蓄型保険は短期解約をすると元本割れが起こり、今まで支払っていた保険料の合計よりも少ない金額しか返ってこない場合があるためです。
要するに「解約できるようになるまで一定期間の縛りがある」ということなので、突然まとまった金額が必要になったときに対応しきれない可能性があります。
そういった事態を考慮すると、将来に向けての貯蓄を保険だけに頼るのは危険だといえるでしょう。
複数の金融商品を適切に組み合わせることでそういった事態を回避できるので、ぜひ検討してみてください。
掛け捨て型保険が向いている人
この記事で解説してきた内容を包括して、掛け捨て型保険が向いている人の特徴を挙げると以下の通りになります。
掛け捨て型保険が向いている人
掛け捨て型保険が向いている人の特徴について、補足説明をしていきます。
保険料を安く抑えながら万が一に備えたい人
掛け捨て型保険は、貯蓄型保険と比べて圧倒的に保険料が安いことが特徴です。
保障内容はほとんど変わらないので、掛け捨て型保険は毎月の支出を安く抑えつつ、万が一の事態に備えておきたい人に向いています。
ただし、20代の若いうちや配偶者がいない人の場合は、医療保険に加入して病気やケガで働けなくなったときのリスクに備えておいたほうが良いでしょう。
貯蓄ではなく万が一の自体に備えておきたい人
貯蓄型保険の最大のメリットは、将来に向けての貯蓄ができる点です。
しかし、貯蓄の目的がない人にとっては毎月の保険料が大きな負担となるので、割安な保険料で加入できる掛け捨て型がおすすめです。
また、掛け捨て型の保障期間は一定期間である場合が多く、保障内容の見直しが容易です。
そのため、結婚や出産などで生活環境が変わったときを想定して入っておく保険として選ぶのも良いでしょう。
貯蓄型保険が向いている人
貯蓄型保険が向いている人の特徴は以下のとおりです。
貯蓄型保険が向いている人
貯蓄型保険が向いている人の特徴について、補足説明をしていきます。
支払った保険料が返ってこないのが嫌な人
掛け捨て型保険は、万が一の事態が起きないと支払った保険料が返ってくることはありません。
一方の貯蓄型保険は、満期を無事に迎えたときの「満期保険金」や途中解約した場合でも安心の「解約返戻金」によって、支払った保険料が返ってきます。
せっかく支払った保険料が返ってこないのが嫌だという人は、貯蓄型保険への加入をおすすめします。
コツコツ貯蓄するのが苦手な人
貯蓄型保険は上記の通り、満期保険金や解約返戻金によって支払った保険料が返ってきます。
場合によっては支払った保険料の合計額以上の保険金が返ってくることもあります。
つまり、見方を変えれば、毎月支払う保険料が自動的に将来へ向けての貯蓄になっていることになります。
そのため、将来は不安だけどコツコツと貯蓄していくのが苦手な人は、掛け捨て型よりも貯蓄型保険を選んだほうが良いといえるでしょう。
まとめ
以上「生命保険は掛け捨て型?貯蓄型?損しない生命保険の選び方」をお送りしました。
生命保険には大きく分けて「掛け捨て型保険」と「貯蓄型保険」の2種類があり、それぞれ以下のような違いがあります。
掛け捨て型保険 | 貯蓄型保険 | |
---|---|---|
保険料 | 貯蓄型と比べて保険料が割安 | 掛け捨て型と比べて保険料が割高 |
満期保険金 | ✕ | ◯ |
解約返戻金 | ✕ (金額は少ないが戻ってくる場合もある) |
◯ |
メリット |
|
|
デメリット |
|
|
主な保険の種類 |
定期保険、収入保障保険、医療保険、がん保険 など | 終身保険、介護保険、養老保険、学資保険、個人年金保険 など |
加入する主な目的 |
毎月の保険料を安く抑えつつ、万が一の場合の備えとして | 将来に向けての貯蓄や資産形成の手段として |
毎月の保険料を安く抑えつつ、万が一の場合の備えとして 将来に向けての貯蓄や資産形成の手段として、上記の一覧表を参考に、自分の目的に合った生命保険を選ぶようにしましょう。
なお、筆者が考える「掛け捨て型保険と貯蓄型保険それぞれが向いている人の特徴」は以下のとおりです。
掛け捨て型保険が向いている人
- 保険料を安く抑えながら万が一に備えたい人
- 貯蓄ではなく万が一の自体に備えておきたい人
貯蓄型保険が向いている人
- 支払った保険料が返ってこないのが嫌な人
- コツコツ貯蓄するのが苦手な人
上記に該当する人は、ぜひこの機会に生命保険への加入を検討されてみてはいかがでしょうか。