「保障の見直しがしたい」「保険料が高い」などの理由で生命保険の解約を考えている人もいるでしょう。
生命保険の解約はいつでもできます。しかし、よく検討せずに解約すると、「保険に入り直すことができない」「戻ってきた解約返戻金が払込保険料を大きく下回っている」などの事態に見舞われる可能性が可能性があるため、慎重に判断することが大切です。
この記事では、生命保険解約のデメリットや解約以外の方法で保険料の支払い負担を軽くする対処法を解説します。
特に、現在加入している生命保険(死亡保険)が以下に当てはまる保険商品の場合、解約せずに現状維持のままの方が良いケースもあります。
解約しないほうがいい生命保険
- 若い頃から続けている生命保険
- 予定利率が高い時期に加入した生命保険
- 損益分岐前の貯蓄型保険
もし、月々の保険料の支払いが厳しいという理由で保険の解約を考えている場合は、「解約以外の方法で保険料の支払い負担を軽くする対処法」を参考にしてください。
また、「今すぐに生命保険を解約したい!」という人は「解約手続きの方法、流れ」をご確認ください。

- 鬼塚 眞子
- 保険ジャーナリスト/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
なぜなら、医学の進歩によって、今や入院は短期化され、在宅治療にも力を入れるようになってきたからです。医療保険もがん保険も進化して、治療に呼応する商品も多種発売されています。「こんなはずじゃなかった」ということのないように、ご加入されている保障を見直ししたいもの。ただし、解約は必ずファイナンシャルプランナーに相談してからにしてくださいね。
生命保険を解約した際のデメリット
生命保険を解約するメリットは「月々の保険料の支払いがなくなる」「貯蓄型保険の場合は解約返戻金が受け取れる」などが挙げられます。
しかし、以下のようなデメリットもあることをあらかじめ理解しておく必要があります。
生命保険解約のデメリット
これらのデメリットを理解せずに生命保険を解約してしまうと、万が一のことがあった際の備えが全くない状態に陥ることもあります。
デメリット1. 万が一の際の保障がなくなる
そもそも生命保険は万が一のことに備えるための経済的リスクをカバーする金融商品です。主な加入目的は以下の通りです。
生命保険の主な加入目的
- 万が一の際に、遺された家族の生活費保障
- 子どもの教育資金、老後資金などの積み立て
- 病気やケガによる経済的リスクに備える
例えば、亡くなったときや所定の高度障害状態になったときに備えて生命保険に加入した場合、解約をすると備えがなくなってしまいます。
解約する際には、万が一のことがあったときに保険がなくても、他で加入している保険や貯蓄でカバーできるかどうかを、よく考えることが大切です。
デメリット2. 保険の空白期間が生じる可能性がある
生命保険を見直す場合、解約のタイミングをしっかり考慮する必要があります。
なぜなら、新規加入する生命保険の効力が発生する日(責任開始日)の前に、現在加入している保険の解約手続きが済んでしまうと、新旧どちらの保険にも加入できていない空白期間が生じてしまうからです。
申し込みが終わっただけでは生命保険の効力は発生せず、生命保険の責任開始日は、以下の3つが揃った日と決められています。
生命保険の責任開始日
- 申し込み
- 告知・審査
- 第一回保険料の払い込み
告知・診査は、保険会社から査定決定が判明するまでに数日〜1週間程度(場合によっては1週間以上)かかるため注意しましょう。
また、がん保険の場合は、契約後保障が受けられない「免責期間」という期間が90日や3ヶ月程度設けられています。
免責期間中にがんが発見された場合、申し込み、告知、1回目の保険料払い込みが済んでいたとしても保険効力は発生しません。
責任開始日や解約のタイミングがわからない人は、お金のプロであるファイナンシャルプランナー(FP)に相談することをおすすめします。


デメリット3. 新規の生命保険に加入できない可能性がある
生命保険を解約し、必要なタイミングで再度新しい生命保険に加入を考えている人もいるでしょう。
しかし、生命保険に加入するには、告知・診査が必要で、以下のケースに当てはまる場合は保険の新規加入ができない可能性があります。
新規の保険に加入できない可能性がある例
- 告知・診査によって病歴がある
- 健康診断で要精密検査等の指摘事項がある場合
- 高齢
以上のケースにあてはまる人は生命保険に入りづらく、保険会社から加入を断られる可能性もあります。
もし加入できたとしても、保険料が割増しになったり特定部位不担保になる場合もあります。
- 「特定部位不担保」とは?
- 特定部位の疾病による入院・手術においては保障されないこと(条件付きの契約になること)
現在の自分の年齢や健康状態で、新規の保険加入が可能かしっかり考えてから現在の生命保険の解約を進めましょう。

- 鬼塚 眞子
- 保険ジャーナリスト/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
担当者が初対面の男性で契約者が女性の場合、センシティブな健康上のことは言いづらいということもあります。保険会社によっては、こうしたことを想定して、後で保険会社の契約担当に直接連絡できるように文書をくれる会社もあります。どこの保険会社も契約者の方に円滑に保険金をお支払いできるように、告知義務違反に関しては厳しい姿勢を取っていることは覚えておいてくださいね。


デメリット4. 【貯蓄型保険の場合】解約返戻金が少ない、もしくはない可能性がある
貯蓄型保険に加入している場合、当初に設定した保険料を全払込期間支払った場合、支払った保険料以上の解約返戻金を受け取れるケースがあります。
一方、払込期間終了前に解約すると、支払った保険料よりも少ない解約返戻金しか受け取れない、もしくは解約返戻金がない場合があります。
解約する際には解約返戻金をいくら受け取れるか事前に確認してから、解約手続きを行いましょう。
解約返戻金に関しては、次の章でも詳しく解説していきます。


保険の解約をするタイミング
保険を解約するタイミングによって、得られる保障やお金が変わることがあるため、解約は慎重に判断しましょう。
次の保険の加入が決まったとき
保険を解約するひとつめのタイミングは、次に加入する保険の加入承認を得られたタイミングです。
生命保険の加入には診査があり、持病や病歴があると通らないこともあります。
今の保険を解約した後に入れる保険がなかったということにならないよう、次の加入先が確定してから今の保険を解約するのが安心です。
解約返戻金の元本割れ期間の終了後
解約返戻金のある保険では、一定期間が経過することで、支払った保険料の合計金額よりも解約返戻金の方が大きくなる可能性があります。
加入期間と解約返戻金の金額については、生命保険証券の目安額表を見ることで判断できるので、お手元の資料を探してみましょう。
解約返戻金が元本を上回らない生命保険の場合は、戻ってくる金額がもっとも多いタイミングで解約をするのも方法のひとつです。
解約返戻金とは
貯蓄型保険を解約する場合、それまでに支払ってきた保険料が「解約返戻金」という形で返ってきます。
解約返戻金の有無という観点から生命保険を分類すると、以下の3つに分類できます。
生命保険の分類
- 従来型
- 低解約返戻金型
- 無解約返戻金型
それぞれの特徴を、以下の表にまとめました。
タイプ | 従来型 | 低解約返戻金型 | 無解約返戻金型 |
---|---|---|---|
イメージ図 | ![]() |
![]() |
![]() |
貯蓄性の有無 | 有(貯蓄型保険) | 無(掛け捨て保険) | |
説明 |
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|
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該当する生命保険 | 終身保険 | 低解約返戻金型終身保険 |
|
貯蓄機能がある生命保険は、保険料の払込期間を終了すると解約返戻率が100%を超えることがあります。しかし、保険料の払い込み期間の終了前に解約すると、支払った保険料を下回る解約返戻金しか返ってきません。
保険料払込終了後に、解約返戻率が100%以上になる可能性が高いのは「低解約返戻金型」の終身保険です。
一方、解約返戻金はないものの、月々の保険料を抑えたいのであれば、保険料が割安な掛け捨て型保険を選ぶと良いでしょう。
解約返戻金に関する注意点
解約返戻金を受け取る目的で生命保険を解約する人は、以下の注意点を事前に把握しておきましょう。
解約返戻金の注意点
- 早期解約だと解約返戻金が少ない、もしくはない可能性がある
- 50万円を超える解約返戻金には税金がかかる
- 解約手続き後、解約返戻金を受け取れるまでに時間差がある
50万円を超える解約返戻金には税金がかかる
解約返戻金が支払った保険料よりも多い場合は、課税対象となります。
解約返戻金の所得区分は一時所得扱いで、一時所得には50万円の特別控除額があります。
「解約返戻金で受け取った額が50万円以上の場合は課税される」と覚えておくといいでしょう。解約返戻金の課税対象額の計算式は以下のとおりです。
解約返戻金の課税対象額の計算式
- (解約返戻金 - 払込保険料総額 - 50万円)× 1/2 = 課税対象金額
他にも一時所得がある場合は、合算した金額に課税されるので注意しましょう。
なお、契約者、被保険者、受取人の組み合わせにより、税金の種類は異なりますのであらかじめ注意しましょう。

- 鬼塚 眞子
- 保険ジャーナリスト/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
「相続税」はお亡くなりになった場合にかかる税金です。一方、「所得税」は”所得”、つまり働いて得たお金ですから、生存されている場合にかかる税金です。お亡くなりになられた場合は、働くことはできませんからね。
また、「贈与税」も生存中にかかる税金となります。所得税と贈与税の違いとしては、「所得税」は自分にかかる税金、「贈与税」は自分以外の人が受け取り人になる場合にかかる税金です。表をよく見ると、贈与税は契約者も被保険者も受取人もすべて違う=全員バラバラですよね?保険にかかる贈与税の覚え方は、「バラバラだぞう(贈)」と覚えると簡単です。
解約手続き後、解約返戻金を受け取れるまでに時間差がある
生命保険は解約の手続きをしてから、実際に解約されるまでに1~2週間程度かかることがあります。
解約返戻金が受け取れるのは、解約の書類を提出して生命保険会社による処理が終わったあとです。解約返戻金を使うタイミングが決まっている人は、時間に余裕をもって手続きをしましょう。


生命保険の解約手続きの方法、流れ
生命保険の解約手続きは以下の流れとなります。
生命保険の解約手続きの流れ
- 保険会社の窓口、コールセンター、もしくは営業担当者に解約の意思表示をする
- 解約請求書が手元に届き次第、必要事項を記入の上、保険証券やマイナンバーなど必要情報と共に保険会社に送付する
- 解約書類が生命保険会社に届いて処理され、書類上の不備がない時点で解約となる
- 解約返戻金などが支払われる(期間は保険会社ごとに設定されている)
生命保険を解約するには営業担当者や窓口・コールセンターに解約の意思を伝えます。保険の解約日は解約書類が保険会社に届いて処理された日になるのが一般的です。
解約手続きを始めてから完了するまでに1~2週間ほどはかかると思っておきましょう。
解約請求できるのは原則契約者本人のみ
解約請求をできるのは原則契約者本人のみです。
しかし、契約者本人が手続きをするのが難しい場合には代理人を立てて保険の解約を行います。
保険の解約に代理人を立てる場合は、以下の条件を満たす必要があります。
保険解約代理人をたてる場合の条件
- 契約者の正当な代理人
- 委任状がある
- 解約返戻金がある場合、支払い口座が契約者本人の口座である
基本的に代理人は家族ですが、必要があれば血縁関係がない人でもなることができます。


【月々の保険料を支払えない場合】解約以外の対処法
保険料が高くて払えないので、仕方なく生命保険を解約したという人は多いかと思われます。
「生命保険の解約・失効の理由」を調査したデータを見ると、「掛け金を支払う余裕がない」「掛け金が高い」という理由から、約半数の人が生命保険を解約、または失効しています。
出典:令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」| 生命保険文化センター
しかし、現在保険料の支払いが厳しく生命保険の解約を考えている人でも、以下のように解約せずに済む方法があります。
保険料が払えない場合の解約以外の対処法
まずは色々な方法を検討し、保障を持ったまま家計に見合った保険契約を継続できないか検討すると良いでしょう。
対処法1. 保険金額を減額する
生命保険は保険金額が高ければ高いほど、毎月の保険料も高くなるのが基本です。
そのため、受け取る保険金額を減額することで、毎月の保険料を安く抑えることができます。
保険金を減額することは契約上、減額部分を一部解約という扱いになり、告知・診査が不要です。
定期保険・終身保険どちらでも利用が可能です。


対処法2. 払済保険に変更する
終身保険など貯蓄型の保険であれば、払済保険に変更することができます。
- 「払済保険」とは?
- 払済保険とは、保険料の払込みを中止して変更時の解約払戻金を一時払の保険料とし、保険期間を変えずに少ない保障額に変更できる制度
払済保険にした場合は、保険期間はそのままで保険金が減りますが、万が一への備えとして保障を継続して持っておくことができます。
払済保険のメリット・デメリットは以下のとおりです。
払済保険のメリット
- 保険料の支払いが不要になる
- 保障期間を変えずに保障を継続できる
- 払済後も解約返戻金が増えていく
払済保険のデメリット
- 特約が解約になる
- 保障額が減少する
月々の保険料の支払いは止めたいけど、今すぐ解約返戻金を受け取らなくてもよいのであれば、保障を継続でき解約返戻金を少しずつ増やしていける払済保険への変更がおすすめです。
一方、払済保険の注意点は特約が解約になります。払済保険に変更したあとも、特約で得られていた保障内容を引き続き持ちたいのであれば、新たに保険加入するなどの対応が必要でしょう。
もし払済保険の保険金だけでは不安が残る場合、不足する金額分を保険料が比較的安価な掛け捨て型保険に加入して補う方法もあります。
保険料が割安な生命保険に乗り換えることで、保険料負担を軽減しながら、必要な保障に備えることができます。


対処法3. 延長(定期)保険に変更する
延長(定期)保険は、解約返戻金を元手に同じ保険金額の定期保険(保障期間が短いもの)に変更することをいいます。
保険料を支払えないが、保険金額を変更したくない場合は延長保険に変更すると良いでしょう。
ただし延長保険に変更したあとに解約をしても解約返戻金を受け取れません。
また、特約が解約になる点にも注意が必要です。
対処法4. 契約者貸付を利用する
一時的に資金が必要な時は解約返戻金の受取ではなく、契約者貸付を活用することでも資金調達ができます。
- 「契約者貸付」とは?
- 契約者貸付とは、その時点での解約返戻金の所定範囲内で保険会社からお金を借りられる制度
契約者貸付を利用すれば保険を持ったまま一時的に資金調達が可能ですが、あくまで貸付であるので、借りた金額は返済が必要です。
また、借りた金額には利息がかかります。
契約者貸付を受けたまま死亡、もしくは保険を解約すると、保険金や解約返戻金から貸付金額分が減額されて給付されます。
契約者貸付で借りた元金に利息がつき、解約返戻金の金額を超えると保険失効となりますので、利用の際は十分に注意しましょう。


生命保険を解約したことがある人の口コミ


生命保険の解約に関するよくある質問 Q&A
生命保険の解約についてよくある質問にお答えしていきます。
生命保険の解約に関するよくある質問 Q&A
Q. 保険を途中解約をするとペナルティや違約金は発生しますか?
A. 保険を途中解約してもペナルティや違約金は発生しません。
しかし、「生命保険解約のデメリット」でも解説した通り、払込期間が終了するよりも前に解約をすると解約返戻金がなかったり、少なくなって損をする可能性はあります。
解約する際は解約返戻金の金額などを事前に確認してから解約するようにしましょう。
Q. どのような理由で保険を解約する人が多いですか?
A. 「平成30年度/生命保険に関する全国実態調査」によると、「他の生命保険に切り替えたから」「保険料を支払う余裕がなくなったから」「まとまったお金が必要となったから」といった理由が7割以上を占めているという結果になっています。
しかし、安易に保険を解約してしまうと健康状態や年齢によっては新規の保険に加入できないことがあります。
また、早期解約だと解約返戻金が少ないケースもあるため、解約する際は保険会社の担当者や、お金のプロであるファイナンシャルプランナー(FP)に相談することをおすすめします。


Q. 保険の解約って言いにくいのですが、どうすればいいですか?
保険料を払うのが難しくなったなど、個人的な理由であれば、気にすることはありません。
解約書類をネットで取り寄せることもできる保険会社もありますので一度確認してみてください。
Q. 保険の解約返戻金を受け取った後、確定申告の必要はありますか?
解約払戻金は「一時所得」として所得税の課税対象となります。
会社員や公務員など、年末調整の対象となる給与所得者は、課税の対象となる金額が20万円を超える場合、確定申告をしなければなりません。
課税の対象となる金額は以下となります。
確定申告の課税の対象となる金額
- 「課税の対象となる金額」=「一時所得の金額*」×1/2
※「一時所得の金額」=「総収入金額」- 「収入を得るために支出した金額」 - 50万円
まとめ
保険を解約することのデメリットは、以下の通りです。
生命保険解約のデメリット
それ以外に大切なポイントは、以下の通りです。
この記事のポイント
- 解約の手続き方法は、保険会社の窓口・コールセンター、営業担当者に連絡する
- 解約から解約返戻金を受けとるまでには時間差がある
- 解約以外にも「保険金額を減額する」「払済保険に変更する」などで月々の支払い負担を抑えることが可能
生命保険は万が一のことがあった際に、自分と家族を守るための備えです。
解約すると保障がなくなり、自分や家族へのリスクが高くなることもしっかりと理解した上で検討する必要があります。
月々の保険料負担に問題があれば解約以外にも「減額する」「払済保険や延長(定期)保険に変更する」などさまざまな方法があります。
保険会社の担当者やファイナンシャルプランナー(FP)に相談した上で、保険を解約するべきか考えましょう。
また、保険の見直しのポイントについては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。