生命保険はいつでも解約できるので、「まとまったお金が必要になった」「保障が必要なくなった」「新しい保険に加入したい」など、さまざまな理由で解約を検討している方もいるでしょう。
この記事では生命保険を解約するデメリットや、解約手続きの流れなどを詳しく説明するので、参考にしてください。
生命保険を解約した際の4つのデメリット
- 鬼塚 眞子
- 保険ジャーナリスト/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
なぜなら、医学の進歩によって、今や入院は短期化され、在宅治療にも力を入れるようになってきたからです。医療保険もがん保険も進化して、治療に呼応する商品も多種発売されています。「こんなはずじゃなかった」ということのないように、ご加入されている保障を見直ししたいもの。ただし、解約は必ずファイナンシャルプランナーに相談してからにしてくださいね。
生命保険を解約した際の4つのデメリット
生命保険を解約すると、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
生命保険を解約した際の4つのデメリット
リスクの高い時期に大切な保障がなくなってしまったり、受け取れるお金が減ってしまったりする可能性があるため、解約するタイミングについては慎重に検討しましょう。
1. 元本割れを起こす可能性がある
貯蓄型保険は、解約するタイミングによって元本割れを起こす可能性があります。
- 「元本割れ」とは?
- 受け取る解約返戻金が、支払った保険料の総額を下回ること。
一般的な貯蓄型保険は、契約から時間が経つにつれて徐々に解約返戻金が増えていく仕組みになっています。
- 「解約返戻金」とは?
- 保険契約を解約した際に、払い戻されるお金。
そのため10年や20年などの当初設定した保険料払込期間を過ぎてから解約をすると、支払った保険料以上の解約返戻金を受け取れるケースも珍しくありません。
反対に、保険料の支払い期間中に解約をすると、解約返戻金が少なくなったりほとんどもらえなかったりする場合があります。
解約をする際は、その時点で解約返戻金がいくら受け取れるのかを確認してから手続きをしましょう。
2. 新規の生命保険に加入できない可能性がある
生命保険を解約した後に、必要になったタイミングで再び加入しようと考えている方もいるでしょう。
しかし、健康状態によっては加入を断られるケースもあります。
生命保険に再加入する際は、保険会社に対してその時点での健康状態を告知しなければなりません。
生活習慣病で服薬をしている場合や直近で入院や手術をしている場合など、年齢を重ねて健康状態が悪化していると、保険会社の審査を通過できない可能性が高くなります。
加入できたとしても、保険料の割増や特定部位(疾病)不担保などの条件がつく場合もあります。
- 「特定部位(疾病)不担保」とは?
- 特定の疾病(部位)を一定期間保障から外し、給付の対象外とすること。
また、加入時の年齢が高くなると毎月支払う保険料も高くなるケースが一般的です。
健康状態に不安がある場合や高齢の場合など、生命保険に新しく加入するのが難しい方は、生命保険の解約については慎重に検討したほうがよいでしょう。
3. 万が一の際の保障がなくなる
生命保険を解約すると、その時点で保障がなくなります。
保険を解約した直後に万が一のことがあったとしても、一切保障されません。
保険は万が一のことに備えるものなので、必要性を実感する機会は多くありませんが、いざ保障がなくなるとさまざまなリスクに対して自分で対処する必要が出てきます。
万が一のことが起こっても、他の保険や貯蓄などでカバーできるかを考えた上で解約をしましょう。
4. 保険の空白期間ができる可能性がある
今加入している保険を解約して新しい保険に加入する場合、解約のタイミングによっては保障の空白期間が生じる可能性があります。
生命保険は一般的に以下3つの手続きのうち、「告知・診査日」「第一回目の保険料の払込日」の遅い日から保障がスタートする仕組みになっています。
生命保険の責任開始日
- 申し込み
- 告知・診査日
- 第一回目の保険料の払込日
上記の手続きが終わる前に元々入っていた保険を解約してしまうと、元の保険と新しい保険のどちらからも給付を受けられない「保障の空白期間」が生じてしまうリスクがあるのです。
契約が成立して保険証券が届くまでは、既に加入している保険を解約しないように注意しましょう。
なお、がん保険の場合は、3ヶ月または90日程度は保障が受けられない「免責期間」があります。
免責期間中にがんと診断された場合、保険料をすでに支払っていたとしても給付金は支払われません。
そのため、保険料を重複して支払うことにはなりますが、免責期間が終わるまでは元の保険を解約するのは避けたほうが無難です。
- 鬼塚 眞子
- 保険ジャーナリスト/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
担当者が初対面の男性で契約者が女性の場合、センシティブな健康上のことは言いづらいということもあります。保険会社によっては、こうしたことを想定して、後で保険会社の契約担当に直接連絡できるように文書をくれる会社もあります。どこの保険会社も契約者の方に円滑に保険金をお支払いできるように、告知義務違反に関しては厳しい姿勢を取っていることは覚えておいてくださいね。
【月々の保険料を支払えない場合】解約以外の4つの対処法
保険料の負担を抑える目的で解約を検討している場合は、以下の方法も検討してみましょう。
解約以外で保険料の負担を抑える方法
1. 保険金額を減額する
保険を解約する前に、必要以上に大きな保障に加入していないか確認してみるのも一つの手です。
受け取る保険金額を減らすことにより、保険料の負担を抑えられる可能性があります。
例えば、保険金額1,000万円の死亡保障を500万円に減らす、日額10,000円の医療保険を日額5,000円に減らすといった方法があります。
保険金額の減額は「一部解約」という扱いになり、手続きをする際に告知や診査は不要です。
2. 延長保険に変更する
延長(定期)保険とは、保険料の払い込みを中止し、そのときの解約返戻金をもとにして保険金額が同じ保険へ切り替えることです。
例えば、死亡保険金額1,000万円で保険期間30年の定期保険を延長保険に変更した場合、保険金額は1,000万円で変わらないものの、10年や20年のように保険期間は短くなります。
そのため、子育て中や定年を迎えるまでの間など、万が一のことがあった場合の経済的なリスクが大きい時期に保障が無くなってしまう可能性があります。
保険期間が短くなっても問題がないか確認した上で変更手続きをしましょう。
なお、延長保険に変更すると特約は消滅します。
さらに延長保険を解約しても解約返戻金は受け取れないため、注意しましょう。
延長保険について詳しくは以下の関連記事をご覧ください。
3. 払済保険に変更する
払済保険とは、保険料の払い込みを中止してその時点での解約返戻金をもとに、保険期間をそのままに保障金額の少ない保険に変更する方法です。
保険期間はそのままで保障を継続できるうえ、払済保険への変更後も解約返戻金は増え続けます。
例えば、保険金額1,000万円の終身保険に加入している場合、払済保険に変更すると保険金額は300万円程度に減りますが一生涯の保障を継続できます。
保険料を支払うのは難しいが、保障もある程度残しておきたい方は検討してみることをおすすめします。
ただし、払済保険に変更すると特約は消滅します。
また契約直後など、解約返戻金額が少ない場合は払済保険へ変更できないこともあるため注意しましょう。
払済保険について詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧ください。
4. 契約者貸付を利用する
契約者貸付制度とは、解約返戻金の一定範囲内で保険会社からお金を借りられる制度です。
毎月の保険料の負担を減らせるわけではありませんが、一時的に資金が必要になった場合は、保険を解約しなくてもまとまったお金を用意できます。
契約者貸付制度を利用している間も保障は継続するため、万が一のことがあった場合も安心です。
ただし、あくまでも借金なので最終的には返済をしなければなりません。
借りたお金には保険会社所定の利息がつきます。
予定利率が高い保険は利息も高くなりやすいため、注意が必要です。
利息が膨れ上がり、元金と利息の合計が解約返戻金を超えると契約は失効してしまうので、計画的に利用しましょう。
契約者貸付制度について詳しくは以下の関連記事をご覧ください。
生命保険の解約手続きの方法、流れ
生命保険の解約手続きをする際は、契約者本人が保険会社に連絡して書面で手続きをする必要があります。
生命保険を解約する際の一般的な流れは以下の通りです。
生命保険の解約手続きの流れ
- 保険会社のコールセンターや担当者に解約したい旨を連絡する
- 解約書類を受け取る
- 解約書類に記入し、保険証券や本人確認書類とともに返送する
- 解約書類に不備がなければ解約が成立する
- 保険会社から解約通知が届き、解約返戻金が指定口座に振り込まれる
解約してから手続きが完了するまでには1〜2週間かかるのが一般的です。
解約が成立するタイミングによっては、解約を申し出た月だけではなく、その翌月以降も保険料の支払いが必要になることもあるので、不備が出ないよう正確に手続きをしましょう。
生命保険を解約したことがある人の口コミ
生命保険の解約に関するよくある質問 Q&A
生命保険の解約についてよくある質問にお答えしていきます。
生命保険の解約に関するよくある質問 Q&A
Q. なぜ生命保険の解約はもったいないと言われるのですか?
A. 生命保険の解約がもったいないと言われているのは、以下の理由があります。
- 元本割れを起こす可能性がある
- 新規の生命保険に加入できない可能性がある
- 万が一の際の保障がなくなる
- 保険の空白期間ができる可能性がある
特に契約してから短期間で解約をすると、受け取る解約返戻金がそれまでに支払った保険料の総額を大きく下回る可能性があります。
また、一度保険を解約すると同じ保険に加入できない可能性があることも理由の一つです。
解約した保険を元に戻すことはできないため、過去に販売していた予定利率の高い「お宝保険」や割安な保険などは入れなくなってしまう場合があります。
Q. 生命保険を途中解約すると、ペナルティや違約金は発生しますか?
A. 生命保険を途中解約したからといって、ペナルティや違約金が発生することはありません。
ただし、解約時期によっては解約返戻金がほとんど受け取れないこともあります。
Q. 生命保険の解約返戻金を受け取った後、確定申告の必要はありますか?
A. 受け取る解約返戻金の額によっては、確定申告が必要です。
生命保険の解約返戻金は、契約者と解約返戻金の受取人が同一であれば所得税、違う場合は贈与税の対象になります。
※他に一時所得(営利目的ではない所得)がある場合は、それらと合算して計算を行います
解約返戻金を一時金で受け取った場合は、「{(解約返戻金額―支払った保険料)−50万円}÷2」が一時所得として課税対象となり、この金額が20万円を超えた場合に確定申告が必要です。
※贈与税率や控除額については「国税庁の定める贈与税の速算表」を参照
贈与税には110万円の基礎控除があるため、解約返戻金額が110万円を超えた場合は確定申告が必要です。
解約返戻金の税金について詳しくは、以下の関連記事をご覧ください。
まとめ
生命保険を解約するデメリットや注意点 |
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生命保険の解約にはさまざまなデメリットが伴うため、慎重に検討しましょう。
自分だけで決められない場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみるのも一つの手です。
また、保険の見直しのポイントについては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。