変額保険とは
変額保険とは、契約者が払い込んだ保険料をもとに保険会社が資産運用を行い、資産運用実績に応じて、死亡保険金・高度障害保険金や、解約返戻金、満期保険金が増減する保険です。
運用実績がプラスの場合、払い込んだ保険料以上の保険金(死亡保険金、満期保険金、解約返戻金)を受け取れる可能性がありますが、運用実績がマイナスの場合、解約返戻金や満期保険金においては元本割れを起こすリスクがあります。
ただし、死亡保険金・高度障害保険金は、運用実績により払い込んだ保険料以上の金額になることもあります。
運用が低調な場合についても、現在存在する多くの商品では、死亡保険金については最低保証があり、契約時に決めた保険金額は確保できます。
これらの特徴から、変額保険は「保険としての保障にも備えつつ、資産運用を行いたい」人に向いている保険商品といえます。

- ナビナビ保険監修
- 関西学院大学教授
- 前田 祐治
変額保険の種類
変額保険は、「終身型」「有期型」「年金型」の3種類に分類されます。それぞれの違いは以下の通りです。
終身型 | 有期型 | 年金型 | |
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保険期間 | 一生涯(終身) | 一定期間 | 一定期間 |
保険金(※)の受け取り方 | ー |
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保険料払い込み期間 |
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おすすめの用途 | 相続税対策 |
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※死亡保険金・高度障害保険金以外の保険金
どの種類にも共通することは、資産運用実績が低調な場合でも多くの商品では、死亡保険金・高度障害保険金は最低保証額を下回らずに受け取り可能な点、最低保証がない解約返戻金・満期保険金は、払い込んだ保険料総額を下回る(元本割れ)リスクがある点です。
変額保険種類の選び方
ここでは、変額保険の選び方を解説していきます。
終身型が適しているケース
相続対策も兼ねて、変額保険の加入を考えている人であれば、終身型がおすすめです。
終身型は満期がなく、万が一のことがあった際に遺された家族にお金を遺すことができます。死亡保険金は最低保証がされており、運用実績が好調な場合はそれ以上の保険金を遺せる可能性もあります。
また生命保険の死亡保険金は「500万円×法定相続人」まで、相続税の課税対象に含まれません。 そのため現金のまま相続するよりも、生命保険に加入して保険金という形で家族に財産を残したほうが、相続税の負担を軽減できる可能性があります。
国税庁の調査によると、2020年(令和2年)に亡くなった人(被相続人)の数に占める相続税の課税件数の割合は、8.8%でした。亡くなった人が100人いたとすれば、およそ8~9人が相続税の課税をされたことになります。※出典:国税庁 「令和2年分相続税の申告事績の概要」
相続税の負担を減らし、財産を残された家族へできるだけ引き継ぎたい方は、変額保険の終身型に加入するのも方法です。
有期型・年金型が適しているケース
一方、自分の老後資金としてや教育費としてなど、受け取りたいタイミングが明確にある場合は、有期型、年金型を選択するといいでしょう。
有期型、年金型は、老後資産の準備に活用されるケースも多く、例えば65歳満期に設定することで、老後資金が国の年金では準備しきれない場合に、それを補うことができます。
年金型は大半の保険商品が一時払いも可能となっており、退職金を活用して加入されることもあります。退職後の当面の生活は貯金などで割り当てることができるが、最低限の死亡保障を担保しながらも、10年20年後に必要となる生活費を資産運用したいと考えている人には向いていると言えるでしょう。
生命保険文化センターの調査によると、全国の60歳以降の男女に、退職後の生活資金形成のための経済的準備状況についてたずねたところ、51.3%が個人年金保険や終身保険などの生命保険に加入していると回答しました。※出典:ライフマネジメントに関する高齢者の意識調査(老後資産形成の私的準備状況)| 生命保険文化文化センター
また、同機関の別の調査によると、民間保険会社の個人年金保険に加入している人のうち7.6%が変額個人年金保険に加入していると回答しています。
※出典:令和3年度 生命保険に関する全国実態調査 | 生命保険文化センター
変額保険が向いている人
変額保険が向いている人
- 資産運用に馴染みのない人
- 万が一の場合の死亡保障は確保したい人
- 長期で保険加入が可能な人
変額保険では、投資信託などと比較し、保険契約関係費や資産運用関係費など諸々のコストが余分に発生するため運用効率はよくありません。
このことから純粋な資産運用が目的で、運用効率をよくしたいなら、変額保険よりも投資信託のような投資を選ぶほうがいいでしょう。
しかし、変額保険と投資商品には「保障の有無」の違いがあります。投資信託などの純粋な投資手段では保障機能は付帯していませんが、変額保険では運用実績がマイナスになっても、契約時に決めた死亡保険金額・高度障害保険金額を下回らないため、万が一の際の保障は確保しながら、資産運用を行える点が大きなメリットです。
また、投資信託などで自分自身でファンドを選択することが難しいと感じる資産運用初心者であれば、保険会社が推奨するファンドから商品を選択できることはメリットと言えるでしょう。選べるファンドの一例としては以下の通りです。
- 安定成長バランス型
- 積極運用バランス型
- 日本株式型
- 外国株式型
- 世界株式型
- 新興国株式型
- 世界債権型 など
ただし早期に途中解約すると、払い込んだ保険料を下回る解約返戻金しか受け取れず、元本割れのリスクが高まるため、長期で保険加入が可能な人が変額保険に向いています。



- ナビナビ保険監修
- 関西学院大学教授
- 前田 祐治
変額保険のメリット・デメリット
変額保険のメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
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メリット1. 運用実績に関わらず死亡保険金は最低保証される
変額保険は、資産運用の実績によって受け取れる保険金が増減します。
解約返戻金・満期保険金は最低保証はありませんが、死亡保険額・高度障害保険金は運用実績によって金額変動はあるものの、保険契約時に決めた最低保証額を下回ることはありません。
そのため、運用実績により大きな利益を得られる可能性があるのと同時に、万が一の場合に備える「保険」としての機能が期待できます。
メリット2. 生命保険料控除を利用できる
変額保険は保険商品のため、支払った年間保険料に対して生命保険料控除を利用できます。
今から変額保険に加入する場合は「新制度」の生命保険料控除が適用され、住民税で最大2.8万円、所得税で最大4万円が控除されます。
控除額は、年間払込保険料の金額に応じて異なり、新制度の生命保険料控除額の計算方法と上限額は、以下の通りです。
「住民税」の控除額 | 「所得税」の控除額 | ||||
---|---|---|---|---|---|
年間払込保険料 | 控除額の計算式 | 保険種別ごとの上限額 | 年間の払込保険料 | 控除額の計算式 | 保険種別ごとの上限額 |
12,000円以下 | 払込保険料全額 | 28,000円 |
20,000円以下 | 払込保険料全額 | 40,000円 |
12,000円超〜32,000円以下 | 払込保険料×1/2+6,000円 | 20,000円超〜40,000円以下 | 払込保険料×1/2+10,000円 | ||
32,000円超〜56,000円以下 | 払込保険料×1/4+14,000円 | 40,000円超〜80,000円以下 | 払込保険料×1/4+20,000円 | ||
56,000円超 | 一律28,000円 | 80,000円超 | 一律40,000円 |
生命保険料控除について詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。
メリット3. インフレ対策になる
インフレとデフレの違い | 一般勘定と特別勘定の違い |
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終身保険、養老保険などの「定額保険商品」でも、契約者からの保険料を使って保険会社が資産運用を行い、保険金が支払われる仕組みは同様です。
定額保険商品の場合、保険会社の責任のもと一般勘定にて資産運用が行われるため、あらかじめ予定利率(運用利回り)が確定しています。
予定利率が確定していることにより、契約時に決めた保険金や解約返戻金の受け取り金額が減ることはありませんが、インフレで物価が上昇した場合でも受け取れる保険金の額は変わらず、相対的に保険金の価値が目減りするデメリットがあります。
一方、変額保険は、契約者自身の責任のもと特別勘定で資産運用が行われ、予定利率(運用利回り)の設定がなく変動します。
もし、インフレが起きた場合、一般的に景気が良くなり株式相場が上昇します。そうすると運用実績も上昇する可能性が高く、受け取れる保険金や解約返戻金も増えるため、インフレによる資産価値の目減りを緩和することができます。
ただし、資産運用に失敗した場合は、将来的に受け取れる保険金や解約返戻金が払い込んだ保険料を下回る可能性がある点には注意しましょう。


デメリット1. 元本割れのリスクがある
運用実績がマイナスのタイミングで解約や満期を迎えると、受け取れる解約返戻金や満期保険金が払い込んだ保険料の総額が下回る「元本割れ」を起こすリスクがあります。
また、変額保険は投資性が高く、長期的に運用を行わなければ大きな利益を得ることができないため、早期解約をすると元本割れを起こすリスクが高まります。
死亡保険金・高度障害保険金とは異なり、満期保険金や解約返戻金には最低保証金額がないことも注意しましょう。
デメリット2. 投資信託に比べるとコストは割高
変額保険は、払い込んだ保険料の中には保険会社が運用費用や管理費用が含まれているため、純粋な投資商品(株式や投資信託など)と比較して割高な場合が多いです。
保障に当たる死亡保険金は別の保険商品で担保できている場合や、純粋な資産運用のみを目的とするのであれば、変額保険より投資信託を活用した方が運用効率は高いといえます。
デメリット3.デフレには弱い
変額保険は、デフレ期には株式相場が下落して運用成績が悪くなった場合、保険金が目減りする可能性があります。
また、デフレ期には保険金が目減りすることから、定額保険よりも保険料が割高になり、損をすることもあります。
変額保険は良くも悪くも景気状況に大きく影響を受けることを覚えておきましょう。

- ナビナビ保険監修
- 関西学院大学教授
- 前田 祐治


変額保険に関する口コミ


まとめ
変額保険は、保険会社の運用実績に応じて将来的に受け取る保険金や解約返戻金が増減する保険です。
払い込まれた保険料を保険会社が特別勘定にて資産運用を行い、その運用実績に応じた保険金を契約者が受け取れることから、一般的な定額保険商品と比較し、投資性が高いことが特徴です。
変額保険には大きく分けて「終身型」「有期型」「年金型」の3種類が存在し、全体を通して以下のようなメリットとデメリットがあります。
変額保険のデメリット
資産運用がうまくいかなかった場合でも死亡保険金・高度障害保険金の最低保証がされており、運用実績によっては将来的に受け取れる保険金が増える可能性があることが魅力の一つです。
その一方で、短期での解約や運用実績がマイナスのタイミングで解約や満期を迎えると元本割れを起こすリスクがあり、単純に資産運用だけが目的の場合は運用効率が悪いといった注意点もあります。
これらのメリットとデメリットをしっかりと理解した上で、変額保険の加入をご検討ください。