三大疾病保険とは
三大疾病保険とは、日本人の死因上位を占める「がん」「急性心筋梗塞」「脳血管疾患」に備えるための保険です。
主な加入目的は以下です。
三大疾病保険の加入目的
- 三大疾病にかかった際の長期化する入院にかかる費用に備える
- 入院中の収入減に備える
最近では、七大疾病や七大生活習慣病(がん・心疾患・脳血管疾患・糖尿病・高血圧性疾患・肝硬変・慢性腎不全)に適用範囲を広げ、特定疾病保険の名称で販売している保険会社もあります。
また、三大疾病にかからなかった場合でも、死亡・高度障害状態の際は保険金を受け取ることができます。(※掛け捨ての商品もあります)
三大疾病は日本人に密接にかかわる病気ですので、万が一の際の経済的リスクに備えられるよう、三大疾病保険の基本的な仕組みや、ご自身に合った選び方を紹介します。
三大疾病の罹患率と実際にかかる医療費
日本人の死亡原因ワースト3を占めている三大疾病ですが、まずはその罹患率と、入院した際に実際にかかる費用について解説します。
日本人の死因・死亡率の年次推移
参照元 : 厚生労働省「平成30年 人口動態統計月報年計(概数)の概況」
日本人の死因・死亡率では、「がん」「心疾患」「脳血管疾患」が比較的高くなっています。
上記のうち三大疾病とは、上記の3種類の疾病すべてではなく、上記のうち以下の病名のものを指します。
三大疾病に該当する病名
- がん
- 急性心筋梗塞
- 脳卒中(脳出血・くも膜下出血・脳梗塞)
年齢別に見る三大疾病の割合
参照元 : 厚生労働省「平成30年 我が国の人口動態」
年齢別に三大疾病の割合を見ると、年齢を重ねるにつれ死亡者数が増え、最終的に60代で三大疾病の割合がピークに達していることが分かります。
それ以降の年代はそれ以外の死因が増えているので、減少していると推測できます。
三大疾病にかかると、当然ながら入院期間は長期になりますし、退院後に同じように働けるかどうかも分かりません。
働き盛りの現役世代の方が三大疾病になってしまうと生活にも支障が出てしまうため、これらのリスクに備えられるよう三大疾病保険があります。
三大疾病の入院日数と通院数
三大疾病になった際に、かかる入院費用の内訳と、通院日数のデータです。
特に、脳血管疾患は入院期間が長期化する傾向があり、悪性新生物(がん)や心疾患と比較しても65歳以上では平均90日前後の入院日数になります。
疾病分類 | 0~14歳 | 15~34歳 | 35~64歳 | 65歳以上 | 75歳以上 |
---|---|---|---|---|---|
悪性新生物 | 21.6 | 15.9 | 13.0 | 18.6 | 21.8 |
心疾患※ | 11.8 | 10.0 | 9.0 | 22.2 | 28.8 |
脳血管疾患 | 12.3 | 25.6 | 45.6 | 86.7 | 98.9 |
参照:厚生労働省/平成29年 患者調査の概況※ 高血圧性のものを除く |
疾病分類 | 外来(通院) | 入院 |
---|---|---|
悪性新生物 | 126.1 | 183.6 |
心疾患※ | 64.0 | 134.2 |
脳血管疾患 | 85.9 | 146.0 |
参照:厚生労働省の/平成29年 患者調査の概況※高血圧性のものを除く |
入院と外来患者数の比較についても、三大疾病のみのデータはないものの、それぞれの病気で退院した後も相当数の方が通院治療されていることが分かります。
三大疾病でかかる医療費
医療費は病気の症状や入院期間によって異なりますが、日本では高額療養費制度があるため、1ヵ月の自己負担額の上限額は年齢や所得に応じて定められています。
以下は、69歳以下の場合の試算の例です。
区分 | 所得の区分 | 自己負担額の上限額(月単位) | ||
---|---|---|---|---|
年4回目未満 | 多数回該当 (年4回目以降) | |||
ア | 健保 | 標報83万円以上 | 252,600円 + (総医療費 - 842,000円) × 1% | 140,100円 |
国保 | 旧ただし書き所得901万円超 | |||
イ | 健保 | 標報53〜79万円 | 167,400円 + (総医療費 - 558,000円) × 1% | 93,000円 |
国保 | 旧ただし書き所得600万円〜901万円 | |||
ウ | 健保 | 標報28万円〜50万円 | 80,100円 + (総医療費 - 267,000円)× 1% | 44,400円 |
国保 | 旧ただし書き所得210万円〜600万円 | |||
エ | 健保 | 標報26万円以下 | 57,600円 | 44,400円 |
国保 | 旧ただし書き所得210万円以下 | |||
オ | 低所得者(住民税非課税) | 35,400円 | 24,600円 |
※旧ただし書き所得とは、前年の総所得金額等から、住民税の基礎控除額(33万円)を引いた金額
上記の内容を総括すると、月収30万円の人が抗がん剤治療で月に100万円の治療費がかかった場合、通常であれば医療費は3割負担のため約30万円かかるところが、高額療養費制度があることで、月9万円弱の支払いで済みます。
月収30万円の人が、月に100万円の医療費がかかった場合の自己負担額の計算例
- 80,100円 + ( 1,000,000円 - 267,000円 )× 1% = 87,340円
上記だけを見ると、入院時には高額療養費制度を利用すれば問題ないという方もいらっしゃるかもしれませんが、下記に記載されている費用は高額療養費制度の対象外となり、自己負担になります。
高額療養費制度の適用外になる費用
- 入院中の食事代
- 差額ベッド代
- 先進医療にかかる費用
- 美容上の理由で受けた手術費用(自由診療費)
- 出産費用(帝王切開は対象となります)
- 病院への交通費
- ウィッグや介護パンツ
また、高額療養費制度は原則として、いったん自己負担額を全額支払う必要があり、後日、自己負担限度額を超えた金額が払い戻される仕組みです。
中でも金額が大きいのは、先進医療の技術料です。特にがん治療は、利用する確率が低かったとしても万が一がんになってしまった場合に高額な医療費がかかってしまう可能性が高いです。
先進医療費のみに備えるのであれば医療保険の先進医療特約という選択もありますが、日本人の50%以上の死因となっている三大疾病は他の費用も大きくかかるため、これらの病気に本気で備えたいという方は、三大疾病保険の検討をおすすめします。
三大疾病保険の注意点
三大疾病保険は、支払い条件を満たすと一時金が受け取れる保険で、死亡または高度障害状態になった場合にもそれぞれ保険金を受け取ることができます。
しかし、保険金の支払い条件は病気ごとに複雑になっているものが多く、厳しいものが多いので注意する必要があります。
以下、各病気の保険に加入する際の支払い条件に関する注意点を解説します。
がんの場合
がんの場合に気を付ける支払条件は以下の通りです。
がんの場合に気をつけるべき支払条件
- 責任開始期から90日以内に診断確定されたがんの場合は対象外になる
- 上皮内新生物や皮膚がんなどの一部のがんは保障対象外になる商品もある
がんには「上皮内新生物」と「悪性新生物」の2種類があり、三大疾病保険で給付金の対象になるのは、基本的に「悪性新生物」の場合が大半です。
また、責任開始期から90日以内にがんと発覚した場合は、保障の対象外で保険金も支払われないので気を付けてください。
急性心筋梗塞の場合
急性心筋梗塞になった場合に気を付けるべき支払い条件は、以下の通りです。
急性心筋梗塞の場合に気をつけるべき支払条件
-
急性心筋梗塞によってはじめて医師の診療を受けた日より60日以上、労働の制限を必要とする状態が継続したと医師によって診断されたとき
※労働の制限を必要とする状態:軽い家事などの軽労働や事務などの座業はできるが、それ以上の活動では制限を必要とする状態
注意したいのが急性心筋梗塞の平均入院日数です。「三大疾病の入院日数と通院数」でお伝えしたとおり、心疾患の全体の平均入院日数は20日前後です。
死亡率が高まる急性期を除けば、20日前後の入院で退院し、その後は仕事に復帰することも状態によっては可能です。
長期間仕事ができない状態にならなければ給付金は受け取れないため、保険会社の定める条件をよく確認した上で検討する必要があります。
脳卒中の場合
脳卒中になった場合に気を付けるべき支払い条件は、以下の通りです。
脳卒中の場合に気をつけるべき支払条件
- 脳卒中のうち「脳出血・くも膜下出血・脳梗塞」の発病で、はじめて医師の診療を受けた日から60日以上、所定の後遺症が継続したと医師によって診断されたとき
急性心筋梗塞と脳卒中で大きく異なるのは、脳卒中は平均入院日数が脳血管疾患全体で80日前後と長期である点です。
三大疾病保険が向いている人
上記までを総括し、三大疾病保険の検討をおすすめするのは以下の特徴がある人です。
三大疾病保険の検討をおすすめする人
掛け捨ての保険を好まない人
三大疾病保険は、掛け捨ての商品も一部ありますが基本的には貯蓄型の保険です。
他の生命保険と同様に、途中で解約した場合は解約返戻金を受け取ることができます。
三大疾病にかからなかった場合も返戻金が受け取れる他、死亡・高度障害状態になった際にもそれぞれ給付金があることから、掛け捨て型保険を好まない人に向いている商品と言えます。
その分、保険料が掛け捨て型保険に比べると若干高く設定されている点は注意しましょう。
実際に、三大疾病保険に加入している人が月額保険料をいくらに設定しているかナビナビ保険が独自でアンケート調査を行ったところ、以下の結果となりました。
三大疾病保険の月額保険料の相場
- 「20,000円以上30,000円未満」が最多の21.3%
- 次いで「10,000円以上15,000円未満」が18.1%
また、医療保険に加入している人にも同様の調査を行ったところ、以下の結果になりました。
医療保険の月額保険料の相場
- 「5,000円以上10,000円未満」が最多の23.3%
- 次いで「5,000円未満」が17.1%
- 3番目に多かったのが、「10,000円以上15,000円未満」が16.8%
アンケートの結果から、約6割の人が15,000円以内の月額保険料に抑えている結果となり、三大疾病保険の方が保険料が高くなる傾向になることが見て取れます。
終身の死亡保障を希望し、かつ三大疾病にかかった際の治療に備えたい人
三大疾病保険の最大の目的は、三大疾病にかかった際の経済的なリスクに備えることです。
終身保障だけが欲しいという場合は「終身保険」で備えることができますが、終身保険の保障範囲は基本的に死亡または高度障害状態のみです。
ですので、終身保険に加入しているだけでは三大疾病のリスクに備えられているとは言えません。
三大疾病保険は、上記にさらに三大疾病に対するリスクに備えるところまで範囲を拡大させることができます。
がん以外の疾病でも一時金の給付を受けたい人
がんだけに備えるのであればがん保険がおすすめですが、がん以外の疾病には当然ながら適用されません。
また、がん保険は基本的に掛け捨て型保険ですので、生存中にがんにならなかった場合でも、返戻金はありません。
がんを含む「三大疾病の罹患率と実際にかかる費用」は先述のとおりですので、がん以外の病気にも備えたいという方は、三大疾病保険の検討をおすすめします。
三大疾病保険に関するよくある質問
最後に、三大疾病保険を検討されている方からよくいただく質問をQ&A形式でご紹介します。
Q. 三大疾病保険とがん保険の違いは?
A. がん保険は基本的に「がん」のみが保障されるのに対し、三大疾病保険はがんの他、「脳卒中」や「急性心筋梗塞」もカバーしています。
しかし、実際にがんになったときの保障はがん保険の方が手厚いため、がん保険の検討も視野に入れておき、どちらを選べばよいか自分で判断できない場合はFPへ相談するようにして下さい。
Q. 医療保険は三大疾病保険だけ加入すればいい?
A. バランスが大切です。
三大疾病保険に加入すれば、日本人の死因の50%以上を占めるがん・急性心筋梗塞・脳卒中に備えることができて安心です。
ですが、基本的に保障はこの3種の病気に限定されてしまいます。
ですので、ご自身のライフステージや環境に合わせて、他の医療保険や収入保障保険も組み合わせつつ、三大疾病以外の病気や突発的なケガなどにも備えられるようにするの方が良いでしょう。
Q. 三大疾病保険以外に、三大疾病に備える方法はありますか?
A. 三大疾病保険以外に三大疾病に備える方法として代表的なものとそれぞれの特徴は以下の通りです。
主な特徴 | |
---|---|
医療保険の特約 |
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団体信用生命保険 |
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団体信用生命保険について、生命保険とのバランスをどのように考えたら良いかは以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
三大疾病保険の基本的な仕組みから、ご自身に合った保険の選び方まで分かりやすく解説しました。最後に振り返りをしていきましょう。
三大疾病保険は、日本人の死因上位を占める三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳血管疾患)に備えるための保険で、主な加入目的は下記です。
三大疾病保険の加入目的
- 三大疾病にかかった際の長期化する入院にかかる費用に備える
- 入院中の収入減に備える
三大疾病は日本人の死因の50%以上を占めます、詳しくは「三大疾病の罹患率と実際にかかる費用」を参照して下さい。
また、給付金の支払い条件には注意点があり、それぞれの病気ごとに異なりかつ複雑なため加入の前にしっかり保険会社の担当に確認するようにしましょう。
がんの場合に気をつけるべき支払条件
- 責任開始期から90日以内に診断確定されたがんの場合は対象外になる
- 上皮内新生物や皮膚がんなどの一部のがんは保障対象外になる商品もある
急性心筋梗塞の場合に気をつけるべき支払条件
-
急性心筋梗塞によってはじめて医師の診療を受けた日より60日以上、労働の制限を必要とする状態が継続したと医師によって診断されたとき
※労働の制限を必要とする状態:軽い家事などの軽労働や事務などの座業はできるが、それ以上の活動では制限を必要とする状態
脳卒中の場合に気をつけるべき支払条件
- 脳卒中のうち「脳出血・くも膜下出血・脳梗塞」の発病で、はじめて医師の診療を受けた日から60日以上、所定の後遺症が継続したと医師によって診断されたとき
これまで解説してきた内容を読んでいただき、それでもよく分からない……という方もいるかもしれません。そのような方は、ぜひファイナンシャルプランナーへの無料相談を検討してみて下さい。
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