保険の通院保障とは
通院保障とは、通院治療をする際に給付金が受け取れる保障のことです。
医療保険に通院保障を付けることで、病気やケガの治療をするために病院へ通院した際に「通院給付金」が支払われます。
給付金は「通院1日につき◯◯円」といった形で支給されます。支給額は医療保険の入院給付金日額のおよそ6割程度、金額にして3,000〜6,000円程度であることが一般的です。
保険の通院保障の必要性
通院保障が付けられる主な保険商品には、医療保険とがん保険があります。
同じ通院保障でも、医療保険とがん保険では保障内容や保障範囲、必要性が異なります。
それぞれにおける通院保障の必要性について解説します。


医療保険の通院保障
医療保険は、病気やケガの入院や手術に備えられる保険です。
医療保険の通院保障は、「退院後の通院」や「入院前の通院」でなければ給付金を受け取れないのが一般的です。
そのため、医療保険に通院保障を付けても「風邪を引いて2日通院した」といったケースでは給付金を受け取れません。
医療保険の通院保障の内容は、保険会社によって異なります。
一般的には、退院の翌日から120日以内または180日以内における通算30日以内の通院が保障内容というように定められているため、加入する前に確認をしておきましょう。
1日あたりの給付額は、3,000円または5,000円が一般的です。
退院後の通院が、経過観察や定期検診であり、通院日数が数日であると、あまり給付金を受け取れない可能性があります。
これらの点を踏まえ、自分自身にとって医療保険に通院保障を付けるべきかどうかを判断しましょう。
がん保険の通院保障
がん保険は、がんと診断されたときや所定のがん治療を受けたときなどを保障する保険です。
がん保険の通院保障は、がんの治療を目的とした通院に限られます。
一方、入院を伴わない通院であっても、保障の支給対象に含まれているケースが多いです。
また、入院をした場合であっても退院から約1年以内の通院を保障するものや、支払限度日数に上限が設けられていないものもあります。
厚生労働省の「患者調査の概況」によると、2008年(平成20年)には入院患者数よりも外来患者数(=通院患者)の方が多いことが分かっています。
参照:統計表5 受療率(人口10万対)、総数ー入院ー外来・年次・傷病大分類別|令和2年 患者調査|厚生労働省
これまでのがん治療は入院をして手術を受ける外科療法が一般的でしたが、2008年以降は通院しながら治療を受ける方が増加しています。
がんの種類や状況に応じて治療方法は異なりますが、放射線治療や抗がん剤による治療はある程度の通院日数が必要です。
それに加えて、一般的な病気やケガの治療に比べてがんの治療は長期化しやすく、その日数に応じて自己負担分の医療費も増加していきます。
そうした経済的リスクに備えるためにも、がん保険における通院保障は必要性が高いといえるでしょう。
がん保険の通院保障の種類
がん保険における通院保障は、大きく分けると3種類が挙げられます。
通院保障をつけることで、がんの治療方法に応じた給付金が受け取れるようになるので、高額になりやすいがん治療の負担を軽減できます。
一般的な医療保険に比べて退院後の保障期間が長く、入院を伴わない通院であっても給付金の支給対象となるため、がん治療における経済的リスクに対して安心感があることがメリットです。
通院保障以外でリスクに備える保険とは
上述の通り、通院保障は基本的に入院を伴った通院でなければ給付金の支給対象とはなりません。
また、がん保険の通院保障を除き、一般的な通院保障では支給金額が少ないことから十分な保障が受けられないことも考えられます。
そこで通院保障以外でリスクに備えるための方法をご紹介します。
傷病手当金
傷病手当金は、病気やケガなどの理由で働くことができない期間の生活を補償するため、健康保険から支給される国の手当金のことです。
健康保険(被用者保険)の加入者である会社員や公務員など給付対象となるため、自営業やフリーランスは基本的に受給できません。
受給期間は、最長で1年6か月間です。
傷病手当金を受け取るためには、以下の手順で申請を行う必要があります。
傷病手当金の申請方法
- 勤務先に長期欠勤の相談をする
- 待機期間中(連続して欠勤した3日間)に書類を取り寄せる
- 申請書類の記入
- 書類の提出
なお、傷病手当金を受け取るためには「連続する3日を含む4日以上就労できない場合」という条件を満たしておかなければなりません。
傷害保険
傷害保険はケガや事故に特化した保険で、入院を伴わない通院であっても保険金が支払われることが特徴です。
医療保険は加入する際に過去の病歴や現在の健康状態を告知する義務がありますが、傷害保険の場合には告知義務がありません。
また、毎月の保険料は年齢や性別によって異なることがない点も、医療保険との主な違いです。
傷害保険での保障は「急激・偶然・外来」の3つの条件を満たした「事故やケガ」が対象であり、病気は補償対象に含まれません。
就業不能保険
就業不能保険は、病気やケガを治療するために長期間の入院や在宅療養をすることで「働けない状態」となった場合の収入減少に備えるための保険です。
所定の働けない状態に該当すれば、入院をしなくても給付金を受け取れるため、働けなくなった場合の経済的リスクに対して備えられることが特徴です。
一方で、給付金が支給されるまでに60〜180日程度の免責期間があるため、病気やケガで働けなくなったからといってすぐに保険金を受け取れるわけではありません。
- 「免責期間」とは?
- 給付金が支払われない待機期間のこと。免責期間に発症したケガや病気は保障対象外
また、精神疾患やうつ病は、保障対象外となったり、給付金の支払期間または支払回数が制限されたりすることがあります。
一定以下の年収や特定の職業・職種・雇用形態(学生や専業主夫、アルバイト、パートなど)では申し込めない場合がある点にも注意が必要です。
働けなくなった場合に備えるための保険であるため、働けなくなっても傷病手当金を受給できない個人事業主やフリーランスなどは加入を検討してはいかがでしょうか。
また、住宅の購入や子供の進学など大きな支出を控えており、働けなくなったときにできるだけ貯蓄を減らしたくない方も、検討すると良いでしょう。
所得補償保険
所得補償保険は、病気やケガが原因で働けなくなった時の収入減少に備えるための保険です。
就業不能保険と同様に、所定の働けない状態に該当すると入院・通院を問わず保険金が支払われます。
所得補償保険と就業不能保険には、以下の通り、保険金額や保険金・給付金の支払期間などに違いがあります。
所得補償保険 | 就業不能保険 | |
---|---|---|
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取扱い保険会社 | 損害保険会社 | 生命保険会社 |
支払い条件 | 病気やケガが原因で働けなくなった場合 | 病気やケガが原因で働けなくなった場合 |
保険金額 | 契約前の12か月における所得の50〜70% | 10〜50万円のうち5万円単位で設定可能 (収入による上限がある場合も) |
保険期間 | 1年〜5年更新 | 50歳〜70歳のうち5年刻みで満期が選べる |
補償(保障)の支払期間 | 最長2年、60歳までなど保険商品によって異なる | 保険期間満了まで |
受け取り方法 | 契約時の保険期間中に毎月一定の保険金が支給される | 保険期間満了まで毎月一定の保険金が支給される |
簡単にいえば、所得補償保険は「すぐに給付金を受け取れるが、給付期間が短い保険」です。
それに対して、就業不能保険は「給付金の支払開始までに時間がかかるが、長く受け取れる可能性がある保険」といえます。
基本的に通院だけでも保険金を受け取れますが、うつ病などの精神疾患・妊娠や出産・自傷行為や危険運転などで働けない場合は支給対象外となります。
加入保険に通院保障を付帯している人の口コミ
保険の通院保障に関してよくある質問 Q&A
保険の通院保障に関してよくある質問 Q&A
Q. 医療保険に通院特約は必要ですか?
A. 医療保険の通院特約は、全ての人に必要というわけではありません。
通院保障の多くは、退院後の通院治療が保険金給付条件となっており、病気やケガの状態により入院しなかった場合は、保険金給付の対象外となる場合があります。
上記注意点をふまえ、自身の生活状況において、長期で通院しなければいけないリスクがあるかを考え、通院特約の必要性を判断しましょう。
保険の通院保障の必要性の章も合わせてご覧ください。
Q. 病気になった場合、通院のみを保障する保険は?
A. 通院のみで保険金を受け取れる保険は、医療保険の通院保障特約となります。
その通院保障にも一定の給付金支払条件があるので、特約の内容を確認した上で検討しましょう。
加入保険に通院保障を付帯している人の口コミも合わせてご覧ください。
Q. 整骨院への通院は、医療保険の通院保障に含まれますか?
A. 保障内容は保険会社によって異なりますので一概には言えませんが、多くの医療保険の通院特約は、入院後を対象にしているため、入院があった場合は整骨院への通院も保障対象になる場合があります。
傷害特約の場合は入院せずとも保障対象になるものがありますが、脱臼や骨折、捻挫または打撲などを対象にしているものが多いです。
病名や治療状況によって保障の対象となるか変わるので注意してください。
Q. 子供の医療保険に通院保障(傷害特約)はあった方が良いですか?
A. 子供の場合は学校の授業中や休み時間、部活動などでケガをすることも多く、通院の頻度は多くなることがあります。
一方で子供が通院をしたときは、自治体や学校から医療費の補助を受けられることがあります。
そのため、自治体や学校の制度内容を確認のうえ、通院保障(傷害特約)付きの医療保険を検討すると良いでしょう。
まとめ
通院保障は、通院治療をする際に給付金が受け取れるようになる特約のことで、病気やケガの治療をするために病院へ通院した際に「通院給付金」が支払われます。
通院保障が付けられる保険は「医療保険」と「がん保険」の2種類が挙げられます。
それぞれで保障内容や保障範囲が異なるため、通院保障の必要性は異なります。
一般的な医療保険の場合、「入院を伴う通院」「退院後120日以内または180日以内」などのように支給条件が設定されています。
一方のがん保険における通院保障は「入院を伴わない通院」であっても通院保障の支給対象となるケースが一般的です。
また、保障期間も「退院から約1年以内の通院」「支払限度日数に上限が設けられていない」など、医療保険の通院保障に比べて支給対象が広めに設定されていることも特徴です。
通院保障を付けるかどうか検討中の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
また、ご自身での判断が難しい方は、ファイナンシャルプランナーに相談するのもおすすめです。



- 土岐 孝宏
- 中京大学教授
がん保険の通院保障には、がん治療給付金、治療サポート給付金といった形で、化学療法によるがん治療を目的とした入院・通院がある場合に、1か月に一度10万円といった定額の給付を継続するタイプのものや、がんによる入院後に退院をしたときに、治療サポートの趣旨に一時金を給付するものなどがみられます。前者のほうが、手厚い印象です。