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更新 更新:2024.09.05

生命保険にかかる税金はいくら?税金の種類や計算方法をわかりやすく解説

生命保険にかかる税金はいくら?税金の種類や計算方法をわかりやすく解説
所有資格
博士(商学)
専門分野・得意分野
社会保障、福祉政策、企業福祉、保険
所有資格
ファイナンシャル・プランニング技能士3級
専門分野・得意分野
保険全般・金融全般・通信全般

生命保険の死亡保険金やその他の給付金を受け取った際には、所得税・贈与税・相続税が課税される場合があります。 

保険金の種類によっても異なりますが、課税区分は契約者・被保険者・受取人の関係性によって変わってきます

本記事では、生命保険の死亡保険金を受け取る際の税金についてわかりやすく解説します。

死亡保険金にかかる税金

  • 契約者=被保険者の場合:相続税
  • 契約者=受取人の場合:所得税
  • 契約者・被保険者・受取人がすべて違う場合:贈与税

死亡保険金にかかる税金

以下は死亡保険金にかかる税金の種類一覧です。

死亡保険金を受け取る際の課税区分

生命保険の基礎知識

  • 契約者:生命保険の契約をする人。保険会社に保険料を支払う義務がある人
  • 被保険者:生命保険の対象となる人
  • 受取人:生命保険の保険金を受け取る人

上記の表の通り、契約者・被保険者・受取人が誰になるかによって課税区分は大きく異なります

ここでは、2,000万円の死亡保険金を受け取るケースを例に挙げ、相続税・所得税・贈与税の計算シミュレーションを紹介します。

死亡保険金にかかる税金

相続税(死亡保険金の非課税金額)の計算シミュレーション

死亡保険金を受け取る際、契約者と被保険者が同一人物で、受取人だけが異なる場合は「相続税」の課税対象となります

保険金の相続税の課税対象額は、法定相続人数×500万円の非課税枠を死亡保険金額から差し引いた金額です。

生命保険 相続税の計算式

※相続税率・相続税控除額の参照:国税庁の定める相続税の速算表

実際に課税される相続税は、相続税課税対象額に所定の相続税率を乗じた金額となります。

たとえば、以下のケースで死亡保険金を受け取った場合の相続税は、次のとおりです。

2000万円の死亡保険金を3人の法定相続人で受け取る場合の相続税

※相続税率・相続税控除額の参照:国税庁の定める相続税の速算表

法定相続人が3人の場合、2,000万円の死亡保険金を受け取ったときの相続税は50万円です

死亡保険金の相続税には、「500万円×法定相続人数」の非課税枠が設けられているため、仮に法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合、1,500万円までの死亡保険金は非課税となります。

また上記の非課税枠以外にも、相続税にはもともと基礎控除額が設けられています

相続税の基礎控除額の計算式

基礎控除額 = 3,000万円 + 法定相続人数 × 600万円

今回の法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合であれば、基礎控除額は「3,000万円 + 3人 × 600万円 = 4,800万円」となるため、保険金以外に相続財産が一切ない場合、相続税はかかりません

ただし、入院給付金や手術給付金も相続税の対象となる場合、死亡保険金のような生命保険の非課税枠が設けられていません。

相続した給付金全額が相続税の課税対象となる点には気をつけましょう

所得税の計算シミュレーション

死亡保険金を受け取る際、契約者と受取人が同一人物で、被保険者だけが異なる場合は「所得税」の課税対象です

所得税の計算式は次の通りで、死亡保険金額から払い込んだ保険料の総額と特別控除50万円を差し引き、さらに2分の1を乗じた(半分にした)金額が課税対象額となります。

生命保険 所得税の計算式

※所得税率・所得税控除額の参照:国税庁の定める所得税の速算表

たとえば、2,000万円の死亡保険金を受け取るために1,000万円の保険料を払い込んだ場合の所得税は、次のとおりです。

2000万円の死亡保険金に対して1000万円の保険料を支払っていたときの所得税

※所得税率・所得税控除額の参照:国税庁の定める所得税の速算表

保険料1,000万円を支払っていた場合、2,000万円の死亡保険金を受け取ったときの所得税は52.25万円です。

死亡保険金の所得税は、受け取った死亡保険金と払い込んだ保険料の差額が50万円以内であれば、所得税は発生しません(死亡保険金以外に所得がない場合)。

また、解約返戻金などを受け取った場合も同様の計算式で所得税が算出されます。

贈与税の計算シミュレーション

死亡保険金を受け取る際、契約者・被保険者・受取人の全てが異なる人物の場合は「贈与税」の課税対象です

贈与税の計算式は非常にシンプルで、受け取った保険金から基礎控除額110万円を差し引き、贈与税率を乗じた金額となります。

生命保険 贈与税の計算式

※贈与税率・贈与税控除額の参照:国税庁の定める贈与税(暦年課税)の速算表

たとえば、死亡保険金2,000万円を受け取る場合の贈与税額は、次のとおりです。

2000万円の死亡保険金を受け取る場合の贈与税

※贈与税率・贈与税控除額の参照:国税庁の定める贈与税(暦年課税)の速算表

死亡保険金2,000万円を受け取った場合の贈与税は695万円で、同じ金額を受け取った場合の相続税50万円と所得税52.25万円に比べると、大きな納税額となります。

贈与税には年間110万円の基礎控除額が設けられていますが、1年間に贈与された全ての財産を合算した金額が110万円を超えると、贈与税が課されてしまいます

そのため、基本的には生命保険の死亡保険金は相続税または所得税が課税されるように、契約者と被保険者、または契約者と受取人を同一人物に指定するのがおすすめです。

その他の保険金・給付金にかかる税金

生命保険の中には、死亡保険金以外にも次のような給付金が受け取れる場合があります。

その他の保険金・給付金にかかる税金

解約返戻金・満期保険金

生命保険を解約した際に受け取れるのが「解約返戻金」、保険期間を満了した際に支払われるのが「満期保険金」です

解約返戻金や満期保険金はまとまった金額を一括で受け取る一時金形式で、契約者本人が受け取るケースが一般的です。

一時金形式で受け取った場合は「所得税(一時所得)」の課税対象となり、次の計算式で所得税が算出されます。

所得税(一時所得)の計算式

  • 課税対象額=(保険金額 - 支払った保険料 - 特別控除額50万円)× 1/2
  • 所得税=課税対象額×所得税率 - 所得税控除額

※所得税率・所得税控除額の参照:国税庁の定める所得税の速算表

一方、特別な事情などで契約者以外が解約返戻金や満期保険金を受け取る場合には、課税区分が「贈与税」に変わります。

贈与税の計算式

贈与税=保険金-基礎控除額110万円×贈与税率-贈与税率に基づく控除額

上述の通り、贈与税が最も重い税負担となるため、解約返戻金や満期保険金の受取人が契約者以外の場合には気をつけましょう。

個人年金保険の年金

老後の備えとして個人年金保険に加入している場合、次のパターンで課税区分が異なります。

個人年金保険の課税区分

  • 契約者と年金受取人が同一人物:所得税
  • 年金を受け取る前に契約者が死亡した場合:相続税
  • 年金を受け取り開始後に契約者が死亡した場合:相続税または贈与税

契約者と保険金の受取人が同一人物で年金を受け取ると、本人の収入としてみなされるため、「所得税」の課税対象となります。

一方、年金を受け取る前に契約者が死亡した場合は「相続税」、受け取り開始後に契約者が死亡した場合は被保険者と受取人の関係性によって「相続税」または「贈与税」がかかります。

個人年金保険の課税区分は、契約者・被保険者・受取人が誰になるか、契約者の死亡などによって課税区分が異なるため、詳細については下記の記事でご確認ください。

入院給付金

入院給付金やがん診断給付金など、保険契約に基づく身体の疾病や傷害によって支払われる給付金については税金がかかりません

非課税となる給付金と保険金の一例は、次のとおりです。

非課税となる給付金と保険金

  • 入院給付金
  • 手術給付金
  • 通院給付金
  • がん診断給付金
  • 先進医療給付金 など

なお、医療保険の受取人は原則として被保険者のみです。

被保険者になれるのは契約者本人・契約者の配偶者・2親等以内の血族(子・親・兄弟姉妹など)に限られていることを覚えておきましょう。

生命保険料控除で所得税・住民税が軽減できる

生命保険に加入している場合、生命保険料控除で所得税と住民税の負担を軽減できます。

生命保険料控除とは、1年間で払い込んだ保険料の一定額を課税所得から差し引くことができる制度のことです

生命保険料控除の対象となる保険の一例(契約日が2012年1月1日以降)

本制度を利用するためには、会社員の方は年末調整、自営業者やフリーランスの方は確定申告で控除の申請を行う必要があります。

期限までに申告を忘れてしまっても5年以内であれば「所得税の更正請求」ができますが、非常に煩雑な手続きとなるため、期限までに必ず生命保険料控除の申告を行うようにしましょう。

生命保険にかかる税金でよくある質問 Q&A

生命保険にかかる税金でよくある質問にお答えしていきます。

Q. 受取人は複数指定できますか?

A. 死亡保険金の受取人は、複数指定ができます

各受取人の受取割合を指定することで、子供が複数いる場合などにも対応できるので、相続税対策として生命保険を検討している方は覚えておきましょう。

Q. 解約返戻金は相続税の対象になりますか?

A. 貯蓄型の終身保険の解約返戻金は、相続税の対象となります

また、非課税枠も利用できないので、税負担を計算する際にはご注意ください。

解約返戻金については「解約返戻金・満期保険金」の章をご覧ください。

まとめ

生命保険の死亡保険金は、契約者・被保険者・受取人の関係性によって、所得税、相続税、贈与税のいずれかが課税される場合があります

それぞれの課税区分では基礎控除が設けられているので、その金額未満の死亡保険金であれば課税されることはありません

ただし、税金の計算は非常に複雑で、他に相続財産や贈与を受けた資産がある場合には後から税金が課される可能性も十分に考えられます。

基本的には、契約者と被保険者が同じ場合の「相続税」、契約者と受取人が同じ場合の「所得税」が発生するようにしておくと、税負担を軽減できる可能性が高いのでおすすめです。

特別な事情で契約者・被保険者・受取人の全てが異なる人物となる場合は、最も税率が重い「贈与税」が課されてしまうので気をつけましょう。

監修者からひとこと
石田 成則
  • 石田 成則
  • 関西大学教授
生命保険は大きく分けると、純粋な生命保険と医療・介護保険、そして個人年金保険になります。医療・介護保険や個人年金保険の多くは、保険契約者と保険金受取人が同じであり、受け取った保険金には所得税が掛かることになります。ただし受け取った保険金の全額ではなく、支払った保険料は必要経費とみなされ、その金額は控除され、差額にのみ所得税が発生します。
これに対して、純粋な生命保険の税制は複雑です。医療・介護保険や個人年金保険は保険契約者が保険料を支払って、自身の利益のために契約するのに対して、生命保険の多くは「他人のためにする契約」だからです。解説にあるように、保険契約者(=被保険者)が死亡した場合に、保険金受取人が保険金を受け取るケースでは相続税が掛かります。さらに、保険契約者と被保険者が異なる特殊なケースもあります。保険契約者が家族の生命に保険を掛ける場合などです。このとき、保険契約者が受取人になれば所得税の対象となり、他の家族などが受け取れば贈与税が掛かることになります。
なお、家族の生命に保険を掛ける場合に、保険金受取人を指定する権利を、誰が有するかも大事なポイントになります。わが国をはじめ欧米諸国では、保険契約者が保険料を支払っているので、当然にその権利があると考えます。一方、中国や台湾などのアジア諸国では、保険契約者が自身とは異なる家族の者(被保険者)に保険を掛けているので、その家族(被保険者)に保険金受取人を決める権利が生じます。お金を払ったからと言って、保険金受取人を勝手に指定できない仕組みになっています。

石田 成則
石田 成則
関西大学教授
1991年慶応義塾大学大学院商学研究科博士課程修了後、1991年~2015年まで山口大学経済学部の助教授と教授を経て、2015年から関西大学政策創造学部教授。2009年3月に早稲田大学にて商学博士を取得。所属学会は、日本保険学会(理事長)、生活経済学会(理事)、日本年金学会、日本労務学会、日本ディスクロージャー研究学会など。
所有資格
博士(商学)
専門分野・得意分野
社会保障、福祉政策、企業福祉、保険
中村 翔也
中村 翔也
Webライター/ファイナンシャルプランナー
携帯代理店法人部門にて営業職として2年半勤務後、2017年12月よりwebライターとして独立。通信ジャンルをメインに金融系、保険記事を毎月30本以上執筆。
所有資格
ファイナンシャル・プランニング技能士3級
専門分野・得意分野
保険全般・金融全般・通信全般

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