家財保険に加入するときは、保険金の支払上限額(保険金額)を決めます。家財保険で万が一に備える場合、保険金額はいくらに設定すると良いのでしょうか。
家財保険の保険金額は、火事や洪水などで自宅にある家具や家電などが損害を負ったときに、新たに買い直すために必要な金額をもとに設定します。
本記事では、家財保険の補償内容や保険金額の決め方、保険料相場などをわかりやすく解説します。
家財保険の保険料相場はいくら?
家財保険は、補償の対象が家具や家電、衣類などの家財である保険であり、主に賃貸物件の入居者が加入します。
賃貸物件の場合、建物の補償については大家さんが加入する火災保険でカバーされます。そのため賃貸住宅の入居者は、家財のみを補償の対象とする火災保険や家財保険に加入するのが一般的です。
家財保険の保険料は、保険金額(保険金の支払上限額)や建物の構造、補償範囲、住宅があるエリアなどさまざまな要素で変わります。
例えば、補償内容が同じである場合、木造の戸建て住宅よりも鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションのほうが火災の被害にあいにくいため保険料は安くなります。
また、保険会社によって保険料の算出方法が異なるため、一概に保険料の相場がいくらであると断定するのは困難です。年間保険料が数千円で済む場合もあれば、1万円以上になる場合もあります。
家財保険の保険金額はいくらに設定する?
家財保険では、加入時に決めた保険金額を上限に、所有する家具や家電、衣類などが火災や落雷、台風などで負った損害額と同じ金額の保険金が支払われます。
保険金額を高く設定しても、所有する家財に損害が発生したときの保険金の支払額が増えるとは限りません。家具や家電、衣類などの保有状況をもとに、保険金額を適切に設定することが大切です。
保険金額の決め方
家財保険の保険金額を高く設定すればするほど、支払う保険料も高くなっていきます。保険金額を高く設定しても、実際の被害金額を超えた保険金が支払われるわけではないため、補償が過剰だと保険料を余分に支払ってしまいかねません。
一方で保険金額を低く設定すると、保険料は安くなります。しかし、保険金額が低すぎると、火災や水災などで損害を負ったときに、家具や家電などの買い替え費用のすべてを保険金でカバーできなくなる可能性があります。
そのため家財保険の保険金額を決めるときは、被害にあったとき家にあるものを買い直すといくらかかるか計算することが大切です。
例えば、新しく買い換えるために必要な費用が、家具200万円、衣類150万円、家電製品200万円、靴やバッグなどの身の回り品150万円であった場合、家財保険の保険金額を700万円にして加入します。
必要なものを買い直す金額を確認した上で保険金額を設定することで、過不足なく備えることができ、余分な保険料の支払いも回避できます。
保険会社の簡易評価表を参考にするのも方法
家財保険の保険金額を決める際の目安となるのが、損害保険会社が作成する簡易評価表です。簡易評価表は、以下の通り家族構成や専有面積を基準に作成されています。
世帯主の年齢 | 2名 大人のみ |
3名 大人2名 子供1名 |
4名 大人2名 子供2名 |
5名 大人2名 子供3名 |
独身世帯 |
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25歳前後 | 500万円 | 600万円 | 700万円 | 800万円 | 300万円 |
30歳前後 | 700万円 | 800万円 | 900万円 | 1,000万円 | |
35歳前後 | 900万円 | 1,000万円 | 1,100万円 | 1,200万円 | |
40歳前後 | 1,100万円 | 1,200万円 | 1,300万円 | 1,400万円 | |
45歳前後 | 1,300万円 | 1,400万円 | 1,500万円 | 1,600万円 | |
50歳前後 | 1,500万円 | 1,600万円 | 1,700万円 | 1,800万円 |
※上記はあくまで一例であり、保険会社によって目安となる金額は異なります。
33㎡未満 | 33〜65㎡ | 66〜98㎡ | 99〜131㎡ | 132㎡以上 | |
---|---|---|---|---|---|
賃貸 | 550万円 | 900万円 | 1,150万円 | 1,500万円 | 1,800万円 |
所有 | 350万円 | 600万円 | 850万円 | 1,100万円 | 1,350万円 |
※上記はあくまで一例であり、保険会社によって目安となる金額は異なります。
家財保険の保険金額は、簡易評価表を参考にしながらも自分自身の状況をもとに決めることが大切です。
例えば、家族構成が同じであっても、モノがたくさんある世帯とほとんどモノを持たない世帯では家財保険の保険金額は異なります。あまりモノを所有していないのであれば、簡易評価表の金額よりも低い保険金額にすると良いでしょう。
家財保険の補償対象
そもそも家財保険では、どのような家財が補償の対象となるのでしょうか。ここでは、家財保険の補償対象になるものとならないものを解説します。
家財保険の補償対象になるもの
家財保険の補償対象となるのは、建物の中に収容された生活用動産や高額な貴金属などです。家財保険の補償対象になる家財の例は、以下の通りです
家財保険の補償対象となるもの
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家電(冷蔵庫・洗濯機・テレビなど)
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家具(ソファー・テーブル・イスなど)
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衣類・アクセサリー
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食器
- 1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、宝石、書画、骨董 など
火災保険の補償対象となるのは、家の中にある動かせるものです。動かせるものであれば、タンスや冷蔵庫なども補償対象に含まれます。
引っ越しをする際に、持ち運びできるものが家財保険の補償対象であると考えると分かりやすいでしょう。
家財保険の補償外であるもの
以下のものは、一般的に家財保険の補償対象とはなりません。
家財保険の補償に含まれないもの
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建物に附属しているもの
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自動車
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動物・植物
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通貨およびそれに類するもの(通貨・預貯金証書など)
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パソコンなどの中にインストールされているプログラムやデータ等
- 仕事で使う什器・商品・備品など(企業型の保険で対応)
浴槽やテーブル、ウォークインクローゼットなど、建物に取り付けてあるものは家財保険の補償対象外です。
通貨や預貯金証書などは、基本的に家財保険の補償対象外ですが、盗難による損害に限って一定の金額まで補償されることがあります。
また、損害を負った理由が以下に該当するときも家財保険では補償されません。
家財保険の免責事項
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家財が屋外にあるときにおきた盗難
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自然の消耗、劣化、性質による変色、さび、かび、腐敗、ひび割れ等によっておきた損害
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地震・噴火・津波で被害に遭ったとき
- 戦争、暴動などの異常な事態や核燃料物質等による事故など
例えば、地震が原因で発生した火災や、津波による床上浸水で家財が損害を負っても家財保険の補償は適用されません。地震や津波のリスクに備えるためには、地震保険に加入する必要があります。
家財保険を検討する際は、補償の対象とならないものやケースをよく確認することが大切です。
「明記物件」は加入時に申告が必要
明記物件は、高額な貴金属や骨董品など、1点または1組の金額が30万円を超えるもののうち、家財保険の加入時に契約書に明記されたものをいいます。
保険会社によっては、加入時に明記物件を申告しなければ補償されない場合があります。たとえ補償されたとしても、最大30万円までの補償となることもあるため、高額な貴金属や骨董品などを所有している方は申告が必要か保険会社に確認しましょう。
また保険会社によっては、明記物件の保険金額を通常の家財とは別に設定される場合があります。家財保険を申し込む際は、明記物件の補償についても入念に確認しておくことが大切です。
家財保険の補償範囲
家財保険の補償が適用される範囲は、以下の通りです。
家財保険の補償範囲
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火災・落雷・破裂・爆発
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風災・雹(ひょう)災・雪災
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水災
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盗難
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水ぬれ
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破損
- 建物の外部からの物体の衝突・労働争議に伴う破壊行為 など
「火災・落雷・破裂・爆発」と「風災・雹(ひょう)災・雪災」は、家財保険の基本補償に含まれるのが一般的です。一方で「水災」「盗難」「水濡れ」などは、プランによっては補償に含まれないことがあります。
家財保険の補償範囲が広いほど、支払う保険料は基本的に高くなります。家財保険に加入する際は、補償が適用される範囲を確認のうえ、自宅にある災害リスクに応じた補償プランを選ぶことが大切です。
家財保険に加入すると、以下のようなケースで保険金が支払われます。
家財保険の補償対象となる事故の例
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火災によって家の中にある家具や家電が燃えてしまった
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落雷によって家の中にあるテレビが燃えてしまった
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カセットコンロが爆発して家の中にある家具や家電が燃えてしまった
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土砂崩れが発生して自宅が床上浸水し、1階においてあった家電が故障した
- アクセル操作を誤った車が自宅に突っ込んできて、所有する家電が大破した など
家財保険の必要性
「そもそも家財保険に加入する必要はあるのだろうか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。結論をいえば、火災などで家財に損害が生じたとき多額の買い直し費用が必要になる方や、賃貸住宅に住む人にとって家財保険の必要性は高いです。
ここでは、家財保険の必要性を考えるときのポイントについて解説します。
大家さんや第三者への損害賠償に特約で備えられる
賃貸住宅の入居者が加入する家財保険には、大家さんや第三者への賠償責任に対する補償を付けられます。家財保険に付帯できる賠償責任保険の例は、以下の通りです。
補償内容 | |
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借家人賠償責任保険 | 不注意による事故で部屋が破損し、大家さんに対して損害賠償責任を負ってしまったときに保険金が支払われる補償 |
個人賠償責任保険 | 日常生活における事故で他人のモノを壊したり、他人にケガをさせたりしたときに保険金が支払われる補償 |
入居者には「原状回復義務」があり、借りた部屋は元通りに回復して大家さんに返還しなければなりません。 原状回復義務を果たせない場合は、大家さんから損害賠償を請求されることになります。借家人賠償責任保険に加入していれば、大家さんから請求された損害賠償を保険金でカバーできます
例えば、借りているお部屋に設置していた洗濯機のホースが外れて、部屋が水浸しになったとしましょう。「借家人賠償責任保険」に加入していれば、床の修繕が必要になり大家さんから損害賠償を請求されたときに保険金が支払われます。
また、下の階の部屋に漏水し、住んでいる人の衣服が汚れて弁償を求められたときは、「個人賠償責任保険」に加入していれば保険金で費用をカバーできます。
大家さんや第三者から請求される賠償額は、数百万円あるいは数千万円と高額になることもあります。賃貸住宅に住むのであれば、賠償責任に対する補償が付いた家財保険への加入は必須といっても過言ではないでしょう。
家財の損害額が高額になることも
自宅で火災が発生したり、洪水によって自宅が流されてしまったりすると、家具や家電、衣服などをすべて失ってしまう恐れがあります。
テレビや冷蔵庫、洗濯機など自宅の中にあったものをすべて買い直すときは、数百万円の費用が必要になるケースもあります。
もし火事や床上浸水で自宅の中にある家具や家電が被害にあっても、家財保険に加入していなければ家財は補償されません。
日本には失火責任法という法律があり、火災の原因となった家の家主に損害賠償請求できません。そのため、火災にあったときの損害に備えるためには、自分自身で保険に加入して備える必要があります。
火災以外で生じた損害もカバーする
家財保険の補償が適用されるのは、火災に限定されているわけではありません。台風や洪水、土砂崩れなどの自然災害だけでなく、盗難や建物の外部からの物体の衝突などにも備えられます。
例えば、自宅が洪水や土砂崩れなどで損害を負うリスクがあるのなら、水災補償がセットされた家財保険に加入すると良いでしょう。
自宅があるエリアの災害リスクは、 お住まいの自治体(市区町村)が公表するハザードマップで確認できます。
ハザードマップを確認のうえ、自宅にある災害リスクに応じて適切に補償範囲を設定することで、家具や家電などの買い直しにともなう金銭的な負担を抑えられます。
まとめ
家財の保険に加入すると、火災や風災、水災などで建物の中にある家具や家電、衣類などが損害を負ったときに保険金が支払われます。
保険金の支払額は、実際の損害額で決まります。そのため、加入時に高い保険金額に設定しても、損害が発生したときの支払額が増えるわけではありません。
一方で、保険金額を少なくすると損害が発生したときに十分な補償を得られない可能性があります。
家財保険の保険金を決めるときは、万が一のときに家具や家電などを新たに買い直すためにはいくら必要なのかを考えることが大切です。保険会社の簡易評価表も参考にし、保険料とのバランスも踏まえて家財保険の保険金額を決めましょう。