公務員の人には保険が必要ないといわれることもありますが、公務員であるからといって保険が不要であるとは言い切れません。
この記事では、公務員に保険は必要ないと言われる理由や、保険の選び方を解説します。
公務員に保険が必要ないといわれる理由
公務員に保険が必要ないといわれるのには、主に次の理由があるためです。
公務員に保険が必要ないといわれる理由
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休職する際の保障が手厚い→90日間は全額支給
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過去半年間の勤務実績によってボーナスが受け取れる
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3年間は在籍したままで病気療養が取れる
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普通の会社員や自営業者と同じく「高額療養費制度」が利用できる
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一部負担金返戻金という付加給付があり、負担軽減が可能
- 団体保険の加入で格安な保険料でリスクに備えられる
これらを一言で言い表すなら、「公務員は社会保障が充実しているから」という理由で保険が必要ないといわれています。
ただし、公務員だからといって医療費が安いわけではないので、病気やケガで入院・手術をすることになれば高額な医療費が発生する可能性は十分に考えられます。
公務員が加入できる「団体保険」とは
「団体保険」とは、共済組合や企業などの団体が契約者となり、団体に所属する人を被保険者(保険の対象となる人)とする保険のことです。
団体保険は団体割引が適用されることで、毎月の保険料が割安になるというメリットがあります。
その一方で、公務員の団体保険には次のようなデメリットもあります。
団体保険のデメリット
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保障内容の融通が利きづらい
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年齢を重ねると掛け金が上がっていく
- 退職すると強制的に保険を脱退することになる
団体保険は、所属する団体によって保障内容が異なるので、万が一の事態に保障が不足する事態が起こりえます。
また、団体保険の掛金(保険料)は「〜35歳」「36〜40歳」のように、年齢の区分ごとに決められています。年齢を重ねたことで区分が変わると、掛金は上昇します。
さらに、団体保険に加入できるのは原則として公務員ですので、退職をすると基本的には団体保険を脱退することになります。
退職後も継続できるケースもありますが、退職前の保障内容をそのまま継続するのではなく、保険金額や保障の選択肢が減るのが一般的です。
年齢が若いうちであれば、病気になる方も少ないため他の保険に加入しやすいですが、年齢が上がるにつれて健康上のリスクも上がるので、新規加入が厳しくなっていきます。
そのため、団体保険だけに加入していた場合、持病や既往症がある方は脱退後に新たに保険に入れない可能性があります。
- 諏澤 吉彦
- 京都産業大学教授
また、不特定多数の被保険者を対象とした通常の保険契約集団に比べ、団体保険契約ではリスクが比較的均質であることから、保険会社が予想を大幅に超えて高額の保険金を支払わなければならない確率は、それほど高くありません。このことも団体医療保険の保険料水準が低いことの要因と言えます。
公務員が保険に加入する必要性
公務員は勤務先から手厚いサポートを受けられますが、病気やケガで高額な医療費が発生する可能性は十分に考えられます。
また、被用者年金制度の一元化の影響を受けて、公務員の社会保障は普通の会社員と同じ水準となりました。
- 「被用者年金制度」とは?
- 公的年金制度のうち、民間企業や官公庁等に雇用されている人が加入する年金。
平成27年に施行された「被用者年金一元化法」により、国家公務員共済組合、地方公務員等共済組合、私立学校教職員共済が厚生年金1つに統一された。
具体的には、短期給付の給付内容は健康保険や国民健康保険などと同水準となり、公務員だけが加入していた共済年金は、普通の会社員が加入する厚生年金と統一されています。
公務員の社会保障制度が変更になったことで、保険に加入する必要性が高まったと考えられます。
公務員が保険を選ぶ際の3つのポイント
公務員が保険を選ぶ際のポイントは、次のとおりです。
公務員が保険を選ぶ際の3つのポイント
公務員でこれから初めて保険加入を検討するという人は、ぜひ参考にしてください。
1. 今の保険に足りない部分を補える保険を選ぶ
保険を選ぶ際は、病気やケガ、死亡の際に受けられる給付で足りない部分を補える保険を選びましょう。
例えば、加入中の団体保険に十分な医療保障があり、自己負担分は貯蓄で対応できるのであれば、改めて民間保険会社の医療保険に加入する必要性は低いかもしれません。
一方で、団体保険に加入しておらず、退職後も同様の保障で病気やケガに備えたいのであれば、民間医療保険に加入する必要性は高いといえます。
十分な保障が得られなければ、高額な医療費を自己負担で賄うことになりかねないので、そうした不足分を補える保険を選ぶようにしましょう。
2. 保険に加入したあとは定期的に見直しを行う
団体保険や民間保険会社の保険に加入したあとは、定期的に保障内容を見直す必要があります。
なぜなら、家族の状況や自身の健康上のリスクなどの変化に合わせて、保障内容は調整する必要があるからです。
例えば、子供が幼いころに手厚い死亡保障が付いた生命保険に加入したとしましょう。
その子供がすでに成人して経済的に自立しているのであれば、死亡保障を減額して保険料負担を軽減できるかもしれません。
3. 現状の家計バランスを考慮して保険を選ぶ
保険商品には、保険料が掛け捨てになる「掛け捨て型保険」と、将来的に保険料が返ってくる「貯蓄型保険」があります。
貯蓄型保険には、途中解約時に払い込んだ保険料の一部が払い戻される「解約返戻金」があります。
しかし、保険料は掛け捨て型保険よりも割高です。
保険料が家計を圧迫すると生活が苦しくなるかもしれませが、保険料を安くしようと保障を削れば、万が一の保障が不足する恐れがあります。
保険会社やファイナンシャルプランナーなどの専門家にも相談の上、家計とのバランスを考慮した上で保険商品を選ぶと良いでしょう。
公務員でも加入を検討すべき保険
公務員でも加入を検討すべき保険は、主に次の4つが挙げられます。
公務員でも加入を検討すべき保険
どの保険を選べばよいかわからない人は、これら4つの保険を検討するところから始めてみてください。
生命保険(終身保険)
生命保険は、病気や事故、災害で死亡または所定の高度障害状態となった場合に保険金が支払われる保険です。
団体保険でも生命保険と同様の保障を受けられますが、一般的な生命保険よりも低い保険金額しか選べないことがあります。
また、団体保険は原則として退職後に脱退しなければなりません。
団体保険では選択できない保険金額に設定したい方や、公務員を退職したあとも継続して万が一に備えたい方は、民間保険会社が取り扱う生命保険を検討するとよいでしょう。
医療保険
医療保険は、国が提供する「公的医療保険」でカバーしきれない部分を補填するために加入する「民間医療保険」のことです。
公的医療保険は以下の費用については、給付対象外となっています。
公的医療保険の補償対象外項目
- 自由診療(視力矯正手術、人間ドック、歯列矯正など)
- 先進医療
- 入院時の差額ベッド代や食事代
また、がんをはじめとした重い疾患になると、高額療養費制度を利用しても医療費の自己負担が重くなるケースがあります。
病気やケガをしたときの医療費の自己負担分を貯蓄でカバーするのが困難な場合は、医療保険の加入を検討すると良いでしょう。
がん保険
がん保険は、「がん(悪性新生物)」の備えに特化した保険のことです。
「最新がん統計 | 国立がん研究センター」のデータによると、日本人が生涯でがんに罹患する確率は、男性が65.5%、女性で51.2%と、どちらも過半数を超える数値となっています。
特に、女性は年齢が30歳から乳がんや子宮がんの罹患率が上がり始め、男性は50代からがんの罹患率が上昇し始める傾向にあります。
がんは再発のリスクが高いことから治療が長引くケースがあります。また、保険が適用されない治療を選択すると、医療費が高額になりやすいです。
がんは通常の医療保険でも保障の範囲内に含まれますが、がん保険に加入しておけばより手厚い保障に備えておくことができます。
個人年金保険
個人年金保険は、契約時に定められた期間中に保険料を払い続けることで、契約時に決めた年齢になると年金を受け取ることができる保険です。
公的年金では賄うことが難しい老後資金の準備や、60歳で退職して公的年金が受け取れるようになる65歳までのつなぎとして活用されています。
昨今の公務員は公務員制度改革によって、従来よりも受け取れる年金額が減少している傾向にあるため、個人年金保険は検討の余地があるといえるでしょう。
ただし、個人年金保険を途中で解約すると元本割れを起こす可能性がある点や、受け取った年金は課税対象になる点などの注意点もあります。
公務員が将来に備えて活用しておくべき貯蓄制度
この章では、公務員が将来に備えて活用しておくべき貯蓄制度についてご紹介します。
公務員が将来に備えて活用しておくべき貯蓄制度
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、60歳以降の老後資金を貯蓄するために設けられた制度です。
毎月自分で決めた掛金を拠出して運用を行い、積立金や利益は60歳以降から受け取れるようになります。
掛金が全額所得控除であり、1年間で払い込んだ掛金の分だけ課税対象の所得が減るため、所得税や住民税の負担を軽減できる効果が期待できます。
また、運用によって得られた利益には、通常であれば20.315%の税金がかかりますが、iDeCoであれば非課税です。
さらに60歳以降で資産を引き出す際にも、一時金として受け取れば退職所得になり、一定金額までは税金がかかりません。
ただし、60歳になるまでは一切資産を引き出すことができないので、換金性が低い点には注意してください。
共済貯金
共済貯金(共済積立貯金事業)とは、公務員だけが利用できる「給与からの天引きで預金ができる制度」のことです。
各都道府県の共済組合が運営しており、共済組合によって利率が異なります。
積立方法は「定期積立金(毎月)」「臨時積立金(特定の月のみ)」の2種類があり、共済組合によって両方を組み合わせた積立方法も選択できます。
通常の預貯金よりも利率が高い傾向にあり、半年複利運用ができるというメリットがあります。
まとめ
公務員に保険は必要ないといわれており、一般的な会社員に比べて勤務先から手厚いサポートを受けられることは間違いありません。
ただし、公務員だからといって医療費が安いわけではなく、団体保険では保障内容が不十分になりがちです。
また、公務員制度改革によって、従来よりも受け取れる年金額が減少しているため、「公務員だから将来は安泰」とは必ずしも言い切れない時代となっています。
これらのことから、公務員であっても必要に応じて保険加入を検討し、万一の自体に備えておく必要性は高いといえます。
公務員で保険加入を検討中の方は、この記事を参考にしていただければ幸いです。
- 小宮 崇之
- (株)コミヤ保険サービス代表取締役/損害保険プランナー