傷害保険という名前を聞いたことがあっても、補償内容や補償対象となるケガの定義についてご存じない方は多いのではないでしょうか。
ひとくちに傷害保険といっても、補償内容や選択できる特約などは保険会社によって異なります。
また傷害保険への加入を検討するときは、どのようなケガで保険金が支払われるのかを知っておくことが大切です。
本記事では、傷害保険の補償内容や種類、付帯できる特約、補償の対象となるケガの例などを分かりやすく解説します。
傷害保険とは事故によるケガを補償する保険
傷害保険は、骨折ややけど、全身打撲などのケガで、入院や手術、通院をしたり亡くなったりしたときに保険金が支払われる保険です。
主に、損害保険会社が取り扱っています。
骨折や打撲などのケガをしたとき、治療をするために病院やクリニックへの通院が必要となる場合があります。
ケガの程度が重ければ、入院や手術をしなければ治らないかもしれません。
ケガを治療するために病院やクリニックなどを受診した場合、支払窓口に健康保険証を提示すれば、医療費が3割負担となります。※年齢によっては1〜2割負担
傷害保険に加入していれば、ケガを治療するために入院や手術、通院をしたときに保険金を受け取って医療費の自己負担分をカバーできるのです。
ただし傷害保険は、ケガを補償する保険であるため、病気を治療するための入院や手術などをしても保険金は支払われません。
- 前田 祐治
- 関西学院大学教授
傷害保険で支払われる保険金
傷害保険に加入すると、事故の日から180日以内に死亡したり、後遺障害が生じたり、入院、手術、通院したりした場合に保険金が支払われます。
支払われる保険の種類と支払額の計算方法は、主に以下の通りです。
| 入院保険金 | 入院保険金日額×入院日数 |
| 手術保険金 | 入院保険金日額×所定の倍率 |
| 通院保険金 | 通院保険金日額×通院日数 |
| 死亡保険金 | 契約した死亡・後遺障害保険金額の全額 |
| 後遺障害保険金 | 死亡・後遺障害保険金額×所定割合 ※後遺障害の程度に応じた4~100% |
例えば、入院1日につき4,000円の入院補償と、入院1日につき2,000円の通院補償がある傷害保険に加入していたとしましょう。
ケガによる骨折で5日間入院したあと、合計6日通院した場合、受け取れる保険金額は以下の通りです。
傷害保険から支払われる保険金
-
入院保険金:4,000円×5日=20,000円
-
通院保険金:2,000円×6日=12,000円
- 合計:32,000円
入院保険金と通院保険金は、保険金の支払い対象となる限度日数が定められています。
限度日数は、入院保険金は180日程度、通院保険金は30日程度です。
手術保険金の倍率は、入院中と入院外の手術で異なるのが一般的です。
またケガをした部位や症状に応じて、手術保険金額が決まる場合もあります。
傷害保険の被保険者の範囲
傷害保険には「本人型」「夫婦型」「家族型」があり、本人型を「普通傷害保険」、夫婦型や家族型を「家族傷害保険」と呼ばれることもあります。
例えば、夫婦型の傷害保険に加入すると、夫と妻の両方が被保険者(保険がかけられる人)となり、どちらがケガをしても補償の対象となります。
また、家族型の傷害保険における被保険者は、以下の通りです。
家族型傷害保険の被保険者
-
本人
-
配偶者
-
生計を共にしている同居の親族
- 生計を共にしている別居の未婚の子
例えば、通院補償がある家族型傷害保険に加入していると、大学に通うために親元を離れて暮らしている子どもが骨折して通院したときに、保険金が支払われます。
傷害保険の種類
傷害保険には、日常生活におけるケガを補償する普通傷害保険や家族傷害保険の他にも、以下のような種類があります。
それぞれの補償内容を解説していきます。
交通事故傷害保険
交通事故傷害保険は、その名の通り交通事故によって負ったケガの治療費を補償する傷害保険です。
例えば「バイクを運転中に転倒してケガをした」「車の運転中に追突されてケガをした」などの事故を補償します。
また、電車内や駅の構内で事故に巻き込まれた場合のケガも補償の対象です。
なお、自分自身だけでなく配偶者や同居の親族などが交通事故に遭ったときのケガを補償する「ファミリー交通傷害保険」を取り扱う保険会社もあります。
国内旅行傷害保険
国内旅行傷害保険は、国内旅行中に負ったケガの治療費を補償する保険です。
国内旅行中にケガをして入院をしたり、死亡したりすると所定の保険金が支払われます。
また商品によっては、バッグやカメラなどの持ち物の破損・盗難や、店のモノを壊したときの損害賠償も補償の対象となる場合があります。
海外旅行傷害保険
海外旅行傷害保険とは、海外旅行中に負ったケガを補償する保険です。
他の傷害保険とは異なり、病気による手術や入院についても補償の対象となります。
海外旅行中にケガや病気で医療機関を受診すると、高額な医療費を請求されることがあります。
海外の保険制度は日本と異なっており、医療費の全額が自己負担となる場合もあるためです。
海外旅行保険に加入していれば、海外で入院したり手術をしたりしたときに保険金が支払われるため、高額な医療費を負担せずに済みます。
自転車保険
自転車保険は、傷害保険と個人賠償責任保険がセットになった保険です。
自転車保険に加入していると、自転車運転中に負ったケガだけでなく自転車事故によって負った損害賠償も補償されます。
過去には、自転車事故によって他人をケガさせたり後遺障害を負ったりしたことで、数千万円もの損害賠償を命じる判決が下されました。
そのため2021年10月1日時点で、約23の自治体が条例などで自転車保険をはじめとした損害賠償責任保険への加入を義務化しています。※出典:国土交通省
加入が義務化されている自治体に住んでいる方のうち、日常的に自転車を運転しているのであれば自転車保険には必ず加入しましょう。
傷害保険で補償されるケガ
傷害保険では、補償の対象となるケガもあれば、そうでないケガもあります。
ここでは、傷害保険の補償が適用されるケガの定義や支払いの対象となる事例についてわかりやすく解説します。
急激かつ偶然な外来の事故によるケガを補償
傷害保険の補償対象となるケガとは「急激」「偶然」「外来的」のすべてを満たした事故によるケガです。
それぞれの定義は、以下の通りです。
| 定義 | |
|---|---|
| 急激 | 突発的に事故が起こり時間的な間隔がなくケガに至ること |
| 偶然 | 事故やケガの発生が予測できないこと |
| 外来 | ケガの原因が身体の外から作用したことものであること |
上記の1つでも当てはまっていないと、傷害保険の保険金は支払われません。
傷害保険で保険金の支払い対象になる例
では、どのようなケースが急激かつ偶然な外来の事故によるケガに当てはまるのでしょうか。
ここでは、傷害保険の補償が適用されるケースと、適用されないケースについて解説していきます。
傷害保険に加入すると、以下のようなケースで保険金が支払われます。
傷害保険の補償が適用されるケガの例
-
歩行中に自動車と接触をして全身打撲によって死亡した
-
自転車を走行中に転倒して左足の靭帯を断裂した
-
建設現場の足場から落下して右足を複雑骨折した
-
職場の階段で転倒し足首をねんざした
-
サッカーをしていて足を骨折した
- 料理中にやけどした など
一方で、以下のようなケースでは、傷害保険の補償は基本的に適用されません。
傷害保険の補償が適用されないケガの例
-
疲労骨折のように緩やかに発生するケガ
-
靴擦れやしもやけ
-
細菌性食中毒、ウイルス性食中毒
-
心臓発作やその他持病が原因で転倒した際のケガ
-
地震や津波、噴火などが原因によるケガ
- 旅行先での暴動、戦争、紛争などによるケガ(テロ行為によるものは除く) など
また、事故によって負ったと考えられる「むち打ち」は、医師による触診や視診、画像検査(レントゲン)などの他覚的所見がなければ、補償の対象外です。
傷害保険の保険料
傷害保険は、年齢や性別に関係なく、職業によって保険料を分けています。
傷害保険における職業区分の例は、以下の通りです。
傷害保険における職業の区分
- A級職:事務職、営業職、医師など危険の少ない職業
- B級職:農林作業者、建設作業者など危険の多い職業
※保険会社によって区分が異なります
B級職のほうがケガをするリスクが高い職業であると考えられるため、傷害保険の保険料は高くなります。
傷害保険に付帯できる特約
傷害保険には、特約を付帯することで補償を手厚くできます。
傷害保険に付帯できる特約の例は、以下の通りです。
| 個人賠償責任特約 | 偶発的な事故が原因で他人にケガをさせた・持ち物を破損したなどの「法律上の賠償責任を負った」場合に保険金が支払われる |
|---|---|
| 携行品損害特約 | カメラや衣服、レジャー用品などの携行品が偶然の事故(盗難・破損・火災)が原因で損害があった場合に保険金が支払われる |
| 救援者費用特約 | 旅行中に航空機・船舶が遭難した場合に発生した「遭難救助費用・移送費用・交通費・宿泊費」などを補償する特約 |
| 受託品賠償責任特約 | 他人から預かっている受託品(財物)を破損・紛失して「法律上の賠償責任を負った」場合に保険金が支払われる特約 |
| ホールインワン・アルバトロス費用特約 | ゴルフのプレー中にホールインワンやアルバトロスを達成した際に発生する、記念品購入や祝賀会の開催費用を補償する特約 |
| 天災危険補償特約 | 地震や噴火、津波によりケガをした場合も補償の対象となる特約 |
| 特定感染症(補償) | エボラ出血熱やコレラ、ペストなどの感染症による後遺障害や入院、通院を補償する特約 |
ここでは、傷害保険に付帯できる特約のうち選ばれることが多い「個人賠償責任保険特約」と「携行品損害特約」について解説します。
個人賠償責任特約
個人賠償責任特約とは、日常生活における偶発的な事故が原因で他人にケガを負わせたり、他人のモノを壊したりしたときの損害賠償を補償する保険です。
支払われる保険金の上限(保険金額)は、1〜3億円が一般的です。
例えば「お店で代金を払う前に、売り物を落として壊してしまった」「飼い犬が他人を噛んでケガをさせてしまった」などのケースで保険金が支払われます。
また商品によっては示談交渉サービスが付いており、事故相手との解決に向けた交渉を保険会社に代行してもらえる場合があるのです。
なお、自転車保険に加入せずとも、傷害保険を含む損害保険に個人賠償責任特約を付帯すると加入義務を果たしていることになります。
携行品損害特約
携行品損害(補償)特約とは、カメラやバッグ、衣服などの携行品が盗難されたり、破損したりしたときの補償です。
盗まれたり壊れたりした持ち物の時価額または修理費用のどちらか低い金額から、免責金額を引いた額が保険金として支払われます。
免責金額とは、自己負担する金額のことであり、5,000円や10,000円などに設定されるのが一般的です。
また支払われる保険金は、10万円や30万円などの上限があります。
例えば、保険金額が10万円、免責金額5,000円の携行品損害特約に加入している方が、時価30,000円のバッグを盗まれてしまった場合、30,000円−5,000円=25,000円の保険金が支払われます。
- 前田 祐治
- 関西学院大学教授
傷害保険と医療保険の違い
ケガを治療するための入院や手術は、傷害保険だけでなく民間の保険会社が取り扱う医療保険でも備えられます。
傷害保険と医療保険のどちらでケガに備えるべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。
そこで、ここでは民間医療保険と傷害保険(普通傷害保険)の違いを解説します。
以下の表は、それぞれの特徴を簡単にまとめたものです。
| 傷害保険 | 医療保険 | |
|---|---|---|
| 保障(補償)内容 |
|
病気やケガによる入院・手術 など |
| 保険料 | 職業に応じて変わる | 年齢・性別などに応じて変わる |
| 加入時の告知の有無 | 職業を告知 | 健康状態や過去の病歴を告知 |
| 付帯できる特約 | 主に賠償責任や携行品の損害を補償する特約 | 主に病気の治療を保障する特約 |
それぞれについて解説していきます。
保障(補償)内容
傷害保険は、急激・偶然・外来のケガによる入院や手術、通院を補償する保険です。
また事故によるケガで死亡したり、後遺障害を負ったりしたときも保険金が支払われます。
通院の補償は、入院や手術をしていなくても通院1日目から補償してくれるのが一般的です。
その一方で、病気による入院や手術などは基本的に補償されません。
医療保険は、ケガだけでなく病気による入院や手術も保障されますが、通院は基本的の対象外です。
退院したあとの通院であれば、特約を付けることで保障される場合があります。
保険料
傷害保険は、主に職業に応じて保険料が変わります。
同じ分類の職種の方が同じ補償プランを選べば、年齢や性別などが異なっても保険料は同じです。
一方で医療保険は、被保険者となる方の性別や年齢に応じて保険料が変わります。
年齢を重ねていくと、一般的に病気やケガをするリスクが高くなるため、医療保険の保険料も高くなります。
また、保険の対象となる方の健康状態によっては、保険料が割増となる場合があるのも医療保険の特徴です。
加入時の告知の有無
傷害保険は、加入するときに職業を告知する必要はあるものの、現在の健康状態や過去一定期間にかかった病気などを告知する必要はありません。
医療保険は、現在の健康状態や過去一定期間にかかった病気などを告知し、保険会社の診査を受ける必要があります。
すでに持病を抱えている方や過去に大病を患った経験がある方は、医療保険への加入を断られることがあります。
健康状態に不安がある方は、加入時に健康状態を告知する必要がない傷害保険を選ぶのも方法の1つです。
付帯できる特約
傷害保険には「個人賠償責任特約」や「携行品損害補償特約」など、主に損害を補償する特約を付帯できます。
一方で医療保険は、所定の先進医療の技術料を保障する「先進医療特約」や、がんと診断されたときに給付金が支払われる「がん診断特約」など、主に病気を治療するための特約を選択できます。
傷害保険の選び方
傷害保険に加入したい場合、どのように選べば良いのでしょうか?
ここでは、傷害保険を選ぶときのポイントを解説します。
具体的には、以下の3点です。
-
被保険者の範囲を適切に設定する
-
どのケガに備えたいのか考える
- 付帯する特約を選ぶ
傷害保険は「本人型」「夫婦型」「家族型」が選べるため、誰のケガに備えるのかを考えて選ぶことが大切です。
例えば、家族構成が夫婦と別居している未婚の子どもであるとしましょう。
本人型の傷害保険を3本契約するよりも、家族型の傷害保険に加入したほうが保険料を抑えられる可能性があります。
傷害保険のなかには、旅行やレジャー、乗り物の運転中などさまざまな場面でのケガを補償するものがあります。
例えば、自転車を運転するときのケガに備えたいのであれば、交通事故傷害保険や自転車保険を選ぶと良いでしょう。
また傷害保険は、特約を付帯することでケガ以外のリスクにも備えられます。
もし小さな子どもがいるのであれば、個人賠償責任特約を選ぶことで、他人をケガさせたりお店のモノを壊したりしたときの損害賠償に備えられます。
ケガの他に備えるべきリスクがないかを考えたうえで、付帯する特約を選ぶのがおすすめです。
傷害保険の必要性が高いと考えられる人
傷害保険の必要性が高いと考えられる人の例は、以下の通りです。
上記の方にとって、傷害保険の必要性が高い理由を解説します。
スポーツやレジャーをする機会が多い人
「毎週サッカーをしている」「頻繁に登山に行く」といった方は、ケガをするリスクが高いと考えられます。
そのためスポーツやレジャーをする機会が多い人ほど、傷害保険の必要性は高いといえます。
ただし疲労骨折のように緩やかに発生するケガは、傷害保険の補償対象外です。
また「骨折治療中にもかかわらずボールを蹴って悪化した」など、結果を予測できるケガをしても保険金は支払われません。
傷害保険の補償対象外となるケガを理解したうえで、ご自身の身体の状態に合わせて適切にスポーツやレジャーを楽しむことが大切です。
- 前田 祐治
- 関西学院大学教授
高齢者
高齢者は、筋肉の衰えをはじめとした運動機能の低下によって、若い人よりもケガをするリスクが高くなるため、傷害保険を検討すると良いでしょう。
また傷害保険は、年齢が保険料に影響しません。
年齢を重ねると保険料が高くなる医療保険に加入するよりも、保険料負担を抑えてケガに備えられる可能性があります。
持病がある人・過去に大病になった経験がある人
傷害保険であれば、加入するときに健康状態や病歴を告知しなくてよいため、健康に不安がある方でも加入しやすいです。
「持病があるから医療保険には加入が難しいけれども、せめてケガには備えたい」と考えている方は、傷害保険を検討すると良いでしょう。
ただし傷害保険は基本的にケガのみの補償であり、病気を治療するために入院や手術をしても保険金は支払われません。
病気による入院手術に備えたい方は「引受基準緩和型の医療保険」や「無選択型の医療保険」を選ぶのも方法です。
- 「引受基準緩和型の医療保険」とは?
- 保険会社へ告知する項目が少なく持病がある方でも申し込みやすい医療保険
- 「無選択型の医療保険」とは?
- 健康状態に関する告知や医師の診査がなくても加入できる医療保険
まとめ
傷害保険は、骨折ややけど、全身打撲など「急激・偶然・外来」を満たした事故によるケガでの入院や手術、死亡などを補償する保険です。
ただし「疲労骨折」や「医学的所見を確認できないむち打ち」などは補償されません。
傷害保険には「本人型」「夫婦型」「家族型」があり、1つの契約で複数人のケガに備えられます。
誰のケガに備えるのかを考えたうえで、加入する傷害保険の種類を選ぶと良いでしょう。
また「個人賠償責任保険」や「携行品損害特約」などを付帯することで、ケガ以外のリスクに備えることも可能です。
特に自転車保険への加入が義務付けられている自治体で自転車を運転するのであれば、 個人賠償責任特約を付帯するのも方法です。
事故によるケガは、誰でも負う可能性があります。生活においてケガをする可能性があるのであれば、傷害保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。