がんは、日本人の2人に1人はかかると言われている非常に身近な病気で、以下の2つに大分類されます。
がんの分類
- 悪性新生物
- 上皮内新生物(じょうひないしんせいぶつ)
一般的によく言われるがんは悪性新生物を指し、転移の可能性も高いことが特徴です。一方、上皮内新生物は分かりやすく言えば「がんの芽」であり、この段階で発見できれば転移の可能性がないことが特徴です。
また、この2つには「がん保険が適用されるか否か」という点においても大きな違いがあります。
この記事では、悪性新生物と上皮内新生物の違いについてまとめています。がん保険を検討している人は、しっかりと確認しておきましょう。
がん保険そのものについて詳しく知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください。
上皮内新生物(上皮内がん)と悪性新生物の違いとは?
参照:がん対策のススメ ニュースレター|がん対策推進企業アクション
上皮内新生物(上皮内がん・上皮内腫瘍)とは、臓器の一番外側にある「上皮」の内部にできた「できもの=新生物」のことを指し、「悪性新生物(がん)の一歩手前の状態」です。
一方で、発見が遅れて上皮内新生物(上皮内がん)が悪性化すると、上皮のすぐ下にある「基底膜(きていまく)」を突き破り、より奥深くへと浸潤します。上皮内新生物が臓器内の粘膜筋板を越えて浸潤してしまった段階を「悪性新生物(浸潤がん)」と呼びます。
上皮内新生物と悪性新生物の違いは、以下の通りになります。
上皮内新生物 | 悪性新生物 | |
---|---|---|
転移の可能性 | なし※ | あり |
主な治療方法 |
|
|
※ただし悪性化すると悪性新生物へと進行する可能性が高い
上皮内新生物は、他の部位や臓器に転移する可能性はほとんどなく、この段階で発見できれば皮膚や粘膜の浅い部分を削る・切除手術を行うことで完治する可能性が高い病気です。
治療を行う場合は手術内容に応じた費用が必要となりますが、がん保険の種類によって「上皮内新生物と診断された場合は保障が適用されない」可能性があります。
そのため、がん保険に加入する際は、上皮内新生物でも保障範囲になるのか、事前に保障内容にしっかりと目を通しておくことが重要です。
上皮内新生物と診断される割合はどれくらい?
※香川県のみ2014年集計値、それ以外の全都道府県は2015年集計値※大腸(結腸・直腸)・結腸・直腸は粘膜がんを含む参照:国立がん研究センターがん情報サービス/全国がん罹患モニタリング集計2015年罹患数・率報告(平成31年3月)
実際にがんと診断された人のうち、上皮内新生物と診断される割合を統計データで確認していきましょう。
上記のデータを見ると、2015年にがんと診断された約94万人のうち、10.1%(およそ9.5万人)が上皮内新生物(上皮内がん)と診断されています。
中でも、女性は女性特有のがんで上皮内新生物と診断されるケースが多いため、保障内容に上皮内新生物が含まれているがん保険を選ぶことをおすすめします。もしくは、女性特有の病気に対して手厚い保障を受けられる女性保険も検討してみるのもいいでしょう。
がん保険における、上皮内新生物の保障パターン
がん保険において、上皮内新生物にの保障パターンは以下の3パターンです。
上皮内新生物と診断された場合は、病変部分を浅く削る手術を行うことで完治可能ですが、手術内容によって費用が大きく異なります。
上皮内新生物が保障適用されるかは保険会社ごとによって異なるため、がん保険を選ぶ際は保障内容にまで目を通してどの保険を選ぶかが重要です。
パターン1. 保障対象外
上皮内新生物(上皮内がん)と診断された場合は、保障の対象外となるがん保険もあります。
この点を知らずに上皮内新生物が保障対象外のがん保険に加入し、万が一のときに保障が適用されずトラブルとなるケースがあります。
こういったトラブルを未然に防ぐには、あらかじめ上皮内新生物と診断された場合に保障対象となるのか確認しておくことが重要です。
ファイナンシャルプランナー(FP)に相談する際も「この保険は上皮内新生物と診断された場合でも保障は受けられますか?」と確認し、保険内容のどの部分にその記載があるかを確認しておくことをおすすめします。


パターン2. 一部保障
上皮内新生物(上皮内がん)と診断された場合に、悪性新生物と比べて保障内容が薄くなっているがん保険もあります。
具体的に言えば、以下のように上皮内新生物と診断されたときの診断給付金の減額や、支払限度の適用回数の違いです。
保険会社A | 保険会社B | |||
---|---|---|---|---|
診断種別 | 悪性新生物 | 上皮内新生物 | 悪性新生物 | 上皮内新生物 |
診断給付金 | 50万円 | 5万円 | 1回につき50万円・100万円・200万円 |
1回につき25万円・50万円・100万円 ※がん診断給付金額の50% |
支払限度 | 期間内に1回限り | 期間内に1回限り | 1年に1回、通算6回まで | 1回限り |
※保険サービスの内容によって保障内容は異なります
上皮内新生物の場合は診断給付金の支払い条件が厳しくなっている場合もあるので、がん保険を選ぶ際は給付金の金額とあわせて、支払い条件も事前に確認して選ぶことが重要です。
パターン3. 同等保障
上皮内新生物・悪性新生物のどちらと診断された場合でも同等の保証が適用されるがん保険もあります。
このケースの場合、保険料は高めに設定されていますが、上皮内新生物と診断されても一般的ながんと同じ保障が受けられるので、万が一のときでも安心です。
「上皮内新生物と診断される割合はどれくらい?」で具体的なデータを例に挙げましたが、上皮がんと診断される可能性が高い傾向にある女性は、このタイプのがん保険に加入すると安心です。
上皮内新生物のよくある質問 Q&A
最後に、上皮内新生物についてよくある質問にお答えします。
上皮内新生物によくある質問
Q. どうして上皮内新生物は転移の可能性が少ないの?
A.上皮の内部にできた上皮内新生物(上皮内がん)の場合、血液やリンパ液などの転移するための移動手段までがんが進行(浸潤)していないためです。
悪性新生物と上皮内新生物の違い | 転移のイメージ |
---|---|
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- 「転移」とは?
- 悪性新生物(がん)が血管やリンパ管にまで浸潤し、血液やリンパ液とともに別の部位や臓器、器官へと移動して増殖すること
悪性新生物がリンパ管に入ってしまうと「リンパ節転移」、血管に入ってしまうと血液に混じって全身に運ばれ、体中の至るところへ転移する可能性のある「遠隔転移」へとつながります。
一方、上皮内新生物と診断された場合は、他の部位や臓器への転移手段がないため、病変部分だけを取り除くことができれば転移の心配もなく完治可能と言われています。
ただし、上皮内新生物が悪性化すると一般的な「がん」へと進行してしまうので、早期発見・早期手術が重要となってきます。
Q. 女性は上皮内新生物になりやすい?
A.個人差はあるものの、子宮頸がん等の女性特有のがんは上皮内新生物である場合が多いと言われています。
「上皮内新生物と診断される割合はどれくらい?」でご紹介したように、女性は上皮内新生物と診断される割合が高いことがわかっています(子宮・子宮頚部参照)。
がん保険を選ぶ際は、上皮内新生物の場合でも、一般的ながん(悪性新生物)と同等の保障が適用されるタイプのがん保険を選ぶと、万が一のときでも安心です。もしくは、女性特有の病気に対して手厚い保障を受けられる女性保険も検討してみるのもひとつの手です。
Q. 上皮内新生物の保障が手厚いがん保険は?
A.がん保険の種類は非常に数が多く、保障内容によって給付金も様々ですが、上皮内新生物が保障対象になるがん保険を選択しましょう。
さきほど説明したように、上皮内新生物が保障対象になるかはがん保険の商品によって異なります。
上皮内新生物に罹患した場合も保障されたいのか、悪性新生物に罹患した場合のみ手厚く保障を受けたいのかなど、人によってがん保険に求める内容は異なります。まずは自分自身がどういった事態に備えておきたいのかを明確にイメージし、そのイメージに適したがん保険を選ぶことが大切になってきます。
がん保険を選ぶときは必ず、プロの目線から的確なアドバイスや相談に乗ってくれる「ファイナンシャルプランナー(FP)」に相談してから決めることをおすすめします。


まとめ
上皮内新生物(上皮内がん)はがんの一種ですが、転移の可能性がなく病変部分を取り除くことができれば完治可能な病気です。
加入しているがん保険の内容によって、上皮内新生物(上皮内がん)と診断では給付金が受け取れない、もしくは減額されたりと、保障の対象外や一部保障といったケースがあります。
これらを理解した上で、がん保険を選ぶ際は保障内容を事前にしっかりと確認して加入検討することが大切です。
がん保険を選ぶときのポイントまとめ
- 保障対象に、上皮内新生物は含まれているか
- 上皮内新生物と診断された場合、給付金の金額や回数はどれくらいか
- 上皮内新生物と診断された場合、支払い条件はどうなっているか
がん保険はすべての手術に対応できる万能なサービスではありません。
がん保険の保障条件をよく確認しないまま月々の支払い保険料だけで選んでしまうと、万が一の場合に備えられない可能性があります。
素人では自分に合った保険商品の判断が難しい場合もあるため、保険に精通しているファイナンシャルプランナー(FP)に相談して、プロの目線でのアドバイスをもらって保険商品を検討することをおすすめします。

