日本は、世界有数の地震大国です。
世界の0.28%という少ない国土面積であるのに対し、地震の発生回数の割合は、全世界で発生する地震の約18.5%と非常に高い値を占めています。
また、日本国内では30年以内に南海トラフ地震や首都直下地震など、マグニチュード7を超える大規模地震が発生する可能性が70%を超えているとされています。
地震大国である日本で暮らす以上、地震に対する備えは必要不可欠です。地震対策で備えておきたいポイントをまとめてご紹介します。
令和2年、震度4以上を観測した地震は45回
気象庁が公開するデータによると、令和2年(2020年)に観測された震度4以上の地震は45回、最大震度5弱以上を観測した回数は7回となっています。
また、令和元年(2019年)では震度4以上の地震が40回、最大震度5以上の地震は9回と、大型の地震が頻繁に発生していることがわかります。
記憶に新しい「平成28年(2016年)熊本地震」は、マグニチュード7.3、最大震度7の数値を記録し、九州地方を中心に甚大な被害をもたらしました。
このような大型地震でなくとも、日本国内では頻繁に地震活動が観測されているため、万が一の場合に備えて、今のうちから地震対策を講じておく必要性は高いといえるでしょう。
いつ起きるか分からない! 8つの地震の対策方法
地震はいつ起きるか予測不能です。今のうちから地震対策を行っておきましょう。
地震の対策方法
本章では、東京消防庁が提唱する10の地震対策を参考にして、地震に対して備える方法をご紹介します。
自分の身の安全を守るための対策
自身が発生した場合に、自分や家族の身の安全を守るための対策として次の3つが挙げられます。
自分の身の安全を守るための対策
1. 家具類を固定する
地震の発生に備えて、自宅や仕事場の家具類を固定して、転倒・落下・移動防止対策を行っておきましょう。
家具類の固定方法
- L字金具やモクネジなどを使って壁面や柱にしっかりと固定する
- 二段重ねの家具類は上下を複数の平型金具などで固定しておく
- ガラス部にはガラス飛散防止フィルムを貼っておく
- 食器棚などの食器類・グラスなどのガラス製品が飛び出さないように防止枠を設置する
- 戸棚などの開き扉は、掛金などをかけて揺れで勝手に開かないようにする
- 棚類の上など、高い位置に物を重ねて置かないようにする
自身が発生した際に屋内にいる場合、家具類の転倒や落下などで、周囲の物や中身が飛び出したり破損したりする恐れがあります。
金具を使って家具類をしっかりと固定し、収納物が飛び出さないように防止枠や掛金をつけておくようにしましょう。
また、家具類が転倒してガラス類が飛散する恐れもあるので、ガラス飛散防止フィルムを貼っておくのもおすすめです。

- 小宮 崇之
- (株)コミヤ保険サービス代表取締役/損害保険プランナー
家具類によってケガをしないために、家具類の固定はとても大事なことですが、それだけではなく、寝室に大きな家具や照明を置かないことや大きな家具は倒れても問題がない場所に配置するなど、日頃から自分の身の安全を守るための対策をしておきましょう。
2. 懐中電灯・スリッパ(スニーカー)をすぐに使えるようにする
地震対策として、懐中電灯をすぐに使える位置に常備しておくことも大切です。
ガラスの破片や停電による暗闇での転倒の危険性が考えられるので、ベッド脇やソファ横など、すぐに取り出せるような場所に懐中電灯を置いておきましょう。
また、ガラスが飛散した場合に備えて、スリッパやスニーカーなどを用意しておくと安心です。
3. 家屋や塀の強度を確認しておく
地震が発生して外へ脱出する際、家屋や塀の倒壊で逃げるのが困難となってしまう恐れがあります。
事前に耐震診断を受けておき、必要に応じて補強・リフォームをしておくようにしましょう。
また、戸建てでブロック塀やコンクリート製の塀がある場合、地震の揺れで崩れて二次災害を招く恐れがあるので、こちらも合わせて補強するようにしてください。
初動対応のための対策
地震が発生してから初動対応をするためには、次の対策が挙げられます。
初動対応のための対策
4. 火災発生の防止と早期発見
地震発生後は、物が散乱することから非常に火事が起きやすい環境となっているため、地震発生後の初動対策として、火災発生の防止と早期発見が大切です。
住宅用火災警報器や感震ブレーカーを設置して、普段使わない家電製品のコンセントを抜いておくようにしてください。
また、万一火災が発生した場合に備えて、消火器の準備や、お風呂の水を汲み置きしておく習慣も身につけておきましょう。

- 小宮 崇之
- (株)コミヤ保険サービス代表取締役/損害保険プランナー
地震が起きると、家財が倒れたまま多くの人が避難しますが、避難時にブレーカーを落とさない人が多いことから、発生しています。東日本大地震では、地震による火災の半数が電気が原因と言われています。自宅から避難する際には、必ずブレーカーを落とすことを忘れないようにしましょう。
5. 非常用品を備える
地震の発生に備えて防災バッグを準備し、置く場所を決めておくことも大切です。
防災バッグには、以下の持ち物を備えておくと良いでしょう。
防災バッグの中身
- 貴重品(印鑑・預金通帳など)
- 救急用品(ばんそうこう・包帯・消毒液など)
- 2~3日分の食料と飲料
- 防災ラジオ
- モバイルバッテリー、ポータブル電源
- 防寒具、軍手、スリッパなど
ネット通販サイトで防災セットなどが販売されているので、そちらを購入した上で、足りないものを適宜追加しておくのがおすすめです。
情報共有や防災知識に関する対策
地震発生に備えて、事前の情報共有や防災知識を身に着けておくことも大切です。
具体的な対策方法として、次の3つのポイントを抑えておきましょう。
情報共有や防災知識に関する対策
6. 家族で避難場所などを話し合っておく
地震が発生した際に備えて、家族で避難場所について事前に話し合っておきましょう。
万一の事態が発生したときは家族の安否が気になるもの。
ですが、地震は発生予測ができないため、仕事や学校などで自宅から離れているケースが多く、場合によっては帰宅困難となってしまうことも考えられます。
あらかじめ避難場所について話しておけば、地震が落ち着いた後で混乱することなく家族と落ち合うことができます。
また、地震発生時における家族内での役割分担(出火防止、初期消火など)を決めておくと、より安全に脱出を図ることができるでしょう。
7. 地域の危険性を把握しておく
各自治体の防災マップなどを活用して、ご自身が住む地域における危険性の高い場所についても確認しておきましょう。
地震発生時はパニックに陥りやすく、意図せず危険地域に向かってしまうことも考えられます。
市区町村の公式Webサイトに水害ハザードマップや地震被害シミュレーションといった特設ページが用意されていることも多いので、そちらと照らし合わせながら避難経路をご確認ください。
8. 防災情報のアンテナを張っておく
地震発生に備えて、防災情報に関するアンテナを張っておきましょう。
具体的には、常日頃からニュースなどで防災に関する情報収集を行う、各地域で行われている防災訓練に参加することなどが挙げられます。
場合によっては救助活動を行うことも考えられるので、応急救護や緊急連絡の方法について身につけておくことも重要です。
いずれも今のうちから取り組める対策方法なので、万一の事態に備えて積極的に準備を進めるようにしてください。
実際に地震が起きたときに取るべき行動
実際に地震が起きたときに備えて、次の行動を取れるように意識しておくようにしましょう。
地震発生時に取るべき行動
- 机の下にもぐるなど自分の身を守る
- 火を使用していたら直ちに消し、ガスの元栓を閉める
- ドアや窓を開けて逃げ道の確保をする
地震が発生したら、机の下に潜るなどして、とにかく自分の身を守ることを最優先に行動しましょう。
また、地震発生時に火を使っていた場合は、直ちに火器の使用を停止して、ガスの元栓を閉めてください。
また、地震による家屋の倒壊などで脱出できなくなることを防ぐため、ドアや窓を開けて避難経路の確保も重要です。
地震の揺れが収まった時に取るべき行動
- 家族の安全を確認する
- 靴を履いてガラスの破片などから足を守る
- 非常用品を手近に用意する
- ラジオなどで情報を確認する
- 家屋倒壊などがあれば避難する
地震の揺れが収まったら、家族の安全を確認して、非常用品を手近に用意した上で避難できる状態を作りましょう。
家具などの転倒で足元にガラスが飛散していることも考えられるので、スリッパやスニーカーを履くなどして、足を守ることも忘れないようにしてください。
また、スマホの電波が入らなくなる事態も考えられるので、防災ラジオなどを使って情報を確認し、家屋倒壊の恐れがある場合は外部へ避難するようにしましょう。
地震による被害は地震保険で備える
地震による家屋や家具類の被害は、地震保険に加入することで備えられます。
自宅に対する保険として「火災保険」に加入している人は多いですが、火災保険だけでは地震発生時の被害に対しては一切の補償がなされません。
地震保険は単独で加入することができず、必ず火災保険とセットで契約する必要があります。
損害保険料率算出機構の調査によると、2020年度に新規で契約された火災保険の68.3%に地震保険が付帯されています。2011年度の地震保険付帯率は53.7%であったため、人々の地震に対する防災意識は高まってきていると考えられます。
※出典:損害保険料算出機構「グラフで見る!地震保険統計速報」
なお、地震保険で支払われる保険金額の目安は、補償対象となる建物の損害状況によって、次のとおりに変動します。
区分 | 支払われる補償金額 | 認定基準 | ||
---|---|---|---|---|
補償金額の割合 時価額に対しての限度額 |
建物 | 家財 | ||
時価額に対しての損害額(※1) | 消失、流失した延べ床面積(※2) | 損害額(※3) | ||
全損 | 100% | 50%以上 | 70%以上 | 80%以上 |
大半損 | 60% | 40%以上50%未満 | 50%以上70%未満 | 60%以上80%未満 |
小半損 | 30% | 20%以上40%未満 | 20%以上50%未満 | 30%以上60%未満 |
一部損 | 5% | 3%以上20%未満 | 床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合 | 10%以上30%未満 |
※1…地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額
※2…焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積
※3…地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額に対して
参照:地震保険制度の概要|財務省
2011年に発生した平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、約82.4万件の地震保険契約に対して、約1兆2,881億円の保険金が支払われました。※出典:日本地震再保険株式会社「地震再保険金支払状況」
ただし、地震保険に加入していても、有価証券や預貯金証書、自動車や高価な宝石類に対しては補償が適用されないのでご注意ください。

- 小宮 崇之
- (株)コミヤ保険サービス代表取締役/損害保険プランナー
しかし、地震保険以外に地震の際に補償される保険はありません。地震で被害を受けた際に、地震保険が大きな金銭的な助けになることは間違いありませんので、加入を検討しましょう。
また、地震保険は、地震保険料控除という所得控除の対象となっておりますので、所得税、住民税の還付を受けることができますので、必ず年末調整や確定申告で申請しましょう。
まとめ
日本は世界有数の地震大国で、地震発生による被害を受ける可能性が非常に高い状況です。
いつ発生するか予測ができないため、万一の事態に備えて、今のうちから地震対策を講じておかなければなりません。
また、地震による家具類の被害等については、地震保険に加入して備えておく必要があるので、よく検討しておきましょう。