高齢者が安心して暮らす上で、自治体の支援制度は心強い存在です。
しかし、どんな支援を受けられるのかよくわかっていない方も多いかと思います。
各自治体では、介護費用の助成や福祉サービス、さらには日常生活のサポートなど、幅広いサービスを提供しています。
この記事では、高齢者支援制度が充実している自治体を地域別にまとめて紹介していきます。
高齢化の現状
2023年10月1日時点で、日本の総人口に占める65歳以上の人口は3,624万人です。
高齢化率は29.0%と過去最高水準に達しており、約30年後の2055年には37.6%に達することが予測されています。
参照:令和5年版高齢社会白書(全体版)|内閣府
一方で生産年齢人口(15〜64歳)は1995年にピークを迎えて以降、減少に歯止めがかかっていない状況です。
この状況が続けば、2055年には高齢者1人を15〜64歳の中から1.4人で支えることになるため、若い世代の負担が重くなっていくことが考えられます。
このような背景を踏まえ、各自治体では、医療、介護など日々の生活に必要不可欠なサービスを充実させるだけではなく、高齢者が自立した生活を続けられるような支援制度を整備しています。
健康な高齢者が増えれば、若い世代の負担を減らすことにもつながるでしょう。
高齢者支援制度が充実している街
各自治体は、高齢者の生活をサポートするために福祉サービスや日常生活のサポートなど、さまざまな取り組みを行っています。
ここからは「高齢者支援制度が充実している街」としてユニークな施策を展開している市区町村の政策を、地域別にまとめて紹介していきます。
自らが住んでいる街にはどのような支援制度があるのか、確認してみましょう。
なお、高齢者支援制度を利用するためには、基本的に自分自身で手続きが必要です。
気になる制度があった場合は、お住まいの地域を管轄する自治体窓口や市区町村の公式ホームページから詳細をご確認ください。
関東編
関東地方の自治体独自の高齢者支援制度
東京都三鷹市 |
- 99歳以上の方に1万円を贈呈する「敬老金の贈呈」や、65 歳以上で住民税非課税世帯の方向けに、市内公衆浴場(4ヶ所)で利用できる「入浴券30枚」を配付する「公衆浴場無料入浴事業」などの助成が充実している
- 65歳以上の一人暮らしの方にボランティアの方が週1回電話をして、安否確認や話し相手をする「電話訪問」を実施
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東京都港区 |
- 高齢者が趣味や交流の場など地域活動の情報を検索できる港区高齢者地域活動情報サイト「スタみな!」の運営や、区民の交流施設「いきいきプラザ」の設置など、高齢者の生きがいづくり支援に積極的に取り組んでいる
- 77歳、80歳、88歳など節目の年齢で長寿と健康をお祝いする「スマイル商品券(区内共通商品券)」を配布
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埼玉県さいたま市 |
- 認知症の早期発見を促すべく、1年に1回、65際以上の方が認知症簡易スクリーニング検査を受けられる「もの忘れ検診」を実施中
- 「さいたま市シルバーポイント事業」として、60歳以上の方はボランティア活動を行うと、ポイントが付与される。貯まったポイントはボランティア活動の奨励金や市内の指定店舗で使用できる商品券に交換などが可能
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千葉県千葉市 |
- 老老介護などが多い現状を踏まえて、経験豊富なホームヘルパーや自宅訪問、電話、オンラインなどの方法で介護方法のアドバイスをする「家族介護者支援センター」を設置している
- 高齢者の孤立防止を目的として、三世代家族の同居や、近居に必要な費用(住宅の購入費用や引っ越し費用など)の一部を最大100万円まで助成する「千葉市三世代同居・近居支援事業」を実施している
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神奈川県相模原市 |
- 65歳以上で寝たきりの人に対して、理美容代の助成券(1枚3,000円)を最大6枚交付する「出張理美容サービス」や歯科医師による訪問治療を受けられる「在宅訪問歯科保健診療」などがある
- 認知症の人などの行方がわからなくなった場合の早期発見を支援する「認知症高齢者・障害者等SOSネットワークシステム」を構築している
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中部・近畿編
中部・近畿地方の自治体独自の高齢者支援制度
市区町村名 |
支援策・ユニークポイント |
愛知県名古屋市 |
- 「いきいき教室」にて、65歳以上を対象に健康管理や、音楽療法などのセミナーを実施中
- 年2回、玉入れやパン食い競争、握力測定などを行う「高齢者向け体力測定会」などのユニークな取り組みを実施している
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石川県金沢市 |
- IoTを活用した見守りシステムを展開することで、認知症の人やその家族が安心して外出できる環境を整備している(システム利用料や機器購入費用は基本的に有料)
- 寝たきりや重度の認知症でかつ一人暮らしの方向けに、無料で「寝具乾燥消毒サービス」を提供している
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大阪府大阪市 |
- 固定電話に設置できる自動通話録音機の無償貸与や緊急通報装置の貸与など、高齢者だけの世帯でも安心して生活できる環境作りに力を入れている
- スマホから利用できる認知症アプリで、認知症予防の基礎知識やイベントの情報などを配信している
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兵庫県神戸市 |
- 介護予防の一環として「フレイル(※)チェック」を無料で受けられる
※フレイルとは、病気ではないものの、筋力や心身の活力が低下している状態のこと。フレイルになると介護が必要になるリスクが高まる
- 「生涯体育大学」や「老眼大学」など、高齢者の生きがい作りにつながるユニークな取り組みを実施している
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滋賀県東近江市 |
- 1人1回、2万円を上限として補聴器の購入費用の一部を助成する事業を行っている
- 「徘徊高齢者家族支援サービス事業」にて、高齢者位置探知システムの購入初期費用について9割の助成を行っている
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北海道・東北編
北海道・東北地方の自治体独自の高齢者支援制度
市区町村名 |
支援策・ユニークポイント |
北海道札幌市 |
- 自力で除雪するのが困難な世帯に対して除雪のボランティアを行う「福祉除雪」を実施
- ボタンを押すだけで専用の受信センターにつながる通報機器を設置し、24時間体制での健康相談受付や、月1回程度の定期的な声かけに対応する「高齢者あんしんコール事業」に取り組んでいる
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北海道名寄市 |
- 高齢者の孤立を防ぐために月に1回「こんにちはレター」を配布。民生委員などが直接手渡しをするので、見守り機能も兼ねている
- 紙おむつ用ゴミ袋の支給や、寝たきり・障害などで一般的な交通手段の利用が困難な人の通院や入退院を、リフト車で送迎するサービスなど、在宅高齢者に対する福祉サービスが充実している
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宮城県仙台市 |
- 保健師・看護師・歯科衛生士などが自宅を訪問して健康管理などのアドバイスをする「訪問指導」を無料で実施している
- 高齢者の外出促進を目的として、通常の4分の1(介護保険料所得段階に応じて10分の1)の負担で公共交通機関が利用できる「敬老乗車証制度」がある
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岩手県久慈市 |
- 椅子に座りながら重りを使って行う「久慈市いきいき百歳体操」の普及活動を積極的に行っており、専門職による体操指導や体力測定などを実施している
- こうしたいノート(オリジナルエンディングノート)を作成し、配布している
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青森県青森市 |
- 対象要件を満たす方は、1年に1回無料で歯科医師による訪問歯科健康検査を受けられる
- 在宅の要介護者を日常的に介護している家族(対象要件あり)に対して、最大10万円が支給される「介護慰労金の支給」が実施されている
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中国・四国編
中国・四国地方の自治体独自の高齢者支援制度
市区町村名 |
支援策・ユニークポイント |
愛媛県松山市 |
- 公衆浴場の入浴料を1年間に50回まで無料とする「入浴料助成制度(優待割引入浴証)」を実施している
- 77歳以上の一人暮らしの方向けに、週2回乳酸菌飲料を訪問配布しながら安否確認を行う「愛の一声訪問事業」を実施している
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広島県広島市 |
- 「高齢者いきいき活動ポイント事業」を実施しており、65歳以上の方は自らの健康づくりや介護予防、ボランティア活動に取り組むことで奨励金を受け取れる
- 緊急時に通報機器のボタンを押すと、協力員や消防局の人が必要に応じて利用者宅に駆けつける「あんしん電話」の設置にも取り組んでいる
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鳥取県鳥取市 |
- はり・きゅう・マッサージ費用について、1回あたり1,000円、年間12枚まで発行できる助成制度がある
- 「ふれあい型食事サービス」や「軽度家事援助サービス」など、一人暮らしの高齢者向けのサービスが充実している
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香川県丸亀市 |
- 杖の必要な70歳以上の人に無料で杖を支給する制度や、市内の美術館などに無料で入場できる「長寿手帳」を交付する制度などがある
- 年齢に応じて10,000〜30,000円の「敬老祝金」を受け取れる制度を実施している
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山口県周南市 |
- 寝たきりの高齢者を介護している家族に対して、1ヶ月に1回、1ヶ月分の紙おむつを支給する「ねたきり高齢者紙おむつ給付」を実施している
- 一人暮らしの高齢者に向けに、電磁調理器や歩行支援用具などを一定限度額まで給付する「老人日常生活用具給付」を実施している
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九州・沖縄編
九州・沖縄地方の自治体独自の高齢者支援制度
市区町村名 |
支援策・ユニークポイント |
福岡県福岡市 |
- タクシー代や電車料金など、交通費の一部を助成する「高齢者乗車券」制度や、所定の駐車場の利用証を発行する「ふくおか・まごころ駐車場」制度など、高齢者の外出支援・社会参加につながるサービスが充実
- 老人の日に高齢者(100歳以上の人など)宅を訪問して長寿を祝うユニークな制度もある
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大分県竹田市 |
- 暮らしのサポートセンター「りんどう」を立ち上げ、高齢者が介護予防事業や生活支援サービスの新たな担い手として活躍する新しい形の地域コミュニティの拠点作りを行っている
- 健康づくりに取り組むと、活動内容に応じて商品券をもらえる「健康チャレンジ」を実施している
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長崎県平戸市 |
- 「認知症カフェ」として、認知機能の低下した高齢者や家族が気軽に集まって情報交換や相互交流などができる場を提供している
- 「平戸市高齢者いきいきおでかけ券」を配布し、在宅の高齢者や運転免許自主返納者に対して、タクシー代やバス料金などの一部を助成する事業を行っている
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熊本県八代市 |
- 高齢者のみ世帯やひとり暮らしの高齢者向けに、配食サービスを実施する「八代市食の自立支援事業」が行われている
- 認知症の進行度に応じて受けられる医療・介護サービスをまとめた「八代市認知症ケアパス」や、認知症高齢者の見守りなどに協力する店舗や事業所を掲載した「やっちろ認知症応援マップ 見守ってはいよ」などを作成し、認知症の人でも安心して暮らせる街づくりに取り組んでいる
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沖縄県那覇市 |
- 65歳以上で一人ぐらいの高齢者に対して定期的に電話連絡をし、孤立を防ぎつつ安否確認をする「ふれあいコール事業」を行っている
- 要介護4または5の高齢者を介護している家族に対して、年額10万円を一時金で支給する「家族介護慰労事業」がある
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まとめ
高齢者に対する支援は社会全体の大きな課題です。
各自治体では高齢者に対するさまざまな支援を行っています。
ただし、支援策の存在自体を知らなければ利用することはできません。
今回の記事を、お住まいの地域ではどのような支援策があるのか、確認するきっかけにしていただけますと幸いです。