遺族年金とは
遺族年金は、国民年金または厚生年金に加入している方が亡くなった時、その方が生計を維持していた遺族に対して支払われる年金のことです。
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、遺族年金の対象となる方が「自営業」「会社員」かでもらえる年金が変わります。
また、遺族年金を受け取るには「亡くなられた人の年金の納付状況」と「遺族年金を受け取る人の年齢や優先順位」などの条件があり、金額も人によって様々です。
本記事では、遺族年金の種類や金額、手続きまでの流れを分かりやすく解説していきます。
遺族年金以外の年金制度全般について詳しく知りたい方は、下記のコンテンツもぜひ合わせて参考にして下さい。
また、病気やケガなどによって一定の障害状態となった場合に年金が受け取れるようになる障害年金については下記をご参考ください。



- 山中 伸枝
- (株)アセット・アドバンテージ代表取締役/FP相談ねっと 代表
遺族年金の種類
冒頭でもお伝えしたとおり、遺族年金には以下の2種類があります。
死亡した方が自営業者の場合は「遺族基礎年金」、会社員の場合は「遺族基礎年金+遺族厚生年金」が支給されます。
それぞれで支給条件や支給金額の計算方法が異なるので、各項目について解説します。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金・厚生年金に加入している方が亡くなった場合に必ず支給される年金です。
遺族基礎年金が支払われるための「死亡した人の要件」と「支払われる人の要件」は以下のとおりです。
死亡した人の要件 | 支払われる人の要件 |
---|---|
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|
参照:遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)|日本年金機構
遺族基礎年金は、国民年金または厚生年金に加入しており、保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上ある方が亡くなった場合に遺族に対して支給されます。
しかし特例として、令和8年4月1日以前の場合は、死亡日に65歳未満であれば死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間の内に、保険料の滞納がなければ受けられます。
支払われる方の要件は、子供がいる配偶者または子供であることが条件です。
遺族基礎年金における「子供」の定義は、分かりやすくお伝えすると高校3年生の3月31日まで、もしくは障害等級1級または2級の20歳未満の方です。
上記の要件を見て分かるとおり、子供がいない配偶者(夫もしくは妻)の場合、遺族基礎年金は支給されず、代わりに「寡婦年金」や「死亡一時金」などが支給される可能性があります。
これらの制度については「その他、死亡により支給されるお金」で詳細を解説しているのでご確認ください。

- 山中 伸枝
- (株)アセット・アドバンテージ代表取締役/FP相談ねっと 代表
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金に加入している会社員・公務員の方が亡くなった場合に支給される年金で、遺族基礎年金にプラスして支払われます。
遺族厚生年金が支払われるための「死亡した人の要件」と「支払われる人の要件」は以下のとおりです。
死亡した人の要件 | 支払われる人の要件 | 支払われる人の優先順位 |
---|---|---|
短期要件 1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき 2. 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき 3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき※ただし、遺族基礎年金と同様、死亡した者について、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること ※特例として、令和8年4月1日前の場合は、死亡日に65歳未満であれば死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間の内に、保険料の滞納がなければ受けられます |
死亡した者によって生計を維持されていた、
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第1順位
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第2順位
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長期要件 4. 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき 5. 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき ※保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。 |
第3順位
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第4順位
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参照:遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)|日本年金機構
遺族厚生年金が支払われるための死亡した人の要件は、短期要件と長期要件の2種類に分けられ、それぞれで年金の支給額が変わります。
遺族厚生年金の支払い対象者は、遺族基礎年金よりも要件が広いことが特徴で、支払い対象者は妻・子供はもちろんのこと、父母や孫、祖父母までが含まれます。
ただし、それぞれで遺族厚生年金が支払われるための要件があるので、以下の簡易まとめ表をご参照ください。
遺族厚生年金の支払い対象者簡易まとめ表
- 妻:要件なし(30歳未満の場合は5年間のみ給付)
- 夫:生計を維持している人が死亡した当時に55歳以上であること
- 子・孫:18歳到達年度の末日3月31日まで、または障害等級1級・2級の20歳未満の子
- 父母・祖父母:生計を維持している人が死亡した当時に55歳以上であること
遺族基礎年金と異なり、遺族厚生年金は子供がいない家庭における配偶者に対しても支給されます。
ただし、妻が30歳未満である場合は5年間のみ年金が支給されます(仕事に就いて働ける可能性が高いため)。
また、夫が支給対象者となる場合は55歳以上であることが条件なのでご注意ください。
遺族年金の受給金額と計算式
遺族年金の各種における受給金額と計算式を確認しましょう。
遺族基礎年金で支給される金額
遺族基礎年金で支給される金額は、以下の計算式で算出されます。
遺族基礎年金の計算式
- 795,000円 + 子供1人あたりの加算
- 第1子・第2子:1人あたり228,700円
- 第3子以降:各76,200円
参照:遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構※上記は2023年4月以降の金額です
※ただし、子が遺族基礎年金を受給する場合の加算は、第2子以降について行い、子1人あたりの年金額は上記による年金額を子供の数で除した額となります
上記の計算式の通り、795,000円が基礎部分で残りは子供の人数によって支給額が変わってきます。
たとえば、子供が1人の家庭において、妻が遺族基礎年金を受給する場合は795,000円 + 第1子228,700円の合計1,023,700円となります。
なお、子供が遺族基礎年金を受給する場合は、第2子から加算を行い、算出された支給金額を子供の人数で割った金額がそれぞれの子供に支給されます。
たとえば、子供が2人の家庭において、子供が遺族基礎年金を受給する場合は795,000円 + 第2子分228,700円 ÷ 子供の人数2人という計算式で、1人あたり511,850円が支給されるということです。
以下で、家族構成ごとに支給される遺族基礎年金をまとめたので参考にしていただければ幸いです。
家族構成 | 遺族年金の年間支給額 | 計算式 | 支給対象者 |
---|---|---|---|
配偶者のみ | なし | - | 配偶者 |
配偶者+子供1人 | 1,023,700円 | 795,000円+第1子228,700円 | |
配偶者+子供2人 | 1,252,400円 | 795,000円+第1子228,700円+第2子228,700円 | |
配偶者+子供3人 | 1,328,600円 | 795,000円+第1子228,700円+第2子228,700円+第3子76,200円 | |
子1人 | 795,000円 | - | 18歳到達年度の末日3月31日を経過していない子 または 20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子 |
子2人 | 1,023,700円 ※子供1人あたり511,850円が支給 | 795,000円+第2子228,700円÷子2人 | |
子3人 | 1,099,900円 ※子供1人あたり約366,633円が支給 |
795,000円+第2子228,700円+第3子76,200円÷子3人 |
※上記は2023年4月以降の金額です※子供が3人以上いる場合は1人あたり76,200円を加算して計算を行います※子供が指定年齢を超過している場合は計算対象、支払い対象に含まれません


遺族厚生年金で支給される金額
遺族厚生年金で支給される金額は、以下の計算式で算出されます。
基本的には「1:報酬比例部分の年金額(本来水準)」の式によって算出された金額となりますが、「2:報酬比例部分の年金額(従前額保障)」の式で計算した金額の方が多い場合は、2の式で算出された額が年金額となります。
1:報酬比例部分の年金額(本来水準) | {(平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数)+(平均標準報酬額×5.769/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)}× 3/4 |
---|---|
2:報酬比例部分の年金額(従前額保障) ※従前額保障とは、平成6年の水準で標準報酬を再評価し年金額を計算したもの | {(平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数)+(平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)}× 1.000(※)× 3/4 ※昭和13年4月2日以降に生まれた方は0.998 |
※平均標準報酬月額:平成15年3月までの被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月までの被保険者期間の月数で除して得た額のこと※平均標準報酬額:平成15年4月以後の被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以後の被保険者期間の月数で除して得た額(賞与を含めた平均月収)のこと参照:遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)|日本年金機構
遺族厚生年金は、上記のとおり計算式が複雑です。
正確な支給額についてはお住まいの地域の年金事務所で確認していただければと思いますが、遺族厚生年金の目安は以下のとおりです。
収入の額 (平均標準報酬額) | 厚生年金加入期間 | |||
---|---|---|---|---|
25年 | 30年 | 35年 | 40年 | |
10万円 | 123,323円 | 147,987円 | 172,652円 | 197,316円 |
20万円 | 246,645円 | 295,974円 | 345,303円 | 394,632円 |
30万円 | 369,968円 | 443,961円 | 517,955円 | 591,948円 |
40万円 | 493,290円 | 591,948円 | 690,606円 | 789,264円 |
50万円 | 616,613円 | 739,935円 | 863,258円 | 986,580円 |
※上記の金額は目安として分かりやすくするため、全て平均標準報酬額として「1:報酬比例部分の年金額(本来水準)」で計算をしています
中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算とは
遺族厚生年金には、「中高齢寡婦加算」と「経過的寡婦加算」として、年金額が加算される制度があります。
それぞれの内容は以下のとおりです。
中高齢寡婦加算 | 経過的寡婦加算 | |
---|---|---|
内容 | 次のいずれかに該当する妻が受ける遺族厚生年金(※1)には、40歳から65歳になるまでの間、年額583,400円(令和4年時点)が加算されます。 ※1 老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たしている夫が死亡したときは、死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年(中高齢者の期間短縮の特例などによって20年未満の被保険者期間で共済組合等の加入期間を除いた老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人はその期間)以上の場合に限ります |
次のいずれかに該当する場合に遺族厚生年金が加算されます。 経過的寡婦加算の金額は、昭和61年4月1日から60歳に達するまで国民年金に加入した場合の老齢基礎年金の額と合わせると、中高齢寡婦加算の額とおなじになるように決められています。 |
支給要件 |
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|
参照:遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)|日本年金機構参照:中高齢寡婦加算|日本年金機構参照:経過的寡婦加算|日本年金機構
上記を簡単にまとめると、中高齢寡婦加算は40歳以上で遺族基礎年金がもらえない妻(子供がいないなど)の年金を補うためのものです。
一方の経過的寡婦加算は、中高齢寡婦加算の対象となった妻のうち、1956年(昭和31年)4月1日以前に生まれた方に対して、65歳に達した時に支給されます。
経過的寡婦加算は、専業主婦の年金制度加入が任意であった頃に加入していなかったことで減少する老齢基礎年金を補うために作られた制度です。


遺族年金はいつからもらえる?
遺族年金は、「年金請求書」を提出してから年金の受け取り開始まで3~4ヶ月程度かかります
参照:遺族年金の請求手続きのご案内|日本年金機構
まず、「年金請求書」を近くの年金事務所へ提出すると約1ヶ月後に自宅へ「年金証書・年金決定通知書」が郵送されます。
年金証書・年金決定通知書を受け取ってから、実際に年金の受け取りが始まるまでは約50日程度かかります。
振り込みは、偶数月に2か月分振り込まれます。
遺族年金は、年金加入者が亡くなられた月の翌月分から受け取ることができます。
また、年金加入者が亡くなられてから5年以内の分についてはさかのぼって受け取ることができます。
遺族年金はいつまでもらえる?
遺族年金には、2つの種類があり、もらえる期間が異なります。
これには死亡した夫がどのような職業についていたのか、妻(配偶者)が受け取るのか、子供が受け取るのかによってももらえる期間が異なります。
妻・配偶者への遺族基礎年金の受給期間
配偶者が死亡した場合、以下の条件を満たす配偶者に支給されます。
遺族基礎年金支給の条件
- 配偶者が死亡した時点で、自身と配偶者がともに20歳以上であること
- 配偶者が国民年金の被保険者であったこと
- 自身が60歳未満であること(60歳を超えると老齢基礎年金に切り替わる)
つまり、上記の条件を満たしていれば、夫が死亡した際に妻が受け取る遺族基礎年金の受給期間は、夫か妻のどちらかが60歳を迎えるまでの年数となります。
ただし再婚した場合、その年をもって遺族基礎年金の受給が終了します。
子供への遺族基礎年金の受給期間
親(または後見人)が死亡した場合、以下の条件を満たす子に支給されます。
子供への遺族基礎年金の受給条件
- 自身が18歳未満(高校等に在学の場合は20歳まで)であること
- 死亡した親(または後見人)が国民年金の被保険者であったこと
つまり、子供が受け取る遺族基礎年金の受給期間は、子供が成人するまでの年数となります。
妻・配偶者への遺族厚生年金の受給期間
遺族厚生年金は、配偶者が再婚しない限りは基本的に一生涯受け取ることができます。
また、生計を同じにしている18未満の子がいない場合は40歳から65歳になるまでの間、上乗せとして中高齢寡婦加算を受給できます。
65歳で老齢厚生年金を受け取る場合は老齢厚生年金が支給されますが、遺族厚生年金の額が老齢厚生年金の額を上回る場合、その差額を受け取ることが可能です。老齢年金は原則として生涯受け取ることができます。
子供への遺族厚生年金の受給期間
子が受け取る遺族厚生年金は、原則として18歳(又は高校等に在籍している場合には20歳)までとなっています。
遺族年金はいくらもらえる?
遺族年金がいつまで、いくらもらえるのかについてシミュレーションを行っていきます。
万が一の場合に備えて、いくらの遺族年金が支給されるかの参考にしていただければ幸いです。
遺族年金の受給シミュレーション
死亡した人が自営業者の場合
事故や病気で亡くなられた方が「自営業者」の場合は、遺族基礎年金が遺族に対して支払われます。
遺族基礎年金は、18歳未満または20歳未満の障害状態にある子供がいる配偶者、または子供当人に対して支払われるため、子供が指定年齢に達するまでは支払いが継続されます。
たとえば、「夫(50歳)・妻(40歳)・長男(15歳)・次男(10歳)」の4人家族で、自営業者の夫が亡くなった場合の遺族基礎年金の支給額は以下の通りです。
遺族基礎年金のシミュレーション(年額)
- 夫死亡から長男18歳まで(4年間):795,000円+第1子228,700円+第2子228,700円=1,229,100円
- 長男18歳から次男18歳まで(5年間):795,000円+第2子228,700円=1,023,700円
- 次男18歳以降:支払いなし
夫が死亡した時点では長男が15歳、次男が10歳なので、長男が18歳になるまでの4年間は遺族基礎年金として年額1,229,100円が支払われます。
長男が18歳に達した3月31日を過ぎると遺族基礎年金の計算対象から外れるため、次男が13歳から18歳になるまでの5年間は遺族基礎年金が年額1,004,600円支払われます。
次男が18歳に達すると遺族基礎年金の要件を満たす方がいなくなるため、その年からは遺族基礎年金が支払われなくなります。
つまり、自営業者の場合は、子供の年齢が18歳に達するまでの期間は遺族基礎年金が支払われるということです。


死亡した人が「会社員」の場合
事故や病気で亡くなられた方が「会社員」の場合は、遺族基礎年金+遺族厚生年金が遺族に対して支払われます。
遺族基礎年金は、18歳未満または20歳未満の障害状態にある子供がいる配偶者、または子供当人に対して支払われるため、子供が指定年齢に達するまでは支払いが継続されます。
一方の遺族厚生年金は、死亡した方の厚生年金加入期間の給与や報酬額をもとに計算して算出された金額が支給されます。
遺族厚生年金の計算式は複雑であるため、以下の簡易表を使ってシミュレーションを行っていきます。
収入の額 (平均標準報酬額) | 厚生年金加入期間 | |||
---|---|---|---|---|
25年 | 30年 | 35年 | 40年 | |
10万円 | 123,323円 | 147,987円 | 172,652円 | 197,316円 |
20万円 | 246,645円 | 295,974円 | 345,303円 | 394,632円 |
30万円 | 369,968円 | 443,961円 | 517,955円 | 591,948円 |
40万円 | 493,290円 | 591,948円 | 690,606円 | 789,264円 |
50万円 | 616,613円 | 739,935円 | 863,258円 | 986,580円 |
※上記の金額は目安として分かりやすくするため、全て平均標準報酬額として「1:報酬比例部分の年金額(本来水準)」で計算をしています
たとえば、「夫(50歳)・妻(40歳)・長男(15歳)・次男(10歳)」の4人家族で、厚生年金加入期間が30年、平均標準報酬額が40万円の場合に支払われる遺族厚生年金は、上記の表より「591,948円」であることがわかります。
今回の例では遺族基礎年金の支払対象でもあるため、上記の遺族厚生年金に遺族基礎年金の金額を加算した金額が支給されます。
遺族基礎年金の計算式は以下の通りです。
遺族基礎年金のシミュレーション(年額)
- 夫死亡から長男18歳まで(4年間):780,100円 + 第1子224,500円 + 第2子224,500円 = 1,252,400円
- 長男18歳から次男18歳まで(5年間):780,100円 + 第2子224,500円 = 1,004,600円
- 次男18歳以降:支払いなし
上記に遺族厚生年金591,948円が加算されるので、年間の支給額は以下の通りになります。
遺族基礎年金+遺族厚生年金のシミュレーション(年額)
- 夫死亡から長男18歳まで(4年間):遺族基礎年金1,229,100円 + 遺族厚生年金591,948円 = 1,821,048円
- 長男18歳から次男18歳まで(5年間):遺族基礎年金1,004,600円 + 遺族厚生年金591,948円 = 1,596,548円
- 次男18歳から妻65歳まで(17年間):遺族基礎年金0円 + 遺族厚生年金591,948円 + 中高齢寡婦加算585,100円 = 1,177,048円
- 妻65歳以降※:遺族厚生年金591,948円 + 老齢基礎年金780,100円 = 1,372,048円
※妻が自身で厚生年金に加入したことがなく老齢基礎年金を満額貰える場合の年間支給額です
妻が65歳になると自分自身の老齢基礎年金が支払われるようになります。
仮に妻が就職等で過去に厚生年金に加入していた場合、その分の遺族厚生年金が減額となるので覚えておきましょう。
計算式は上述の通りですが、実際に支給される金額についてはお住まいの地域を管轄する年金事務所にてご確認ください。


遺族年金をもらえないときに利用できる遺族給付制度
自営業者が亡くなった場合、子供がいない家庭においては保険料を支払っていたにもかかわらず、遺族年金を受け取ることができません。
そういった場合の救済策として、国民年金の第1号被保険者が死亡した場合の特例として、以下の2つの制度が設けられました。
この章では、上記の2つの特例について解説していきます。
なお、上記2つの制度はどちらか一方しか支給されない点にはご注意ください。
寡婦年金
寡婦年金は、第1号被保険者として保険料を納めた期間が10年以上(平成29年8月1日以前に死亡の場合は25年以上)ある夫が死亡した場合に、10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた妻に対して60歳から65歳になるまで支払われる年金です。
実際に支給される金額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の3/4です。
ただし、「亡くなった夫が障害基礎年金の受給権者の場合」や「老齢基礎年金を受けたことがある場合」は寡婦年金が支給されません。
また、妻が繰上げ支給の老齢基礎年金を受けている場合は同じく寡婦年金が支給されないので気をつけましょう。
参照:寡婦年金|日本年金機構
死亡一時金
死亡一時金は、第1号被保険者として保険料を納めた月数が36か月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けることなく亡くなった場合、その方と生計を同じくしていた遺族に対して支払われる一時金です。
一時金が支払われる対象は、1:配偶者 → 2:子 → 3:父母 → 4:孫 → 5:祖父母 → 6:兄弟姉妹の中で優先順位が高い方となります。
ただし、遺族基礎年金の支払い対象者がいる場合は死亡一時金を受け取ることはできません。
支払われる死亡一時金の金額は、保険料納付済期間に応じて、以下のとおり決められています。
保険料納付済期間 | 死亡一時金の金額 |
---|---|
36か月以上180ヵ月未満 | 120,000円 |
180か月以上240ヵ月未満 | 145,000円 |
240か月以上300ヵ月未満 | 170,000円 |
300か月以上360ヵ月未満 | 220,000円 |
360か月以上420ヵ月未満 | 270,000円 |
420ヵ月以上 | 320,000円 |
※付加保険料を納めた月数が36ヵ月以上ある場合は8,500円が加算されます参照:死亡一時金|日本年金機構


遺族年金を受給する手続きの流れ
遺族年金を受給するためには、遺族が窓口にて手続きを行う必要があります。
実際に遺族年金を受給するための手続きの流れは以下のとおりです。
遺族年金を受給するための手続きの流れ
- STEP1:遺族年金の受給に必要な書類を準備する
-
STEP2:遺族年金の申し込み窓口で年金請求書を記入する
- 遺族基礎年金のみを受給する場合:死亡した方の住所を管轄する市区町村役場
- 遺族厚生年金込みで受給する場合:年金事務所または年金相談センター
- STEP3:年金請求書の記入が終わったら必要書類とともに窓口に提出する
- STEP4:書類提出から2か月以内に「年金証書」が自宅に送られてくる
- STEP5:年金証書受け取りから約1〜2か月後に年金の振込が開始
※年金支給は毎年偶数月の15日に2か月分がまとめて支払われる
各窓口で遺族年金の手続きを行う際には以下の書類が必要となるので準備しておきましょう。
必須書類 | 死亡原因が第三者にある場合 | 状況によって必要な書類 |
---|---|---|
|
|
|
※マイナンバー記入で書類添付を省略可能参照:遺族厚生年金を受けられるとき|日本年金機構
遺族年金以外の死亡により支給されるお金
会社員の方が亡くなられた時が「業務の途中」や「通勤の途中」だった場合、または業務が原因となる傷病で死亡した場合は、労災保険からも遺族年金や一時金が支給されます。
大きく分けて「労災保険の遺族(補償)年金」と「労災保険の遺族補償一時金」の2種類に分けられるので、合わせて確認しておきましょう。
労災保険の遺族(補償)年金
「労災保険の遺族(補償)年金」は、死亡した方に生計を維持されていた配偶者や子供、父母などに対して支給される年金です。
受給資格者は以下のとおりです。
労災保険の遺族(補償)年金の受給資格者
- 妻または60歳以上か一定障害の夫
- 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の子
- 60歳以上か一定障害の父母
- 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の孫
- 60歳以上か一定障害の祖父母
- 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか60歳以上または一定障害の兄弟姉妹
- 55歳以上60歳未満の夫
- 55歳以上60歳未満の父母
- 55歳以上60歳未満の祖父母
- 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹
※一定の障害とは、障害等級第5級以上の身体障害をいいます参照:遺族(補償)年金(PDF)|厚生労働省
支給される金額は、遺族の人数や死亡した方の給与・賞与額によって異なり、同時に遺族特別支給金(一時金)や遺族特別年金が支給されます。
遺族数 | 遺族(補償)年金 | 遺族特別支給金(一時金) | 遺族特別年金 |
---|---|---|---|
1人 | 給付基礎日額の153日分 ※ただし、その遺族が55歳以上の妻または一定の障害状態にある妻の場合は給付基礎日額の175日分 | 300万円 | 算定基礎日額の153日分 ※ただし、その遺族が55歳以上の妻または一定の障害状態にある妻の場合は算定基礎日額の175日分 |
2人 | 給付基礎日額の201日分 | 算定基礎日額の201日分 | |
3人 | 給付基礎日額の223日分 | 算定基礎日額の223日分 | |
4人以上 | 給付基礎日額の245日分 | 算定基礎日額の245日分 |
※給付基礎日額:原則として労働基準法の平均賃金に相当する金額※算定基礎日額:業務上または通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した日、または診断によって病気にかかったことが確定した日以前1年間にその労働者が事業主から受けた特別給与の総額を「算定基礎年額」として365で割った金額参照:遺族(補償)年金(PDF)|厚生労働省
労災保険の遺族(補償)一時金
死亡した方が遺族の生計を支えていなかった場合は、遺族に対して「労災保険の遺族(補償)一時金」が支払われます。
支給される受給権者は以下のとおりです。
労災保険の遺族(補償)一時金の受給資格者
- 配偶者
- 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
- その他の子・父母・孫・祖父母
- 兄弟姉妹
支給される金額は以下のとおりです。
遺族(補償)一時金 | 遺族特別一時金 | 遺族特別支給金 |
---|---|---|
直近3か月の給与を日割り計算した給付基礎日額の1,000円分 | 直近1年間の賞与を日割り計算した算定基礎日額の1,000円分 | 一律300万円 |


遺族年金に関するよくある質問 Q&A
遺族年金に関するよくある質問
Q. 遺族年金と自分の年金(老齢年金)は両方もらえるのですか?
A. 年金は1人1年金が原則となっているため、自身の老齢年金に遺族年金などを加えて受給することはできません。
金額が大きい方が受給対象となります。
ただし、障害厚生年金と老齢基礎年金など、厚生年金と基礎年金で別の種類の年金を受給することは可能です。
遺族年金のもらい方は、遺族年金を受給する手続きの流れで確認してください。
Q. シングルマザーは遺族年金をいくらもらえる?
A. 遺族基礎年金の受給額は子どもの人数によって変わります。以下がその金額です。
遺族年金の受給額
- 1人の場合:年間約78万円
- 2人の場合:年間約100万円
- 3人の場合:年間約123万円
4人目以降の子どもについては、1人追加されるごとに約7.5万円ずつ増額されます。(2023年5月時点)
また、会社員だった場合は上記に加え遺族厚生年金が受給できます。
詳しくは、遺族給付制度の章をご覧ください。
Q. 遺族年金を受け取った場合、税金は発生しますか?
A. 遺族年金は全額が非課税となるため、相続税や所得税、贈与税などは一切発生しません。
そのため、税務署に申告する必要がなく、遺族年金の金額によっては年金を受け取りながらも他の家族の扶養に入ることも可能です。
ただし、遺族年金以外に年間38万円を超える収入がある場合や、同年内に仕事をやめて再就職していないなどの理由で年末調整を行っていない場合は、遺族年金を除いた収入に関しては確定申告が必要となるので覚えておきましょう。
Q. 離婚した夫が亡くなった場合、遺族年金は受け取れますか?
A. 離婚した夫が亡くなった場合、元夫との間に子どもがいるかいないかによって遺族年金の受け取り可否が異なります。
離婚した夫が亡くなった場合の遺族年金の受け取りについて
- 離婚した夫との間に子どもがいる場合:遺族厚生年金が受給可能(ただし受給できるのは子ども)
- 離婚した夫との間に子どもがいない場合:遺族年金は受給できない
遺族年金の種類 | 受給要件 |
---|---|
遺族基礎年金 |
|
遺族厚生年金 |
|
離婚した夫との間に子どもがいる場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方の要件をクリアしていることになります。
しかしながら、遺族基礎年金の「生計を同じくする母があるとき、その間、遺族基礎年金の支給を停止」にも該当するため、実質的には遺族厚生年金しか受給することができません。
また、この場合に受給できるのは18歳未満の子であり、妻が受給できるわけではないという点にご注意ください。
元夫との間に子どもがいない場合、配偶者でも妻でもなくなることから遺族基礎年金や遺族厚生年金が支払われることはありません。

- 山中 伸枝
- (株)アセット・アドバンテージ代表取締役/FP相談ねっと 代表
Q. 遺族年金は65才になったらどうなりますか?
A. 65歳以上で、自身の老齢厚生年金と遺族厚生年金の受給資格がある方は、まず自身の老齢厚生年金が支給されます。
その上で、遺族厚生年金の額が老齢厚生年金の額を上回る場合、その差額を受け取ることが可能です。
しかし、老齢厚生年金の額が遺族厚生年金の額より高い場合、遺族厚生年金の支給は完全に停止します。
詳しくは、遺族年金はいつまでもらえる?の章をご覧ください。
Q. 遺族年金をもらいながらいつまで働けますか?
A. 遺族年金を受給した場合、その後は収入によって、遺族年金がもらえなくなることはありません。
Q. 遺族年金をもらいながら自分の年金ももらえますか?
A. 公的年金は原則として1人1つと定められているため、年金の受給資格が複数ある場合はいずれか1つを選択しなければなりません。
ただし、65歳以上で老齢基礎年金を受けている方は、遺族厚生年金を合わせて受け取ることが可能です。
また、65歳以上で老齢厚生年金と遺族厚生年金を受け取る権利がある方は、遺族厚生年金が老齢厚生年金より年金額が高い場合にその差額を受け取れます。
Q. 遺族年金がもらえなくなる条件は何ですか?
A. 遺族年金を受け取る権利がなくなる条件は、種類や受け取る人によって異なります。
例えば、遺族基礎年金では、子どものいる配偶者が受け取っている場合、受給者本人が以下に該当すると年金は受け取れません。
- 死亡したとき
- 婚姻したとき(内縁関係を含む)
- 直系血族または直系姻族以外の方の養子となったとき
上記の条件に該当した場合、年金事務所または年金相談センターへの届出が必要になります。
まとめ
遺族年金は、国民年金または厚生年金に加入している方が亡くなった時、その方が生計を維持していた遺族に対して支払われる年金のことです。
遺族年金は大まかに分けて以下の2種類があります。
それぞれ家族構成によって計算式が異なるので、「遺族年金はいつまで、いくらもらえるのか」の項目でお伝えしたシミュレーションで、一体いつまでいくらの遺族年金がもらえるかをご確認ください。
なお、遺族年金は自動で給付される訳ではないので、お住いの市区町村を管轄する年金事務所や市区町村役場、年金相談センターにて支給金額をご確認の上、お手続きください。
遺族年金以外の年金制度全般について詳しく知りたい方は、下記のコンテンツもぜひ合わせて参考にして下さい。

