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更新 更新:2024.03.21

【大学教授インタビュー】人々はどのように保険への加入を決めている?大学教授に詳しく聞いてみた!

【大学教授インタビュー】人々はどのように保険への加入を決めている?大学教授に詳しく聞いてみた!
所有資格
博士(商学)
専門分野・得意分野
保険、リスクマネジメント、社会保障

私たちの生活には病気やケガ、災害など日々予期せぬリスクがつきものです。

そのようなリスクへの備えとして保険や日々の貯蓄などさまざまな手段がありますが、人々はどのようにそれらの手段を選択しているのでしょうか。

今回は、保険やリスクマネジメントを研究されている同志社女子大学の大倉教授に人々がどのように保険への加入を決めているのかについてお話を伺いました。

監修者からひとこと
大倉 真人
  • 大倉 真人
  • 同志社女子大学教授
神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程を修了し、博士(商学)を取得。長崎大学経済学部助教授・准教授、同志社女子大学現代社会学部准教授を経て、現在は同学部教授。Asia-Pacific Risk and Insurance Association前会長および日本保険学会理事。

【所有資格】
博士(商学)

【専門分野】
保険、リスクマネジメント、社会保障

【論文】
「地震保険加入の経済分析-後悔理論を用いた検討-」(損害保険研究(第85巻第3号),2023年 単著)
“A Game-Theoretic Analysis of the Sanctions for Breach of Duty to Disclose in Insurance Contracts:A Comparison of the “All or Nothing″ and “Pro Rata” Methods″(Asian Journal of Law and Economics(Volume 13, Issue 3), 2022年 共著)
“Is Insurance Normal or Inferior? -A Regret Theoretical Approach-″(North American Journal of Economics and Finance(Volume 58), 2021年 共著)
“Cournot Competition in the Joint Products Market under Demand Uncertainty″(Managerial and Decision Economics(Volume 42,Issue 5),2021年 単著)
「自然災害リスクマネジメントに関する経済分析」(損害保険研究(第83巻第1号), 2021年 単著)

保険の研究を始めたきっかけ

テーマの前に、保険の研究を始められたきっかけについて伺いました。

編集部 鎌田
編集部 鎌田
本日はお時間いただきありがとうございます。大学時代から保険やリスクマネジメントの研究をされていたのでしょうか?

大倉 真人
実は大学時代は会計学のゼミに所属しておりました。

そのため保険の勉強は大学三年生までやっておりませんでした。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
そうだったのですね。では、その後保険の研究を始めることになったきっかけは何だったのでしょうか?

大倉 真人
きっかけは大学院への進学でした。当初は大学院でも会計学の勉強を続けようと考えていたのですが、大学院入試で会計学以外にもう一つ違う分野の問題を解かなければならず、どうしようかと悩んでいました。

そんな中、大学四年生の春に保険論の授業を受け、保険への興味がわいたことで保険論に分野を変更し、大学院に進学しました。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
なるほど。そのようなきっかけで保険の研究をされるようになったのですね。現在はリスクマネジメントをメインに研究されているのでしょうか?

大倉 真人
いえ、保険も含めて研究をしています。

同志社女子大学では、保険論とリスクマネジメント論の両方の授業を担当していますし、そもそも両分野は切り離せない関係にあると考えています。

例えば、アメリカにおける保険・リスクマネジメントの学会は「American Risk and Insurance Association」という名称であり、アジア太平洋地域の学会でも「Asia-Pacific Risk and Insurance Association」となっており、このことからもリスクと保険はワンセットで扱われていることがわかります。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
確かにどちらも大事かつ不可分な分野であり、一方を理解するためには、もう一方の知識も必要となるのですね。

同志社女子大学の大倉教授インタビューの様子

人々はどのようにリスクを認知する?

編集部 鎌田
編集部 鎌田
では、今回のテーマに移らせていただきます。様々なリスクへの備えとして保険への加入を考える人が多いかと思いますが、保険加入に際して人々はどのようにリスクを認知しているのでしょうか?

大倉 真人
「自身が知る情報」や「これまでの経験」に基づいてリスクを認知している場合が多いのではないかと思います。

逆に、自身が知らない・知りえない経験や情報がある場合には、リスクを正しく認知できていないこともあるかと思います。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
では、実際に「自身が知る情報」や「これまでの経験」に基づいてリスクを認知することができれば、保険への加入を考える人々が増えるのでしょうか?

大倉 真人
リスクの認知と保険に加入することは、必ずしもイコールではありません。

リスクを認知したからと言って必ずしも保険に入るわけではなく、貯蓄などといった保険以外のリスクマネジメントの手段を選択することもあります。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
なるほど……。リスクの対応策としては保険以外にもさまざまな手段がありますものね。

経験したことのないリスクに対して人々は保険などで備えたいと考えるのか?

編集部 鎌田
編集部 鎌田
自身が知らない・知りえない経験や情報がある場合には正しくリスクを認知できないことがあると伺いましたが、経験したことのないリスクに対して、人々は保険などで備えたいと考えるのでしょうか?

大倉 真人
「経験したことのないリスク」が何かという点が大事になってきます。

例えば、死亡リスクのように、誰にとっても経験不可能なリスクがあります。

また、大地震のような大規模な災害も遭遇したことのない人にとっては、経験したことがないリスクの一例ですね。

このようなリスクに対して保険などで備えたいと考えるか否かは、「自分自身にふりかかってきそうか」「発生したときに重大な影響を与えそうか」などに依拠するかと思います。

例えば、大きな病気や手術の経験がない人にとっては、医療保険やがん保険で病気や手術に備えたいという意識は大きくないかと思います。

そして、経験したことのないリスクは、想像がしづらいこともあり、準備を怠りがちになるかと思います。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
ということは、リスクを想像できるかどうかがポイントになりそうですね。

大倉 真人
そうですね。

例えば、死亡リスクは全ての人に関係するリスクですが、その影響は本人ではなく遺される家族に及びます。

よって例えば扶養家族がいる場合だと、死亡リスクに対して保険で備えることをより強く検討することになるかと思います。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
なるほど。死亡時に大きな影響があるかどうかも、保険への加入を考える際の重要な要素になるんですね。

大倉 真人
そのとおりだと思います。

さらに例を挙げますと、多くの人は年を取ってきますとがんなどの病気に対する不安が増すかと思います。

これまでにがんを経験していなくても、「がんになれば治療にお金がかかる」という声を聞く機会が増え、「医療保険やがん保険に入っておこう」と考えることも起こり得るかと思います。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
確かに、自分の身に起きていないからといってそのリスクを軽視するわけにはいかないですよね。

大倉 真人
リスクは目に見えるものではないため、リスクへの対応の第一歩は、リスクの存在を認知することとなります。

しかしながら、若い人における長生きリスクや体が丈夫な人における病気のリスクなどは、どうしても想像がしにくく、よって認知しにくいのは確かです。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
まずはリスクの存在をあぶりだすことが大切なんですね。

同志社女子大学の大倉教授インタビューの様子

人々が保険に加入するときの判断基準とは?

編集部 鎌田
編集部 鎌田
次に、保険加入の決め手となる判断基準について伺いたいと思います。保険加入を決める際に、加入者は一般的なデータ(例えば死亡率など)から合理的に保険への加入を検討するよりも、経験や感情で保険に加入する傾向が強いのでしょうか?

大倉 真人
保険加入の決め手については、人それぞれであり、また状況によって異なります。

ただ、保険の場合、経験や感情の影響力は大きいのではないかと思います。

そして、この経験や感情が保険加入にプラスの影響を与えるのかあるいはマイナスの影響を与えるのかについては何ともいえないところです。

例えば、「保険に加入しておけば何かあった時に安心できる」と感じる人もいれば、「事故が生じなければ保険料を無駄に支払ってしまうことになる」と感じる人もいるかもしれません。

このように経験や感情は保険加入にプラスにもマイナスにも影響を持つことになります。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
なるほど。経験や感情によってリスクの見方が変わるんですね。

保険では感情が意思決定に影響を及ぼしている

編集部 鎌田
編集部 鎌田
このプラスの感情やマイナスの感情はどのようにして生じるのでしょうか?

大倉 真人
人の感情ですので、当たり前のことになりますが、その感情の生じる要因は人それぞれだと思います。

楽観主義の人もいれば悲観主義の人もいるのと同様に、安心を強く感じる人もいれば後悔を強く感じる人もいるかと思います。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
確かに、その人の性格などにも依存してきますよね。

大倉 真人
私が主に行ってきた研究フィールドの一つとして、保険加入にかかる経済学的分析(経済モデルによる分析)がありますが、通常、経済モデルによる分析では「感情」などの要素は分析の考慮外となっています。
大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
そうなんですか。

大倉 真人
通常、経済モデルによる分析は、「期待効用理論」をベースに展開されます。

保険加入についての分析で言いますと、人々は自身の期待効用を最大にすることを目的に保険加入の意思決定を行うとして、分析していきます。

そしてこの期待効用を決める要素は主として二つあり、一つは期待利得、もう一つは利得の分散となります。

よってこの二つ以外の要素である「感情」は考慮外となっています。

大倉 真人
「期待効用理論」とは?
将来の結果に対する不確実性がある状況における意思決定において、得られる満足度(効用)の期待値が最大となるものを選択するとする意思決定理論。

編集部 鎌田
編集部 鎌田
期待効用理論では感情などの要素が考慮外となっているということですが、ということは、人々はロジカルに動くということを前提に分析を行っているということなのでしょうか?

大倉 真人
そのとおりです。ゆえに、わずかでも得をする意思決定を行うなどのように、人々が合理的に動くことを前提に分析しています。

しかしながら、先ほど述べましたように、保険加入の意思決定においては感情が少なくない影響を与えていると考えるべきだと思います。

このような考えを前提に、「後悔理論」に基づく経済モデル分析を行ったことがあり、また現在も「家計における「後悔」「安堵」の感情が保険購入に与える影響の経済学的考察」というテーマの研究を続けています。

大倉 真人
「後悔理論」とは?
期待効用に加えて、意思決定に伴って生じる将来の結果が判明した後における後悔を考慮した上で選択するとする意思決定理論。

編集部 鎌田
編集部 鎌田
確かに、保険加入については感情が大きく関わっていると考えられそうですね。

生命保険と損害保険における加入の意思決定プロセス

編集部 鎌田
編集部 鎌田
続いての質問です。生命保険と損害保険で、加入の意思決定プロセスは異なるのでしょうか?

大倉 真人
生命保険か損害保険かというよりも、どの保険会社のどの保険商品がより良い保障(補償)を提供しているのか、あるいは保険料が安いのかなどを考慮した上で意思決定しているのではないかと思います。

ゆえに人々が「これは生命保険だから」「これは損害保険だから」などと意識して保険加入の意思決定を行っているとは考えにくいと思います。

なお、私がこれまでに行ってきた研究においても、生命保険と損害保険とを特に区別せずに包括的に扱ったことも少なくありません。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
多くの人は生命保険と損害保険を分けて考えていることはないということですね。

大倉 真人
もちろん、生命保険と損害保険とでは種類が異なりますので、それぞれの保険に固有の現象がありますし、このような固有の現象を考える際にはそれに則した意思決定のプロセスを考える必要が生じます。

例えば、生命保険に固有のものとして、死亡保険のケースが考えられます。

死亡保険においては、基本的には保険契約者自身が保険金を受け取ることはできず、遺族が受け取ることになります。

そうなりますと、遺族にお金をどれぐらい残したいと思うかという気持ちの強弱が重要になってきますし、このことが保険加入の意思決定に影響を与えることになるかと思います。

他方において、損害保険における加入の意思決定を考える場合、例えば自動車保険で申しますと、人身事故が生じた時の損害賠償に備えるなどが主たる目的となるため、遺族にお金を残すという気持ちは関係しないことになります。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
なるほど……。それぞれの保険が持つ固有の現象を考えると、加入の意思決定プロセスも異ってくるのですね。

同志社女子大学の大倉教授インタビューの様子

保険と金融リテラシー

編集部 鎌田
編集部 鎌田
続いての質問ですが、リスクに備えるためには、まずリスクに対応した保険の存在を認知する必要があるかと思います。

しかし、日本では多くの人の金融リテラシーが不十分なことから保障の中身についてあまり理解せず、保険契約に至ってしまっているというケースが見られます。なぜ日本の金融リテラシーは不十分なのでしょうか?

大倉 真人
過去に焦点を置いてお話しますと、金融リテラシーが低かった原因の一つとして、小中高校での金融教育の不足が挙げられるかと思います。
大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
そうですね……。近年になってやっと金融教育が行われるようになりましたよね。

大倉 真人
また、日本では長らく年功序列や終身雇用などを介して企業が個人の生活を守る構図となっていた側面があったことから、個人が投資などによって自己資金を増やす必要性を感じにくかったことも挙げられます。

さらに、高度経済成長期が典型的ですが、かつてはお金を銀行に預けておくことで、大きな利息が付き、それで問題なく生活できていました。加えて、「足りない分は節約をすればよい」という風潮も、金融リテラシーの必要性が薄かったことの原因の一つではないかと思います。

足りないから投資で儲けようではなく、足りなければ節約をすればよいとなっていたわけですね。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
確かに、そのような風潮下では金融リテラシーの必要性は低くなりますよね。

保険への理解が低くなってしまっている理由

編集部 鎌田
編集部 鎌田
最後の質問になりますが、金融リテラシーが不十分という点以外にも、保険への理解が低くなってしまっている理由として考えられるものはありますか?

大倉 真人
いくつか理由は考えられますが、その一つとして、保険契約の内容が難しいあるいは難しいものと考えられている点があるかと思います。

例えば、「保険料」「保険価額」「保険金額」という保険の用語は、単語として見た場合同じように見えますが、これらはすべて違う意味で用いられています。

大倉 真人
用語解説
意味
保険料 保険契約者が保障を得る対価として保険会社に支払う金額
保険価額 保険の対象を金銭的に評価した金額
保険金額 保険契約において保険の対象に対して設定する契約金額

編集部 鎌田
編集部 鎌田
他にも考えられる理由はありますか?

大倉 真人
別の理由として、「掛け捨てが嫌」という風潮があるかと思います。

事故が起こらなければ支払った保険料が無駄になると感じている人が一定数いるように思います。

保険料は万が一の事故に備えるために支払っているものであり、よって万が一のときの保障を入手するための対価であり、本来的には価値があるのですが、それが認識されにくいのかもしれないと思っています。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
なるほど。保険加入によって目には見えない保障が得られているのですね。

大倉 真人
さらに別の理由として、リスクに対する過小評価も挙げられます。

例えば、地震保険の加入率が低いことがこれに含まれると考えられます。

日本列島には地震のリスクが大きいとされている場所がありますが、そのような場所に住んでいるにも関わらず、何となく地震は起こらないと考えて保険の必要性を感じていない人が多く、このことが加入率の低さにつながっています。

そのため、加入率を上げようと税制上の措置などが行われています。

大倉 真人

編集部 鎌田
編集部 鎌田
たしかに、リスクが低いと評価すれば、それに対応した保険への関心も薄れがちになりますよね。大倉教授、本日は貴重なお話をありがとうございました。

大倉 真人
こちらこそありがとうございました。
大倉 真人

同志社女子大学の大倉教授インタビューの様子

まとめ

今回は、同志社女子大学の大倉教授に保険加入の意思決定についてお話を伺いました。

今回のインタビューで学んだこと

  • 人々は「自身が知る情報」や「これまでの経験」に基づいてリスクを認知するが、経験や情報がない場合、正しくリスクを認知できていない場合がある。
  • リスクを認知することと保険に加入することは必ずしもイコールではなく、保険以外の手段を選択することもある。
  • 経験したことがないリスクへの対応策は、「自分自身にふりかかってきそうか」「発生したときに重大な影響を与えそうか」などを考慮した上で決まる。
  • 感情も保険加入の意思決定に影響を与える要素の一つである。
  • 生命保険と損害保険が持つ固有の現象を考えた場合、加入への意思決定プロセスが異なる。
  • 保険への理解が低くなってしまっている理由として、「保険契約内容の難しさ」「掛け捨てへの抵抗感」「リスクの過小評価」がある。

経験したことがないリスクに対して、「自分自身にふりかかってきそうか」「発生したときに重大な影響を与えそうか」という点から考えることができるかどうかが保険加入を考える際にとても重要であると感じました。

保険加入の際は、自身にどのようなリスクがあるのかを洗い出し、そのリスクがどのような影響を与えるのかについて考えてみることをおすすめします。

大倉 真人
大倉 真人
同志社女子大学教授
神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程を修了し、博士(商学)を取得。長崎大学経済学部助教授・准教授、同志社女子大学現代社会学部准教授を経て、現在は同学部教授。Asia-Pacific Risk and Insurance Association前会長および日本保険学会理事。
所有資格
博士(商学)
専門分野・得意分野
保険、リスクマネジメント、社会保障
ナビナビ保険編集部
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ナビナビ保険編集部は「どこよりも分かりやすい保険情報を届けること」をコンセプトにコンテンツの配信を行っています。

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