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更新 更新:2021.06.30

金融の専門家にインタビュー!行動経済学者から見た保険の実態とは?

金融の専門家にインタビュー!行動経済学者から見た保険の実態とは?

今まで、保険を検討してきた際に「日本は健康保険が充実しているから、保険は必要ないよ」といった旨の言葉を聞いたことがあるという人は多いと思います。

でも、本当にそうなのでしょうか?

今回は、金融・行動経済学の専門家で、立命館大学で教授を務める井澤先生に、行動経済学から見た保険の在り方について、お話を伺ってきました。

行動経済学を分かりやすく紐解きながら、どうして人は保険に加入するするのか、リスクと向き合うための保険の必要性についてインタビュー形式でお話します。

立命館大学 井澤 裕司 教授

大学教授
金融論、行動ファイナンス、実験経済学
井澤 裕司

電力中央研究所研究員、摂南大学助教授、立命館大学経済学部教授などを経て、現在は立命館大学食マネジメント学部教授、パーソナルファイナンス学会理事。この間、行動経済学会幹事、京都市指定金融機関選定委員会委員長、立命館大学ファイナンス研究センター長などを歴任。

【著書】
『実験でわかった!感じる株式投資』(ランダムハウス講談社 2008年3月 単著)

そもそも行動経済学とは

保険と行動経済学は一見かけ離れた分野に思えるものの、どちらの専門分野でもある井澤教授。

僕に行動経済学の知識がないため、色々聞いてみました。

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

早速ですが、経済学と行動経済学の違いを教えてください。

伝統的な経済学というのは、「どう行動すべきか」「何をすべきか」を、人々は合理的な計算によって考えていることを前提としている学問体系です。

一方、行動経済学は、「現実の人々がどう行動しているのか」に注目し、人々が合理的な意思決定をしているわけではないという事実や実験を積み上げて作られた学問体系です。

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

行動経済学と経済学の違いを例を交えて、簡単に説明します。

前提として、「人間は合理的に行動する」と考えて研究をしているのが経済学、「人間は感情によって非合理的な行動をする」と考えて研究をしているのが行動経済学です。

例えば、同じコーヒーであっても、

  • コンビニの250円のコーヒー
  •  写真映えがするとSNSで大人気のカフェでの500円のコーヒー

250円のコンビニのコーヒーは高くて、500円の人気カフェのコーヒーは安いと感じてしまうことはないでしょうか?

これは、コンビニやカフェでのコーヒー価格の相場を意識して比較してしまうからです。

このように行動経済学は、よりリアルに人間の経済活動を追求した学問です

そのような行動経済学を基にして、保険に加入するという行為は合理的な選択なのかをお伺いしていきます。

保険に加入することは合理的なのか

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

それではズバリお尋ねしますが、行動経済学の観点から保険に加入することは合理的な行動と言えるのでしょうか?

本質的な問題として答えるのは非常に難しく、「保険に加入すべきか」ということは本来、行動経済学者には答えられないものです。

しかし、保険に関しての情報を一般の人が正しく認識できるように、「正確な情報をどのような形で提供するのか」は行動経済学の範疇になります。

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

行動経済学の観点からすると「保険加入の有無」に焦点を当てるのではなく、「正しく情報を伝えることでどのように行動するのか」ということが大切なのですね。

そうです。保険商品というのは、数学的な計算や理論に基づいて体系を作り上げているものなので、一般の人が正しく評価して、自分が何を買おうとしているのかを的確に認知することは実は難しいんです。

だからこそ、行動経済学では「自身の目的に合わせた保険に加入する」いう理想の形を示すことができるかが重要だと考えます。

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

具体例としてどのようなことが挙げられますか?

例えば、子供のいる人が生命保険に加入する場合、その人が子供に資産を残したいと考えるのか、自分が生きている間だけ何とかなればいいと考えるのかは個人の自由です。
専門家がその人の目的に「合理的ではない」などと口出しをするのは、余計なお世話で踏み入るべき領域ではありません。

しかし、その目的に合わせた保険料のかけ方や保険商品の選び方などの合理的なアドバイスをすることはでき、行動経済学者が活躍できる部分です。

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

行動経済学の専門家からすると、目的の部分に専門家が介入するのは「パターナリズム」と言うそうで、余計なお世話だと仰っていました。

「パターナリズム」とは?
強い立場の者が弱い立場の者に対して、本人の意思を問わずに介入・干渉すること。

つまり、生命保険に加入する目的は専門家が口出しする部分ではないが、その目的を達成するための行動について合理的かどうかをアドバイスすることはできるということです。

保険加入の有無についての合理性は行動経済学では答えることができないと理解したところで、続いて、資産形成において保険を利用することは合理的な選択なのかをお伺いしてきました。

保険があるからこそ安心して資産形成ができる

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

将来の資産形成を考える時に、保険は合理的と言えるのでしょうか?

資産形成となると、どれくらいのリスクを取ってどれくらいのリターンが欲しいのかが最も大切になってきます。

保険はリスク管理の方法なので、リターンを目指すのであれば保険はあまり合理的な選択ではないと考えます。

しかし、保険があるからこそ安心して資産形成ができるという側面があるのも事実です。

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

「保険があるからこそ安心して資産形成ができる」とは、具体的にどういうことでしょうか?

例えば、⼈々が家を買うという行為は、⾃分の財産の⼤半を持ち家へ集中することを意味し、万が一地震等で家が倒壊したら、そこで資産形成どころではなくなります。

しかし、火災保険や災害保険によってリスクヘッジができるので、持ち家の事は心配せずに安心して投資や積立などの資産形成ができるのです。

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

あまり考えたことはなかったけど、確かに保険がなければ数千万円もする家の買い物なんてできないな……。

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

確かに保険があることで安心できる場面ってたくさんありますよね。

実は車が普及したのも、保険という制度があるからなんですよ。
もし保険制度がなければ、私たちは常に⾃分の全⼈⽣を賭けて⾃動⾞を運転しなければなりません。
事故をした場合、資産形成どころではなく、その人の人生が破滅するかもしれないですからね。

つまり、保険は万が一の時の保障を購入しているだけでなく、日常生活における安心感も購入しているのです。

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

保険はリスク管理の方法なので直接的には資産形成に向いていないが、保険のおかげで安心して資産形成ができると語る井澤教授。

日常生活には事故や天災などの様々なリスクが存在していているので、それらのリスクを全て自分で負担していては資産形成などできないですよね。

続いて、そういった日常生活に潜んでいる「リスク」について、お伺いしてきました。

利益は把握できるがリスクの把握は難しい

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

日常的にどれだけのリスクが自分にはあったのかを把握するのは難しいですよね。
人がリスクを正しく判断することは、そもそも難しいのでしょうか?

その質問は本質的で、人はどれだけの利益があるかは把握できるのですが、どれだけのリスクを取っていたかというのは把握しづらいのです。

例えば、株式の場合を例に挙げましょう。
以下2つの株があった場合、どちらの株の方が儲かっているように見えますか?

・A株:途中リスクがあったものの収益は20%
・B株:安定していたが収益は10%

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

収益が20%あるA株の方が儲かっているように見えますね。
(こういう問題って理由は分からないけど、たぶん逆の答えな気が……)

やっぱりそう見えますよね。
ですが、ファイナンスの面から見ると、リスクを取るというのは収益のコストになるので、

・A株はとんでもないリスクをとっているのに、収益が20%しか得られなかった
・B株は安定しているのに10%も収益があった

と考えるのが正しいのです。

したがって、人々は自分がどういうリスクに直面しているのか分かっていないと、何もないのに保険料だけ取られていると思ってしまうのです。

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

人はリスクを正しく把握できないからこそ、万が一のことがあった時のために保険という商品があるのだなと改めて認識しました。

行動経済学の前提は「人間は感情によって非合理的な行動をする」ということです。完全に合理的な判断(リスクを正しく把握するなど)ができないため、感情とか直観によって行動をしてしまうのだと思います。

続いてはそのような行動経済学の前提を想定した上で、実際に行動経済学が保険に適用されている事例についてお伺いしてきました。

行動経済学が保険にもたらすもの

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

行動経済学の知見が実際に保険分野で適用されている事例などはありますか?

行動経済学には「ナッジ」という言葉があり、それが保険分野で適用されています。

ナッジとは、選択肢の表現や順序を変えるなどによって意思決定が変わってしまう現象に注⽬して、それを利用して好ましい⾏動に誘導しようとすることです。

保険分野での適用例としては、人間ドックを受けるとその年の保険料が安くなるというものや、特約で1年に1回健康診断の結果を報告すると保険料が安くなるというものなどもあります。

これは自分の健康面に意識を向けさせることで、自然と健康的な生活を送るようになるというナッジを応用しています。

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

ナッジは行動を強制しているわけではなく、自発的に行動をしているので習慣化もしやすそうですね!

その通りです。しかし、ナッジのように行動変容によって、良い効果が期待できる場合もあるのですが、好ましくない効果をもたらす場合もあります。それは保険によるモラルハザードと⾔われています。

例としては、医療保険に加⼊すると無意識に不摂⽣な⽣活をしてしまったり、⾃動⾞保険に加⼊することで安心して、不注意な運転をしてしまったりすることなどが挙げられます。

⼀般に販売されている保険には、モラルハザードをできる限り抑制し、ナッジを利⽤して 被保険者に良い結果をもたらすような仕組みが組み込まれています

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

無意識にモラルハザードをしてしまいそうなので、気をつけます……

実際に保険会社の方から行動経済学者に助言を求めることもあるみたいですので、保険と行動経済学は深い繋がりがあると言えそうです。

ここまで行動経済学の観点から、保険加入の合理性や保険の役割、実際に行動経済学が保険分野に適用されている事例などをお伺いしてきました。

最後に、現在加入している保険に対して、実際にどのようにアプローチをしていけばいいのか保険を見直す際のポイントについて聞いてみました。

保険を見直す際のポイントとは

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

最後の質問になりますが、井澤教授が考える保険の見直しのポイントとはどのようなことでしょうか?

現在の資産状況や健康状態、家族の状況など、自分の状況を正しく把握することです。

そして、保険に加入する目的と条件を正しく認識して、その保険が今の自分に向いているのか見極めていくことが大切です。

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

自分の状況を把握することが大切だとみんな分かってはいると思うのですが、なかなかめんどくさくてできないですよね……

行動経済学的に言うと、自分で見直そうとするとしんどいので、年に1回ちょっとでいいので家族で話し合う時間を作ることをおすすめします

保険を見直そうとするのではなく、自分の状況を理解している人と保険について話し合う機会を作るということを意識してください。

他の人から言われることで、保障内容や保険料など何かに気づくきっかけになるかもしれません。

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

ナビナビ保険編集部 入江

編集部 入江

僕の場合は独身なので、会社の人や保険のプロに聞いてみます……。

本日はお忙しいところ、ありがとうございました!

こちらこそ楽しい時間をありがとうございました。

立命館大学 井澤裕司 教授

井澤教授

まとめ

初めてのZOOMインタビューで心配だったのですが、井澤教授のお気遣いもあり、楽しい時間を過ごさせていただきました。

初めは行動経済学という概念は自分には関係のないものだと思っていましたが、保険分野だけでなく、日常生活の至る所に活用されていて結構身近なものに感じられました。

今回のインタビューで学んだことをまとめておきます。

今回のインタビューで学んだこと

  • 保険に加入する際は目的とその目的を達成するための行動は切り分けて考えるべき
  • 保険は資産形成に直接的には向いていないが、保険でリスクヘッジができるからこそ安心して資産形成をすることができる
  • 人はリスクを把握しづらいので、できるだけどんなリスクがあるのかを意識する
  • 保険を見直す際のポイントは、1年に1回身近な人と保険について話し合う機会を作ること

保険の見直しに関して、結婚していない人はお金のプロであるFPに相談するのもひとつの手段です。

各個人の家計状況によって保険の見直しはもちろん資産形成のアドバイスももらえるので、独身の僕も保険を見直す際は活用しようかなと思っています。

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井澤 裕司

井澤 裕司

電力中央研究所研究員、摂南大学助教授、立命館大学経済学部教授などを経て、現在は立命館大学食マネジメント学部教授、パーソナルファイナンス学会理事。この間、行動経済学会幹事、京都市指定金融機関選定委員会委員長、立命館大学ファイナンス研究センター長などを歴任。
所有資格
立命館大学教授、パーソナルファイナンス学会理事、立命館大学ファイナンス研究センター長
専門分野・得意分野
金融論、行動ファイナンス、実験経済学
ナビナビ保険編集部

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ナビナビ保険編集部は「どこよりも分かりやすい保険情報を届けること」をコンセプトにコンテンツの配信を行っています。
ナビナビ保険編集部

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