日帰り入院とは?
日帰り入院とは、入院基本料などの支払いが必要となる入院日と退院日が同じ日である入院のことです。
例えば、深夜の時間帯に緊急入院したものの、その日のうちに容態が回復して夕方ごろに退院すると、日帰り入院となります。
入院日数は、日付が変わる午前0時を基準にして数えます。
そのため、0時〜23時59分59秒までの間に入院と退院をした場合に「日帰り入院」と扱われます。
昨今では、通常の通院(外来)では給付金が支払われないものの、日帰り入院(入院日数1日から)の場合に「入院給付金」が支給されるタイプの医療保険が増えてきています。
この記事ではそんな日帰り入院と通院の違い、給付金の請求手順について解説します。
日帰り入院と通院の違い
日帰り入院と通院の違いは、保険会社の判断によって異なります。
基本的に、以下の2つの条件を満たした場合に日帰り入院と判断され、入院給付金が支給されます。
日帰り入院と判断されるケース
- 入院日と退院日の日時が「同日0時〜23時59分59秒の間」であること
- 医療費の領収書内の「入院料等」の項目に診療報酬点数が記載されていること
最も簡単な判断基準は、医療費を支払う際に受け取る領収書の「入院料等」の項目に数字が記載されているかどうかです。
医療機関によって領収書のフォーマットは異なりますが、大抵の場合は以下の図の「保険」欄に記載されているのが一般的です。
入院日と退院日が同一で、なおかつ領収書の「入院料等」に診療報酬点数が記載されていれば、日帰り入院と判断されるでしょう。
ただし、保険会社から日帰り入院と判断されても、入院給付金が支払われるとは限りません。
なぜなら、日帰り入院が入院給付金の支払い対象外である医療保険もあるためです。
そのため、日帰り入院をしたときの入院給付金の給付要件は、契約中の保険会社に問い合わせをすると良いでしょう。

- 土岐 孝宏
- 中京大学教授
そこでは、一般に、入院とは、「医師による治療または柔道整復師による施術が必要であり、かつ自宅等での治療または施術が困難なため、病院または診療所等に入り、常に医師または柔道整復師の管理下において治療または施術に専念することをいいます」と規定(定義)されており、日帰り入院も含め、入院を理由とする給付金を請求するためには、前提において、この定義に該当する「入院」をしていたことが求められます。
例えば、入院中の外泊が多く、患者自身、医師の管理下に治療に専念していない場合などにおいては、事実としての入院(診療点数もある)があっても、給付金の支払条件を満たす「入院」はない(保険者には給付金の支払義務がない)と判断されることもあります。
日帰りで手術を受けた場合は日帰り入院になる?
昨今では入院をせずとも手術を受けて、その日のうちに自宅へ帰れる「日帰り手術」も増えてきています。
日帰り手術が可能な病気の一例
- ソケイヘルニア(脱腸)・胆石・胆嚢ポリープ
- 下肢静脈瘤・痔・乳腺腫・巨大脂肪腫・シャント造設
- 大腸ポリープ・胃ポリープ
- 内反症・翼状片・白内障(一部)
- 心臓カテーテル検査・経皮的冠動脈形成術
- 抜釘術・ばね指・膝関節鏡手術・上肢骨折
- 前立腺生検
- 尿管結石(対外衝撃波腎尿管結石破砕術)
- 膀胱腫瘍(一部)
- 子宮内膜ポリープ(一部)・子宮筋腫(一部)・子宮鏡下手術
日帰り手術には「外来での手術」と「入院が必要な手術」の2パターンがあり、後者の場合は入院給付金の支給対象となる可能性があります。
日帰り入院の判断可否は、あくまで「入院料等」の支払いがあるかどうかで判断されます。
そのため、手術を受けて病院内の施設で休んだ場合でも「入院料等」の支払いがなければ入院とは認められません。
手術を受けた場合は、医療保険の「手術給付金」の給付対象になる可能性があります。
なお、上記で挙げた病気はあくまで一例であり、実際に受診する病院によって日帰り手術が可能な病気は異なります。
あらかじめ病院側に確認を取っておくようにしましょう。


医療保険での日帰り入院の扱いは?
最近販売されている医療保険では、入院1日目から入院給付金が支給されるタイプが増えてきています。
ひと昔前の医療保険では、「5日以上の入院で1日目から支給」「継続する2日以上の入院で1日目から支給」などの免責期間が設けられているのが一般的でした。
そのため、何年も前に加入した医療保険の場合、日帰り入院と診断されても入院給付金が受け取れない可能性があります。
すでに医療保険に加入しているのであれば、日帰り入院の時でも入院給付金の支給対象となるか、また入院してから何日目に保障が適用されるのかをあらかじめ確認しておきましょう。
なお、必ずしも日帰り入院に備える必要はありませんが、もし短期入院にも対応した医療保険を選びたいという場合には保険の見直しをご検討ください。
日帰り入院で入院給付金が支給されるかどうかの判断は、あくまで保険会社による
日帰り入院で入院給付金が支給されるかどうかの判断は、あくまで保険会社によって決められます。
日帰り入院と判断されるための必要最低限の条件として、「領収書内の『入院料等』の点数の有無」が挙げられます。
ただし、これはあくまで日帰り入院と判断されるための必要条件であって、入院給付金の支給条件の一部に過ぎません。
実際に給付金を申請するためには、保険会社が指定する各種書類を準備し、日帰り入院であること以外に必要な入院給付金の支給条件を満たす必要があります。
「入院料等」に診療報酬点数の記載があることは必要最低限の条件として満たしておく必要がありますが、日帰り入院と判断されたからといって必ず入院給付金が受け取れる訳ではないということを覚えておきましょう。

- 土岐 孝宏
- 中京大学教授
また、免責となる入院も設定されており、被保険者の故意や重過失、犯罪行為、薬物依存、精神障害や泥酔状態が原因で入院の結果に至った場合、あるいは、酒気帯び運転、無免許運転中の事故の結果、入院に至った場合などでは、事実としての入院があっても、そこに給付金は支払われません。一般の多くの契約者には関係のない規定ではありますが、「入院」の事実さえあれば、給付金が得られるという単純な商品ではないことは、おさえていただければと思います。
日帰り入院の給付金請求の流れ
日帰り入院をした際、保険会社に給付金を申請するための手続きは以下の流れで行います。
日帰り入院の際に給付金請求を行う一連の流れ
- 保険会社から入院給付金の請求書類を取り寄せる
- 保険会社が指定する診断書(入院・手術等の証明書)に必要事項を記入してもらう
- 作成した書類と必要書類を保険会社に提出する
診断書を作成する際に数千円程度の手数料がかかる場合があるため、支給される入院給付金と請求するために必要な金額を把握しておく必要があります。
医療保険の加入先によっては、一定の要件を満たせば医療費の領収書のコピーを提出するだけで診断書の提出ができる場合があります。
日帰り入院をしたときは、給付金の請求時に必要な書類を医療保険の加入先に確認しておきましょう。
なお、日帰り入院で手術を受けた場合、入院給付金とは別に「手術給付金」の支給対象となる可能性があります。
手術給付金は入院の有無によって給付金額が変わるので、どれくらいの違いがあるのかを確認しておきましょう。
入院給付金の申請期限について
入院給付金の申請期限は保険会社ごとで異なりますが、一般的には「支払事由が生じた日の翌日から数えて3年以内」であることが多いようです。
ただし、保険会社が指定する「給付金の請求に必要な各種書類」をすべて準備できれば3年を超過している場合でも給付金申請ができるケースもあります。
もし、当時の領収書等を保管している場合には契約中の保険会社に問い合わせをして、給付金の申請を行ってみましょう。

- 土岐 孝宏
- 中京大学教授
日帰り入院中の手術の場合も、「入院」中の手術になるため、比較的大きな給付金を得ることが期待できます。なお、入院給付金の請求は、必要書類をそろえて、早めに行いましょう。少なくとも法律レベルの話しとして、保険会社は、受取人が保険金を請求できるとき(被保険者が入院をしたとき)から3年が経過すれば、時効を援用して、給付金の支払義務を拒むことが可能になるためです(保険法95条1項)。
まとめ
日帰り入院は、入院日と退院日が同じ日である入院のことです。
日帰り入院と判断されるかどうかは保険会社の判断によって異なりますが、基本的には以下の2つの条件を満たしている必要があります。
通院(外来)ではなく日帰り入院と判断されるケース |
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医療費を支払う際に受け取る領収書の「入院料等」の項目に数字が記載されていれば、入院給付金の給付対象となる可能性があります。
受け取った領収書の「入院料等」の項目に記載がある場合は、忘れずに保険会社へ問い合わせをして給付金申請を行うようにしましょう。

