弁護士保険とは?
弁護士(費用)保険とは、弁護士に相談する際の弁護士費用を補償することを目的とした保険です。
詐欺や損害賠償などのトラブルが発生した場合に頼もしい存在である弁護士ですが、その相談費用は数十万円になるケースも珍しくありません。
そのため、弁護士費用を工面することができずに泣き寝入りをしている被害者の方が大勢います。
そうした場合の弁護士費用を少ない保険料で補償してくれるのが弁護士費用保険です。
なお、毎月の保険料が少額で済むという特徴がある一方で、保険料は掛け捨てなので途中解約をしても払い込んだお金が戻ってくることはありません。
弁護士保険は「少額短期保険」に分類される保険商品なので、万が一、保険会社が破綻してしまった場合には一般的な保険商品にあるような「保険契約者保護機構」といったセーフティネットが利用できない点には注意が必要です。

- 小宮 崇之
- (株)コミヤ保険サービス代表取締役/損害保険プランナー
加入条件
弁護士保険は基本的に保険会社のインターネット窓口から申し込み手続きを行います。
その際には以下の条件を満たしておく必要があるので確認しておきましょう。
弁護士保険の加入条件
- 責任開始日において満20歳以上の人
- 責任開始日において日本国内に住んでいる人
- 日本語で約款、重要事項説明、その他申込書類の内容を正しく理解し読み書きができること
弁護士保険に加入できるのは日本国内に在住する20歳以上の方に限られます。
ただし、保険会社によっては上記とは別の条件(18歳以上から加入可能など)を定めているケースもあるので、弁護士保険に加入する場合は必ず重要事項などをよく確認した上で検討するようにしてください。
補償範囲
弁護士保険に加入していると、弁護士に相談する際の弁護士費用について補償が受けられるようになります。
ただし、弁護士に相談する内容などによって補償範囲が異なるケースがあるので、事前に確認しておくようにしましょう。
偶発事故 | 一般事件 | |
---|---|---|
内容 | 偶発的に発生した事故によって発生した弁護士相談費用について補償 | 偶発事故以外の法的トラブルが発生した場合の弁護士相談費用を補償 |
対象となるケース | 自動車事故、自転車事故、火災、接触事故、物損事故など | 欠陥住宅、近隣トラブル、相続、離婚、労働問題、医療過誤など |
具体的な事例 | 自動車の追突事故、落下物による怪我、ペットに関係する怪我、上階からの水漏れなど | パワハラ、セクハラ、いじめ、詐欺、ネット被害、債権回収など |
弁護士保険では、相談内容が「偶発事故」と「一般事件」のどちらに該当するかによって補償割合が異なる場合が多いです。
補償割合としては偶発事故のほうが高めに設定されている傾向にあり、場合によっては弁護士への相談費用が全額補償されることもあります。
偶発事故には、自動車事故や自転車事故といった身近に起こりうる事故も含まれます。
公益財団法人交通事故総合分析センターの調査によると、自動車による人身事故は令和3年だけでも全国で約30.5万件も発生しています。
※出典:公益財団法人交通事故総合分析センター「令和3年 全国市区町村別交通事故死者数」
また、自転車事故については、東京都内だけでも2022年に15,276件も発生しており、前年よりも1,944件増加しました。
※出典:都内自転車の交通事故発生状況(令和4年中)|警視庁
日常的に自動車や自転車を運転する方は、事故による法律トラブルに備えるために弁護士保険に加入しておくのも方法でしょう。
一方の一般事件に該当するケースでは、補償割合が低く設定されていることが多いので、弁護士相談費用の一部が補償されるものと覚えておきましょう。
無料で利用できる付帯サービスの一例
弁護士保険を販売する保険会社によって、無料で利用できる付帯サービスが用意されていることもあります。
付帯サービスの一例をまとめたので、弁護士保険に加入する際の参考にしてください。
弁護士保険で利用できる付帯サービスの一例
- 弁護士直通ダイヤル:トラブルが法律問題に該当するかどうかの判断やアドバイスが受けられる
- 弁護士紹介サービス:提携する弁護士を無料で紹介してもらえる
- リーガルカード・ステッカー配布:弁護士保険に加入していることの証として使えるカードやステッカーがもらえる。トラブルを未然に防ぐ効果がある
- 弁護士セミナー:弁護士による無料の法律トラブル予防セミナーに参加できる
- 弁護士トーク:アプリを使って提携弁護士へ無料相談ができる
- 税務相談ダイヤル:24時間年中無休で受付をしている相談窓口
- 痴漢冤罪ヘルプコール:万引や痴漢などの冤罪容疑をかけられた場合の対応方法を相談できる
弁護士保険の補償対象外となるケース
弁護士保険は、すべての弁護士相談費用に対して補償が受けられるわけではありません。
たとえば、以下に該当するようなケースでは補償が受けられないのでご注意ください。
弁護士保険の補償対象外となるケース
- 国や地方公共団体、行政庁などが相手となる法律事件
- 有価証券投資に関する法律トラブル
- 破産、民事再生、特定調停、任意整理などに関する法律事件
- 刑事事件、少年事件、医療観察事件
- 被保険者側の問題によるトラブル(暴力行為、飲酒運転、脅迫、詐欺、薬物乱用など)
これらは通常と異なる特殊な手続きが必要になるケースも多く、被保険者側の過失によって発生するトラブルが多いことから補償の対象外とされています。
また、弁護士保険で補償が受けられるのは被保険者本人の弁護士相談費用のみで、被保険者の家族の職場で起きた問題などについては補償が受けられないのでご注意ください。
待機期間・不担保期間に注意
弁護士保険を契約する際には、待機期間と不担保期間の2点に注意しなければなりません。
弁護士保険での注意点
-
待機期間:契約日から一定期間の間は保険金が受け取れない期間のこと
- 一般的には3か月程度
-
不担保期間:特定の法律事件に設けられている補償の対象外となる期間のこと。
- 親族にまつわるトラブル:契約日から1年間
- 相続に関するトラブル:契約日から2年間
- 離婚に関するトラブル:契約日から3年間
※待機期間、不担保期間は保険会社や保険商品によって異なります
一般的に、偶発事故に関しては待機期間や不担保期間が設けられていないことが多く、一般事件の場合には上記のような保険金が受け取れない期間が設けられています。
その理由は、一般事件は弁護士保険に加入する前からトラブルの原因となっていた可能性が考えられ、保険商品における「公平性」が損なわれてしまう恐れがあるためです。

- 小宮 崇之
- (株)コミヤ保険サービス代表取締役/損害保険プランナー
弁護士保険のメリット・デメリット
弁護士保険には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
弁護士保険のメリット
- 被害者が泣き寝入りしなくて良い
- 保険料が安く加入ハードルが低い
- トラブルの抑止力となる(カードやステッカーがある場合)
弁護士保険のデメリット
- 法律トラブルに関する弁護士相談費用がすべて補償されるわけではない
- 加入時点で発生している事件は補償対象外
- 一定の待機期間、不担保期間がある
冒頭でもお伝えしたとおり、弁護士への相談費用は数十万円にも上るケースが多いため、その資金を準備できないがために法律トラブルが発生しても泣き寝入りをしている方は少なくありません。
一部の保険会社では弁護士保険に加入していることの証としてカードやステッカーを送付していることもあり、それらを活用することで未然に法律トラブルを回避することもできます。
また、一般的な弁護士保険は1か月あたり1,000〜4,000円程度の手ごろな保険料で加入できます。
保険料は手ごろでありながら数十万円にも上る弁護士相談費用についての補償が受けられるので、費用対効果は高いといえるでしょう。
その一方で、法律トラブルに関するすべての弁護士相談費用が補償されるわけではなく、ケースによっては一切の補償が受けられないこともあります。
弁護士保険に加入してから一定の期間は保険金が受け取れなかったり補償の対象外だったりと、必ずしも万能とはいえない保険商品なので、これらの注意点をよく理解した上で加入するようにしてください。

- 小宮 崇之
- (株)コミヤ保険サービス代表取締役/損害保険プランナー
弁護士保険に関するよくある質問Q&A
最後に、弁護士保険に関するよくある質問にお答えします。
弁護士保険に関するよくある質問Q&A
Q. 自動車保険の弁護士費用特約との違いは?
A. 自動車保険の弁護士費用特約は自動車事故に限定されているケースが多いです。
自動車保険に加入している場合、弁護士費用特約を付けている方も多いのではないでしょうか。
自動車保険の弁護士費用特約は、基本的な補償対象として自動車事故に限定しているケースが多く、必ずしも弁護士相談費用が補償されているわけではありません。
ただし、現在は自動車保険にも特約を追加することで、日常生活における被害事故の損害賠償請求も付帯できるようになっております。
また、自動車保険の弁護士費用特約では、保険会社から承認を得て初めて弁護士に相談が出来るので、すぐに弁護士に相談ができません。
一方、弁護士保険では無料で弁護士に直接相談できるサービスが付帯しているので、何かトラブルがあったらすぐに弁護士に相談できる点が、とても心強いサービスでしょう。
Q. 弁護士保険を途中解約したら保険料は戻ってくる?
A. 弁護士保険の保険料は掛け捨てなので解約しても戻ってくることはありません。
保険商品の中には、払い込んだ保険料が積み立てられていき、解約時に返戻金として戻ってくるタイプが存在します。
ですが、少額短期保険に含まれる弁護士保険の保険料は掛け捨てなので、途中解約をしても払い込んだ保険料が戻ってくることはありません。
Q. すでに発生している問題についての弁護士費用を節約するためには?
A. すでに発生している問題についての弁護士費用は、弁護士保険では補填できません。
そういった場合には相談料や着手金が無料の法律事務所を選んで相談することで、弁護士費用における初期費用を節約できます。
また、完全成功報酬制を採る弁護士事務所も存在するので、これらを利用することでも初期費用を抑えることができるでしょう。
まとめ
弁護士保険は、法律トラブルに関する弁護士相談費用を補償してくれる少額短期保険のうちのひとつです。
推計によれば、法律トラブルは、雇用問題やクレーマー対応などの事業トラブルで年間約114万件、離婚やハラスメントなどの個人トラブルで年間約1,367万件も発生しています。
※弁護士保険とは/エール少額短期保険
この件数は自動車事故の年間約47万件より多く、もしトラブルに陥った場に場合は大きな費用が必要となるため、弁護士保険は自動車保険と同じ感覚で検討する必要性があります。
また、弁護士保険に加入することにより、様々な付帯サービスを活用することもできますので保険料の水準によっては、今後加入を検討してみるのも良いのではないでしょうか。
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