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更新 更新:2022.07.07

【FP解説】短期化する入院日数から考える医療保険での適切な備え方とは?

【FP解説】短期化する入院日数から考える医療保険での適切な備え方とは?
所有資格
CFP資格、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
専門分野・得意分野
ライフプラン、生命保険、不動産等

病気やケガをして治療のために入院することになっても、公的な健康保険があることで経済的負担はかなり抑えられます。

しかし、健康保険の対象にならない費用の負担や、仕事を休むことによる収入の減少等があるので、予め自助努力により備えをしておきたいところです。

自助努力の方法としては、貯蓄をする以外に私的な医療保険に加入するということも挙げられます

どのような医療保険が適切なのか、昨今の医療事情を踏まえて考えてみました。

入院日数は短期化傾向にある

私たちが病気やケガで医療機関に入院した時の在院日数(入院日数)が、昔と比べてかなり短くなってきています

厚生労働省では全国の医療機関を利用する患者を対象に、3年に1度「患者調査」を実施しています。1984年(昭和59年)以降の退院患者の平均在院日数のグラフが以下です。

退院患者の平均在院日数の推移

出典:厚生労働省「平成29年患者調査」

2017年(平成29年)の平均在院日数は29.3日で、前回の2014年に比べて2.6日も短くなっています

グラフを一目見てわかるように、以前に比べて在院日数はかなり短くなっています。1984年以降で平均在院日数が最も長い1990年では平均44.9日でしたが、その後の9回の調査で全て前回より短くなっており、27年間で15.6日も短くなっていることがわかります。

高齢化社会へ向けて医療制度を大きく改革していることが要因として考えられますが、この傾向はまだ続きそうであり、いつか20日を切る日が来るのではないでしょうか。

高齢になるほど入院日数は累進的に長くなる

前項でご紹介した退院患者の平均在院日数29.3日は、性別や年齢、地域等を全て問わない平均値であり、条件を設定して細かくみていくと、平均では見えなかった事実を確認することができます。

下記グラフは平均在院日数を年齢区分ごとに作成したものです。

退院患者の平均在院日数(年齢階級別)

出典:厚生労働省「平成29年患者調査」

1~4歳の平均入院日数は0歳より少し短く、20歳前後や60歳代あたりでも年齢に反比例して短くなっていますが、その他の年齢区分では年齢区分が上がる(年を重ねる)ごとに平均在院日数が伸びています

特に75歳以上の伸びが顕著で、70~74歳は26.3日でまだ平均より短いですが、75~79歳が33.3日、80~84歳が38.9日、85~90歳が47.3日、90歳以降が66.8日と累進的に伸びています。

逆に若い人はかなり短く、最も短い1~4歳は僅か5.3日、5~9歳が6.6日、働き盛りの30~34歳でも11.0日しかなく、全年齢平均29.3日の半分もありません

若い人ほど病気やケガをした時の回復力(治癒力)がある上に、短期間の入院ですぐに仕事に復帰したいと思われるので比較的早期に退院しています。

傷病によって入院日数は大きく異なる

次に傷病による平均在院日数の違いを確認してみました。患者数が比較的多い主な傷病の平均在院日数を、全年齢平均および一部の年齢区分ごとにまとめてみました。

全年齢 25~29歳 45~49歳 65~69歳 85~89歳
総数 29.3日 10.3日 20日 27.3日 47.3日
悪性新生物 17.1日 17.8日 12.6日 14.8日 26.5日
糖尿病 33.3日 16.4日 14.9日 21.8日 68.4日
統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害 531.8日 98.7日 200.8日 829.3日 1701日
気分[感情]障害(躁うつ病を含む) 113.9日 45.1日 55.9日 148.9日 321.6日
高血圧性疾患 33.7日 11日 12.4日 12日 50.8日
心疾患(高血圧性のものを除く) 19.3日 11日 7.9日 8.4日 33.5日
脳血管疾患 78.2日 26.3日 36日 57日 109.4日
肺炎 27.3日 10.9日 15.9日 23.1日 33.4日
肝疾患 22.9日 10.4日 16.4日 23.8日 36.4日
骨折 37.2日 14日 16.3日 28.8日 49.3日

傷病ごとに平均在院日数はかなり違いがあります。例えば、「がん(悪性新生物)」は17.1日、「心疾患(高血圧性のものを除く)」は19.3日で、全傷病平均の29.3日に比べて10日以上も短いです。

一方で、「統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害」は531.8日にもなり、全傷病平均の実に18倍にもなります。

約1年半も入院すると、おそらく仕事の継続が困難なことから収入は減り、治療費や入院関連費用で支出は増え、経済的にかなり負担を強いられることになるでしょう。

「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」や「脳血管疾患」もかなり長期の入院になっていす。

また、同じ傷病でも年齢が違うと、平均在院日数もかなり違いがあります。既にご紹介した全傷病平均では、若い人は比較的短く75歳あたりから急に長くなっていますが、傷病ごとにみても同じ事が言えます。

例えば、「糖尿病」では25~29歳だと平均16.4日ですが、85~89歳になると68.4日になり、25~29歳の約4倍の日数です。

「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」では25~29歳だと平均45.1日ですが、85~89歳になると321.6日にもなり、25~29歳の約7倍の日数です。

このようにどの世代の人が何の傷病で入院するかによって、入院する日数は全然違うことがわかります。

いつ何の傷病で入院するかはわからず、予定を立てることができないので、いつ何が起きても心配しないで済むような備えをしておきたいものです

入院日数の変化に対応できる適切な備え方

入院費用に経済的に備えるなら医療保険が適しています。入院をすれば、1日あたり5千円や1万円等の入院給付金を受け取れる保障があります。

仮に1日1万円受け取れる保障だと、10日間入院したら10万円(1万円×10日)受け取れますが、平均在院日数が短くなってきていることで、受け取れる給付金が減る傾向にあります

平均在院日数程度の入院をした場合に受け取れる入院給付金

  • 2002年……38万円(1万円×38日)
  • 2017年……29万円(1万円×29日)

また、入院給付金の保障には1回の入院で保障してもらえる日数に上限があり、最近は60日型(1回の入院では60日が上限)が主流です。

平均在院日数の約2倍あるので十分と言えますが、傷病によっては足りない可能性があり、高齢になってからの入院でも足りない可能性があります。

そこで、最近の医療保険では入院したら数日分まとめて受け取れるようなタイプや、日数に連動しないタイプの入院給付金保障が増えています。日数に連動しない方が予め受け取れる額を想定しやすいので、落ち着いて入院できるのではないでしょうか

給付金だけでは足りない場合は保障を大きくしたり、貯蓄で対応できるようにしたりするとより安心できる備えになります。

三大疾病に対する手厚い備え

保険会社の医療保険には「三大疾病」という言葉(保険会社によって若干言い方に違い有り)が度々登場します。

三大疾病とは、一般的に「がん(悪性新生物)・心疾患・脳血管疾患」のことを言いますが、「がん(悪性新生物)・急性心筋梗塞・脳卒中」の場合もあるので、混同しないように注意が必要です。

三大疾病保険には下記のような特約があります。

三大疾病保険の主な特約

  • 三大疾病入院無制限……入院給付金保障で保障してもらえる日数の上限が無い(保障の拡大)
  • 三大疾病一時金……三大疾病で所定の状態になったら一金を受け取れる(一時金保障)
  • 三大疾病払込免除……三大疾病で所定の状態になったら以後の保険料払込が免除される(払込免除で負担軽減)

いずれも三大疾病に対する備えを手厚くするもので、三大疾病の平均在院日数を確認すると、がん17.1日・心疾患19.3日・脳血管疾患78.2日となっており、がんと心疾患は比較的短く、脳血管疾患はかなり長いです。

入院した日数に連動する入院給付金保障で備えていると、がん・心疾患と脳血管疾患とでは受け取れる給付金額にかなり差が出ます。

がんと心疾患への備えを重要視するなら、入院無制限の保障よりも一時金保障を手厚くしておくと良いです

入院しない治療への適切な備え方

最近は入院日数が短期化していることと合わせて、入院する機会も減ってきています。

下記は厚生労働省の患者調査から、2002年以降の推計入院患者数と推計外来患者数の推移をまとめたものです。

入院・外来患者数の推移

出典:厚生労働省「平成29年患者調査」

日本は平均寿命が伸びていることから、受療率の高い高齢者が増え、外来(通院)患者数も入院患者数も増えていそうですが、2002年と2017年の入院患者数を比べると、13.8万人(9.5%)も減っています

また、、外来患者数は647.8万人から719.1万人へ、71.3万人(11.0%)も増えています。医療と介護の一体的な改革等により、在宅での療養が増えていることも関係していると考えられます。

医療保険で入院に備える場合、入院する機会が以前に比べて減っていることも、受け取れる入院給付金が減ることを意味します。

外来(通院)の給付金保障もあれば、受け取れる額のバランスは取れそうですが、通院しただけで簡単に給付金を受け取れる保障はありません

入院をしない治療にも備えるなら、手術をしたら受け取れる保障や、薬剤治療をしたら受け取れる保障、診断されたら受け取れる保障(主にがん)等で対応するか、医療保険に頼らず貯蓄での対応等が考えられます

まとめ

入院への備えとして医療保険に加入するなら、現在だけでなく将来の医療事情にも合った内容にしておくと、保険が劣化することなく非常に長い期間、安心して加入し続けることができます。

昨今は保険期間が終身の保険も多いので、例えば20~30歳代だと50年以上(長生きすれば80年以上も)加入し続ける可能性は十分にあります。

自分が亡くなる前に医療保険がなくなることのないよう、自分に合った適切な保険を確保しましょう。

※病気やケガをした時に給付金を受け取れる仕組みは、共済の医療共済にもあるので、合わせて検討すると良いでしょう。

松浦 建二
松浦 建二
ファイナンシャルプランナー
青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税金対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして、主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
所有資格
CFP資格、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
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ナビナビ保険編集部
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ナビナビ保険編集部は「どこよりも分かりやすい保険情報を届けること」をコンセプトにコンテンツの配信を行っています。

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