岐阜県高山市では、子育て世帯への経済的な支援や子どもと若者の居場所づくりに向けた取り組みがたくさん行われています。
今回は、高山市こども未来部こども政策課の前田課長にこども家庭支援の内容や高山市で子育てをする魅力などについて、詳しくインタビューしました!
子育て世帯への経済的支援
編集部 鎌田
まず、高山市の子育て世帯への経済的支援について教えてください!
高山市 前田
はい、代表的な支援施策は以下の通りです。
高山市の子育て世帯への代表的な経済的支援
①子育て支援金
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お子さんが誕生された世帯に対象児童1子につき10万円を支給 |
②出産応援給付金
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妊婦1人あたり5万円相当の電子カタログギフトを支給 |
③子育て応援給付金
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子ども1人あたり5万円相当の電子カタログギフトを支給 |
④第2子以降出産祝金
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第2子以降のお子さんが誕生された世帯に対象児童1人につき10万円を支給 |
⑤小中学校就学援助制度
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支給対象者と認められた場合、入学前に必要な新入学用品費や入学後の給食費、修学旅行費等を支給 |
⑥高等学校就学準備等支援金
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中学3年生の対象児童1人につき3万円を支給 |
⑦高校生の通学費等に対する助成
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公共交通機関で高校に通学する費用などの一部を補助 |
⑧福祉医療助成制度
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0歳~18歳まで、子どもの医療費を無償化 |
編集部 鎌田
かなり多くの支援施策を行われているのですね!
高山市 前田
妊娠~出産のところでいくと、第1子誕生で上表の①~③の施策合計20万円分を支給しています。また第2子以降は「④第2子以降出産祝金」も合わせて30万円分支給しています。
編集部 鎌田
子育てをされる方にはとても嬉しい支援ですね。
高山市 前田
「⑤小中学校就学援助制度」は、経済的にお困りの方が安心して義務教育を受けられるよう支援する施策です。学校入学時の費用や授業で使用するノート、給食費などの費用を支給しています。
高山市 前田
また、「⑤小中学校就学援助制度」とは別に、全ての小中学生の給食費3分の1を支援する施策も実施しています。
編集部 鎌田
高校生以降の支援はいかがでしょうか?
高山市 前田
「⑥高等学校就学準備等支援金」は、令和5年度からスタートした事業で、高校に上がる前の中学3年生のお子さんを育てている保護者に3万円を支給します。
編集部 鎌田
教科書や制服などに活用できそうですね。
高山市 前田
さらに、高校生への支援として「⑦高校生の通学費等に対する助成」を平成30年度から実施しています。高山市は日本一大きい面積の市で、バスや電車で遠い高校へ通うとなると交通費の負担が重くなります。そのため、通学費の3分の1相当額を年間8万円まで支給しています。
編集部 鎌田
確かに、遠方から通うとなると負担が大きくなりますよね…。
高山市 前田
また、「⑦高校生の通学費等に対する助成」は下宿代なども支給対象に含みます。例えば、市外からスポーツの強豪校に進学した生徒で高山市内に下宿する場合などが当てはまります。
高山市 前田
そして「⑧福祉医療助成制度」は、子どもの医療費負担が無料となる支援施策で、令和5年度から対象を中学生までから高校生までへと伸ばしました。所得制限はなく、保険適用される医療であれば外来・入院ともに対象です。
編集部 鎌田
そうなんですか!高校生まで無料なのは他市でもなかなか見られないですよね。
子育て世帯をサポートする事業
妊娠~産後のケアサポート事業
編集部 鎌田
続いて、妊娠~産後のケアサポート事業の内容について教えてください!
高山市 前田
はい、高山市では、主に以下のサポート事業を行っています。
妊娠~産後のケアサポート事業
①妊婦教室
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同じ時期に出産予定の妊婦さんと交流を深めながら、妊娠、出産、育児について学ぶ場などとして開催 |
②赤ちゃん教室
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同じ月に生まれた赤ちゃんとお母さんの交流の場として開催 |
③産後ケア事業
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医療機関などでの宿泊や日帰り、助産師の家庭訪問によるお母さんの心身のケアや育児サポートを提供 |
④ブックスタート事業
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絵本の読み聞かせ会の開催と絵本のプレゼント |
高山市 前田
「①妊婦教室」は、妊娠4ヶ月以降の妊婦の方を対象に、毎月開催しています。内容としては、妊娠における身体の変化や育児に関する学習、父親の妊婦体験などを実施しています。助産師と保健師が参加するので、妊娠中の身体の変化や胎児の成長についての悩みを相談することもできます。
編集部 鎌田
出産前に育児について学べる機会があると、お母さんも安心ですね!
高山市 前田
「②赤ちゃん教室」は、生後2ヶ月~5ヶ月までの子どもと保護者を対象に、出生月ごとに全3回実施しています。先ほどの妊婦教室の時から顔を合わせているので、さらに交流を深めていく場として利用していただいています。
赤ちゃん教室の様子
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写真提供:高山市
編集部 鎌田
年の近いお子さんがいるお母さん同士で集う機会が定期的に設けられているのですね。
高山市 前田
そうなんです。子育てをしていると、色々とたいへんなことや自身の体調が悪い時などもあると思います。そんな時に親子が孤独になってしまうのは良くないと考えていますので、繋がりを作れるような機会の提供を積極的に行っています。
編集部 鎌田
悩みを相談できる相手がいるだけで気持ちも少し楽になりますよね。
高山市 前田
「③産後ケア事業」は、令和2年度から始めた事業で、出産後、心身の不調や育児不安のあるお母さんが医療機関などで宿泊ができたり、日帰りの食事提供や助産師へ相談、母乳マッサージを受けることができたりします。
編集部 鎌田
出産後の育児で辛い時、こういった取り組みがあるとお母さん方も嬉しいですよね。
高山市 前田
利用者の方からは、病院で温かい食事が出てくることで疲れが癒されたり、息抜きになって非常に助かるといった声をいただいています。
高山市 前田
「④ブックスタート事業」は、平成18年度から始めた事業で、子どもの4ヶ月健診と1歳半の時に好きな絵本を選んでいただきプレゼントしています。またボランティアの方による絵本の読み聞かせも行い、この機会を通して親子で「絵本を楽しむ体験」を提供しています。
高山市 前田
そうなんです。絵本は親子の愛着形成と子どもの成長のために大切な役割を担っていると考えており、ブックスタート事業をきっかけに日頃から絵本に触れてほしいという想いで行っている事業です。利用された方々からの評判もとても良いです。
編集部 鎌田
これを機に子どもに読み聞かせしようかなと考える方も多くなりそうです…!
ファミリーサポート事業
編集部 鎌田
次に、ファミリーサポート事業についてお聞かせください!
高山市 前田
ファミリーサポート事業では、生後3ヶ月~18歳までの子どもを持つ方を対象に、託児支援やSNSを利用した相談を行っています。
ファミリーサポート事業
- 対象者:高山市内在住で生後3ヶ月から18歳までの子どもを持つ保護者(医療行為などを必要とする子どもを除く)
- 内容:①託児支援(保護者や兄弟姉妹が医者にかかる際の利用、リフレッシュの際の利用など、どのような理由でも利用可能)②SNSを活用した相談
- 利用料金:1時間につき500円など
引用:ファミリーサポート事業|高山市
高山市 前田
託児支援については、託児支援ができるファミリーサポート会員と、託児を依頼したい依頼会員の共助で成り立っています。全員で約500名の会員がいます。
高山市 前田
利用料金は1時間500円(時間外・土日祝は1時間600円)としています。夜間や早朝の託児も受け付けており、託児場所は拠点施設のほかファミリーサポート会員の自宅などでも可能なため、時間・場所を問わず利用できることから非常に助かるといったお声をいただいています。
編集部 鎌田
1時間500円だと気軽に利用いただけますね。
高山市 前田
そうなんです。今後はさらに利用者を増やしていきたいと考えており、様々な施策を検討中です。
子どもと若者の居場所づくり
編集部 鎌田
続いて、高山市で行われている子どもと若者の居場所づくりについてお聞かせください!
高山市 前田
まず、一つ目にご紹介したいのが、誰かに合わせるのではなく生徒が多様なスタイルで学習できる教室「にじ色」です。
にじ色の様子
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▶ 内容はこちらの動画から詳しくご覧いただけます。
高山市 前田
令和6年4月に開室した公設の「学びの多様化教室」で、通常の学校とは異なるカリキュラム、内装やリラックススペースも充実させた施設になっています。
高山市 前田
次にご紹介したいのが、令和6年7月にリニューアルオープンした「市民プールと赤保木公園」です。これまでプールと公園は隣接しながらも別々に管理されていましたが、リニューアルと共に一体化しました。
市民プールの様子
アクティビティプール |
キッズプール |
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赤保木公園の様子
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高山市 前田
プールは夏の2ヶ月間しかオープンしませんが、リニューアル効果もあってか、青年会議所の方々がナイトプールを企画してくれたり、今までになかったことも起きています。
高山市 前田
また、幼児用プールは夏以外の期間も開放し、土日に親子で訪れてくださる方々もいらっしゃいます。
高山市 前田
その他、今年度(令和6年度)末の完成に向け、「原山市民公園」の大規模リニューアルを進めています。
このリニューアルでは、市内の親子にどの遊具がよいか、どういった設備が公園にあるとよいかを投票してもらい市民の意見を反映するようにしました。
編集部 鎌田
自分たちが選んだ遊具で遊べるのはとても嬉しいですね!
高山市 前田
また、岐阜県は森林率が全国で2位となっていまして、森林資源が非常に豊かな地域です。そこで、木と触れ合える施設として、「ぎふ木遊館サテライト施設(木っずテラス)」を令和6年11月にオープンしました。
ぎふ木遊館サテライト施設(木っずテラス)の様子
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写真提供:高山市
編集部 鎌田
市民プールから公園、そして木遊館と子どもの遊び場が豊富に設けられているのですね…!
若者の居場所づくり「村半」
編集部 鎌田
これまで子どもの居場所づくりについて伺いましたが、若者を対象とした居場所づくりも実施されているんですよね?
高山市 前田
そうなんです。地域には4年生大学がなく、高校を卒業した若者が県外の大学や就職先へ出て行ってしまうことが大きな地域課題でした。
そこで、地元の高校生をメインターゲットに高校を卒業するまでに地元のことを深く知ってもらったり、多くの人と繋がってもらい、ふるさとと強く結びついてもらうための場として「村半」という場所を創りました。
写真引用:村半|施設情報|高山市
高山市 前田
施設のメインターゲットは高校生ですが、学校・年齢を超えて飛騨高山の根強いファンを創ることも目指しています。
施設は無料で利用することができ、予約をすれば貸し切ることもできます。自習で利用している学生がいたり、ボードゲームを通じて交流したり、地元に関するワークショップを開催したりと様々な用途で活用されています。
編集部 鎌田
伝統的な良さを活かした施設の中で、様々な交流ができる場なんですね。
高山市がこども家庭支援を通して目指す社会
編集部 鎌田
最後に、高山市で実施されているこども家庭支援を通して、今後目指されていく社会像があれば教えてください。
高山市 前田
高山市は山間部の地方都市のため、少子高齢化とそれに伴う人口減少が厳しくなっています。
一方で、「飛騨高山」として知られた国際観光都市として年間500万人以上の国内外のお客さまが訪れてくださっている現状もあります。
高山市 前田
そうなんです、これだけ多くの方々が訪れてくださっている理由としては、高山の歴史文化をはじめとする伝統的な魅力や、自然豊かで安全安心な土地柄だと思います。
そういった部分を活かしながら、これまで話したこども家庭支援施策を合わせて、高山市で子育てしたい、暮らしていて楽しい、幸せと感じてもらえるような場所を目指していきたいと考えています。
編集部 鎌田
私も実際に高山市へ足を運んでみたくなりました。本日はありがとうございました!
まとめ
今回は、高山市のこども家庭支援施策や子ども・若者の居場所づくりについて詳しくお聞きしました。
経済的な支援が手厚いだけでなく、子どもの遊び場を積極的にリニューアルされており、自然の中で育っていける環境が整っていると感じました。
特に「村半」はインタビュー時に拝見し、内装のこだわりが素晴らしく実際に訪れてみたいと感じる場所でした。
ぜひ高山市へ行かれる際は、訪れてみてはいかがでしょうか。
村半の紹介動画は以下のリンクからご覧いただけます。
「村半」プロモーション動画