奈良県葛城市では、「市民第一の住みよいまちづくり」をキーワードとして、「全世代が住みよいまち」を目指して様々な取り組みが行われ、中でも子育て世帯への支援が豊富です。
今回は、葛城市の方々に「葛城市の助成制度」「子育て支援センター事業」「不登校対策事業」の3つの取り組みについて詳しくインタビューしました。
1. 子育て世帯への経済的支援施策とは?
編集部 鎌田
葛城市で行われている子育て世帯への経済的支援について教えてください。
子ども医療費助成制度 |
18歳以下までの医療費を無償化(窓口負担0円) |
第2子目以降の保育料無償化 |
令和6年4月より「子どもの年齢」「世帯の所得」に関係なく第2子目以降の保育料が無償 |
妊婦健康診査の補助券 |
母子健康手帳の交付時に妊婦健康診査補助券を配布 出産の経済的負担を軽減 |
妊婦支援給付金 |
妊娠届け出後に5万円、出産後に子1人当たり5万円の給付金の支給と相談支援の実施 |
葛城市
1つ目の「子ども医療費助成制度」について、令和6年8月より18歳以下の高校卒業までの方を対象に医療費を無償化にしました。現在の助成額とは異なりますが、平成31年から奈良県内の市では、葛城市が最初に高校生までの医療費助成制度に取り組み始め、そこから奈良県全体でも取り入れられ、今も進めている施策になります。
![インタビューの様子]()
編集部 鎌田
奈良県の中でも先駆けて支援を始められていたのですね。助成制度を受けるにあたり、何か手続き等は必要ですか?
葛城市
子どもが生まれたタイミングなどで手続きのご案内をさせていただいており、専用の資格(医療証)を取得いただいております。この医療証と一緒に保険証(マイナンバーカードおよび健康保険資格確認書等)を窓口で提出することで、窓口での負担金はかかりません。
編集部 鎌田
窓口で一時的に支払う必要がないのは嬉しいですね。
葛城市
2つ目の「第2子目以降の保育料無償化」について、元々3歳~5歳の保育料に関しては無償化としておりましたが、令和6年4月より第2子以降の0歳~2歳の保育料に関しても無償化になりました。
編集部 鎌田
子育て世帯にとっては大きな経済的支援ですね。妊娠期の助成制度についても教えてください。
葛城市
はい、まず「妊娠健康診査の補助券」では、母子健康手帳の交付時に14回分の妊婦健康診査補助券をお渡しし、妊婦健康診査の自己負担額を軽減しています。
![インタビューの様子]()
葛城市
また、「妊婦支援給付金」では妊婦であることの認定を受けた方を対象に、妊娠の届け出後に妊婦1人当たり5万円と出産後に子1人当たり5万円を給付します。
編集部 鎌田
妊娠期も非常に手厚いサポートがあるのですね。
葛城市
また補助金・給付金だけでなく妊娠された方には随時、妊婦訪問、面談など個別相談も実施しており、妊娠・出産に対する不安や悩みを解決いただけるようにサポートしています。
編集部 鎌田
出産を迎える方にとっては気軽に相談できる場があると有難いですよね。
葛城市
紹介した施策以外にも、「全世代が住みよい街に」ということで、葛城市では様々な補助金・助成金制度を実施しております。葛城市のサイトに「じょじょきん」というページがあり、各種制度の内容を一覧で紹介しています。
画像引用:じょじょきん(補助金・助成金を分野別に紹介)|葛城市
編集部 鎌田
これだけの支援施策を実施されているのですね!パンフレットで一目でわかり、申請もしやすくていいですね。
2. 子育て支援センター事業で行われている親子へのサポートとは?
編集部 鎌田
続いて、子育て支援センター事業で行われている内容について教えてください。
葛城市
はい、子育て支援センター事業では代表的に以下の取り組みを行っております。
つどいの広場
葛城市
まず、子育て支援センター事業では主に未就園児の親子を対象に、親子で自由に遊べ、子育ての悩みを相談できる場として「つどいの広場」を提供しています。
また「こども用品リサイクル」として、ご家庭にあるこども用品等をお持ちいただいて、必要とする方にお譲りしています。
写真提供:葛城市
つどいの広場 開催場所
-
子育て支援センター(新庄健康福祉センター2階)
- 原則 月・水・木・第1・第3金曜日
- 9時30分~11時30分
- 13時~15時
-
磐城校区児童館
- 原則 月~金 及び 第2・4土曜日
- 9時30分~11時30分
- 13時~15時
-
ゆうあいステーション「おでかけ広場」(葛城市福祉総合ステーション2階)
参照:つどいの広場|葛城市
子育て支援センター事業で行われているイベント
編集部 鎌田
次に、子育て支援センター事業で行われているイベントについて教えてください。
葛城市
ベビーマッサージや絵本の読み聞かせ、親子リトミックなどを行っております。
イベント日程については、広報かつらぎやホームページでお知らせしています。
参照:つどいの広場|葛城市
編集部 鎌田
こういったイベントを通して、親子の絆はもちろん、親同士のつながりも増えそうですね。
葛城市
また夏休み中にはなりますが、中学1年生の生徒がつどいの広場を訪れ、未就園児と触れ合う機会を設けています。生徒に実際に赤ちゃんを抱っこしてもらい、子育てを実感してもらいます。
年齢別つどいについて
編集部 鎌田
次に、子育て支援センター事業で行われている「年齢別つどい」について教えてください。
葛城市
年齢別つどいはその名の通り、こどもの年齢別に親子が集まり交流する機会を設けています。それぞれの年齢に合った遊びや親同士の交流支援を実施しており、例えばお子さんの年齢に応じた「子育てセミナー」や「ふれあい遊び」などを行っています。
下記の4つのクラスに分けています。
年齢別つどい
- こあらルーム(0歳児:対象年度に満1歳を迎える4月2日~9月生の乳児)
- らっこルーム(0歳児:対象年度に満1歳を迎える10月~4月1日生の乳児)
- ひよこルーム(1歳児:対象年度に満2歳を迎える幼児)
- わんぱくルーム(2歳児:対象年度に満3歳を迎える幼児)
編集部 鎌田
同年代のこどもが集うと、その後幼稚園や小学校でもずっと関係性が続きそうですね。
葛城市
はい、実際に年齢別つどいを通じて仲良くなったり、親同士もつながりができたりしています。子育て支援センターや児童館で実施するため、職員が見守っている中でこどもを遊ばせることができるため、親同士で交流する時間が取れるのも魅力です。
編集部 鎌田
遊びに来られた親御さんも、楽しく息抜きできる場として設けられているのですね。
BP1(ビー・ピー・ワン)プログラムについて
編集部 鎌田
次に、「BP1(ビー・ピー・ワン)プログラム」について教えてください。
葛城市
「BP1プログラム(親子の絆づくりプログラム)」では、初めての赤ちゃんを育てているお母さんを対象に子育てに関する知識が学べたり、参加したお母さん同士でテーマに沿った話し合いをしたり、親子のふれあいタイムやグループワークをしたりします。
BP1プログラム
対象:第1子と母親
内容:子育てに必要な知識が学べたり、お母さん同士で話し合いやグループワークを実施。講座にはこどもと一緒に参加していただく。
編集部 鎌田
初めての子育てだと不安がいっぱいだと思うので、「BP1プログラム」を通して同じ悩みを持つお母さんと交流できたり、正しい知識が学べたりするのはとても良いですね。
葛城市
最初は皆さんなかなか打ち解けられないのですが、グループワークや話し合いを通じてお互いのことを知り、講座が終わるころには皆さん仲良くなっていることが多いです。講座が終わってから自主的にサークルを作ってお母さん同士で集まっていることもあります。
編集部 鎌田
それだけ仲が深まると、開催している側も嬉しいですね。
葛城市
また、この講座ではこどもと一緒に参加していただくため、初めて母親とこどもが二人っきりで出かけるきっかけになったといったお声をいただくことがあります。
編集部 鎌田
親子が外出するきっかけづくりにもなっているのですね。
ファミリー・サポート・クラブについて
編集部 鎌田
次に、「ファミリー・サポート・クラブ」について教えてください。
葛城市
ファミリー・サポート・クラブでは以下の取り組みを行っています。
ファミリー・サポート・クラブ
- 概要:子育ての助けをしてほしい人(利用会員)・子育てのお手伝いをできる人(援助会員)がそれぞれ会員となり、相互に助け合う仕組み
- 内容:保育所(保育園)や幼稚園の送り迎え、学校の放課後のお子さんの預かりなど
- 対象:葛城市内在住でファミリー・サポート・クラブ事業に賛同していただける方(資格・性別は問いません)
- 利用会員:原則として0歳から小学校6年生までのこどもがいる方
- 援助会員:心身ともに健全で子育てに理解がある18歳以上の方
- 利用料金:1時間あたり600円~800円(利用会員が援助会員に直接支払い)
会員登録については、葛城市のホームページをご確認ください。
参照:葛城市ファミリー・サポート・クラブについて|葛城市
葛城市
こどもが健やかに育ち、子育てしている方が安心して社会生活できる環境づくりを目指して、お互いに助け合う仕組みとして「ファミリー・サポート・クラブ」を行っています。
編集部 鎌田
利用料金が安く、気軽に利用できそうですね。
葛城市
そうなんです。また、援助会員の方については市で行っている講習会を受けられてから会員になっていただいています。実際に援助会員の方にこどもを預けるとなった際も、コーディネーターが立ち会い会員同士で事前に顔合わせを行い、安心して利用いただけるようにしています。
編集部 鎌田
実際に利用されている方々からはどういったお声をいただいていますか?
葛城市
利用会員の方からは困った時に助けてもらえてありがたいという声をいただいています。また、長い間「ファミリー・サポート・クラブ」を利用されている方もおり、会員同士でこどもの成長を一緒に感じることができているというお声もいただいています。
![葛城市のインタビューの様子]()
3. 不登校対策事業の内容とは?
編集部 鎌田
続いて、葛城市で行われている不登校対策事業について教えてください。
葛城市
はい、学校教育課では今までからの取り組みに加えて、こども・若者サポートセンターと連携のもと、子どもたちのウェルビーングの向上を図るため、以下の3つの取り組みを行っています。
IroomとiSpaceについて
編集部 鎌田
まず、「Iroom」と「iSpace」について教えてください。
Iroom・iSpaceとは?
- Iroom:学校に登校はできるが、なかなか教室の中に入りにくいといった状況にある児童生徒を対象に、学校の中に「居場所」を設置。
- iSpace:どこにもつながっていない状況にある児童生徒を対象にバーチャルルーム(仮想空間)を利用した「つながりの場」を設置。
葛城市
葛城市では「誰ひとり取り残されない学校教育の実現」を目指し、「学びの場」の充実に力を入れています。その施策として「Iroom」「iSpace」を設置し支援体制を整えています。子どもたちには新たな「学びの場」を活用してもらい、社会で生きる力と幸せな人生を歩んでいけるためのエネルギーを育んでいってほしいという想いがあります。
編集部 鎌田
「Iroom」「iSpace」では子どもたちはどのような取り組みをしているのでしょうか?
葛城市
「Iroom」では、子どもたちの「したい・しよう」とする自主性を尊重しています。一日の活動内容は基本的には子どもが決定します。子どもが自分で決めたことに取り組み、「Iroom」の先生であるサポートティーチャーと担任の先生や学校の先生方が連携して見守ったり支援したりしています。また、教室で行われている授業を「Iroom」からオンラインで受けたり、給食は教室でみんなと一緒に食べて、「Iroom」で学習したりといったそれぞれの状況に応じて主体的に学ぶ姿があります。
![I roomとは]()
Iroom 紹介リーフレット
編集部 鎌田
子どもが考えたことをとても大切にしているのですね。
葛城市
そうなんです。教室復帰のみが目標ではなく、一人ひとりの社会的な自立を目指すことを目標としています。結果として成功するときもあれば失敗するときもあるけれど、自分で決めてチャレンジする、そのことが素晴らしいという想いで支援しています。このような経験を積み重ねることで子どもたちが「自尊感情」や「自己肯定感」を育んでいけたらと思います。
葛城市
次に「iSpace」では、バーチャルルームの中で他の子どもと会話やチャットをすることができ、人とのつながりのきっかけとなる場を設定し支援しています。開設している時間は学校教育課の担当者やこども・若者サポートセンターの臨床心理士が常駐しており、会話を楽しむだけでなく様々な相談もできます。
![iSpaceとは]()
編集部 鎌田
少しでも子どもたちに繋がりを持ってもらう機会としてはとてもいいですよね。これらを利用するためには何か申請が必要なのでしょうか?
葛城市
はい、どちらも原則、事前に申請いただく登録制度を設けています。利用希望がある場合は、学級担任や各校におられる教育相談コーディネーター等に相談の上、保護者から入室申込書を提出いただいています。
編集部 鎌田
基本的には事前申請してから利用となるのですね。
葛城市
そうですね。ただ、事前申請していなくとも一時的に利用することも可能です。少し心のエネルギーを蓄えるために、数日間や数時間だけなど、自分で気持ちを整理して教室に戻るという一時利用も受け入れ、不登校等の未然防止にも役立てています。
蓮花のAI相談室
編集部 鎌田
では、最後に「蓮花のAI相談室」の取り組みについて教えてください。
葛城市
はい、中学生を中心として、学校教育課とこども・若者サポートセンターが連携し、以下のような取り組みを行っています。蓮花(れんか)というネーミングは、子どもたちが幼い頃から親しんでいる葛城市マスコットキャラクター「蓮花ちゃん」から名付けています。
蓮花のAI相談室
- 概要:子どもたちの見守りをサポートするAIを利用した相談システム
-
内容
- 心のあしあと:1人1台のタブレット端末で毎週日記を記入し、AIが内容から感情分析をして必要に応じて相談を促す
- アンケート:アンケートに回答し自分の心身の状況を客観的に把握できる
- SNS相談:システムを通じて匿名で相談ができ、AIによる回答に加えてこども・若者サポートセンター相談員が対応
参照:「蓮花のAI相談室」の導入につきまして|葛城市
葛城市
私たち大人もそうですが、何か悩んだり困ったりしたとき、いろいろな人に相談ができることが大切だと思います。誰かに相談することで、一人で孤立や孤独になることなく、人生を豊かで幸せなものにしていく「人とのつながり」の一つだと思います。しかし、相談することはなかなかハードルが高く感じます。
そこで、子どもたちには「蓮花のAI相談室」を用いて、相談の練習を積み重ねてもらっています。また、AIは人の代わりにはなりえませんので、AI相談は子どもと先生や周りの大人をつなぐ手段の一つであるということを、学校の先生方と共通理解して取り組んでいます。
編集部 鎌田
確かに、誰かにすぐ気軽に相談できると、その後も「困ったら相談すれば大丈夫」というようにどんな物事にも取り組みやすくなりますよね。
葛城市
そうですね。この相談システム等を活用することで、子どもたちが不安や困難などにうまく適応していく経験を重ね、子どもたちのレジリエンス、つまり、人生を幸せにしなやかに生きていく力を高めることにつなげたいと思っています。
そのために、中学校では毎週「ハートアワー」と名付けた時間をとり、「心のあしあと」として日記を記入し自分の気持ちを振り返る環境を整えていただいています。
編集部 鎌田
AIが内容を分析してくれるのは面白いですね。本日は、たくさんのお話をお聞かせいただきありがとうございました。
まとめ
今回は、奈良県葛城市の子育て支援についてインタビューをしました。
葛城市では、複数の課が連携しながら行っている施策が多くあり、市全体で課題に向けて取り組んでいる「連携の強さ」を感じました。
連携がスムーズだからこそ、様々な取り組みで「全世代が住みよい街」を目指すことができていると思いました。
今回特集した奈良県葛城市の子育て支援施策については以下のページからご覧いただけます。
子育て支援|葛城市