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高額療養費制度で高額医療費でも安心!仕組みや申請方法を徹底解説

高額療養費制度とは、入院や手術によって医療費が1ヶ月の上限を超えた場合医療費の自己負担を大幅に軽減してくれる心強い制度です。

しかし、仕組みを理解していないと、病気やケガでの治療においてお金の面で不安になり治療に専念できなくなったり、医療保険やがん保険などの民間の保険料を払いすぎてしまう原因となったりします。

この記事は高額療養費制度について詳しく解説しますので、病気やケガになったときの金銭的な不安が軽減されるだけでなく、利用の際もスムーズに申請できるようになります。ぜひ、ご一読ください。

高額療養費とは

「高額療養費制度」とは?
1か月(1日から末日まで)の医療費の自己負担が、個人の収入によって決まった上限額を超えた場合、超過分が払い戻される制度のことです。

日本では、全ての方が「公的医療保険(健康保険)」に加入しており、健康保険証を医療機関の窓口に提示することで医療費が1〜3割負担になります。

しかし、医療費の自己負担が3割になるとはいえ、高額な手術や投薬治療を受けた場合自己負担も大きくなってしまいます。

このような場合に高額療養費制度を利用すると、1か月の医療費の自己負担限度額を超えた部分は国が負担してくれるので、安心して治療を受けることができます。

ただし、治療期間が1ヶ月であっても8月15日〜9月14日のように月をまたいでしまうと、高額療養費で払い戻される金額が、8月と9月で別々に計算される点に注意しましょう。

高額療養費の限度額 いくらから適用、いくら戻ってくる?

高額療養費制度は基本的に3割負担した窓口支払額のうち、限度額を超過した部分が後で支給される仕組みです。

ここでは年収約370〜約770万円(3割負担)の人が、ひと月の医療費が100万円(自己負担額30万円)だった場合、払い戻される額を計算してみましょう。

医療費の自己負担上限額は個人の年齢や年収などによって決まる仕組みです。

例えば、年収約370〜約770万円の人の場合、上限額は「80,100円+(医療費-267,000)×1%」で求められます。

そのため、医療費が100万円だった場合の自己負担上限額を計算すると以下の通りとなります。

  • 自己負担上限額 = 80,100円 +(医療費 - 267,000) × 1% = 80,100円 + (1,000,000-267,000)× 1% = 87,430円

よって高額療養費によって払い戻されるお金は、以下の通りです。

  • 払い戻し金 = 3割負担額 - 上限額 = 300,000円 - 87,430円 = 212,570円

つまり、医療機関の窓口で1度300,000円を支払い、後日212,570円が払い戻されます。

高額療養費は世帯合算が可能

1つの医療機関での自己負担額が高額療養費制度の上限を超えなかったとしても、以下のいずれかに当てはまる場合は、自己負担額をひと月単位で合算できます。

  • 複数の医療機関で支払った窓口負担 
  • 同じ医療機関の入院や外来など別の場所で支払った窓口負担 
  • 同じ公的医療保険に加入している同じ世帯の人が支払った窓口負担

実際に、以下のモデルケースで考えてみましょう。

  •  Aさん(夫):78歳(一般所得者、1割負担)
  •  Bさん(妻):76歳

このAさんとBさん夫婦が、ひと月の間に以下の医療費を支払ったとします。

事例 窓口負担(医療費)
Aさん X病院(入院) 50,000円(500,000円)
X病院(外来) 6,000円(60,000円)
Bさん Y病院(外来) 10,000円(100,000円)
Z病院(外来) 12,000円(120,000円)
合計 78,000円(780,000円)

後ほど詳しく解説しますが、75歳以上の一般所得者の上限額は57,600円ですので、合算した窓口負担のうち20,400円(78,000円-57,600円)が、高額療養費によって払い戻されます。

ただし、合算できるのは70歳未満の方の場合、21,000円以上の自己負担のみである点に注意してください。

12か月以内に3回以上高額療養費を利用した場合は多数回該当が適用される

「多数回該当」とは?
過去12ヶ月以内に3回以上高額療養費を利用した場合、4回目以降の自己負担上限額がさらに引き下げられる仕組みのことです。

例えば、年収約370〜約770万円の方の上限額は、80,100円+(医療費-267,000)× 1%で計算されますが、多数回該当となると一律44,000円となります。

治療期間が長期にわたった場合の医療費自己負担を、さらに軽減してくれる仕組みです。

公的医療保険の利かないものは高額療養費の対象外

高額療養費の対象となるのは、公的医療保険の対象である治療を行った場合のみ。

公的医療保険の対象外である治療費については、全額自己負担となるだけでなく、高額療養費の対象にもなりません。

公的医療保険の対象の費用と対象外の費用は、それぞれ以下の通りです。

公的医療保険の対象 公的医療保険の対象外
  • 診察、検査費用
  • 処置、手術費用
  • 入院、看護費用
  • 在宅療養、訪問看護費用
  • 薬代(処方箋)
  • 出産費用(帝王切開)
  • 不妊治療(検査や排卵誘発注射など一般的な治療) など
  • 差額ベッド代(患者が希望した場合)
  • 入院時の食事代
  • 出産費用(自然分娩)
  • 先進医療
  • 国内未承認の抗がん剤などを用いた自由診療
  • 不妊治療(人工授精、体外受精などの高度生殖医療)
  • 歯のインプラント治療など

このように公的医療保険の対象外となる治療には、多くの種類があります。

特に、不妊治療や抗がん剤治療など同じ治療でも公的医療保険の対象となる場合と、ならない場合がある点に注意しましょう。

また、国から認定された先進医療は数百万円ほどの技術料を、全額自己負担しなければならない可能性があります。

年代による違い

高額療養費制度の金額は、70歳未満と70歳以上で異なります。

また、会社員や公務員のような健康保険(被用者保険)に加入している人と、自営業やフリーランスのような国民健康保険に加入している人で、対象となる所得の種類も異なります。

所得の区分については以下の表で確認しましょう。

所得の区分の判定基準
健康保険加入者 標準報酬月額 (標報) 健康保険料や厚生年金保険料を算出するための収入の区分
国民健康保険加入者 70歳未満 旧ただし書き所得 所得金額から住民税の基礎控除33万円を引いた金額
70歳以上 課税所得 所得金額から所得控除を差し引いた金額

70歳未満の自己負担の上限額


区分

所得の区分
自己負担額の上限額(月単位)
年4回目未満 多数回該当
(年4回目以降)

健保 標報83万円以上 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% 140,100円
国保 旧ただし書き所得901万円超

健保 標報53〜79万円 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 93,000円
国保 旧ただし書き所得600万円〜901万円

健保 標報28万円〜50万円 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円
国保 旧ただし書き所得210万円〜600万円

健保 標報26万円以下 57,600円 44,400円
国保 旧ただし書き所得210万円以下
低所得者(住民税非課税) 35,400円 24,600円

所得が多いほど、高額療養費の自己負担上限額が高くなっていることが分かりますね。

70歳以上(平成30年8月診療分から)の自己負担額の上限

被保険者の所得区分被保険者の所得区分 自己負担限度額
外来
(個人ごと)
外来・入院
(世帯ごと)

現役並み所得者
健保 標報83万円以上 252,600円 +(総医療費-842,000円)× 1%
【多数回該当140,100円】
国保 課税所得690万円以上
健保 標報53〜79万円 167,400円 +(総医療費-558,000円)× 1%
【多数回該当93,000円】
国保 旧ただし書き所得600万円〜901万円
健保 標報28万円〜50万円 80,100円 + (総医療費-267,000円)× 1%
【多数回該当44,400円】
国保 旧ただし書き所得210万円〜600万円

②一般所得者(①・③)以外の方
18,000円
(年間上限14.4万円
57,600円
【多数回該当44,400円】

低所得者
住民税非課税世帯 8,000円 24,600円

住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下等)

15,000円

70歳以上の方でも、現役なみの所得があると70歳以下の方と同じような上限額になっています。

払い戻し(振り込み)のタイミング

高額療養費が払い戻されるタイミングは、申請書類や病院の診療報酬明細書の確認に時間がかかるため、高額療養費の申請をしてから約3〜4ヶ月後です。

そのため、自己負担限度額を超える部分は、一度自分で立て替えなければなりません。

しかし、高額療養費制度の申請方法によって自己負担限度額を超えた部分の立て替えが不要になることがあります。

高額療養費の申請方法

高額療養費の申請方法には、以下2つの申請方法があります。

  • 事後申請 … 高額療養費の払い戻しがあるまで医療費の建て替えが必要
  • 事前申請 … 窓口支払いまでに必要書類が揃えば、医療費の建て替えが不要

加入先の公的医療保険によっては、申請方法や申請に必要な書類が異なるので確認していきましょう。

ここでは、健康保険(協会けんぽ)と国民年金保険の申請方法について解説しています。

また、あなたが加入している健康保険がいずれにも該当しない場合、ご自身の加入する健康保険組合に申請方法を確認してみてください。

事後申請の場合

健康保険(協会けんぽ) 国民健康保険
申請書の入手場所 協会けんぽのホームページ 市区町村役場からの郵送
もしくはホームページからのダウンロード
申請の提出先 健康保険証記載の協会けんぽの支部 お住まいの住所を管轄している市区町村役場の国民健康保険担当窓口
申請期限 診療を受けた日の翌日1日から2年以内
申請に必要な書類 健康保険高額療養費支給申請書
+添付書類
国民健康保険療養費支給申請書
+添付書類

申請書に添付する書類は状況に応じて異なります。

協会けんぽに加入されている方は協会けんぽのホームページで、国民健康保険に加入されている方は、お住まいの市町村役の役場のホームページもしくは国民健康保険担当窓口にてご確認ください。

事前申請の場合

事前に、加入している公的医療保険に「限度額適用認定証」もしくは「限度額適用・標準負担額減額認定証(住民税非課税世帯の場合)」を入手後、支払いの際に健康保険証といっしょに窓口に提出することで、医療費の立て替えが不要になります。

限度額適用認定証の入手場所や申請書類は以下の通りです。

健康保険(協会けんぽ) 国民健康保険
申請書の入手場所 協会けんぽのホームページ 市区町村役場のホームページ
申請の提出先 健康保険証記載の協会けんぽの支部 お住まいの住所を管轄している市区町村役場の国民健康保険担当窓口
有効期限 申請書に記載した交付必要期間(最長1年)
申請に必要な書類 限度額適用認定申請書、もしくは限度額適用・標準負担額減額認定申請証+非課税証明書(住民税非課税世帯の場合) 国民健康保険限度額適用(・標準負担額減額)認定申請書

限度額適用認定書には有効期限があり、加入している健康保険組合によって、設定できる有効期限が異なるため注意しましょう。

申請期限は特に設けられていませんが、窓口で医療費を支払うまでに手元にないといけません。申請書類が健康保険組合に届いてからの発送となるため、余裕を持って申請しましょう。

医療費が高額になりそうな場合は、事前申請で前もって限度額適用認定証を発行してもらうと安心ですが、実際には突然入院が決まると時間的な余裕がないこともあり、限度額適用認定証の申請を失念してしまう方もいらっしゃるかもしれません。

次項では、高額療養費以外に使える制度をご紹介します。

高額療養費以外に使える制度

高額療養費の事前申請によって医療費の建て替えをしなくてもよいことはお分かりいただけたかと思いますが、実際には突然入院が決まり時間的な余裕がなく、事前申請ができない場合も多いでしょう。

そこで、以下の制度を利用することができます。

高額療養費貸付制度

「高額療養貸付制度」とは?
高額療養費として支給される見込み額の8〜9割を無利子で借りられる制度です。

限度額適用認定証を提出していなかった場合は、高額療養費で戻ってくるお金を1度立て替えなければならないため、家計にとって大きな負担となる可能性があります。

その場合、高額療養費貸付制度を利用することで、高額療養費の支給額の一部を前借りでき、家計への負担を減らすことができます。

ただし、高額療養費貸付制度で借りられる額は、加入している公的医療保険によって異なるため確認が必要です。

高額療養費受領委任払制度

「高額療養費受領委任払制度」とは?
高額療養費として支給されるお金が、医療機関に直接支払われる制度です。

この制度を利用すると、窓口で支払うお金は、高額療養費の自己負担限度額までで良くなります。

ただ、高額療養費受領委任払制度を行なっていない公的医療保険もあるため、一度確認してみてください。

医療費控除

「医療費控除」とは?
税金の負担を減らす所得控除の1種です。

年間の医療費の自己負担分が10万円を超えた場合に、超過分と同じ額が所得税や住民税の課税対象となる所得から控除されます。

例えば、年間の医療費自己負担が15万円だった場合、課税対象の所得から5万円が差し引かれ、所得税や住民税が計算されるので税金の負担が軽減されます。

まとめ

今回は高額療養費について解説しました。この記事の要点は以下の通りです。

  • 高額療養費制度とは、ひと月の医療費の窓口負担が自己負担上限額を超えた場合、超過分が払い戻される制度
  • 自己負担上限額は、個人の所得や年齢などによって決まる
  • 公的医療保険が適用されない費用については高額療養費制度の対象外
  • 高額療養費を利用するには、1度窓口で全額自己負担分を支払った後、加入している公的医療保険に支給申請書を提出する
  • 限度額適用認定証を事前に発行すれば、窓口で支払う金額が高額療養費制度の自己負担上限額までに軽減される

このような高額療養費を上手に利用することで、医療費の負担を減らすことができます。

ただし、保険診療外の自由診療や先進医療など、もしものときに適切な治療を金銭面の不安なく受けることができるように、貯蓄や民間の医療保険で備えておくことも必要です。

この記事の執筆者
品木 彰
所有資格
ファイナンシャル・プランニング技能士2級, 日商簿記検定3級
大手生命保険会社にて7年半勤務し、チームリーダーや管理職候補として個人営業、法人営業の両方を経験。その後、人材会社で転職コンサルタントとしての勤務を経て、2019年1月よりwebライターとして独立。
この記事の監修者
石田 直樹
所有資格
AFP資格、TLC(生保協会認定FP)資格
ソニー生命、東京海上日動あんしん生命保険、保険代理店等、保険業界を28年間勤務。支社長や管理職を経験、200回以上のセミナーや研修講師の登壇経験あり。その知識を活かし、もっと多くの人に保険の必要性を正しく理解してもらいたい!という思いを胸に、ナビナビ保険の事業立ち上げメンバーとして異業種のIT企業に転職し、現在に至る。
この記事の編集者
ナビナビ保険編集部
ナビナビ保険編集部は「どこよりも分かりやすい保険情報を届けること」をコンセプトにコンテンツの配信を行っています。
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