特別代理人とは?
特別代理人とは、遺産相続が発生した際の相続人が未成年の場合に、家庭裁判所によって特別に選任される代理人のことをいいます。
通常、未成年者の代理人となり得る人は「親権者」や「成年後見人」となりますが、相続が発生した場合に自分自身と共に未成年の子供が相続人(共同相続人)となるケースがあります。
- 「成年後見人」とは?
- 認知症や知的障害などが原因で、判断能力が著しく低い人に対して財産管理や身上監護を行う人のこと。
このような場合、自分自身と子供それぞれの利益が相反することになってしまうため、相続人となった親権者や成年後見人とは別に子供の代わりに手続きを行える人(特別代理人)を選任しなければなりません。
特別代理人は家庭裁判所によって決められた業務以外しか代理することができず、その業務が終わった場合は任務終了となり解任されることになります。
相続の当事者でなければ誰でも特別代理人になることができ、弁護士などの資格も必要ありません。
ただし、遺産相続の内容や家庭的な事情を知られてしまうことになるので、基本的には親族の中から選ぶのが良いとされています。
なお、特別代理人の候補者が家庭裁判所によって適任ではないと判断された場合、代わりに弁護士や司法書士などの専門家が特別代理人として選任される場合があります。

- 滝 文謙
また、税額が大きく減少する特例の適用には、分割がされていることを要件としているものもあり、一時的に非常に不利な相続税額で一旦、納税する必要まで出てきます。相続税の申告は相続開始を知った日から10ヶ月後が期限ですので、特別代理人の申立も素早くできるのが望ましいです。
利益相反行為とは?
裁判所の公式ホームページによると、親権者と子の利益が相反する行為とは以下のように明記されています。
1. 夫が死亡し、妻と未成年者で遺産分割協議をする行為
特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)|裁判所 から引用
2. 複数の未成年者の法定代理人として遺産分割協議をする行為
3. 親権者の債務の担保のため未成年者の所有する不動産に抵当権を設定する行為
4. 相続人である母(又は父)が未成年者についてのみ相続放棄の申述をする行為
5. 同一の親権に服する未成年者の一部の者だけ相続放棄の申述をする行為
6. 後見人が15歳未満の被後見人と養子縁組する行為
これらに該当する場合、利益相反に関する資料(遺産分割協議書の案、金銭消費賃借契約書、戸籍謄本等)を家庭裁判所に提出した上で特別代理人選任の申立を行う必要があります。


特別代理人の選任が必要なケース
特別代理人が選任されるのは「親権者または成年後見人と未成年の子供の利益が相反する場合」です。
利益が相反する場合とはどのような場合なのか、具体例を上げて特別代理人が必要となるケースを解説していきます。
未成年者とその親が共に相続権を得ている場合
未成年者とその親が共に相続人になる場合は、未成年者に特別代理人を選任しなければなりません。
たとえば、子供1人の3人家族の場合、父が亡くなると母と未成年の子供が相続人となりますが、このような場合には母が有利となるような割合で相続することができてしまい、子供の本来の利益が損なわれてしまう可能性が考えられます。
そういったケースを防ぐため、未成年の子供に対して特別代理人を選任し、正当な割合で遺産相続が行われるようにする必要があるのです。
両親が死亡していて未成年後見人がいる場合、未成年の子供と未成年後見人とで利益が相反するようなケースでも特別代理人を選任する必要があります。
なお、兄弟姉妹の双方において特別代理人を兼任するなど、1人で複数の未成年者の特別代理人になることはできません。
人数に応じた特別代理人を選任する必要があるので、兄弟姉妹がいる場合などは注意が必要です。
上記とは別ケースで、同じ相続の相続人になっていなければ親権者が代理人になることができます。
たとえば、父方の母(子から見て祖母)にあたる人が死亡して子が相続人となる場合、母は祖母の相続人には含まれないことから未成年の子の代理人となることができ、特別代理人を選任する必要はありません。
「未成年者とその親が共に相続権を得ている場合」に特別代理人を選任する必要な場合が多いですが、相続のケースによっては特別代理人を選任する必要がないこともあるということを覚えておきましょう。


成年被後見人と成年後見人が共に相続権を得ている場合
成年被後見人と成年後見人が共に相続権を得ている場合は特別代理人を選任する必要があります。
成年後見人は、認知症などの理由から判断能力が低下している人(成年被後見人)の代わりに諸々の手続きを行う人のことをいいます。
たとえば、子供が1人いる場合の3人家族で母が認知症を患っており、子供が成年後見人となっているケースが挙げられます。
このケースでは、父が亡くなると認知症の母と成年後見人の子供がそれぞれ相続権を得ることになります。
ですが、このような場合に成年後見人の長男が有利となるような割合で話し合いが進んでしまい、本来であれば相続できるはずの母の利益が侵害されてしまう可能性が考えられます。
そのため、成年後見人と成年被後見人それぞれが同一の相続において相続権を有している場合は、家庭裁判所に申し立てを行って特別代理人を選任する必要があるのです。
ただし、成年後見人を監督する立場にある「成年後見監督人」がいる場合は、改めて特別代理人を選任する必要はありません。


特別代理人を選任する流れ
特別代理人を選任するための手続きの流れは以下のとおりです。
特別代理人を選任するための一連の流れ
- 家庭裁判所に申し立てを行う(以下の必要書類参照)
- 裁判官による審理、書面審査
- 参与員の聴き取り
- 審問
- 審判(裁判官による判断)
- 審判結果の通知
申立を行う家庭裁判所は、「相続人となる未成年者の現住所を管轄する家庭裁判所」となります。
家庭裁判所の管轄区域は、裁判所の公式ホームページから検索ができます。
特別代理人選任の申立ができるのは「親権者」または「利害関係人(直接の当事者ではないが法律上の利害関係を有する人のこと)」に該当する人です。
また、申立を行うためには以下の書類と費用が必要となります。
必要書類 |
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---|---|
費用 |
|
参照:特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)|裁判所
申立をしてから審判結果が通知されるまでには、およそ1〜3か月の時間がかかります。
審判の結果、候補者が特別代理人に選任されなかった場合、不服の申立てはできないので注意が必要です。
特別代理人ができること
特別代理人ができる業務内容は、主に以下が挙げられます。
特別代理人ができること
- 遺産分割協議への参加
- 遺産分割協議書への署名・押印
- 相続登記や預金引き出しなどの相続手続き
なお、これらはあくまで一例であり、基本的に家庭裁判所の審判によって決められた行為(書面に記載された行為)について、代理権等を行使することになります。
家庭裁判所の審判に記載がない行為については代行することができず、その手続きにおける代行業務が終わると特別代理人としての任務も終了します。
特別代理人は資格など不要で誰でもなることができますが、遺産分割における重要な手続きを代行することになるので、基本的には親族の中から選任することが望ましいと言えるでしょう。

- 滝 文謙
特別代理人は、親などの法定代理人が子である本人と利益が相反するため、代理をする人であり、相続税の申告自体は利益が相反するわけではありません。そういう点で、必ず特別代理人が申告書に名前を記載して申告しなかったからといって、申告が無効になることはありません。


まとめ
特別代理人とは、遺産相続が発生した際の相続人が未成年の場合に、家庭裁判所によって特別に選任される代理人のことをいいます。
主に遺産相続が発生した際に、親権者または成年後見人と未成年の子供が同一の相続において相続権を有した場合に選任する必要があります。
特別代理人を選任するためには、未成年の子供の現住所を管轄する家庭裁判所に申し立てを行う必要があり、そのためには必要書類と費用を準備しておかなければなりません。
申立を行ってから特別代理人が選任されるまでに、およそ1〜3か月の時間がかかるので相続が発生したときに未成年の子供がいる場合は速やかに手続きを行うようにしましょう。
特別代理人の選任や必要資料に関しては、税理士に相談をすると心強いでしょう。
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