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更新 更新:2022.03.22

退職金にかかる税金の計算方法は?受け取り方による所得税と住民税を解説

退職金にかかる税金の計算方法は?受け取り方による所得税と住民税を解説
監修者

山中 伸枝

(株)アセット・アドバンテージ代表取締役/FP相談ねっと 代表
所有資格
ファイナンシャルプランナー(CFP)
監修者

藤田 匡紀

ファイナンシャルプランナー(CFP)
所有資格
CFP資格、証券外務員Ⅱ種
専門分野・得意分野
生命保険全般、資産運用
執筆者

品木 彰

ファイナンシャルプランナー
所有資格
ファイナンシャル・プランニング技能士2級, 日商簿記検定3級
専門分野・得意分野
保険全般・不動産関連・税金・投資

退職金を受け取った場合、税金を支払わなければなりません

しかし、退職金は給与や賞与とは違い、税負担が軽減されるように配慮されているため、それほど税金がかからない場合があります

退職金は一時金受け取りが一般的ですが、確定給付企業年金や企業型確定拠出年金のような企業年金は受け取り方を選ぶことができる場合があります。

どの受け取り方法が税負担を抑えて多くの金額を受け取れるのかは個人の状況に左右されるため、退職後のライフプランを踏まえた慎重な判断が必要です。

また、退職金を受け取る前に勤務先へ所定の書類を提出しなかった場合、税金が異なる方法で計算され税負担が増えてしまいます

このように、退職金の税金には知っておくべき大切なポイントがあります。退職金にはどのような税金がかかり金額はどのように計算されるのか、この記事でわかりやすく解説します。

山中 伸枝
ナビナビ保険監修
(株)アセット・アドバンテージ代表取締役/FP相談ねっと 代表
山中 伸枝

退職金は、一時金で受け取る従来型の退職一時金の他、企業年金がある会社もあります。昔は企業年金といえば厚生年金基金が一般的でしたが、最近は確定給付型企業年金あるいは企業型確定拠出年金を導入している会社が増えました。後者二つは併用されている会社もあれば、どちらか一方という会社もあります。原則企業年金のうち厚生年金基金と確定給付型企業年金は年金型で受け取ります。前者は終身年金、後者は確定年金です。退職金といっても色々ですので、まずは会社の制度を確認しましょう。

退職金にかかる税金は「所得税」と「住民税」

退職金を得た場合、給与や賞与と同じように所得税や住民税の課税対象となります。

また2037年までは、復興特別所得税も併せて納税しなければなりません。

所得税や住民税は、年収から必要経費を差し引いて計算された課税所得に、所定の税率をかけて計算されます。具体的には、以下の通りです。

所得税・住民税・復興特別所得税の計算方法

  • 所得税
    :課税所得 × 税率(5〜45%)- 税額控除額
  • 住民税
    :所得割(課税所得 × 10%)+ 均等割(5,000円程度)
  • 復興特別所得税
    :所得税額 × 2.1%

退職金に課税される所得税や住民税も、基本的には上記にしたがって計算されますが、異なる部分も存在します。

まず、退職金を一括で受け取った場合は、分離課税となるため他の所得とは合算されずに単独で税額が計算されます

また、退職金にかかる住民税は、退職金を受け取った年に納める現年課税制度です。他の所得とは違って、受け取った翌年に住民税が課税されるわけではありません

退職金の受け取り方で課税方法が異なる

退職金(企業年金)の受け取り方は「一時金」と「年金」の2種類があり、以下のように所得の種類や課税方法が異なります。

退職金の受け取り方による違い
一時金受取 年金受取
所得 退職所得 雑所得(公的年金等)
課税方式 申告分離課税:他の所得と分離して税額が計算される 総合課税:他の所得と合算して税額が計算される
確定申告 勤務先で所定の手続きをすれば不要 所得が一定以下であれば不要

山中 伸枝
ナビナビ保険監修
(株)アセット・アドバンテージ代表取締役/FP相談ねっと 代表
山中 伸枝

受け取り方を自分で判断できるタイプの退職金がある場合は、受け取る前にぜひ専門家に相談しましょう。なぜならば、複数の退職金扱いのものがあれば合算されたり、退職所得控除の計算に特別ルールが適用されたり、公的年金との合算や公的年金の繰下げ受給などと併せて検討するなど様々なケースが想定されるからです。さらに受け取り額によっては、高齢期の社会保険料やさらには給付や負担額に影響もでます。正解がない問題だけに、生活スタイルにもっとも適した受け取り方を専門家とともに検討しましょう。

 一時金として受け取る場合

退職金を一時金で受け取った場合、退職所得とみなされて所得税や住民税の計算時に、退職所得控除が適用されます

退職所得控除とは、退職金のうち所得税や住民税の計算に含まれない部分で、以下のように勤続年数によって計算式や金額が異なります。

退職所得控除の計算方法

  • 勤続20年以下
    :40万円 × 勤続年数(計算結果が80万円以下の場合は80万円)
  • 勤続20年超
    :800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)
    ※勤続年数が1年未満の端数がある場合は、1日であっても1年として計算

上記で計算した金額の2分の1に対して、所得税や住民税が課税されます。

仮に、退職額が2,000万円で勤続年数が30年の場合、退職所得控除額と課税の対象となる退職所得額は以下の通りです。

退職額が2,000万円で勤続年数が30年の場合の退職所得控除額

  • 退職所得控除額
    = 800万円 + 70万円 × (30年 - 20年)
    = 800万円 + 700万円
    = 1,500万円

退職額が2,000万円で勤続年数が30年の場合に課税される退職所得額

  • 課税される退職所得額
    = (2,000万円 - 1,500万円) × 1/2
    = 250万円

上記のように、たとえ2,000万円の退職金を受け取っても、実際に所得税や住民税の課税対象となるのは、わずか250万円です。

ただし、退職所得控除を適用するには、勤務先で所定の手続きをするか、個人で確定申告する必要があります。

また、退職所得は定年退職時に退職金を受け取った場合の他に、勤務先が倒産した場合や会社が解雇予告手当を受け取った場合も退職金も含まれます

年金として受け取る場合

退職金を年金形式で受け取った場合、老齢基礎年金や老齢厚生年金と同様に雑所得とみなされ、収入金額から公的年金等控除額が差し引かれて所得税や住民税が計算されます

公的年金等控除額は、以下の通りです。

公的年金控除額
65歳未満 65歳以上
年金収入 公的年金等控除額 年金収入 公的年金等控除額
600,001円から
1,299,999円まで
60万円 1,100,001円から3,299,999円まで 110万円
1,300,000円から
4,099,999円まで
年金収入 × 75%
- 27.5万円
3,300,000円から4,099,999円まで 年金収入 × 75%
- 27.5万円
4,100,000円から
7,699,999円まで
年金収入 × 85%
- 68.5万円
4,100,000円から7,699,999円まで 年金収入 × 85%
- 68.5万円
7,700,000円から
9,999,999円まで
年金収入 × 95%
- 145.5万円
7,700,000円から9,999,999円まで 年金収入 × 95%
- 145.5万円
10,000,000円以上 195.5万円 10,000,000円以上 195.5万円

※令和3年9月1日時点公的年金等の課税関係|国税庁

例えば、60歳の方が年金形式の退職金と老齢年金を合計で350万円受け取った場合、公的年金等控除額は125万円(350万円 × 25% + 37.5万円)です。

そして、350万円から公的年金等控除額の125万円と、基礎控除や社会保険料控除のような所得控除が差し引かれて、所得税や住民税が計算されます。

退職金を年金で受け取る場合、下記の条件を満たすと、公的年金等の収入から所得税は住民税が源泉徴収されるため確定申告は必要ありません

退職金を年金形式で受け取った場合に確定申告が不要となる条件

  • 公的年金等の収入金額が400万円以下
    かつ
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下

退職金を年金形式で受け取ると、所定の利率で年金の原資が運用されるため、受取総額は一時金受取よりも高くなります。

一方で、年金形式で退職金を受け取ると、老齢基礎年金や老齢厚生年金などと加算されて税金が計算されるため、課税対象の所得が増えて税負担も増える可能性があります。

また、所得が増えると社会保険料も増える場合があるため、よく検討せずに年金受取を選択すると、手元に残る金額が少なくなる可能性がある点に注意が必要です。

一時金と年金、両方で受け取る場合

退職金を一時金と年金の両方で受け取る場合は、退職一時金は退職所得、退職年金は雑所得とみなされて税金がそれぞれ計算されます

企業によっては、退職一時金制度と退職年金制度の両方を導入しています。特に近年は、退職一時金制度を採用すると企業側の負担が大きくなることから、企業型確定拠出年金を採用する企業も増えてきました。

企業型確定拠出年金とは、従業員が自ら退職金の原資の運用先を指定する制度です。積立金の受け取り方は「年金」「一時金」「年金と一時金の組み合わせ」のいずれかを選択できます。

企業型確定拠出年金の積立金を、年金と一時金の組み合わせで受け取る場合、それぞれの配分を指定可能です。それぞれでいくら受け取った方が良いのかは、老後のライフプランを踏まえたうえで慎重に判断しましょう。

退職金の支給規定は、勤務先によって大きく異なるため、就業規定にある退職金規定を確認してみてください。

退職金にかかる税金の計算方法

退職金を一括で受け取った場合に課税される所得税と住民税の金額を、シミュレーションしてみましょう。条件は以下の通りです。

退職金に課税される税金のシミュレーションの計算条件

  • 退職金額:2,500万円
  • 勤続年数:37年5カ月
  • 居住地:東京都

まず、退職所得控除の金額を計算しましょう。

退職所得控除額の計算方法

今回のモデルケースにおいて、勤続年数は38年として計算されるため、退職所得控除額は以下の通りとなりました。

  • 退職所得控除額
    = 800万円 + 70万円 × (38年 - 20年)
    = 1,260万円 + 800万円
    = 2,060万円

次に、課税対象となる退職所得の金額を計算します。

  • 課税対象の退職所得額
    = (退職金額 - 退職所得控除額) × 1/2
    = (2,500万円 - 2,060万円) × 1/2
    = 220万円

所得税額及び、復興特別所得税の源泉徴収税額は、課税対象の退職所得額に所定の税率をかけて計算します。税率と計算方法は以下の通りです。

  • 所得税額及び復興特別所得税の源泉徴収税額
    = (220万円 × 10% - 97,500円) × 102.1%
    ≒ 125,072円(1円未満端数切捨て)

次に、住民税の金額を計算しましょう。住民税の所得割の計算方法は以下の通りです。

  • 住民税の所得割 = 課税所得金額 × 10%(市町村民税6%、道府県民税4%)
    = 220万円 × 10%
    = 22万円

上記の金額に、住民税の均等割を加えた金額が住民税額となります。

モデルケースの方の居住地である、東京都の均等割額は2020年8月現在で、5,000円(個人都民税1,500円個人市町村民税3,500円)なので、住民税額は合計で225,000円となります。

よって、所得税と住民税を合計した納税額は以下の通りです。

  • 納税額 = 所得税額及び復興特別所得税の源泉徴収税額 + 住民税額
    = 125,072円 + 225,000円
    = 350,072円

退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)とは

退職金を受け取る場合、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)」を提出していなければ、税金の計算方法が変わって負担が増えてしまいます

そのため、退職金を受け取る場合は退職所得申告書を忘れずに提出しましょう。退職所得申告書の提出がない場合は、退職金額の20.42%の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されてしまいます。

仮に、退職金額が2,500万円だった場合、源泉徴収される金額は510.5万円です。

退職所得申告書を提出していた場合の、所得税及び復興特別所得税額を計算すると125,072円となるため、約500万円も税金を余分に支払うことになります。

もし、退職所得申告書を提出しなかった場合は、退職金を受け取った翌年に確定申告をすると、退職所得申告書を提出した場合の税額との差額を還付してもらえます

確定申告の期限は、退職金を受け取った翌年の2月16日〜3月15日までです。確定申告の期限に間に合わなかった場合は、退職金を受け取った翌年1月1日から5年以内に還付申告をすると納めすぎた税金を還付してもらえます。

まとめ

退職金にかかる税金の種類と計算方法を解説しました。最後に要点を振り返りましょう。

  • 退職金を一時金で受け取った場合は、退職金額から退職所得控除を差し引いた金額の2分の1に対して所得税や住民税が課税される
  • 退職金を年金で受け取った場合は雑所得とみなされて、公的年金と合算した金額から、公的年金等控除額とその他の所得控除を差し引いた金額が課税対象となる
  • 勤務先によっては、退職金を一時金と年金の両方で受け取れる場合があるため、ご自身の状況に応じて受け取り方を決める
  • 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないと退職金にかかる税金の計算方法が変わる
  • もし、退職所得の受給に関する申告書を提出しなかった場合は、確定申告をすると納めすぎた税額を還付してもらえる

退職金は、公的年金と同じく老後生活における貴重な資金源です。手元に残せる金額を殖やすためにも、ファイナンシャルプランナーをはじめとするお金のプロの意見も参考にしながら、ご自身にとってもっとも有利な受け取り方を考えてみてください。

山中 伸枝
ナビナビ保険監修
(株)アセット・アドバンテージ代表取締役/FP相談ねっと 代表
山中 伸枝

本文にあるように、退職所得控除は10区分ある所得税の中でも特に税控除が大きく認められる所得です。控除が大きいということは、課税される部分が小さいということですから、退職所得控除が認められるものはしっかり活用したいところです。しかし近年転職が当たり前になる中、退職所得控除の計算の元である勤続年数が伸びないケースが多いです。そのため、加入年数を勤続年数とみなしてくれる確定拠出年金は個人型、企業型ともに「自分で創る」退職金としてぜひ注目したいところです。個人型でも企業型でもその加入期間が通算されるのが大きなメリットです。

山中 伸枝

山中 伸枝

1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後メーカーに勤務。これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)として2002年に独立。年金と資産運用、特に確定拠出年金やNISAの講演、ライフプラン相談を多数手掛ける。株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役。FP相談ネット 代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会 理事。
所有資格
ファイナンシャルプランナー(CFP)
藤田 匡紀

藤田 匡紀

新卒で日本生命保険相互会社に入社し、販売企画・代理店営業など多様な業務に従事。13年間勤務した後「もっと多くの人に、保険の必要性を正しく理解してもらいたい」という思いを胸にエイチームフィナジーに入社、ナビナビ保険の運営に参画。金融機関における顧客向け相続セミナー・研修会の実績も多数あり。
所有資格
CFP資格、証券外務員Ⅱ種
専門分野・得意分野
生命保険全般、資産運用
品木 彰

品木 彰

大手生命保険会社にて7年半勤務し、チームリーダーや管理職候補として個人営業、法人営業の両方を経験。その後、人材会社で転職コンサルタントとしての勤務を経て、2019年1月よりwebライター/監修者として独立。
所有資格
ファイナンシャル・プランニング技能士2級, 日商簿記検定3級
専門分野・得意分野
保険全般・不動産関連・税金・投資
ナビナビ保険編集部

ナビナビ保険編集部

ナビナビ保険編集部は「どこよりも分かりやすい保険情報を届けること」をコンセプトにコンテンツの配信を行っています。

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