将来のことを考えると、自分はいったいいくらの年金額がもらえるのか気になりますよね。
最近では「老後2,000万円問題」が話題になりましたが、安定した老後生活を送るためには公的年金(国民年金や厚生年金)だけでは生活費を賄うことは難しいでしょう。
そのため、自分の年金受給額を把握して、不足する分をほかの方法で貯蓄しておく必要があります。
ですが、日本の年金制度は内容が非常に複雑で、自分の働き方によっても年金受給額が変動するので、正確な数字を判断するのは難しいです。
そこでこの記事では、自分の年金受給額を計算する方法について分かりやすくご紹介していきます。
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年金受給額は、働き方で変わる
自分の年金受給額を計算する前に、まずは自分がどの年金に加入しているかを把握するところから始めましょう。
日本の年金制度は3階建ての構造で、1階部分は20歳〜60歳までの全日本国民が加入する「国民年金」、2階部分は会社員や公務員などが加入する「厚生年金」、3階部分は個人が任意で加入する「私的年金」となっています。
自営業として働く人やその家族は「第1号被保険者」に該当するため、老後に受け取れる年金は「国民年金(老齢基礎年金)」のみです。
会社員や公務員として働く人は「第2号被保険者」となるため、1階部分の「国民年金」に上乗せして2階部分の「厚生年金(老齢厚生年金))」が受け取れます。
現時点で自営業として働いている場合でも、過去に会社員として働いていて厚生年金保険の被保険者期間が1か月以上あれば、その期間に応じて老齢厚生年金の受給が可能です。
つまり、自分の働き方によって加入できる年金制度が違うので、将来の年金受給額が大きく変わるということになります。
現在の日本では、国民年金と厚生年金が受給できるのは65歳からですが、60歳〜64歳の間から年金を受け取れる「繰り上げ受給」、66歳〜70歳の間まで年金の受給を遅らせる「繰り下げ受給」も選択可能です。
- 「繰り上げ・繰り下げ受給」とは?
- 繰り上げ受給:年金の受給開始時期を60歳〜64歳の期間に早められるが、本来の年金受給額から0.5%が減額される
繰り下げ受給:年金の受給開始時期を66歳〜70歳の期間に送らせることで、本来の年金受給額に0.7%が加算される
ただし、老齢厚生年金の受給額は多くても年間で220万円程度、国民年金の加入者に支給される老齢基礎年金にいたっては年間で80万円程度しか支給されません。
そのため、老後の生活資金を公的年金だけで賄うのは難しく、老後に安定した生活を送るためには現役時代から資金を貯蓄しておく必要があるといえます。
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年金受給額の平均は?
厚生労働省が公表する統計結果をもとに、年金受給額の平均を確認していきましょう。
平均年金受給額 | |
---|---|
国民年金(自営業者や専業主婦など) |
|
厚生年金(会社員や公務員など) |
|
参照:平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省
国民年金や厚生年金に関する最新の統計結果によると、1か月あたりの平均年金受給額は国民年金で約56,000円、厚生年金で約144,000円であることがわかります。
国民年金は保険料の納付月数で受給額が変わりますが、20歳〜60歳までの40年間のうちに毎月欠かさず保険料を納めていれば、令和2年4月分からの年金受給額は最大で65,000円(年間で780,000円)となります。
また、厚生年金は保険料の納付月数に加えて収入金額によっても受給額が変動し、収入が多ければ多いほど年金受給額も増えていきます。
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若いほど、将来もらえる年金額は少なくなる
国民年金や厚生年金は年齢が若いほど受給額が少なくなっていきます。
以下、厚生労働省が公表するデータをもとに、年齢別の平均年金受給額を見てみましょう。
年齢 | 国民年金 | 厚生年金 |
---|---|---|
60歳〜64歳 | 41,790円 | 79,135円 |
65歳〜69歳 | 56,831円 | 144,521円 |
70歳〜74歳 | 56,429円 | 146,813円 |
75歳〜79歳 | 55,972円 | 153,816円 |
80歳〜84歳 | 56,336円 | 161,663円 |
85歳〜89歳 | 54,708円 | 164,831円 |
90歳以上 | 47,803円 | 160,367円 |
参照:平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省
年齢が若いほど年金受給額が少ないのは、2013年に施行された年金制度の改正による影響を受けているためです。
”自分の年金は毎月の保険料を積み立てて老後に受け取る”というイメージを持っている人も少なくないかもしれませんが、日本の年金制度では「賦課方式」を採用しています。
賦課方式とは、20歳〜60歳の現役世代が納めた保険料をもとにして、その時点の年金受給者へ支給する方式のことで、簡単にいえば「現役世代が日本全体の年金受給者の生活を支えているイメージ」です。
ですが、昨今の日本では少子高齢化が進んでおり、現役世代が少なくなる一方で年金受給者は増加の一途を辿っています。
そうした状況を踏まえ、2013年に年金制度の改正を行い、年金の受給年齢を引き上げたのと同時に支給される年金額の引き下げが行われました。
これらの理由から年齢が若いほど年金受給額が少なくなるよう調整されており、今後の人口統計によってはさらに受給額が少なくなっていくことも考えられます。
年金定期便(ねんきん定期便)を活用しよう
自分の年金受給額を把握するには「年金定期便(ねんきん定期便)」を活用することをおすすめします。
年金定期便とは、国民年金や厚生年金の加入者全員に送付される書簡のことで、これまでの年金制度の加入状況や将来的に受け取れる年金受給額の見込みが記載されています。
毎年の誕生日の月(1月生まれの場合は誕生月の前月)に日本年金機構から送付され、年齢に応じてハガキ形式や封書形式で届きます。
50歳以上の人に送られる年金定期便は、これまでの加入実績などをもとにして計算された非常に正確な年金受給額が記載されています。
自分で年金額を計算するのは非常に大変なので、年金定期便を活用して自分が将来受け取れる年金額を把握しましょう。
なお、50歳未満の人に送られる年金定期便にも大まかな年金受給額が記載されていますが、その年金定期便を作成した時点の加入実績をもとに計算しているため、実際の年金受給額よりも少ない金額が記載されています。
それ以降の年金制度の加入実績や収入状況によって実際に受け取れる年金額は大きく変動するため、これまでの年金制度の加入実績を確認することに重きをおいて活用してください。
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年金受給額の計算方法
この章では年金受給額の計算方法についてご紹介します。
国民年金と厚生年金とで計算方法が異なるため、それぞれの計算方法について分かりやすく解説していきます。
なお、日本年金機構の「ねんきんネット」に登録すると、将来の年金受給額の試算ができるツールを利用できるので、そちらもあわせてご活用ください。
国民年金の場合
令和2年4月分からの国民年金における年金受給額は、以下の計算式で算出されます。
国民年金の計算方法
- 年金受給額(年間)=781,700円×保険料納付済み月数÷480月(40年)
毎月欠かさずに保険料を納めていれば、令和2年4月分以降の年金受給額は最大で781,700円(1か月あたり約65,000円)です。
保険料免除期間がある場合は、以下の計算式にならって計算を行います。
計算方法 |
| |
---|---|---|
免除期間 |
| 免除月数×4/8 |
4分の1納付の場合 | 納付月数×5/8 | |
| 納付月数×6/8 | |
| 納付月数×7/8 |
なお、国民年金(老齢基礎年金)の受給要件は、20歳〜60歳までの間の「保険料納付済期間+保険料免除期間+合算対象期間(年金額には反映されない期間)」が合計で10年以上ある65歳以降の人です。
何らかの理由で上記の要件を満たさなかった場合は老齢基礎年金を受給できないことになるので覚えておきましょう。
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厚生年金の場合
厚生年金は、保険料の納付月数に加えて収入金額によっても年金受給額が変わります。
計算式は非常に複雑なので、基本的には「年金定期便」や「ねんきんネット」を活用して確認するようにしましょう。
厚生年金の基本的な計算式
- A:平均標準報酬額×0.005481×平成15年(2003年)4月以降の加入月数
- B:平均標準報酬月額×0.007125×平成15年3月までの加入月数
- A+B=老齢厚生年金の受給額(報酬比例部分)
※標準報酬額:平成15年4月以後の被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以後の被保険者期間の月数で除して得た額※標準報酬月額:平成15年3月までの被保険者期間の各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月までの被保険者期間の月数で除して得た額参照:老齢厚生年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)|日本年金機構
加入期間と収入金額ごとのおおよその年金受給額は以下のとおりですが、実際の年金受給額はさまざまな要件によって大きく変動するので、あくまで目安程度に捉えてください。
年収 | 保険料納付期間(加入年数) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 | 35年 | 40年 | |
300万円 | 16万円 | 25万円 | 33万円 | 41万円 | 49万円 | 58万円 | 66万円 |
500万円 | 27万円 | 41万円 | 55万円 | 69万円 | 82万円 | 96万円 | 110万円 |
700万円 | 38万円 | 58万円 | 77万円 | 96万円 | 115万円 | 134万円 | 153万円 |
1,000万円 | 55万円 | 82万円 | 110万円 | 137万円 | 164万円 | 192万円 | 219万円 |
※年収×0.005481×平成15年(2003年)4月以降の加入期間で計算しています
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夫婦の場合
夫婦の場合における年金受給額のシミュレーションは以下のとおりです。
老齢厚生年金の受給額については「厚生年金の場合」でご紹介した目安の金額を参照しています。
年金受給額 | |||
---|---|---|---|
国民年金 | 厚生年金 | 合計受給額 | |
夫婦共働き(会社員同士)の場合 夫:年収700万円 妻:年収300万円 | 夫:約78万円 妻:約78万円 | 夫:約153万円 妻:約66万円 | 夫:約231万円 妻:約144万円 合計:375万円/年(31.25万円/月) |
会社員と専業主婦の場合 夫:年収700万円 妻:年収なし | 夫:約153万円 妻:0円 | 夫:約231万円 妻:約78万円 合計:約309万円/年(約25.75万円/月) | |
夫婦共働き(自営業者同士)の場合 夫:年収700万円 妻:年収300万円 | 夫:0円 妻:0円 | 夫:約78万円 妻:約78万円 合計:約156万円/年(約13万円/月) | |
自営業者と専業主婦の場合 夫:年収700万円 妻:年収なし |
以上の表から、2人分の老齢厚生年金が受け取れる「夫婦共働き(会社員)」がもっとも年金受給額が多いことがわかります。
上記はあくまで目安となりますが、老齢厚生年金が受け取れる会社員や公務員がいる世帯のほうが将来的に受け取れる年金額は多くなるということを覚えておきましょう。
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年金受給額に関する「よくある質問Q&A」
年金受給額に関する「よくある質問」にお答えします。
年金受給額に関する「よくある質問」
Q.国民年金保険料を滞納するとどうなりますか?
A.国民年金保険料を滞納すると、1か月につき1,629円が年金受給額から引かれる計算となります。
国民年金の計算方法
- 国民年金受給額:781,700円×(保険料納付済み月数+免除期間)÷480月(40年)
- 1か月滞納した場合:781,700円×(479月÷480月)=780,071円=差額1,629円
- 2か月滞納した場合:781,700円×(478月÷480月)=778,442円=差額3,258円
なお、納付期限までに国民年金保険料の納付が確認できない場合、日本年金機構から督促状が送付されます。
督促状の指定期日を過ぎても納付されない場合は経過した日数に応じた延滞金が発生し、最悪の場合は財産調査から差し押さえが執行される事態にまで発展してしまいます。
そのため、国民年金保険料の払い忘れがないように気をつけましょう。
Q.年金額が加算されるケースがあると聞きましたがどのような場合ですか?
A.年金額が加算されるケースは以下のとおりです。
内容 | |
---|---|
繰り下げ受給 | 年金の受給開始時期を66歳〜70歳の間に遅らせることで、年金受給額が1か月あたり0.7%増額される。(最大42%) |
加給年金 | 厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が65歳に到達した時点で、その人に生計を維持されている配偶者または子供がいる場合に上乗せして支払われる年金制度。 加給年金額の対象となっている配偶者が65歳に到達すると加給年金の支給が打ち切りとなる。(配偶者が老齢基礎年金を受給できるようになるため) |
振替加算 | 加給年金が打ち切られたとき、65歳に達した配偶者が一定の要件を満たしていれば打ち切られた分の加給年金額が65歳に到達した配偶者の老齢基礎年金に加算される制度。 |
特別支給の老齢厚生年金 | 厚生年金保険の受給開始年齢を段階的にスムーズに引き上げるために設けられた特別な年金制度。 男性の場合は昭和36年4月1日以前、女性の場合は昭和41年4月1日以前に生まれていて、老齢基礎年金の受給資格期間10年を満たしており、厚生年金保険等に1年以上加入している60歳以上の人が受給できる。 |
Q.今からできる老後資金準備はどんなものがありますか?
A.今からできる老後資金を準備するための方法としては、以下が挙げられます。
内容 | |
---|---|
個人年金保険 | 契約時に定めた年齢まで保険料を払い込むことで、老後の一定期間または一生涯に渡って公的年金にプラスして年金が受け取れる保険。支払保険料の一部について、個人年金保険料控除を受けることができ、所得税・住民税を軽減することができる。 |
付加年金 | 毎月の保険料に400円をプラスして払い込むことで、年金額に「払い込んだ月数×200円」が上乗せされるようになる年金制度。 国民年金の第1号被保険者のみが利用できる。 |
国民年金基金 | 国民年金の第1号被保険者が任意加入できる2階から3階にあたる年金制度。 2019年4月以降からは「全国国民年金基金」となった。 |
厚生年金基金 | 国が行う「厚生年金」の一部の支給を厚生年金基金が代行し、上乗せした年金額が受け取れるようになる制度。 公的年金基金を導入している企業に勤めている人のみ利用できる。 |
確定給付企業年金 | 企業が掛け金を積み立てて年金運用・管理・給付を行い、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けられる年金制度。 確定給付企業年金制度を採用している企業に勤めている人のみ利用できる。 |
企業型確定拠出年金(企業型DC) | 企業が拠出する掛金で個人が運用を行い、運用収益との合計額が給付額となる企業年金制度。 企業型DCを採用している企業に勤めている人のみ利用できる。 |
個人型確定拠出年金(iDeCo) | 毎月一定の掛け金を積み立てて自分自身で年金資産の運用を行う制度。 積み立てた試算が引き出せるのは60歳以降からだが、大きな税制上の優遇措置が受けられる。 |
なお、働き方によっては利用できない制度があるので気をつけましょう。
また、上記でまとめた制度を利用することに加え、現在の家計状況を見直すことも大切です。
今の収支状況を把握して極力無駄な支出を控えて節約に努めることで、将来に向けた老後資金の貯蓄に役立ちます。
貯蓄した分の資金を資産運用に回して、より効率よく老後資金を準備することもできるので、ぜひとも家計の見直しを行ってみることをおすすめします。
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まとめ
日本の年金制度は3階建ての構造から成り立っており、働き方によって将来の年金受給額は大きく変わります。
ただし、老後に安定した暮らしを送るためには国民年金や厚生年金といった公的年金だけでは不十分である可能性があります。
この記事でご紹介した方法で自分自身の年金受給額を把握して、老後資金の不足分を今から貯蓄していくように心がけてみてください。
老後の生活費がどれくらいかかるかや、より詳細な老後資金の準備方法については以下の記事も参考にしてください。