自賠責保険とは
自賠責保険とは、自動車を運転する人に加入が義務付けられている保険のことで、別名「強制保険」と呼ばれています。
交通事故が発生した時の「被害者」を救済することを目的としており、加害者が負う賠償責任を補填することで被害者の基本的な対人賠償を確保しています。
もしも自賠責保険に未加入の状態で自動車を運転すると、「自動車損害賠償保障法」に基づき1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
さらに、自賠責保険の証明書を所持せずに運転しただけでも30万円以下の罰金が科せられ、無保険運転が発覚した際には免許停止処分となります。
非常に重い処分を受けることになってしまうので、自賠責保険の期限切れと合わせて万全な注意を払った上で自動車を運転することを心がけてください。
また、自賠責保険は日本全国の損害保険会社をはじめ、自動車やバイクの販売店で加入することができます。
また、原動機付自転車や軽二輪(125cc〜250ccのバイク)であれば全国の郵便局・インターネット・コンビニからも手続きが可能なのでぜひ覚えておきましょう。
自賠責保険の補償範囲
自賠責保険の補償範囲は以下のとおりです。
補償内容 | 限度額 | |
---|---|---|
傷害による損害 | 診察料や手術料、投薬料や入院料の費用を補償 入院中・通院中に要した雑費や交通費、診断書発行手数料なども含む | 最大120万円 |
後遺障害による損害 | 自動車事故が原因で身体に残した障害による労働能力の減少、または精神的・肉体的な苦痛に対する補償 |
|
死亡による損害 | 自動車事故の被害者が死亡した場合の通夜、祭壇、火葬、墓石などの費用、死亡しなければ将来的に得られたはずの収入額、被害者本人・遺族への慰謝料などを補償 | 最大3,000万円 |
参照:自賠責保険について知ろう!|自動車総合安全情報|国土交通省
自賠責保険によって補償されるのは、人身事故が発生した時の被害者の損害のみです。
物損事故や加害者側が負った損害に対しては、自賠責保険では一切の補償が受けられません。
これらの損害に対する補償は、自賠責保険とは別に「任意保険」に加入する必要があります。
自賠責保険の保険料
自賠責保険は、どの窓口で加入しても払い込む保険料は変わりません。
その理由は、自賠責保険の目的は自動車等が原因による人身事故が発生した場合の「被害者」を救済することを目的とした保険であり、国土交通省によって金額が一律に決められているためです。
2020年4月1日以降における自賠責保険の保険料は以下のとおりです。
12か月契約 | 24か月契約 | 36か月契約 | |
---|---|---|---|
自家用乗用自動車 | 13,410円 | 21,550円 | 29,520円 |
軽自動車(検査対象車) | 13,210円 | 21,140円 | 28,910円 |
小型二輪自動車 (251cc以上のバイク) | 7,420円 | 9,680円 | 11,900円 |
原動機付自転車 | 7,060円 | 8,950円 | 10,790円 |
※車種によって保険料は異なります※契約期間は1か月単位で決められます※離島以外の地域(沖縄県を除く)に適用される基準料率です参照:自賠責保険基準料率|損害保険料率算出機構
自賠責保険で払い込む保険料は、交通事故の発生率や保険金支払い額によって変動するため、加入するタイミングによって金額が異なります。
上記以外の車種やより長い契約期間で加入する場合の保険料については、損害保険料率算出機構の公式ホームページをご確認ください。
自賠責保険と任意保険の補償範囲の違い
自動車を対象とする保険には「自賠責保険」のほかに「任意保険」があります。
自賠責保険と任意保険の違いは以下のとおりです。
補償範囲 | 自賠責保険(義務) | 任意保険 | |
---|---|---|---|
相手方への補償 | 傷害 | 最高120万円まで | 無制限 |
死亡 | 最高3,000万円 | 無制限 | |
後遺障害 | 最高4,000万円 | 無制限 | |
車両への損害 | 不可 | 可 | |
弁護士費用特約 | 不可 | 可 | |
自身への補償 | 死傷 | なし | 可 |
車両への損害 | なし |
自賠責保険と任意保険は、大まかな括りではどちらも「自動車保険」と呼ばれる損害保険の一種です。
ですが、自賠責保険は加入義務があるのに対し、任意保険への加入は任意であるという点が異なっており、さらに補償範囲が大きく違っています。
任意保険は、自賠責保険ではカバーできない物損事故や自分自身の損害などの広い範囲まで補償が適用されることに加え、自賠責保険で補償が受けられる対人賠償についても限度額がありません。
万が一のことを考えると自賠責保険だけでは補償が不十分なケースが多いため、名称こそ“任意”ではあるものの、自動車を運転する上で「任意保険」はほぼ必須の保険商品であるといえます。
任意保険については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
自賠責保険への新規申し込み方法
自賠責保険への新規申し込みをするためには、以下の窓口で手続きを行う必要があります。
自賠責保険への新規申し込み方法
- 損害保険会社(組合)の支店等
- 自動車やバイク、原動機付自転車の販売店
原動機付自転車(原付バイク)や軽二輪(125cc〜250ccのバイク)の場合は、郵便局やインターネット、コンビニでも手続きが可能です。
新規申し込みをする際には、車台番号や登録番号といった「自動車の情報が分かる書類(自動車検査証等)」が必要になります。
自賠責保険に加入する際に必要な書類
-
車検のある車種
- 自動車検査証(車検証)
-
車検のない車種
- 原動機付自転車:標識交付証明書
- 125cc〜250ccのバイク(軽二輪):軽自動車届出済証
参照:自賠責保険について知ろう!|自動車総合安全情報|国土交通省
ただし、一般的には自動車やバイクを購入する際に合わせて販売店舗で自賠責保険へ加入することになるので、自賠責保険に新規加入する際に特別な持ち物を用意する必要はありません。
「販売店舗で加入せず自分で好きな窓口から申し込みたい」という場合には上記の書類を準備した上で、専用窓口からお申し込みください。
自賠責保険を更新する場合
すでに自賠責保険に加入している場合、一般的には「車検」のタイミングで自賠責保険の更新を行います。
なお、車検を行うためには自賠責保険の補償期間が車検の有効期限より1日でも多い状態でなければなりません。
もしも車検の有効期限より自賠責保険の補償期間が少なかった場合、車検証の交付を受けることができなくなってしまいます。
また、自賠責保険と車検の満了期限には微妙なズレがあるので、自賠責保険が期限切れとならないように注意しておく必要があります。
自賠責保険と車検の満了期限
- 自賠責保険:有効期限日の午前12時(午後0時)まで
- 車検:有効期限日の午後12時まで
車検以外のタイミングで自賠責保険を更新する場合、基本的には損害保険会社の窓口や自動車の販売店舗で手続きを行うことになります。
新規申し込みの時と同様で、原動機付自転車(原付バイク)や軽二輪の場合はインターネットやコンビニからも手続きができるので、対象車種を運転する機会がある人は覚えておきましょう。
その際、契約中の自賠責保険(共済)証明書を持参する必要があるので、事前に準備しておくようにしてください。
自賠責保険の選び方
自賠責保険は、どの窓口から申し込んでも保険料は一律で変わりません。
また、補償内容や限度額もまったく同じなので、どの窓口から自賠責保険に申し込んでも差はありません。
ただし、一部の保険会社では自賠責保険と任意保険を同時契約することで割引が受けられる場合があります。
割引の対象は「任意保険の対人賠償」に関する部分なので自賠責保険の保険料が安くなる訳ではありませんが、任意保険をお得に契約できるので、そういった割引のある窓口を選ぶのがおすすめです。
また、自賠責保険に加入する際には契約期間を1か月単位で選ぶことができますが、長期契約を選ぶことで1か月あたりの保険料を安くすることができます。
保険料は一括で支払うことが多いので、現在の家計状況を鑑みてバランスの良い契約期間で自賠責保険に加入するようにしましょう。
自賠責保険で聞かれるよくある質問Q&A
最後に、自賠責保険で聞かれることが多い「よくある質問」にお答えします。
自賠責保険で聞かれるよくある質問Q&A
Q. 自賠責保険ってどうやって使うの?
A. 自賠責保険を使って保険金を請求する方法は、以下の2通りがあります。
自賠責保険金の請求方法
- 加害者請求:加害者が被害者に損害賠償員を支払い、その後で加害者が損害保険会社に保険金を請求する
- 被害者請求:加害者側から賠償が受けられない場合、加害者が加入する損害保険会社に損害賠償額を直接請求する
保険金の請求は事故発生や症状発生から3年以内に手続きを行う必要があるので、万一のことが発生した場合には早急に手続きを進めるようにしてください。
なお、一般的に見て被害者はすぐに治療費等の支払いが必要となるケースが多いので、その費用を賄うための資金をいち早く受け取れるようにする「仮渡金制度」もあります。
仮渡金制度は、加害者が加入する損害保険会社に対して請求を行うもので、死亡で最大290万円、傷害は程度に応じて5万円・20万円・40万円の仮渡金が受け取れます。
Q. 自賠責保険で慰謝料は払える?
A. 自動車事故が発生した際には「慰謝料」をイメージする方も多いかと思いますが、慰謝料はあくまで損害賠償の一部分を指す言葉です。
自賠責保険で補償可能な限度額は、治療費や入院費、文書料(書類発行手数料など)、慰謝料などを含めて最大120万円までとなります。
発生した事故の程度によっては、治療費や入院費などの補填をするだけで自賠責保険の限度額に達することも考えられます。
したがって、自賠責保険で慰謝料を払うこと自体は可能なものの、事故の程度によっては現実的ではありません。
Q. 自賠責保険が切れていた場合はどうなる?
A. 自賠責保険の有効期限が切れている状態で自動車を運転すると、以下の罰則が科せられます。
自賠責保険が切れていた場合の罰則
- 1年以下の懲役
- 50万円以下の罰金
- 免許停止処分
また、自賠責保険が切れている状態で自動車事故を起こしてしまうと、その際に発生する賠償責任は全額自己負担となってしまいます。
そのため、自賠責保険の有効期限には細心の注意を払っておかなければなりません。
過去には事故によって、数億円以上の賠償額が命じられた事例もあるので、自賠責保険の有効期限だけではなく、万一のことも考えて任意保険への加入もご検討ください。
Q. 自賠責保険証明書を車に備え付けずに運転した場合どうなる?
A. 自賠責保険証明書を自動車やバイクに備え付けずに運転した場合、自賠責保険証不携帯として30万円以下の罰金が科せられます。
第八条 自動車は、自動車損害賠償責任保険証明書(前条第二項の規定により変更についての記入を受けなければならないものにあっては、その記入を受けた自動車損害賠償責任保険証明書。次条において同じ。)を備え付けなければ、運行の用に供してはならない。
自動車損害賠償責任保険証明書の提示 から引用
第八十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。 一 第八条又は第九条の三第一項若しくは第二項(第九条の五第三項及び第十条の二第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
自動車損害賠償保障法 第六章「罰則」 から引用
上記のように自賠責保険証明書不携帯の場合は法律によって罰せられてしまうので、自宅で保管するのではなく自動車のグローブボックスやバイクのパニアケース(サイドバッグ)で保管するようにしてください。
なお、車検を受ける必要がない原動機付自転車等(原付バイク)の場合は、保険加入を証明するための保険標章(自賠責保険加入済みであることを証明するシール)が配られます。
このシールを貼ることも法律で義務付けられているため、必ずナンバープレートの指定された位置に貼り付けるようにしましょう。
Q. 自賠責保険証明書はコピーでも大丈夫?
A. 自賠責保険証明書は、法令上は「原本の携帯」が求められています。
そのため、原則として自賠責保険証明書のコピーではなく原本を携帯して運転することを心がけてください。
Q. 住所変更や車の所有者が変わる場合、自賠責保険の変更手続きは必要?
A. 引っ越しによる住所変更や車を売却するなどの理由から所有者が変わる場合、自賠責保険の変更手続きを行わなければなりません。
契約している自賠責保険の損害保険会社に問い合わせをすることで、必要書類や手続き方法を案内してくれます。
特に自動車やバイクを売却する際、名義変更の手続きをしてからでないと車の所有者と自賠責保険の契約者が異なる事態になってしまうので、必ず名義変更の手続をしてから売却手続きを行うようにしてください。
Q. 車を手放した場合、自賠責保険はどうすればいい?
A. 車やバイクを手放して廃車にした場合、加入中の自賠責保険の解約手続きをすることになります。
契約期間中に解約すると、すでに払い込んだ保険料の一部が還付金として返ってくるので、忘れずに手続きを行なうようにしましょう。
解約手続きをする際には以下の書類が必要となります。
自賠責保険の解約手続きに必要な書類
- 自動車損害賠償責任保険証明書
- 一時抹消登録証明書または登録事項等証明書申請(自動車を廃車したことを証明する書類)
これらの書類の記入方法や詳しい手続き方法については、加入中の自賠責保険を提供する損害保険会社までお問い合わせください。
まとめ
自賠責保険は、自動車やバイクを運転する全ての人に加入が義務付けられている強制保険と呼ばれる損害保険です。
自動車等が原因による人身事故の「被害者」を救済することを目的とした保険で、未加入の状態で自動車を運転すると自動車損害賠償保障法によって1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
また、自賠責保険証明書を不携帯の状態で運転した場合も30万円以下の罰金が科せられ、免許停止処分となってしまうので、自動車を運転する人は常に携帯することを心がけましょう。
なお、自賠責保険による補償範囲は人身事故による被害者に対しての対人賠償のみで、対物賠償や自分自身が被った損害に対しては一切の補償が受けられません。
自動車事故は被害者だけに限らず、加害者側も大きな損害を受ける可能性が考えられるので、自賠責保険に加えて「任意保険」に加入して万一の事態に備えておくことが重要です。