遺産相続とは
遺産相続とは、被相続人(亡くなった人)が遺した権利や義務などの「財産(遺産)」を、相続人に引き継ぐことを指します。
亡くなった人のことを「被相続人」、財産を引き継ぐ人のことを「相続人」と呼び、原則として「被相続人の配偶者や子供などの家族関係にある人」が相続人になることができます。
遺産を相続する場合、以下のことを確認・協議する必要があります。
遺産を相続する場合に確認・協議すること
- 相続する遺産は何がどれくらいあるのか
- 相続人は誰になるのか
- 相続する遺産の割合はどうするのか
また、遺産相続手続きにあわせて被相続人が加入していた保険や年金の手続きも行うことになります。
遺産相続の対象
相続の対象となるモノは以下のとおりです。
遺産相続の対象 | プラス財産 |
|
---|---|---|
マイナス財産 |
|
|
遺産相続の対象外 |
|
ご覧のとおり、遺産相続の対象となるモノは一般的にイメージされがちな「土地」「預貯金」以外にも、被相続人の借金や未払金などのマイナス財産も含まれます。
また、第三者の借金の連帯保証人であったり、所得税や住民税の未払い分があったりする場合は相続人が代わりに支払うことになります。
一方、被相続人の有していた資格や技能、年金受給権などは相続されません。
生命保険金、死亡退職金は遺産相続の対象外
生命保険金や死亡退職金は相続の対象外となるため、遺産分割の際に含まれることはありません。
たとえば、被相続人が配偶者を受取人に指定して生命保険に加入していた場合、支払われる保険金は全て配偶者のものとなります。
これらの保険金は、生計を一にする配偶者や子供の生活を支えることを目的として支払われるお金であり、被相続人の財産ではないためです。


遺産相続人の分配範囲と順位
遺産相続をする際、誰がどれくらいの割合で遺産を相続するかは自由に決めることができます。
原則は配偶者や子供が一般的ですが、遺言書や相続人同士の協議内容によっては家族以外を相続人に指定することも可能です。
ですが、遺言書がない場合や、協議がまとまらなかった場合は、民法によって定められた遺産相続人の分配範囲と順位に従って相続人を決めることとなります。
法定相続人の範囲と順位
民法で定められている相続人(法定相続人)の範囲と順位は以下の通りです。
法定相続人の範囲と順位
- 常に法定相続人:配偶者
-
第1順位:死亡した人の子供(養子も含まれる)
- その子供がすでに死亡している場合はその子供の直系卑属が相続人となる
- 子供も孫もいる場合は、死亡した人により近い世代である子供を優先する
-
第2順位:死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
- 父母も祖父母もいる場合は、死亡した人により近い世代である父母の方を優先する
- 第2順位の人は、第1順位の人がいない場合に相続人となる
-
第3順位:死亡した人の兄弟姉妹
- その兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、その人の子供が相続人となる
- 第3順位の人は、第1順位・第2順位の人もいない場合に相続人となる
※参照:相続人の範囲と法定相続分|国税庁
- 「直系尊属」とは?
- 父母、祖父母、曽祖父母、高祖父母など被相続人より前の世代で直接の親族関係がある人
- 「直系卑属」とは?
- 子供、孫など被相続人より後の世代で直接の親族関係がある人
第1順位は被相続人の子供となります。
ただし、直接の子供がすでに死亡している場合は、被相続人から見て孫が第1順位の法定相続人となります。
第2順位は被相続人の父母が該当しますが、すでに死亡している場合は、被相続人から見て祖父母が第2順位の法定相続人に該当します。
つまり、被相続人から見て第2親等までの親族が法定相続人になれるということです。


法定相続人を確定させるために必要な書類
法定相続人を確定させるためには、被相続人と相続人の戸籍謄本を取得する必要があります。
被相続人の戸籍謄本が必要な理由は、離婚相手や愛人関係にあった人との間に子供がいた場合など、相続人の範囲に含まれる人物が増える可能性があるためです。
戸籍謄本を確認すれば、被相続人との血縁関係にある人物が全て記載されているため、法定相続人が誰であるかを確認できます。
戸籍謄本は被相続人の預貯金や不動産の相続手続きをする際にも必要となるので、被相続人の本籍地がある市区町村役場で取得しておきましょう。
法定相続人に含まれていても相続できないケース
法定相続人に含まれていても、被相続人を殺害または虐待した場合は「相続欠格」「相続廃除」によって遺産を相続することができません。
これらは民法891条「相続人の欠格事由」、892条「推定相続人の廃除」によって定められています。
法定相続人が遺産を相続できないケースは以下の通りです。
名称 | 内容 |
---|---|
相続欠格(民法891条「相続人の欠格事由」) |
|
相続廃除(民法892条「推定相続人の廃除」) | 1. 推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、又はこれに重大な侮辱を加えたとき 2. 推定相続人にその他の著しい非行があったとき |
参照:民法の相続制度の概要〜相続税法を理解するために〜(PDF)|国税庁


相続人の遺産相続割合
相続人の遺産相続割合は、民法によって定められています。
ただし、遺言書がない場合や協議によって遺産分割がまとまらなかった場合の目安であり、必ずしも民法によって定められた相続割合で分配しなければならない訳ではありません。
また、一部の相続人には最低限の遺産を受け取る権利として「遺留分」が認められていたり、遺言書によって遺産相続割合が調整されたりするケースもあるので、事前に割合を確認しておきましょう。
民法で定められた相続割合
民法によって定められた相続割合は、法定相続人ごとに決められています。
以下でまとめた一覧表を参考にして、相続ケースごとの遺産相続割合をご確認ください。
相続ケース | 相続人 | 法定相続分 | 遺留分 |
---|---|---|---|
配偶者×第1順位 ![]() |
配偶者 (法的な婚姻関係に限る) | 1/2 | 〇 |
第1順位:子 (子が亡くなっている場合は孫) | 1/2を人数に応じて均等に分配 | 〇 | |
配偶者×第2順位 ![]() |
配偶者 | 2/3 | 〇 |
第2順位:父母 (父母が亡くなっている場合は祖父母) |
1/3を人数に応じて均等に分配 | 〇 | |
配偶者×第3順位 ![]() |
配偶者 | 3/4 | 〇 |
第3順位:兄弟姉妹 (兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪) |
1/4を人数に応じて均等に分配 | × | |
配偶者がいない場合 | ― | 法定相続人の順位内の人数に応じて均等に分配 | ― |
代襲相続とは
代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、相続人となるべき人(被代襲者)が以下のケースに該当する場合、その人の直系卑属が代わりに遺産相続することをいいます。
代襲相続となるケース
- 相続開始以前に死亡している場合
- 相続欠格・相続廃除によって相続権を失っている場合
参照:民法の相続制度の概要〜相続税法を理解するために〜(PDF)|国税庁
代襲相続は、被代襲者の死亡などによってその直系卑属が不利益を被らないようにするための制度です。
原則として死亡した被代襲者が被相続人の子供、または兄弟姉妹の場合に限られます。
被代襲者が「相続放棄(一切の遺産を相続しない)」した場合は代襲相続はできません。


遺留分とは
遺留分とは、一部の相続人が最低限の遺産を受け取る権利として保証されている遺産割合のことです。
遺留分が認められる相続人は以下のとおりです。
遺留分が認められる相続人
- 被相続人の配偶者や子供:遺留分算定の基礎となる財産の1/2
-
被相続人の直系尊属(父母など):遺留分算定の基礎となる財産の1/3
※兄弟姉妹には遺留分の権利が認められていません
参照:民法の相続制度の概要〜相続税法を理解するために〜(PDF)|国税庁
つまり、仮に配偶者がいる場合に、遺言書で第三者に全財産を相続する旨が記載されていたとしても、遺留分として全財産の1/2は配偶者が相続できるということになります。
遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)とは
相続した遺産が遺留分より少なかった場合は、他の相続人に対して「遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)」をして不足分を受け取ることができます。
遺留分減殺請求は以下の3つの方法で請求することができます。
遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)の方法
- 内容証明郵便で「遺留分減殺の意思表示」を行う
- 家庭裁判所で遺留分減殺調停を行う
- 簡易裁判所で遺留分減殺請求訴訟を起こす
基本的には内容証明郵便で行う方法が一般的ですが、相手が応じないケースも珍しくありません。
そういった場合は、家庭裁判所で調停を行ったり簡易裁判所で訴訟を起こしたりなどで遺留分減殺請求を行うことができます。
ただし、遺留分減殺請求には1年間の期限が設けられており、期日を過ぎてしまうと請求できなくなってしまうので注意が必要です。


遺言に記載された遺産相続割合
遺言書がある場合、基本的には記載された内容のとおりに遺産を分けて相続することになります。
ただし、相続人全員の合意があれば、遺言書の内容とは異なる割合で遺産を分配することができます。
遺言書は法的に有効な形で残さないと無効になる
遺言書は、法的に有効な形で残さないと無効となってしまいます。
遺言書を作成する方法としては「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つが一般的です。
遺言書作成の方法
- 公正証書遺言:公証役場で公証人に作成してもらう遺言書。作成には費用が必要だが公証役場で保管されるため紛失・改ざんの心配がない
- 自筆証書遺言:いつでも自筆で作成可能な遺言書。法的要件を満たしていないと無効になる、紛失や改ざんの恐れがあるなど注意点が多い
公正証書遺言は、費用が必要ですが、公証役場で公証人によって作成した遺言書のため無効になることがなく、公証役場で保管されるために紛失や改ざんなどの恐れがありません。
一方、自筆証書遺言は、いつでも自筆で作成可能な遺言書で、費用も必要ありませんが、法的要件を満たしていないために無効となったり、紛失や改ざんの恐れがあったりなど注意点が多いです。
また、自筆証書遺言の場合は、被相続人が亡くなった後で遺言書が発見されたとしても家庭裁判所で検認の手続きを行う必要があります。
- 「検認」とは?
- 家庭裁判所にてその遺言書の内容を明確にして偽造や変造を防ぐための手続き。検認を行わずに開封するとその遺言書が無効になってしまうので注意が必要。


遺産相続、相続放棄する際の3つの方法
遺産相続、相続放棄する際には3つの方法があります。
それぞれの方法について確認していきましょう。
単純承認
単純承認は、プラス財産・マイナス財産問わず全ての財産を無条件で相続する方法です。
相続開始後の3か月以内に何も手続きを行わなかった場合は自動的に単純承認で相続することになります。
被相続人の借金が多い場合で相続放棄や限定承認をしたい場合は、3か月以内に手続きを行う必要があるのでご注意ください。


相続放棄
相続放棄は、一切の遺産を相続しない方法です。
明らかにマイナス財産が多い場合や遺産相続をしたくない場合に選択される方法で、プラス財産を受け取れなくなる代わりに一切のマイナス財産を引き継がなくて良くなります。
相続放棄の手続きは、相続が開始されてから3か月以内に家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
相続放棄をする際に必要な書類は以下の通りです。
相続放棄をするために必要な書類一覧
- 故人の戸籍謄本
- 故人の住民票
- 相続放棄する人の戸籍謄本
- 相続放棄申述書
- 収入印紙800円分
- 郵便切手
準備をするためにある程度の時間が必要なので、相続放棄を検討する場合は早めに準備しておきましょう。
限定承認
限定承認は、相続するプラス財産を限度として故人の借金を返済するための相続方法です。
たとえば、プラス財産3,000万円・借金4,000万円で限定承認をした場合、本来であれば4,000万円を返済しなければならないところ、プラス財産を限度として3,000万円を返済することになります。
残り1,000万円の借金に関して、債権者は相続人に対して返済を求めることができないため、相続人は残りの分の借金を返済する必要はありません。
逆に、借金よりもプラス財産の方が多い場合は相殺して残った分だけを相続することができます。
ただし、限定承認を行う場合は相続人全員の合意の上で行う必要があるため、誰か1人でも反対者がいる場合は限定承認ができません。
限定承認を行う場合は、相続が開始されてから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てを行う必要があります。
限定承認をするために必要な書類は以下の通りです。
限定承認をするために必要な書類一覧
- 故人の戸籍謄本
- 故人の住民票
- 申述人全員の戸籍謄本
- 限定承認申述書
- 故人の子供で死亡している場合はその子供の戸籍謄本
- 収入印紙800円分
- 郵便切手
これらの書類を準備するのにはそれなりの時間が必要となるので、相続が開始されてから限定承認をする可能性がある場合は、早めに書類の準備をしておくことをおすすめします。


相続手続きの流れ
相続手続きには期日が設けられているので、期日内に手続きを行うように気をつけましょう。
相続が開始されてからの手続きの流れは以下の通りです。
期日 | どこで | すること | ポイント |
---|---|---|---|
死亡から7日以内の手続き | 病院 | 死亡診断書(死体検案書)の受け取り |
|
病院・市区町村役場 | 死亡届(死亡証明書)の提出 |
|
|
死亡から10日以内の手続き | 社会保険所 | 年金受給停止の手続き ※厚生年金の場合 |
|
死亡から14日以内の手続き | 社会保険所 | 年金受給停止の手続き ※国民年金の場合 |
|
市区町村役場 | 健康保険・介護保険の資格喪失届の提出 |
|
|
市区町村役場 | 世帯主変更届の提出 | ― | |
保険会社・各金融機関窓口 | 生命保険・損害保険、金融機関の手続き | ― | |
各種窓口 | 公共料金や各種サービスの変更と解約 | ― | |
死亡から3か月以内の手続き | 家庭裁判所 | 遺言書の確認・検認 | ― |
市区町村役場 | 相続人・相続財産(遺産・債務)の調査 | ― | |
自宅・家庭裁判所 | 相続人全員で遺産分割協議 | ― | |
家庭裁判所 | 相続放棄・限定承認 | ― | |
死亡から4か月以内の手続き | 税務署 | 所得税の準確定申告、税金の納付 | ― |
死亡から10か月以内の手続き | 税務署 | 相続税申告と納付手続き | ― |
死亡から1年以内の手続き | 家庭裁判所・地方裁判所 | 遺留分減殺請求の手続き | ― |
死亡から2年以内の手続き | 市区町村役場 | 葬祭費・埋葬料の申請手続き | ― |
死亡から3年10か月以内の手続き | 税務署 | 相続税軽減の手続き | ― |
死亡から5年10か月以内の手続き | 税務署 | 相続税の還付請求の手続き | ― |
また、それに合わせて様々な窓口で書類を取り寄せたり提出したりと多くの手間と時間がかかります。
上記の一覧表のように、遺産相続をするためには非常に多くの手続きが必要です。


相続税
遺産相続をした場合、相続した財産の資産価値に対して発生する「相続税」を申告しなければなりません。
相続税は、遺産総額から「基礎控除(3,600万円〜)」を差し引いた金額(課税遺産総額)に、民法で定められている所定の税率をかけて算出します。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
参照:相続税の税率|国税庁
たとえば、被相続人の遺産1億円を配偶者1人が相続する場合の相続税額は以下の計算式で算出できます。
例:遺産総額1億円を配偶者1人で相続する場合
- 遺産総額1億円-基礎控除3,600万円=課税遺産総額6,400万円
- 課税遺産総額6,400万円×税率30%-控除額700万円=相続税1,220万円
上記の計算式で算出された相続税額は、被相続人が死亡してから10か月以内に税務署へ申告する必要があります。
申告期限に遅れてしまうと罰金という形で相続税の支払総額が増えてしまうのでご注意ください。
なお、遺産総額が3,600万円以下の場合は基礎控除によって申告額が差し引かれるため、相続税の申告をする必要はありません。
ただし、上記はあくまで基本例であり、相続税の計算は非常に複雑な内容となるので、基本的には税理士に相談をしてから相続税の申告を行うのが良いでしょう。
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相続税の基礎控除
相続税は、相続した遺産総額に対して所定の税率をかけた金額を税務署へ申告して納税します。
ただし、相続税は遺産総額全てが課税対象になる訳ではなく、以下の計算式で算出される「基礎控除」以下の金額は課税の対象外となります。
基礎控除の計算式
- 3,000万円+600万円×法定相続人の数
遺産総額から上記の基礎控除を差し引いた金額が「課税遺産総額」となります。
相続放棄をする人がいる場合の相続税額計算式
基礎控除の計算式における「法定相続人」には、相続放棄をした人数も含めて計算を行います。
ただし、算出された相続税は相続放棄をした人数を差し引いた人数で負担することになります。
つまり、結果として相続人1人あたりの負担税額は増加することになるので相続税額を計算する際には注意が必要です。
たとえば、配偶者1人+子供3人の合計4人で1億円の遺産相続をする場合を例に挙げて計算してみましょう。
例:配偶者1人+子供3人の合計4人で1億円の遺産相続をする場合
- 遺産総額1億円-(3,000万円+600万円×4人)=4,600万円
- 配偶者:(配偶者4,600万円×法定相続分1/2)×税率15%-控除額50万円=相続税額295万円
- 子供1人あたり:(子供4,600万円×法定相続分1/6)×税率10%=76.6万円
- 相続税総額:配偶者295万円+子供76.6万円×3人分=524.8万円
- 各人相続税額:配偶者524.8万円×法定相続分1/2=262.4万円、子供1人あたり524.8万円×法定相続分1/6=87.5万円
1億円の遺産を配偶者1人+子供3人で相続する場合の相続税額は上記の通りです。
ですが、上記の例で子供3人のうち1人が相続放棄をした場合は、相続人1人あたりの負担税額が変わります。
例:配偶者1人+子供2人(3人のうち1人が相続放棄)の合計3人で1億円の遺産相続をする場合
- 遺産総額1億円-(3,000万円+600万円×4人)=4,600万円
- 配偶者:(配偶者4,600万円×法定相続分1/2)×税率15%-控除額50万円=相続税額295万円
- 子供1人あたり:(子供4,600万円×法定相続分1/6)×税率10%=76.6万円
- 相続税総額:配偶者295万円+子供76.6万円×3人分=524.8万円 ※ここまで上記と同じ
- 各人相続税額:配偶者524.8万円×法定相続分1/2=262.4万円、子供1人あたり524.8万円×1/4=131.2万円
ご覧の通り、配偶者の税額は変わっていませんが、子供一人あたりの税額が大きく増加することになります。
相続放棄をする人がいる場合、相続税総額の計算時には数に含みますが、負担する相続税額は実際に相続をする人の数で按分するということを覚えておきましょう。


相続税の申告方法と期限
相続税の申告は、被相続人が死亡してから10か月以内に行う必要があります。
申告方法は被相続人の住所地を管轄している税務署で行い、納税は税務署が発行した納付書を以て金融機関の窓口や税務署の窓口、コンビニ(納付額上限30万円)で納付します。
相続税を申告する際には以下の持ち物が必要です。
相続税を申告する際に必要な持ち物
- 被相続人の戸籍謄本
- 被相続人の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなど)
また、必要に応じて金融機関の口座残高証明書や固定資産評価証明書、自営業の場合は登記事項証明書などの添付書類が必要となります。
いずれの書類も専門の窓口で手続きを行う必要があるため、時間に余裕を持って準備してください。
相続時精算課税制度とは
相続時精算課税制度は、60歳以上の親・祖父母から20歳以上の子供や孫に対して財産を贈与する際に利用できる制度です。
生前贈与を相続時に精算するという意味の制度で、2,500万円までの財産を回数問わず何度でも非課税で贈与できます。
相続税は基礎控除分として3,600万円以下であれば非課税となりますが、相続時精算課税を利用して、将来的に価値が上がる可能性の高い財産を生前贈与しておくことで、相続時の税負担をへらすことができるのです。
ただし、相続時精算課税制度での贈与は、2,500万円を超えた分には一律で20%の税率で計算した贈与税が発生してしまう点には注意が必要です。
また、暦年贈与に戻せなくなる・小規模宅地等の特例が使えなくなるなどの細かな注意点も多いので、しっかりと確認した上でご検討ください。


遺産相続に関するよくある質問 Q&A
遺産相続について聞かれることが多いQ&Aをまとめました。
よくある質問について回答しているのでぜひ参考にしてください。
遺産相続に関するよくある質問 Q&A
Q. 孫に遺産相続したい場合はどうすればいい?
A.遺産相続は、原則として配偶者が常に法定相続人となり、それ以外に子供・被相続人の両親・被相続人の兄弟姉妹という順番で遺産が相続されるため、孫に遺産が相続されるケースは多くはありません。
孫に遺産相続をしたい場合は、以下の4つの方法が挙げられます。
孫に遺産相続をするための方法
- 遺言書:最も有効な相続方法。ただし法的に有効とされる書き方で作成する必要がある
- 代襲相続:本来の相続人(被相続人の子供)が死亡している場合にその子供が代わりに相続できる方法
- 養子縁組:孫を自分自身の養子縁組にする方法。ただし相続トラブルが発生する確率が高い
- 生前贈与:生きている内に財産を渡してしまう方法。ただし相続トラブルが発生する確率が高い
孫を遺産相続する場合に最も有効的な方法は「遺言書」を作成する方法です。
遺産分割協議にて孫への相続が認められれば遺産の受け渡しが可能ですが、相続人全員の合意を得られなければ相続できないので条件的には厳しいと言えます。
しかし、遺言書であれば法定相続人や割合を無視して遺産の相続先を指定することができるので、孫への相続を考えている人はあらかじめ遺言書を作成しておくことをおすすめします。
Q. 養子に遺産相続は可能?
A.養子への遺産相続は可能です。
ただし、特別養子の場合は養親が亡くなった場合には相続権がありますが、生みの親が亡くなった場合は相続権がありません。
- 「特別養子」とは?
- 子供の福祉の増進を図る目的(虐待や経済的に育てられないなどの理由)で子供と実親(生みの親)との親子関係を解消した上で、養親と親子関係を結ぶこと
また、民法上の法定相続人の数は制限がありませんが、相続税法上では法定相続人として数えられる養子の人数に制限が設けられています。
制限が設けられている理由は、相続税の計算において、法定相続人の人数によって大きく税額が変わるためです。
法定相続人として数えられる養子の人数は「実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで」です。
複数人の養子がいる場合は相続税の計算に置いて注意が必要です。


まとめ
遺産相続とは、人が亡くなった時に、権利や義務などの「その人の財産(遺産)」を特定の人に引き継ぐことを指します。
亡くなった人のことを「被相続人」、財産を引き継ぐ人のことを「相続人」と呼び、原則として「被相続人の配偶者や子供などの家族関係にある人」が相続人になることができます。
ただし、遺言書がある場合にはその内容に従って遺産の相続手続きをが必要です。
遺言書がない場合や、相続人の確定や遺産相続の割合を決める「遺産分割協議」がまとまらなかった場合、民法で定められている法定相続人の範囲と順位、相続割合に則って遺産相続を行います。
法定相続人や相続ケースごとの相続割合は以下の一覧表をご参照ください。
相続ケース | 相続人 | 法定相続分 | 遺留分 |
---|---|---|---|
配偶者×第1順位 ![]() |
配偶者 (法的な婚姻関係に限る) | 1/2 | 〇 |
第1順位:子 (子が亡くなっている場合は孫) | 1/2を人数に応じて均等に分配 | 〇 | |
配偶者×第2順位 ![]() |
配偶者 | 2/3 | 〇 |
第2順位:父母 (父母が亡くなっている場合は祖父母) |
1/3を人数に応じて均等に分配 | 〇 | |
配偶者×第3順位 ![]() |
配偶者 | 3/4 | 〇 |
第3順位:兄弟姉妹 (兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪) |
1/4を人数に応じて均等に分配 | × | |
配偶者がいない場合 | ― | 法定相続人の順位内の人数に応じて均等に分配 | ― |
なお、遺産相続をするためには様々な専門窓口で書類を準備する必要があるので、非常に多くの手間と時間がかかります。
また、実際に納めることになる相続税額は計算が非常に複雑です。
相続する遺産の価値を正確に計った上で相続税額を計算しなければならないので、遺産相続が発生した際にはプロの専門家である税理士に相談をしてから申告することをおすすめします。

- 滝 文謙
被相続人しか知らなかった人物や財産が後になって登場すると、名義書換の作業の追加や分割のやり直し、相続税の計算のやり直しという事が起きかねません。
相続手続きをされる方は、余裕ができるよう早めに準備を始めて漏れがないようにしましょう。
また、これから終活をされるという人は遺族が困らないように、通帳の入出金などにメモを書いておいたりすることをおすすめします。

