台風は、お住まいの家に甚大なダメージを与える可能性があります。
2019年は台風19号の上陸によって、日本各地で河川の氾濫や土砂崩れなどで被害をもたらされました。
火災保険に加入していると、台風被害による自宅や自宅内の家具・家電の修理や再取得の費用を補填できる可能性があります。
台風による被害が火災保険の補償対象となる条件や、対象外になる場合について、分かりやすく解説します。
台風は火災保険で補償される?
火災保険は、火災だけでなく水災や風災などに幅広く備えられる保険です。そのため、台風による被害は火災保険の補償対象になります。
一方で、適用される補償は、以下のように被害状況により異なります。
補償 | 保険金が支払われる主な被害状況 |
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水災補償 |
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風災補償 |
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落雷補償 |
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火災保険で台風に備える場合は、上記の補償を付帯しておくと安心です。
ただし、お住まいが高台にあったりマンションの上階に住んでいたりなど、浸水のおそれが少ない場合には、水災補償は外しても差し支えないでしょう。
お住まいの場所に水災の恐れがあるかどうかは、各自治体が提供しているハザードマップで確認可能です。
火災保険で補償される内容の詳細
火災保険の補償対象は、大きく分けて以下の2種類です。
火災保険の補償対象
- 建物
- 家財
火災保険に加入するときは、建物と家財それぞれに保険金額が設定されます。そのため、建物の補償にだけ加入した場合は、台風によって台風のような家財が損害を受けても保険金を受け取れない点に注意しましょう。
建物や家財が補償される例は、以下の通りです。
被害状況例 | 補償例 |
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台風の風圧によって窓ガラスが飛散した | 窓ガラスは建物の建具にあたるため、ガラスの取り替えのような原状回復費用が風災補償の対象となる |
台風による大雨によって河川が氾濫し床上浸水した | 床は建物の一部であるため、床の張り替えや清掃などの費用が水災補償の対象となる |
台風の風圧によって屋根がダメージを受け雨漏りが発生した | 屋根は建物に含まれるため、原状回復にかかった費用が風災補償の対象となる |
被害状況例 | 補償例 |
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台風による大雨で家の中の家具が水浸しになり修理や買い替えが必要になった | 家具は家財にあたるため、修理や買い替えの費用が水災補償の対象となる |
台風の落雷によってテレビや冷蔵庫などの電化製品が壊れた | 電化製品は家財であるため、修理や新品購入費用が落雷補償となる |
台風の突風によって原付バイクが倒れて破損した | 原付バイクや自転車は家財に含まれるため、損害を受けた場合は風災補償の対象となる |
ただし、窓を閉め忘れたことによって家財に損害を受けた場合などは補償の対象外となるため注意しましょう。
また、台風によって自家用車が水没した場合や、台風の風で転んでケガを負った場合も、火災保険では補償されません。
自家用車の損害は自動車保険、ケガは傷害保険でそれぞれ備えましょう。
台風被害でも火災保険の補償が受けられない場合
台風による被害であっても、以下のような状況では火災保険の補償が受けられない可能性があります。
火災保険の補償が受けられないケース
それぞれ確認しましょう。
経年劣化の場合
火災保険は、建物の経年劣化や老朽化が原因で発生した建物や家財への損害は、補償の対象外となります。
建物のメンテナンスを疎かにしていると、台風で建物が被害にあったときに経年劣化と見なされて保険金が支払われなくなる可能性が高くなるため注意が必要です。
被害発生から保険金請求まで3年以上経過している場合
火災保険の保険金は、被害が発生してから3年までに請求しなければなりません。
「台風による損害が補償対象となることを知らなかった」のような理由で、被害発生から3年以上経過したあとに保険金を請求しても支払われないため注意が必要です。
なお、保険会社によっては独自の時効を設定している場合がありますが、時効を過ぎても保険金を支払ってくれるケースもあるため、保険金の請求を忘れた場合も諦めずに保険会社に問い合わせてみましょう。
台風被害で支払われる保険金の種類と金額
台風の被害に遭った場合、支払われる保険金は以下の4種類です。
台風の被害に遭った場合に受け取れる保険金
それぞれ確認しましょう。
損害保険金
火災保険の支払要件に該当した場合は、損害保険金が支払われます。
支払われる損害保険金の額は、契約時に定めた保険金額を上限として、実際の損害額から免責金額を差し引いた金額です。
臨時費用保険金
臨時費用保険金とは、損害保険金とは別に支払われる保険金で、台風による被害で自宅に住めない間に利用したホテルの宿泊費用といった、臨時の出費を賄える保険金です。
臨時費用保険金は、商品によっては付帯が任意となります。付帯せずに契約しているケースもあるため、該当する場合は契約内容を確認してみましょう。
残存物片付け費用保険金
残存物片付け費用保険金は、台風による被害によって建物や家財に損害保険金が支払われる場合、瓦礫や残がいを片付ける際に発生した費用の実費と同額の保険金を受け取れる仕組みです。
保険金の支払上限額は、多くの場合で1回の事故につき損害保険金額の10%です。
損害防止費用
損害防止費用とは、火災・落雷・破裂・爆発の事故において、損害の発生や拡大を防止するために必要であった費用を被保険者が負担した場合に、保険金を受け取れる補償です。
例えば、台風の雷によって火災が起きたとき、消火器を使って消化活動を行った場合に、消化薬剤の再取得にかかった費用が補償されます。
火災保険の保険金の請求方法
火災保険の保険金は、以下のSTEPで請求しましょう。
火災保険の保険金請求手順
請求手順を事前に確認しておくことで、台風による被害に遭ったときもスムーズに保険金を請求できます。
1.保険会社への事故報告
まず、火災保険の契約者が台風による被害に遭ったことを保険会社に連絡しましょう。このとき、保険会社に以下の内容を伝えます。
事故報告時に保険会社に伝える内容
- 保険契約者名
- 保険契約の証券番号
- 事故の場所や日時、状況
保険契約の証券番号は、保険契約時に送られてくる保険証券に記載されていますが、仮に紛失していても保険金を請求可能です。
2.保険金請求に必要な書類の提出
次に、保険金の請求に必要な書類を揃えて保険会社に提出します。請求時に必要になる書類の例は、以下の通りです。
保険金請求時に必要となる書類の例
- 保険金請求書
- 罹災証明書
- 被害の程度が分かる写真(データ)
- 修理者などからの修理費用や報告書
上記の書類に加えて、被害状況が大きい場合には印鑑証明書や建物登記簿謄本(建物を補償の対象である場合)が必要になる場合があります。
保険金の請求時に必要な書類は保険会社への事故報告の際に指定されるため、伝えられた通りの書類を準備しましょう。
必要な書類を揃えたら、保険会社に提出することで請求の手続きは完了します。
3.保険金の受取り
請求書類が保険会社に届くと、保険会社による現地調査の結果と契約者から提出された請求書類や画像データを確認して保険金の支払い査定が行われます。
査定の結果、保険金の支払いに該当した場合は所定の保険金が契約者指定の口座に振り込まれ、請求手続きは完了です。
台風被害で火災保険を適切に利用するために注意すべきこと
台風による被害で火災保険利用する際は、以下の点に注意しましょう。
それぞれ解説します。
注意点1.火災保険で受けられる補償の確認
火災保険で台風に備える場合は、水災や風災の補償内容を確認しましょう。
特に、水災を補償の対象にしていないと、台風による大雨で家財が壊れた場合に保険金を受け取れません。
実際に、建物や家財が水害に遭ったときの補償に加入しているのは、以下のように少ない状況です。
- 自宅建物と家財の両方を対象:22.2%
- 自宅建物だけ対象:6.2%
- 自宅家財だけ対象:2.7%
- 合計:31.1%
仮に、自宅が水災被害に遭ったにもかかわらず水災補償に加入していないと、住宅ローンだけが残ってしまう可能性もあり、新たに住む自宅の家賃やローンとの支払いが二重になり、生活が苦しくなるかもしれません。
風災補償は、火災保険の基本補償に含まれているのが一般的です。しかし、免責金額を高くしていると損害が発生しても保険金を受け取れる額が少なく、自己負担額が多くなる可能性があります。
注意点2.落雷補償の確認
台風は、雷を引き起こす積乱雲が集まってできているため、雷による損害が発生する可能性があります。例えば、落雷によってテレビや冷蔵庫、洗濯機といったコンセントに繋がれた日用家電が壊れることがあります。
火災保険は落雷による損害も基本的に補償の対象であるため、台風に備えるために火災保険に加入する場合は、落雷の補償範囲についても確認しましょう。
注意点3.被災者生活再建支援制度の確認
台風のような自然災害にあった場合は、被災者生活再建支援制度を活用して以下のような経済的支援を受けられます。
対象となる費用・経費 | 支援金の最高額 |
---|---|
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最高100万円 |
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最高200万円 |
合計 | 最高300万円 |
ただし、上記の金額は最高額であり、実際に受け取れる金額は住宅の被災程度や世帯の人数、収入によって異なります。
また、被災者生活再建支援制度を利用するには、お住まいの自治体から罹災証明書を発行してもらう必要があります。
罹災証明書は、被災者が各市町村の窓口で申請書を記入し、その後調査員による調査で、自宅の損害状況が国の定めた認定基準を満たすと判定された場合に発行されます。
一方で、このような公的支援だけで台風に対する備えが万全になるわけではありません。
しかし、火災保険と組み合わせることで、台風による被害にあった場合の経済的な損害を大きく減少できる可能性が高くなるので、ぜひ加入検討をしましょう。
まとめ
火災保険における台風被害について解説しました。最後に、この記事の要点をまとめます。
- 台風による被害に遭った場合、火災保険の水災補償や風災補償、落雷補償の補償対象となる
- 台風の被害にあっても、損害を受けた理由が建物の経年劣化や被害を受けてから3年経過した後に請求した場合は基本的に補償の対象外
- 自宅が台風による被害にあった場合、損害保険金や臨時費用保険金、残存物片付け費用保険金、損害防止費用などを受け取れる可能性がある
- 火災保険の保険金は保険会社に連絡した後所定の書類を提出し保険会社の調査の結果支払い該当となった場合に保険金が支払われる
- 台風に火災保険で備える場合は、水災補償の有無や風災補償の免責金額、落雷補償の補償内容を確認する
- 台風で自宅が損害にあった場合は、被災者生活再建支援制度を利用して経済的な負担を緩和できる
火災保険に加入することで、台風による損害にも備えられます。
大切な自宅や家具などを損害から守りたい場合は、火災保険に加入するときに火災や地震だけでなく、台風に対する補償が充実しているかも合わせて確認しましょう。