共働き世帯は、夫婦がそれぞれ働いて収入を得ているにもかかわらず、貯金ができていないことが少なくありません。
理由は、お互いに働いているため自炊が少なく食費が高くなりがちだったり、財布を別々にしていることでお互いの支出が把握できていないなど、さまざまです。
貯蓄ができていないと、マイホームの購入をはじめ、子供の進学や来るべき老後への備えなど、ライフイベントに支障が出てしまいます。
貯蓄が苦手な夫婦でも将来のライフイベントに備えてお金を貯められるように、貯蓄が必要な理由をはじめ、具体的な貯蓄方法について解説します。
2人以上の世帯の平均貯蓄額は1755万円
まず、2人以上の世帯の平均貯蓄額を見ていきましょう。
総務省の2019年家計調査報告(貯蓄・負債編)によると、2人以上世帯の貯蓄現在高の平均は1,755万円ですが、実際は年代によって大きく差があります。
特に、貯蓄現在高は40歳未満の世帯が691万円であるのに対して、60〜69歳の世帯では2,330万円と、約3.3倍になります。
負債現在高は40〜49歳の世帯が最も多く、70歳以上の世帯が最も少ないです。
また、50歳未満の世帯は貯蓄現在高が負債現在高を下回る負債超過の状態となっています。
世帯の年齢が上昇すると貯蓄現在高は増えますが、負債現在高は減少する傾向にあることが分かります。
適正な貯蓄額は各家庭で異なる
基本的に、貯蓄額は可処分所得の20%が目安とされています。
そのため、世帯月収が50万円の夫婦であれば10万円が毎月貯蓄する金額の目安です。
しかし、貯蓄額に絶対的な正解はなく、ご夫婦が描く今後のライフスタイルや、起こりうるライフイベントによって大きく変わっていくものです。
例としては以下のようなイベントがあります。
貯蓄額を左右するライフイベント
- 子供の出産予定
- 子供の進学ルート
- 車や大型などを購入する予定があるか
- 住宅は賃貸か持ち家か
- 会社の定年の年齢や退職後の生活
そのため、共働きで貯金をしていく場合は将来何にお金を使うのか、何のためにお金を貯めるのかを考え、必要となる費用から逆算して決めていくことが望ましいでしょう。
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将来に必要となる費用の種類
貯蓄額を決める際に考慮すべき費用は、大きく分けて以下の4つです。
特に、教育費用・住宅購入費・老後資金は3大支出と呼ばれており、数千万円の費用がかかる場合もあるため、計画的に貯蓄していく必要があります。
出産費用
公益社団法人国民健康保険中央会の「平成28年度出産費用の全国平均値、中央値調査」によると、出産にかかる費用の平均値は、正常分娩の場合505,759円となっています。
自然分娩の場合、公的医療保険の3割負担が適用されない代わりに出産一時金が支給されます。出産一時金の金額は、多くの場合で42万円であるため、実際の自己負担は約8.5万円です。
異常分娩の場合は、公的医療保険の療養の給付によって自己負担額が3割となりますが、手術の内容が変わり、入院期間も長くなるため自己負担額が自然分娩の場合に比べて10〜20万円ほど増える場合があります。
また、出産後は授乳服をはじめとするマタニティ用品や、ベビーカー、チャイルドシートといったベビー用品の購入も必要です。
妻が育産休を取得する場合の収入の低下にも備える必要があります。
上記のように、出産は多くの費用がかかる可能性があり、子供をもうけたいと考えている世帯は、早めに貯蓄を開始しましょう。
民間の医療保険に加入していれば、異常分娩となった場合に入院給付金や手術給付金を受け取って自己負担を軽減できます。
教育費用
教育費用は公立校と私立校で費用が大きく異なることもあり、子供の進学ルートに応じて2,000万円以上かかる場合があります。
以下の表は、幼稚園から高校までの学習費用の総額を表したものです。
公立 | 私立 | |||
---|---|---|---|---|
年間平均 | 合計 | 年間平均 | 合計 | |
幼稚園 | 223,647円 | 649,088円 | 527,916円 | 1,585,777円 |
小学校 | 321,281円 | 1,926,809円 | 1,598,691円 | 9,592,145円 |
中学校 | 488,397円 | 1,462,113円 | 1,406,433円 | 4,217,172円 |
高等学校(全日制) | 457,380円 | 1,372,072円 | 969,911円 | 2,904,230円 |
※出典:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査の結果」※学習費総額とは学校教育費(授業料、教科書代など)・学校給食費・学校外活動費(参考書代、塾代など)の合計
先述のとおり、公立と私立で教育費に大きな差があることが分かります。特に、私立小学校の教育費は公立小学校の約5倍です。
次に、大学に進学した際の費用です。
入学金 | 授業料 | 施設設備費 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|---|
初年度 | 在学中 | ||||
国立大学 | 282,000円 | 535,800円 | - | 817,800円 | 2,425,200円 |
私立大学 | 249,985円 | 904,146円 | 181,902円 | 1,336,033円 | 4,594,177円 |
私立大学文系学部 | 229,997円 | 785,581円 | 151,344円 | 1,166,922円 | 3,977,697円 |
私立大学理系学部 | 254,309円 | 1,105,616円 | 185,038円 | 1,544,962円 | 5,416,925円 |
※出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」と「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果」をもとに作成
大学の場合も私立の方が教育費が高くなっており、特に私立大学理系学部の教育費は、国立大学の2倍以上です。
また、上記の教育費には、大学までの交通費や部活動にかかる費用などは含まれていません。さらに、親元を離れて大学に通う場合は、下宿先の家賃や引越し費用、家具家電代などが追加で必要となります。
以上の結果を踏まえると、進学ルートによって教育費は以下のようになります。
合計教育費 | |
---|---|
全て公立・国立 | 7,835,282円 |
大学のみ私立 | 10,004,259円 |
高校から私立 | 11,536,417円 |
中学から私立 | 14,291,476円 |
小学校から私立 | 21,956,812円 |
全て私立 | 22,893,501円 |
子供が全て公立もしくは国立の学校に進学した場合、教育費は1,000万円以下ですが、全て私立に進学すると教育費は2,000万円を超えます。
子供をどこに進学させたいのか、本人の希望も聞きながら将来に向けて計画を立てつつ、必要な貯蓄額を考えましょう。
住宅購入費
住宅の価格は、以下のように購入する地域や住宅の種類によって異なります。
全国 | 首都圏 | 近畿圏 | 東海圏 | その他地域 | |
---|---|---|---|---|---|
注文住宅 | 3,395万円 | 3,694万円 | 3,504万円 | 3,456万円 | 3,228万円 |
土地付注文住宅 | 4,113万円 | 4,775万円 | 4,227万円 | 4,107万円 | 3,762万円 |
建売住宅 | 3,442万円 | 3,834万円 | 3,259万円 | 2,976万円 | 2,794万円 |
新築マンション | 4,437万円 | 4,941万円 | 4,107万円 | 4,017万円 | 3,466万円 |
中古戸建 | 2,473万円 | 2,991万円 | 2,198万円 | 2,132万円 | 2,019万円 |
中古マンション | 2,983万円 | 3,235万円 | 2,478万円 | 2,023万円 | 2,256万円 |
※出典:日本住宅支援機構「2018年フラット35利用者調査」
住宅の購入資金は数千万円ほど必要なため、多くの方が住宅ローンを組んで購入されます。
住宅ローンを組む場合は、頭金の額や月々の返済額、返済期間などの資金計画を綿密に立てなければなりません。
頭金を多く入れると借入額や利息負担を減らせるため、その後の返済負担も軽減することができます。
また、住宅購入には登記費用や火災(地震)保険料などの諸費用が必要です。加えて、建売住宅や中古住宅を購入する場合は不動産会社に仲介手数料を支払う必要もあり、諸費用の金額はさらに増えます。
頭金や諸費用を現金で支払うには、住宅を購入したいタイミングから逆算して計画的に貯蓄しておく必要があります。
老後費用
老後に必要な費用は、以下のように公的年金等の収入から生活などの貯蓄を引いた赤字分の他にも、介護費用や葬儀費用などがあります。
費用 | 計算式 | 割合 | |
---|---|---|---|
1. 生活費の赤字分 | 13,972,980円 | 33,269円 × 12か月 × 35年 | 約53.8% |
2. 介護費用 | 1,000万円 | 500万円 × 2人分 | 約38.5% |
3. 葬儀費用 | 200万円 | 100万円 × 2人分 | 約7.7% |
合計金額 | 25,972,980円 | 1 + 2 + 3 | 100% |
※生活費の赤字分は総務省「家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)」をもとに作成※介護費用は生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)」より、月額介護費用平均7.8万円×平均介護期間54.5か月+一時介護費用69万円=494.1万円≒500万円で計算
上記のように老後生活を35年と考えた場合、合計で約2,600万円の費用が発生する可能性があります。
上記の金額は、あくまで平均値をもとにした値に過ぎませんが、生活費の赤字分はご自身の老後生活における収支を考えたうえで備える必要があります。
例えば、老後までに住宅ローンを完済し終わるのであれば、老後に居住費を負担する必要はありませんが、賃貸物件に住む場合は居住費を負担する必要があります。
加えて、子供や孫などの経済的支援がどれほど必要なのかによっても、老後費用は大きく変わります。
しかしながら、老後の費用を全て貯蓄で賄う必要はありません。
例えば、葬儀費用は終身保険に加入すれば貯蓄しながら葬儀費用を準備することが可能です。介護費用は民間介護保険に加入することで、保険会社が定める介護状態に該当した際に、保険金を受け取って介護費用に充てることができます。
老後にどのような生活を送りたいのか、どの費用を貯蓄で賄うのかを考慮して貯蓄を始めておきましょう。
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共働きなのに貯金ができない理由
教育費や住宅購入費などに多くの費用がかかるとわかっていながらも、共働きで貯蓄できない人には、以下の3つのポイントを改善しましょう。
貯蓄できない共働き世帯の改善ポイント
お互いの支出を把握していない
共働きしているにもかかわらず、お互いが毎月いくらのお金を何に使っているのか、把握できていないケースがあります。
お互いの支出を把握していなければ、パートナーが飲み会や買い物で散財していたとしても気づきません。
加えて、共働き夫婦は2人分の収入があるため、ある程度お金を好きに使ってもお金がなくなる危機感が薄くなりがちです。こうなると片働き世帯よりも無駄遣いが増えてしまう傾向にあります。
自炊をしていない
共働きで仕事が忙しい場合、自炊するのが億劫になり、外食や総菜で済ませることが多くなってしまうことがあります。
しかし、外食は1回で数千円、場合によってもっと高額になる場合もあり、惣菜も製造コストが食材費に上乗せされているため、自炊した場合よりも食費が高くなります。
夫婦ともに仕事をしていると、食事を全て自炊で済ませるのは難しいものです。しかし、外食する回数や惣菜を買う頻度が増えると、どうしてもお金は貯まりにくくなります。
外食してはいけない、というわけではありませんが、1ヶ月のうちにいくらのお金を外食や総菜で時短するために使うか、ということを予め決めておくことをおすすめします。
貯蓄額を把握していない
共働き世帯のうち、特に財布が別の世帯はお互いの貯蓄額を把握していないケースも珍しくありません。
お互いの貯蓄額を把握していないことで「きっと相手が貯めてくれているだろう」と期待をしてしまい、お金を使ってしまう傾向があります。
結果的に、どちらも貯蓄できていなかった場合住宅購入時や子供の出産時などのライフイベントを迎えた際にはじめて貯蓄が不足することに気づくことになり、手遅れとなってしまいます。
財布が夫婦で別々であったとしてもおおよそでも構わないので、お互いがいくら貯蓄しているのかというコミュニケーションは取りましょう。
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共働き家庭で貯金をするコツ
貯蓄が必要だと分かっていても、我慢ばかりしてお金を貯めようとしたところで途中で苦しくなって長続きしないものです。そこで、貯蓄が苦手な共働き世帯は、以下のようにお金が貯まりやすくなる仕組みづくりをしましょう。
共働き家庭で貯金をするコツ
共通の口座を作る
まず、夫婦共通で貯蓄用の口座を作り、そこに毎月一定額を貯めるようにしましょう。
夫婦共通の口座を作ることで、お金がどれだけ貯まっているかを、お互い把握しやすくなります。夫婦共通の貯蓄口座という、お互いが把握し合える場所でお金を貯めていくことで、どちらかが貯めたお金に手をつけてしまう心配もありません。
また、貯蓄口座は以下のように貯蓄をする用途に応じて複数持つとさらに効果的です。
貯蓄口座を複数所持する場合の例
- A口座:家電の購入費用や医療費など短期的でまとまった支出に向けて貯蓄口座
- B口座:住宅の購入費用や海外旅行の費用、子供の進学など、中長期的な支出に向けた貯蓄口座
毎月の貯蓄額を決める
毎月の貯蓄額を「夫は毎月5万円、妻は毎月3万円」のように決めて、夫婦共有名義の口座に貯めていくようにしましょう。
貯蓄額を決めるときに大切なことは、無理な金額に設定しないことです。
貯蓄額を無理のある金額にしてしまうと、家計が赤字になってしまうだけでなく、貯蓄を途中で挫折してしまう原因に繋がります。
夫婦ともに現実的な貯蓄額を設定して、無理なくコツコツとお金が貯められる仕組みを整えましょう。
貯蓄をする理由を2人で話し合う
夫婦で貯蓄する目的を話し合っておくと、さらにお金は貯まりやすくなります。
欲しい車がある、いずれマイホームに住みたい、子供が3人は欲しいなど、目的は何でもかまいません。
貯蓄に限らずですが、何事も目標設定が大切です。明確な目標があれば貯蓄額も逆算して設定しやすくなります。
夫婦で貯蓄を始める前に、何のために貯蓄をするのかざっくりでも構わないので話し合い、共通認識を持つようにしましょう。
貯蓄型の保険に加入する
それでも貯蓄が苦手な人は、「終身保険」や「学資保険」、「個人年金保険」のような貯蓄型保険に加入して貯蓄するのもひとつの方法です。なぜなら、貯蓄型保険にはもともとお金が貯まりやすい仕組みがあるからです。
貯蓄型保険の保険料払込方法を毎月払い(平準払)にすると、口座引落やクレジットカード払いなどで、毎月一定額の保険料を支払っていきます。支払った保険料は、保険会社が運用して増やしてくれます。
保険料を支払って積み立てたお金は、解約の手続きをしない限り引き出せません。また、途中で解約すると、解約して戻ってきたお金(解約返戻金)よりも支払った保険料が上回る元本割れが発生する可能性があります。
つまり、貯蓄型保険は、積み立てたお金を途中で引き出しにくい仕組みになっているため、貯蓄が苦手な人でもお金を貯めやすくなっています。
貯蓄型保険の内容や種類について詳しく知りたい人は、下記のコンテンツも合わせてご確認ください。
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まとめ
共働き世帯が上手に貯蓄する方法について解説しました。最後に要点を振り返りましょう。
- 2人以上世帯の貯蓄額は平均で1,775万円だが、必要な貯蓄額は各家庭で将来起こりうるライフイベントに応じて大きく異なる
- 出産の費用は入院費用や分娩費用だけでなく、異常分娩になった場合の手術代や検査代、マタニティ用品代、ベビー用品代などがある
- 教育費用は進学ルートによって約800〜2,300万円ほどの費用がかかる
- 住宅購入費用は人生の中で最も大きな支出で、住宅を購入する地域や住宅の種類によって大きく異なる
- 老後の費用は平均で2,600万円ほどかかる可能性があるが、実際は老後のライフスタイルによって大きく異なる
- 共働き世代が貯蓄できない原因は「お互いの生活費を把握していない」「自炊していない」「貯蓄額を把握していない」の3点
- 共働き世帯が貯蓄をするには、夫婦で共通の貯蓄口座を作ったり、貯蓄額や貯蓄する理由を決めたり、貯蓄型保険への加入検討がおすすめ
子供の進学や住宅の購入などのライフイベントに備えるために、貯蓄は必須です。
貯蓄ができていないと感じる方は、どの方法で貯蓄をしていくのか、何のために貯蓄をするのかをパートナーと相談したうえで、当コンテンツを参考に無理のない範囲で少しずつ貯蓄をはじめていくことをおすすめします。
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