子供にお小遣いを渡すことで、お金を計画的に使う能力や金銭感覚を身に着けさせるきっかけになります。
しかしながら、子供にいくらのお小遣いを渡せばよいのか、どのようにお小遣いを渡せばよいのか悩む親御さんも少なくありません。
データから分析して見る子供のお小遣いの相場や、子供に養ってほしいお金の感覚ごとに分けたお小遣いの渡し方などを、分かりやすく解説します。
【年代別】子供のお小遣い相場
まず、子供に渡すお小遣いの相場を知るために「平均値」「最頻値」「中央値」を確認しましょう。
最頻値や中央値も合わせて確認することで、平均値だけでは分からない傾向が見えてきます。
「平均値」「最頻値」「中央値」の定義
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平均値:すべてのデータを合計し、データの個数で割った値
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中央値:調査結果を高い順番に並べたときに真ん中に位置する値
- 最頻値:最も回答の多かった値
小学生のお小遣い相場
小学生のお小遣いの相場を、低学年・中学年・高学年に分けてご紹介します。
小学生の場合、すべての子供が毎月お小遣いをもらっているとは限りません。
今回は、月に1回お小遣いをもらっている子供と、お小遣いをときどきもらう子供の金額相場に分けて解説します。
学年 | 最頻値 | 平均値 | 中央値 | |
---|---|---|---|---|
月に1回 | 低学年 | 500円 | 1,004円 | 500円 |
中学年 | 500円 | 864円 | 500円 | |
高学年 | 500円 | 1,085円 | 1,000円 | |
ときどき | 低学年 | 100円 | 1,004円 | 163円 |
中学年 | 100円 | 923円 | 300円 | |
高学年 | 1,000円 | 1,246円 | 500円 |
※出典:金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」をもとに作成
平均値だけを確認すると、お小遣いをもらう頻度が「月に1回」と「ときどき」では、金額に大きな差はありません。
しかし、最頻値と中央値を比較すると「月に1回」お小遣いをもらう子供の方が「ときどき」もらう子供よりも、お小遣いの金額が多い傾向にあります。
お小遣いを月に1度渡す場合、低学年と中学年で500円、高学年で500〜1,000円が相場といえるでしょう。
ときどき渡す場合は、子供が購入する物の金額に応じて100円から1,000円まで大きく変わります。
また、以下の調査結果が示すように、低学年であるほど毎月お小遣いをもらっている子供の割合は低いです。
月に1回 | ときどき | |
---|---|---|
低学年 | 13.4% | 57.3% |
中学年 | 32.1% | 47.8% |
高学年 | 45.0% | 38.3% |
※出典:金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」をもとに作成
小学校低学年で「毎月1回」お小遣いをもらっている子供は、わずか1割程度です。半分以上の子供が、お小遣いをもらう頻度は「ときどき」であると回答しています。
中学年では「毎月1回」お小遣いをもらう割合が増えて「ときどき」の割合が減少します。
そして、高学年になると半分近くの子供が「月に1回」お小遣いをもらうようになり「ときどき」と回答した子供は、約4割まで減少しました。
では、なぜ学年が上がるほど月に1回の頻度でお小遣いをもらう子供の割合が増えるのでしょうか?お小遣いの使い方を学年ごとに確認してみましょう。
低学年 | 中学年 | 高学年 | |
---|---|---|---|
第1位 | おかしやジュース | おかしやジュース | おかしやジュース |
第2位 | おもちゃなど | ゲームソフトやおもちゃ類 | ゲームソフトやおもちゃ類 |
第3位 | ゲームをする | ゲームをする | まんが |
第4位 | 家の人へのプレゼント | ノートや鉛筆など | 本や雑誌 |
第5位 | ノートや鉛筆など | まんが | 家の人へのプレゼント |
※出典:金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」をもとに作成
全学年を通して「お菓子やジュース」を買うために、お小遣いを使っていると回答した子供が多い結果となりました。
一方で、中学年になると「ゲームソフト」のような価格の高い物や、「まんが」のような定期的に発行されるものを購入し始めていることが分かります。
高学年では、お小遣いでまんがを買っていると回答した子供が、3番目に多いだけでなく、本や雑誌を購入する子供の割合も増えました。
学年が上がるに従って、ゲームソフトのような高価なものや、まんがのような定期的に発行されるものを購入するために、月に一度お小遣いをあげるようになる家庭が多いと推察されます。
中学生のお小遣い相場
中学生のお小遣い相場を確認しましょう。
最頻値 | 平均値 | 中央値 | |
---|---|---|---|
中学生 | 1,000円 | 2,536円 | 2,000円 |
※出典:金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」をもとに作成
中学生のお小遣いの相場は1,000円から2,000円です。最頻値は、小学校の高学年と変わりませんが、中央値が4倍以上となっているため、お小遣いの金額が高い子供の割合が増えたと考えられます。
お小遣いの相場が小学校の高学年よりも増えた理由は、以下のようにお小遣いの使い道が変わったことが大きいでしょう。
中学生 | |
---|---|
第1位 | 友達との外食・軽食代 |
第2位 | おやつなどの飲食物 |
第3位 | 友達へのプレゼント |
第4位 | 文房具 |
第5位 | 家の人へのプレゼント |
※出典:金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」をもとに作成
中学生になると、友達との飲食代やプレゼントにお小遣いを使うようになります。
友達付き合いにお金がかかるため、小学校の高学年よりもお小遣い相場が上がったと考えられます。
高校生のお小遣い相場
最後に、高校生のお小遣い相場を確認しましょう。
最頻値 | 平均値 | 中央値 | |
---|---|---|---|
高校生 | 5,000円 | 5,114円 | 5,000円 |
※出典:金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」をもとに作成
高校生のお小遣い相場は5,000円程度です。
中学生のお小遣い相場と比較して、約2.5倍増えたのは、以下のようにお小遣いの使い方に変化がみられるためでしょう。
高校生 | |
---|---|
第1位 | 友達との外食・軽食代 |
第2位 | おやつなどの飲食物 |
第3位 | 休日に遊びに行くときの交通費 |
第4位 | 友達へのプレゼント |
第5位 | 昼食 |
※出典:金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」をもとに作成
中学生と同じく、お小遣いの使い道の多くは飲食代です。
一方で、お小遣いを「休日に遊びに行くときの交通費」に使っている点が、中学生とは異なります。
中学生よりも、交友関係や行動範囲が広がったことが、お小遣いの相場の上昇と関連していると考えられます。
また、お小遣いの使い方に「昼食」がランクインしているのも、中学生とは異なる点です。
高校生になると学校給食がなくなるケースが多く、学食に行ったり弁当を購入することで昼食費用が発生するためです。
お小遣いの渡し方
お小遣いの金額と同じく悩みやすいのが、渡し方です。
お小遣いの渡し方には、大きく分けて4つの方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。ひとつずつ確認しましょう。
定額制
定額制は、親が子供に対して、月に1度のようなタイミングで定期的にお小遣いを渡す方法です。
メリット
-
渡した金額内でお金を使う能力を身につけられる
- 親が家計を管理しやすくなる
デメリット
- 親からお金をもらえるのが当たり前であると思われる可能性がある
定額制では「毎月500円の中で欲しいものを買いなさい」と決めることで、子供にお金を計画的に使う力を身に着けさせることができます。
子供は、お小遣いの数倍の値段がする物を買うときは、お金を貯めなければなりません。お金を計画的に貯蓄する能力を身に付けられるのも、定額制のメリットです。
また、お小遣いを渡す親も、毎月500円、1,000円など金額を定額にすることで家計を管理しやすくなります。
しかし、毎月お小遣いを渡していると「お金は定期的にもらえるものである」と、子供が考えるようになる可能性がある点には注意が必要です。
「お金は努力して得るものだと教えたい」「お金を得るためには、労働のような手段で他人や社会に貢献する必要がある」と教えたい場合、定額制は不向きです。
都度制
都度制は、子供が欲しいものを購入するときに、親がお金を渡す方法です。
メリット
-
子供に提案力や交渉力が身につく
- 子供とコミュニケーションする機会が増える
デメリット
- お金を管理する能力が身につきにくい
お小遣いを都度制にした場合、子供は親を説得しなければお小遣いを得られません。
欲しいものがある場合、購入によって得られるメリット、購入しないことで発生するデメリットなどを、子供が親に説明する必要があります。
親に納得してもらうにはどうすればよいかを考えることになるため、子供の提案力や交渉力が身につきやすくなるでしょう。
一方で、承認の基準を緩くしてしまうと、子供が何でも買ってもらえると誤解しかねません。
また、子供がお金を管理するわけではないため、都度製では限られた予算内でやりくりする能力は身につきにくいと考えられます。
報酬制
報酬制とは、手伝いの頻度や学校の成績に応じた金額のお小遣いを渡す制度です。
メリット
- 子供が自ら進んで家事の手伝いや勉強をするようになる
- 「お金は働いて得るもの」という考えが身につきやすくなる
デメリット
- お小遣いという見返りがなければ頑張らなくなる可能性がある
報酬制では「トイレ掃除を手伝ったら10円」「料理を手伝ったら20円」のように、子供の労働に応じてお小遣いをわたすことで、お金が労働に対する対価であることを認識させることができます。
また「テストで100点を取ったら〇〇円」のように設定すると、子供が勉強に打ち込むきっかけにもなるでしょう。
ただし、お金がもらえないのであれば家事を手伝わなくなったり、勉強しなくなったりする可能性がある点には、注意が必要です。
「家事や勉強はやって当たり前」と考えている家庭には、報酬制は適しません。
お金に対する考えは、各家庭によって異なります。報酬制を導入する場合、どのようなときにいくらの報酬を与えるのかは、家庭内で話し合いましょう。
一括制
一括制とは、年俸のように1年分のお小遣いをまとめて渡す仕組みです。
メリット
-
定額制よりも金銭感覚が身につきやすい
- 算数の勉強になる
デメリット
- 親にも金銭感覚が求められる
一括制では、毎月1,000円のお小遣いを渡すのではなく、年初に12,000円のようなまとまった金額を渡します。
1年間を通じてお小遣いを計画的に使わなければならないため、定額制よりもさらに子供の金銭感覚が身につきやすいです。
また「お小遣いの残りが4,000円であと5ヶ月あるから、ひと月800円ずつ使える」といったように、算数の勉強になる点も報酬制のメリットといえます。
一方で、お小遣い制を導入する場合、最初は親がお金の使い方を教えてあげる必要があります。
1年間でお小遣いを計画的に使うのは大人でも難しいため、子供が自力で使い方を覚えるのは困難です。
子供にお金の使い方を適切に指導する必要があり、親にもお金の管理能力が求められます。
お小遣いの渡し方は、子供に身に着けてほしい能力に応じて決める
お小遣いを渡す方法は、以下のように子供に身に着けさせたい能力を考えると決めやすくなります。
お小遣いを渡す方法の決め方の例
複数の方法を組み合わせるのも有効です。
例えば、毎月500円のお小遣いを渡しつつ、ゲームソフトのような金額が比較的大きなものを購入するときは、都度制でお小遣いを渡すのも選択肢のひとつでしょう。
お小遣いの渡し方を組み合わせることで、デメリットを補い合うことも可能です。
ご家庭の教育方針に応じた方法を、検討してみて下さい。
お金の管理能力を養いたい : 定額制、一括制
子供にお金の管理能力を身につけさせたい場合は、定額制や一括制がおすすめです。
定額制や一括制でお小遣いを渡すことで、子供が物を購入する際に、それが自分にとって本当に必要な物か考える習慣が身に着き、大人になってからも無駄遣いを減らせます。
日本はすでに終身雇用が崩壊しており、勤務年数を重ねるだけで給料が増えていく時代ではなくなりました。加えて、少子高齢化が進展することで社会保障制度が改正される可能性もあります。
これからの日本では、限られた収入の中でやりくりをし、自分自身でも万一の場合や老後生活に向けた蓄えをする必要性が高いです。
子供のうちからお金の管理能力が身についていると、これからの日本で生活をしやすくなるでしょう。
なお、子供にお小遣いを定額制や一括制で渡す場合、親はあまり口出ししない方がよいかもしれません。子供が自分自身でお金の使い道を考えることで、金銭感覚が身について行くからです。
親は子供にお小遣い帳を記入させ、お金の使い方や家計簿アプリの使い方を教えてあげるのがおすすめです。
交渉力を養いたい : 都度制
他人を説得させる能力を子供に養わせたいのであれば、お小遣いの渡し方は都度制がおすすめです。
都度制の場合、欲しい物を買うために親を説得してお金を手に入れなければなりません。
「どのように伝えれば、パパやママはお金をくれるだろうか?」と子供が考えることで、交渉力やプレゼンテーション能力が育まれるでしょう。
目標達成力を養いたい : 報酬制
「お金は目標を達成することで得られるもの」という考え方を子供に身に付けさせたい場合は、報酬制でお小遣いを渡すのがよいでしょう。
例えば「テストで100点を取ったら500円」のように設定することで、子供はテストで100点を取るという目標に向かって努力をします。
そして、目標を達成し、100点を取って500円が得られると「頑張って勉強をしたから〇〇円もらえた」と、目標を達成したことに喜びを感じるはずです。
社会に出て収入を増やしていくためには、自ら立てた目標や会社から与えられた目標を達成しなければなりません。その基礎的な力を少しずつ養うことができるでしょう。
まとめ
最後に、子供のお小遣いの考え方について、要点をまとめます。
子供のお小遣い相場
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小学生のお小遣い相場は、低学年と中学年で約500円、高学年で500円〜1,000円
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中学生のお小遣い相場は、1,000円〜2,000円
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高校生のお小遣い相場は、約5,000円
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小学生はお菓子やジュースなどの購入にお小遣いを使うことが最も多い
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小学生は学年が上がっていくとゲームソフトのような高価な物や、まんがのような定期的に発行されるものを購入するようになるため、毎月お小遣いをもらう割合や金額が増えていく
- 中学生や高校生になると、友達付き合いにお金がかかるため、お小遣いの相場が高額になる傾向にある
子供のお小遣いの渡し方には以下4つの方法があり、それぞれメリットやデメリットが異なります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
定額制 |
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都度制 |
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報酬制 |
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一括制 |
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お小遣いを渡す方法の決め方
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子供にお金を管理する能力や金銭感覚を身につけさせたい場合は、定額制や一括制でお小遣いを渡す
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交渉力を子供に身につけさせたい場合は、都度制にすると良い
- 子供に目標達成力を身につけさせたいのであれば、報酬制を採用する
お小遣いの渡し方によって、子どもの金銭感覚や管理能力、交渉力など、さまざまな能力を育めます。
どのような子供に育ってほしいのかを考え、家庭でよく話し合いをしたうえで、お小遣いの渡し方や金額を考えてみましょう。